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結果と考察

ドキュメント内 森下, 智貴 (ページ 90-95)

第 4 章 海面処分場の底部遮水層における鉛の吸着・移動特性の解明

4.1. 塩類が海成粘土の透水係数および鉛の吸着特性に及ぼす影響

4.1.3. 結果と考察

(1) 通水試料の間隙比

溶液を通水し終わった試料では,上部 からの高い圧力のため浸透圧密が生じ,

供試体は6~10 mm収縮した.1 pv以上 通水した試料の間隙比の分布はほぼ同様 の傾向を示しているため,浸透圧密は通 水開始後1 pv以内で終了したものと考え られる.図4.1.3に通水後の各層における 間隙比の分布を示す.6等分したときの 各層の間隙比は下層になるほど低くな た.

(2) 間隙水のpH

通水後の各層の間隙水pHを図4.1.4に示す.純水,海水の1,3 pv通水試料ではpHが5以上であ

図4.1.3 通水後の各層における間隙比の分布

2.5 3 3.5

1 2 3 4 5 6

DI water Sea water Ash leachate pH3 pH6

3.40

初期間隙比 e0=3.40

2.5 3 3.5

1 2 3 4 5 6

1pv 5pv

Number of depth

3.40

2.5 3 3.5

1 2 3 4 5 6

3pv

Voids ratio 3.40

86 ったが,5 pv通水試料ではpHが5以下

であった.これは,多量の溶液が土粒子 と接することで土粒子中のパイライト

(FeS2)が酸化したことに起因する(大 坪, 1993).焼却灰浸出液においてpHが 4.5以下と比較的低い値をとったのは,

溶液中に含まれる酢酸ナトリウムなど の影響により粘土中の炭酸塩が溶解さ れ,間隙水中の炭酸イオンが増加したた めである.

(3) 透水係数の変化

図4.1.5に溶液の浸出に伴う透水係数

の変化を示す.純水溶液では,透水係数

は徐々に低下した.これは間隙中の塩類が減少することで粘土粒子が分散しやすくなり,土壌間隙を 閉塞したためである.図4.1.6に示した純水(pH6)について,浸出液の塩類濃度の変化をみると,

0.1 pv付近で溶脱イオン濃度は最大となり,その後は徐々に減少し最終的に最大値の10分の1まで

低下している.一般的に間隙イオンの少ない粘性土は,水の浸透に伴い透水係数が急激に低下するが

(Regea et al., 1997),本実験では,図4.1.6と図4.1.7に示すように,浸出液中の全体の陽イオン量に 占める2価陽イオンの割合が0.3~0.5で保たれていることと,通水後も交換性陽イオンがある程度存 在するために,拡散二重層の拡大が抑制され,透水係数の急激な低下が抑えられたためである.海水 および焼却灰浸出液では透水係数は徐々に増加した.これは,塩類を多く含む溶液を通水することに より,粘土間隙中の塩類濃度が高くなることで(図4.1.7),粘土粒子の拡散二重層が収縮した結果,

実質上の通水面積が大きくなるためである.とりわけ,pH3の海水で透水係数は大きく増加したのは,

浸透液中の高濃度の塩類とpHの低さから,溶出したAl3+が拡散二重層の収縮を促進させたためであ ると推測される.5 pv通水した試料の交換性陽イオン量を図4.1.7に示す.示した値は1~6層の平均 値である.純水ではおよそ40~50

meq/100gであり,海水,焼却灰浸

出液では,およそ100~110

meq/100gであった.透水係数の低

かった純水では海成粘土に吸着し ている交換性陽イオン量も少なか った.また,pH3の海水において比 較的低い値を示すのは,溶出した Al3+が交換性陽イオンと置換する ためである.

図4.1.4 通水後のpHの分布 1

2 3 4 5 6

pH pH3DI water

pH3Pure water

pH3Sea water

pH

4 5 6 7

1 2 3 4 5 6

pH6DI water

Number of depth

1pv3pv 5pv

4 5 6 7

pH6Sea water

pH3Ash leachate

pH6Ash leachate

4 5 6 7

Number of depth

図4.1.5 通水に伴う透水係数の変化

0 1 2 3 4 5

0 1

[10-6]2 pH3 pH6 DI water Sea water Ash leachate

Hydraulic conductivity (cm/s)

Pore volume

87

図4.1.6 純水溶液通水における陽イオン濃度変化および全イオンに占める2価イオンの割合

図4.1.7 5pv通水後の交換性陽イオンの平均値

(4) 鉛の破過曲線

図4.1.8に鉛の破過曲線を示す.純水では鉛はほとんど浸出しなかった.海水ではpH3の溶液で0.5

pv付近から徐々に鉛が浸出し始めおよそ1 pvで100 mg/Lの鉛が検出された.その後も浸出濃度は増 加し,1 pv以後鉛の溶出量はおよそ120 mg/Lで一定となった.初期濃度よりも高い濃度の鉛が検出 されたのは予め含まれていた鉛や先に吸着されていた鉛が溶液pHの低さや高い塩類濃度の影響で溶 脱したためである.pH6の溶液では2 pvで100 mg/Lの鉛が検出された.海水において著しく低い鉛 保持特性を示したのは,塩類を含む溶液が粘土に浸透していく過程において,粘土粒子が凝集し,カ ラム内で選択的な流れが生じるために鉛と粘土の接触する面積が減ることによるものである.海水よ り塩類濃度の低い焼却灰浸出液においては,徐々に浸出してくる.透水係数では海水と同じく高い値 を示したにもかかわらず5 pvで30 mg/Lしか浸出しなかった.このことから通水による鉛保持機能 を抑制するのは,粘土粒子に吸着された交換性陽イオンの影響よりも,鉛とともに溶液に含まれてい る塩類による影響のほうが強いといえる.

0 1 2 3 4 5

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

pH6Na Mg

K Ca

Cation concentration (mg/L)

Pore volume

(Ca+Mg)/(Na+K+Ca+Mg)

Ratio of divalent cationto total cation pH3 pH6

0 20 40 60 80 100 120

Ash leachate (pH6) Ash leachate (pH3) Sea water (pH6) Sea water (pH3) DI water (pH6) DI water (pH3)

meq/100g

Na K

Ca Mg

88 図4.1.8 鉛の破過曲線

(5) 鉛の吸着分布

図4.1.9に溶液通水後の海成粘土における

鉛の吸着分布を示す.鉛の吸着量は逐次抽出 試験の結果の合計値を用いている.純水では,

5 pv通水したときの最大値はおよそ3.7 g/kg となり,表層において鉛はほとんど吸着され た.

海水においては,図4.1.8にも示したよう に,純水に比べて鉛は吸着されず,溶液が直 に浸透する表層と,間隙比の低下する下層に おいて高い値を示した.原因として,一つに は,共存する塩類との競合により吸着が阻害 されるということ,もう一つには,カラム内 での流れの偏りにより吸着能力が低下する ことが挙げられる.Li and Li(2000)は,高 濃度の重金属を通水した場合,各層の採取す る箇所で,吸着のばらつきがあることを実験 によって示した.もし,カラム内の流れが均 一であれば,鉛の吸着量は上層から下層にい くにつれて徐々に減少していくはずである.

しかし,海水においては2~4層において吸

着量が低下した.これは,表層において溶液は均等に浸透するが,共存する高濃度の塩類により粘土 に凝集が起こり, 2~4層などの間隙が比較的自由な個所において,ある一定の個所(preferential pathway)に流れが集中し,鉛が吸着サイトである粘土表面と接触する機会が減少するためである.

0 1 2 3 4 5

0 100 200

pore volume

Pb concentration (mg/L)

      pH3 pH6 DI water

Sea water Ash leachate

図4.1.9 鉛の吸着分布

0 2 4

1 2 3 4 5 6

pH6 DI Water

0 0.5 1

1 2 3 4 5 6

pH6 Sea Water

0 0.5 1

1 2 3 4 5 6

pH6 Ash Leachate

0 2 4

1 2 3 4 5 6

pH3 DI Water

0 0.5 1

1 2 3 4 5 6

pH3 Sea Water

0 0.5 1

1 2 3 4 5 6

Total Pb sorbed (g/kg)

Number of depth

pH3 Ash Leachate

1pv3pv 5pv

89 さらに,下層における間隙の減少(図4.1.3)にともない,その流れは徐々に安定し,鉛と作用する 粘土の表面積が増加し,再び高い値を示すようになる.

焼却灰浸出液においても表層および下層において比較的高い吸着量を示した.海水に比べて,溶液 中の塩類濃度が海水に比べて低いため,2~4層での吸着量が高かった.

(6) 逐次抽出試験

図4.1.10に5 pv通水後の各層における逐次抽出試験の結果を示す.純水では炭酸塩による結合が

最も多く,次いで交換性,金属酸化物との結合,その他,有機物との結合の順であった.海成粘土に はコッコス,有孔虫などのプランクトンの遺骸に起因する炭酸カルシウムが多く含まれており,それ と鉛が作用し,沈殿することで保持される.

海水においては,炭酸塩による結合が最も多く,次いで金属酸化物との結合,交換性,その他,有 機物との結合の順であった.塩類との競合により鉛の全体に占めるイオン吸着の割合は減少した.ま た,炭酸塩など交換性以外での鉛保持量も大きく減少した.これにより,塩類の存在は特異吸着の阻 害にも影響を及ぼすことが確認された.

焼却灰浸出液においては,最も多いもので金属酸化物との結合,次いで交換性,炭酸塩との結合,

その他,有機物との結合の順であった.炭酸塩の割合が減少したのは,焼却灰浸出液に含まれる酢酸 ナトリウムなどの有機化学物質が炭酸塩自体を溶解したためである.

図4.1.10 逐次抽出試験の結果

0 1 2 3 4

6 5 4 3 2 1

pH3 Pure Water

0 1 2 3 4

6 5 4 3 2 1

pH6 Pure Water

0 0.25 0.5 0.75 1

6 5 4 3 2 1

pH3 Sea Water

0 0.25 0.5 0.75 1

6 5 4 3 2 1

pH6 Sea Water

0 0.25 0.5 0.75 1

6 5 4 3 2 1

pH3 Ash Leachate 0 0.25 0.5 0.75 1

6 5 4 3 2 1

pH6 Ash Leachate

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