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ステップ 各ステップが答える

問い アクション

05 影響要因や依存度を 計測する

影響要因や依存度をどう計測するか? 5.2.1

活動を影響要因や依存度に対してマッピングする 5.2.2

どの影響要因や依存度を計測するかを定義する 5.2.3

影響要因や依存度を計測する方法を決める 5.2.4 データを収集する

06 自然資本の状態の変 化を計測する

ビジネスの影響や依存度に関連した自然資本の状態とトレンドはど う変化しているか?

6.2.1

ビジネス活動と影響要因に関連する自然資本の変化を特定 する

6.2.2

外部要因に関連する自然資本の変化を特定する 6.2.3

自然資本の状態に影響を及ぼすトレンドを評価する 6.2.4

変化の計測方法を選択する

6.2.5

計測を実施もしくは委託する

07 影響や依存度を価値 評価する

自然資本への影響や依存度の価値は? 7.2.1

影響や依存度の結果を定義する

7.2.2

付随するコストや便益の相対的重要性を検討する 7.2.3

適切な価値評価方法を選択する

7.2.4

計測を実施もしくは委託する 補注

このステージに取り掛かる前に、評価結果の解釈と使い方について解説している適用ステージのステップ08を理解しておくこと。目的によっ てはステップ05~07にも関係してくる。

このステージは単純な環境データ収集から複雑な生態学的モデルや高度な計量経済学的分析にいたるまで、多種多様な方法について案 内する。このステージはこれまで解説してきたさまざまな手法の主な特長を理解するために十分な情報を提供するが、各ステップを完了する には、ライフサイクル分析(LCA)の専門家、生物多様性の専門家、経済学的または生態学的モデルの専門家、環境経済学者といったスキ ルを持つ人々のサポートが必要かもしれない。社内にこうしたスキルがない場合は、社外の専門家を探す必要があるかもしれない。

プロトコルは個々の計測または価値評価方法をどのようにして適用するか、詳しく指示はしない。その代わり、これらの方法について学術 的、実践的、あるいは政策関連の文献を数多く紹介している

計測と価値評価のステージ

どのように?

自然資本プロトコル 計測と価値評価のステージ

このステージの3つのステップは、ボックス4.1で紹介した論理的な流れに従っている。以下の2つの 例で再度説明する。

例1:

企業は製造工程における水利用のコストと便益を評価するために、次のことを行う。

• 特定のビジネス・プロセスのために取水された水の体積を計測する(ステップ05)

• 取水による自然資本の変化を理解することで、取水が社会やビジネスに及ぼす影響を定量化する

(ステップ06)。

• 自然資本の変化に伴い、ビジネスや社会にもたらされる結果を価値評価する(ステップ07)。

ステップ05で実施した計測だけでは取水の重大さを説明できない。ステップ06で定量化すること で、取水によって水系に変化が生じたか、また水系に他の利用者の現在もしくは将来的なニーズを満 たすのに十分な量が残っているかがわかる。これをステップ07で価値評価することで、これらの変化 がビジネスや社会にどのような意味があるのかを明確にできる。

例2:

温室効果ガス(GHG)排出のコストと便益を評価するには、次のことを行う。

• GHGプロトコルを使ってGHGの排出量を二酸化炭素換算(CO2e)で計測する。これだけでは排出 量の実際の「影響」はわからないことに注意。

• 「影響」を理解するには、大気中にGHGを排出した結果引き起こされる自然資本の変化を理解す る必要がある(ステップ06)。また、そのためには大気化学と気象学を理解し、気候変動が降雨パ ターン、海の酸性度、台風の頻度と強さ、海水位等に及ぼす結果を予測できることが必要である。

• 次に必要なのが、自然資本におけるこうした変化が人々にもたらす結果を価値評価することである

(ステップ07)。GHG排出による気候変動のケースでは、現在と将来において自然と人間の共同 体に及ぼされる影響を推計し、これらを現在の経済用語で表現するということである。

大変な作業に見えるかもしれないが、このケースではあらかじめ実施されていた気候変動の科学や 経済学についての膨大な調査が存在したために比較的容易になっている。この結果、企業は科学や 政策の文献から「炭素の社会的コスト」の現時点での適切な推計を把握できる。この推計はステッ プ06とステップ07で説明した作業をすでに取り込むものであり、したがってステップ05で計測した排 出量に直接適用できる。

とはいえ、自然資本評価における水、生物多様性、その他多くの分野では、評価の場所や文脈で適 切に利用できる事前調査は少ない。したがって、自然資本の変化を見積もるとともに、これらの変化 が社会、ビジネス、もしくはその両方にどう影響するかを評価するには、文脈に応じた綿密な調査が まだ必要である。

以下の表MV.1は、ビジネス用途の選択に応じて、このステージのステップにどう取り組むかをまとめ たものである 。

・ス・スステステ用語ョン

表MV.1

ビジネス用途と計測・価値評価ステップの関係

ビジネス用途 特定の計測・価値評価ステップとアクションとの関係 リスクと機会を評価する すべてのステップとアクションに関連する可能性あり

ここではステップ06が特に重要。理由は、重大な生態学的閾値に近い場合、つまり、不可逆的な変化 の可能性がある場合、リスクが高いからである。

オプションの評価を実施す

ステップ07において:

複数のオプションについて、初期の概観的なスクリーニングと優先付けには定性的価値評価で十分 な場合もある。

各オプションに伴うさまざまな影響(または依存度)を、共通のものさしで詳細に比較し、また集合 的な影響を評価するには、金銭的価値評価が役立つ。

各ステークホルダーへの影

響を評価する 効果的な分布解析を可能にするには、ステップ07で影響を受ける人々をステークホルダー・グループご とに区分けする必要がある。

総合的な価値や正味の影響

を推定する ステップ07で金銭的価値評価を行うことで、同じものさしを使ってさまざまな影響を集約することがで きる。これにより、ビジネス価値もしくは社会的価値の観点から、評価対象の影響が正味でプラスかど うかを判断できる。

一つの影響分野におけるネット・インパクトが焦点なのであれば、文脈を十分考慮に入れる限り、定量 的アプローチが好ましい

社内外とコミュニケーション

を図る ステップ05で解説したような自然資本に関する定性的、定量的な情報に関するコミュニケーションは、

従来行われてきたことであり、サステナビリティ報告においては比較的一般的である。

自然資本の(ビジネスや社会に対する)価値評価の結果(ステップ07)を伝えるのは、比較的最近の 傾向だが、ますます一般化しつつある。

このステージのアクションは、ステップ03で紹介した3つのコンポーネント(ビジネスへの影響、社会への 影響、ビジネスの依存度)の全てに適用できるものの、相対的な重要性と、特定の方法を適用できるかど うかという点で異なる。

表MV.2に、これら3つのコンポーネントそれぞれに応じてステップがどう変わるかを簡単に説明する。

表MV.2

各コンポーネントにおける計測・価値評価ステップの概要

コンポーネントに応じて異なるアクション 影響要因や依存度を計測す

る (ステップ05) ビジネスへの影響や社会への影響を考える場合、影響要因(例:大気への排出、水域や土壌への放 出、土地や資源の利用)を計測したり見積もったりする。

ビジネスの依存度を考える場合、できる限り定量化した単位で(例:水の総利用量や、製品1単位あ たりの水の量)、自然資本への依存度(例:食物、繊維、燃料、洪水対策、地域の気候調整)を計測 する。

自然資本の状態の変化を計

測する(ステップ06) ビジネスへの依存度を考える場合、このステップはさほど重要でない場合がある。しかし、自社の活 動に関連する自然資本の物理的変化が非常に大きく、跳ね返って自社にも影響する場合(例:操業 の社会的許可を失う)は重要なステップとなる。

社会への影響を考える場合、各影響要因に関連する自然資本の変化を測定する(例:汚染物質の濃 度の変化、土壌の肥沃さ、森林の範囲と質、繁殖期の鳥のつがいの数など)。このステップは、影響 要因がどのようにして自然資本の物理的変化をもたらすかを理解するのに重要である。その後、この 情報に基づき、社外の人々がどのように影響を受けそうかを見積もる。

ビジネスの依存度を考える場合、ビジネスが最も依存する自然資本資産の物理的状態を評価するこ とになる。これには、自然資本のトレンド(例:改善、劣化、安定)とこれらトレンドの要因、既知の生 態学的閾値にどれだけ近づいているか等が含まれる。依存度に関連するリスクのレベルを評価する には、これら一つひとつが重要になる。

影響や依存度を価値評価す

る (ステップ07) ビジネスへの影響を考える場合、関連する影響要因がビジネスに対し、現在および将来にわたりどの ような金銭的結果をもたらすのかを価値評価することになる。価値評価は以下を見積もることで行 う。

環境税、許可、罰金など、現在または将来の規制コスト

処理や削減のコスト

規制要件を満たす、または資源の制約に適応するための遅延および混乱のコスト(評価の範囲によ る)。

潜在的な将来コストを予測する場合、バリュー・アット・リスク(VaR)を計算するため、こうしたコスト が発生する確率とその規模を評価する必要がある。

社会への影響を考える場合、予想される自然資本の変化が、社会に対して現在および将来潜在的に どのような結果をもたらすかを価値評価する。プロトコルで社会への影響を価値評価するということ は、ビジネスの影響や依存の結果引き起こされる自然資本の変化が、人々の福利をどう変化させるか を測定するということである。社会的価値は社会全体、もしくはさまざまな形で影響を受ける特定の 集団に対して見積もる

ビジネスの依存度を考える場合、それまでのステップで計測した依存度に関連して、ビジネスに対す る現在および潜在的な将来の金銭的結果を価値評価する。依存度の金銭的価値に関わる他の要因 としては、代替インプットのコストや資源効率を改善するためのコストがある(例:新たなプロセス技 術)。