• 検索結果がありません。

目的を達成するのに適切なスコープは?

3.2  アクション

3.2.4 評価する影響や依存度を決める

評価対象は影響と依存度のどちらか一つかもしれないし、両方かもしれない。これはビジネス用途と目的 に応じて決めることになる。包括的な評価では、自然資本に関わるリスクと機会を全面的に理解するた め、影響と依存度を両方検討する。

影響と依存度には相関関係がある。例えば、一般に、企業が何かに依存すると他に影響が出る(例:ある 会社が水を利用すると、他のステークホルダーにとっては利用できる水が減ったり水質が劣化したりという 影響が生じる)。

影響と依存度については、影響パスウェイと依存度パスウェイの概念を説明するステップ04で詳しく取り 上げる。ステップ04では、評価の際にどの影響と依存度を対象にするかを選択する方法について解説す る。

影響と依存度は、評価対象やバリューチェーンの境界にも関連していることがある。これらは完全な自然 資本評価を構成する3つのコンポーネントで考えることができる。

ビジネスへの影響 (自社が自然資本へ及ぼす影響の結果として)

社会への影響 (自社が自然資本へ及ぼす影響の結果として)

ビジネスの依存度 (自社が自然資本から受け取る便益)

これらはどれもすべてのビジネス用途に何らかの形で関連しているため、3つのコンポーネントすべてを自 然資本評価に含めることが推奨される。以下に、個々の分析の例と各コンポーネントを単独で考えること の限界について解説する。

注:目的により、一つの価値視点や影響もしくは依存度だけを扱うケースがありえる。その場合、3つのコン ポーネントすべてを評価しない場合の限界を認識しておくことが重要である。

a. ビジネスへの影響

自然資本への影響の結果として起こる「ビジネスへの影響」とは、現在もしくは将来の財務的な損益に作 用する影響という意味である。ビジネスへの影響は直接的な企業活動に起因することもあれば、バリュー チェーン内のどこか別の部分で起こった自然資本インパクトが結果的に波及してくることもある。以下に ビジネスへの影響として考えられる例を挙げる。

• 現在の財務コストまたは便益(例:環境税、罰金、補償金、廃水または排出物の処理コスト、サプライヤ ーの規制による材料費の高騰、自社製品が自然資本に及ぼす影響に関するネガティブな報道による売 上の減少)

• 将来考えられる財務コストや便益(例:将来新たな規制や課税が行われ、コストが増えたり新たな負債 が生まれたりする可能性)

制約:

• 自然資本への依存度を評価しない。

• ここで得られた推定価値は、自然資本に与える影響に伴い社会に及ぶ外部的なコストや便益を反映し ない。多くの場合、自然資本への影響によりビジネスに直接もたらされる財務的な結果は、社会が負担 するコストや享受する便益より低い。

リソースとステークホルダーの参画についての考慮点:

• データと技能はすでに社内にある場合が多く、通常は他の2つのコンポーネントよりも少ない外部リソー ス、少ない専門技能で済む。

• 評価は財務コストと便益に関するものが主体で、ほとんど社内用なので、ステークホルダーの参画はさ ほど重要でない。

用語集 自然資本への影響:

事業活動が自然資本に及ぼすネガティブ またはポジティブな影響

自然資本への依存度:

事業活動が自然資本を頼りにしているこ と、自然資本を使用すること コンポーネント:

本書が認識する完全な自然資本評価の3 要素: 「ビジネスへの影響」、「社会への 影響」、「ビジネスの依存度」

・ス・スステステ用語ョン

b. 社会への影響

「社会への影響」は、企業活動から直接的に、またはサプライヤーや消費者といったバリューチェーン内の 社外の部分から間接的に及ぼされる。自社に直接的な責任はなくとも、これらの影響の規模は把握してお いた方がよい。社会への影響を対象とする分析には、下記のような例がある。

• ビジネスが自然資本に与える影響の結果、より幅広い人間の福祉と社会資本にもたらされる変化

• 企業が自然資本を使うこと(自然資本への依存)に伴う、社会的コストや便益

• 直接的および間接的(例:サプライチェーン)な影響や依存度に伴うコストもしくは便益 制約:

• 自然資本への依存度を評価しない。

• 社会的コストと便益は、貨幣単位で表現された場合であっても、ビジネスの財務コストと便益に直接つ ながることは滅多にない。こうした社会的コストがそのまま企業に課されたり、便益が利益としてそのま ま享受されたりすることは稀であるためである。例えば、環境法令により課される財務コスト(例:緩和 措置への出費)は通常、影響の社会的コストよりも低い。同様に、自然資本への影響により評判に傷が つくことの財務コストが、そうした影響自体による社会的コストより大きい場合がある。

リソースとステークホルダーの参画についての考慮点:

• 一般に、より多くのリソースを必要とする。

• 環境経済学者と厚生経済学者の専門知識がおそらく重要になる。

• 地元の土地や資源(もしくはそれらへのアクセス)を著しく変えるような地域課題を考える際には、ステ ークホルダーの参画が重要になるだろう。一方、多くの地域をカバーし影響が分散している場合には、ス テークホルダーの参画はそれほど重要でない(例:サプライチェーン全体の評価)。

c. ビジネスの依存度

「ビジネスの依存度」は、企業活動が自然資本に直接的に依存するか、サプライヤーや消費者などを含む バリューチェーン内のどこかで間接的に依存するかに関わらず適用される。依存度に直接影響を与えるこ とはできなくても、これら依存度の規模は理解しておく方がよい。ビジネスの依存度を対象とする分析に は、下記のような例がある。

• 自然資本を使うことの便益(価値)

• 現在の財務コスト(例:水や農業インプット、鉱物に対して支払う額)

• 将来考えられる財務コスト(例:自然資本からのインプットの価格が上昇するか変動が大きくなると見込 んでいる場合)。

• 直接的および間接的な依存に伴うコスト(例:サプライチェーン内での依存)

制約:

• 自然資本への依存度が著しく大きい場合(例:淡水を膨大に使う会社など)、社会にも多大な影響を及 ぼすことになるが、これは社会への影響を見ずに把握することはできない。これらが社会に及ぼす影響 が深刻な場合、ビジネスにも相応の影響が生じると考えられるが(例:評判への損害や社会的操業許可 の喪失)、これらはビジネスの依存度だけ考えていたのでは見逃してしまう。

リソースとステークホルダーの参加についての考慮点:

• ビジネスが依存する自然資本を変化させる外部要因を評価するには、環境/天然資源のモデリングの専 門家を必要する可能性がある。

• ステークホルダー参画の重要性は評価の目的によって異なるが、他のステークホルダーも同じ自然資本 に依存している可能性があることから、ステークホルダーの参画が重要である場合が多い。

ステップ01で、評価の結果をどう使う予定か、つまりビジネス用途について明確にした。表3.4を用いて各コ ンポーネントがビジネス用途にどう関係するかを検討することで、評価に適したコンポーネントを選びやす くなる。

表3.4コンポーネントがビジネス用途にどう関連するか

ビジネス用途のタイプ 以下を行う必要がある場合、このビジネス用途が関連

リスクと機会を評価 自然資本インパクトや依存度の内容と規模、それらに伴うビジネス・リスクと機会を評価する。

価値視点は目的によって異なるが、3つのコンポーネントすべてを考慮に入れることでオプショ ンを検討できる。

将来のリスクという視点から見た場合、ビジネスが依存する他のインプットやサービスとの関 連で自然資本への依存度の価値を確立するには、ビジネスの依存度を考慮することが特に有 益かもしれない。特にこれによって、現在、依存度の一部または全部に価格がついていない場 合、潜在的なリスクを明らかにするなどの示唆を得られるだろう。

同様に、この分析に社会への影響を含めることで、同じ資源に依存している他のステークホル ダーとの摩擦を招く場面を把握することができるかもしれない。

上記の用途は下記より幅広いので、この表はここで区切る。上記は全体を概観するもので、以下にリストする用途においてさらに詳細な 検討がなされる。

オプションの比較 各種選択肢の中から、それぞれの相対的な自然資本インパクトや依存度を考慮しながら比較 対照して選択する。価値視点は目的によって異なるが、3つのコンポーネントすべてでオプショ ンを考慮できる。

オプションを検討する際、ビジネスへの影響を考えることが、自然資本インパクトと会社のボト ムラインの関連性を確立したり、自然資本を財務分析に組み込んだり、また例えばステークホ ルダーにとっての自然資本のコストや便益を伝えたりするうえで役立つ。

オプションの比較範囲によっては、ビジネスの依存度と社会への影響が該当する場合もある。

ステークホルダーへの影響を評価 事業活動による自然資本の変化にどのステークホルダーがどの程度の影響を受けるかを 把握する。

この用途は、社会的価値と事業価値の両方の視点から考える必要がある。したがって、社会へ の影響を考慮することが重要であり、それによって事業が直面するより幅広くより長期的なリ スクと機会、ならびにこれらが各ステークホルダーにどういう意味を持つのかを把握できる。

総価値やネット・インパクトを推定 事業活動に関係する自然資本の総価値を求めるか、事業活動が自然資本にネットでポジティ ブ、ネガティブどちらの影響をもたらすかを判定するためネット・インパクトを評価する。

どれか一つのコンポーネントだけでは総価値もネット・インパクトも推定できないため、この用 途では三つのコンポーネントすべてを考慮することが特に重要である。

社内外に伝える 自然資本への影響や依存度を社内外のステークホルダーに伝える。ここでは、プロジェクトの 文脈によっては、3つのコンポーネントすべてが有益である。

注:特定のコンポーネントだけを扱うなど限定的なスコープに焦点を当てて情報を伝達する場 合は、個別の限界とともにその理由の説明を要する。