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自然資本への影響や依存度の価値は?

7.3 アウトプット

このステップのアウトプットは次の通り。

• コストと便益の(定性的、定量的、金銭的)価値評価の完了

• 主なすべての前提、データソース、使用した方法、および結果の値の文書化

架空の例

NSCI

NSCIはまず、影響と依存度を金銭的観点から価値評価するための最適な方法を特定した(表7.2)。

表7.2

NSCIにおけるステップ07のアウトプット:方法の選択

問題 選択したコンポーネント(

ビジネスまたは社会)への 影響もしくは依存度の結果

選択した価値評価手法

サプライチェーンの(社

会への)影響:水利用 汚水の使用に伴う人々への

健康コスト NSCIのチームは水媒介性の疾病(コレラなど下痢を伴う疾病)の患者数 における変化を浄水の可用性に関連付けているWHO(世界保健機関)発 行の調査資料を見つけた。

確率的生命価値の推計(例:OECD発行の推計)に基づき、WHOの調査 資料からDALYの推計を金銭的観点で価値評価。

需要は一定、ただし可用性は減少という前提に基づき将来のコストを推計

サプライチェーンの依存

度:授粉 生産高の減少または移動型

授粉サービス確立のコスト 移動型授粉サービスは米国で広く使われるようになりつつあるが、ケニア ではまだ利用できなかった。チームは授粉業者が減少した場合に備え、移 動型授粉サービスをを提供できるようマイクロ・エンタープライズを設立す るコストを推計した。

製造の(社会への)影

響:大気への排出 呼吸器系の健康被害 水利用に対する健康被害と同じやり方で価値評価された健康への影響の 潜在的発生(肺がん、気管支炎、心臓血管の疾病)を推計するため、WHO 発行の汚染用量反応関数が使われた。

製造の(ビジネスへの)

影響:大気への排出 人々への影響の結果として 規制の厳格化がビジネスに 及ぼすコスト(内部化)

チームは予想される規制レベルに合わせて汚染を減らすコストを推計する ため、装置に排出量削減技術を組み込む影響軽減費用を検討した。

製造の依存度:洪水リス

洪水リスクの増大がビジネ

スに及ぼすコスト 今後10年間に及ぶビジネス・コストを推計するため、洪水リスクの高まりと 闘いリスクを許容レベルに抑えるため、緑地とハード面のインフラを整備 するためのエンジニアリング・コストを使用した。

NSCIのチームは表7.3に示すとおり、現在から将来にかけて自社と社会に及ぼすコストに焦点を当てながら、ケニアのサプライチェーン と製造工程に対する結果を提示した。結果を経営陣に分かりやすく示すため、すべての価値はケニア現地の購買力を2016年の米ドル 通貨で表している。

将来の影響と依存度は、10年間における正味現在価値(NPV)で表される。ビジネスへの私的コストは金銭的割引率(10%、社内の資 本コスト)で割り引かれ、影響は社会的割引率(3%)で割り引かれる。

・ス・スステステ用語ョン

表 7.3

NSCIに対するステップ07のアウトプット:定量的結果

問題 ビジネスへのコスト (ドル/年) 社会へのコスト(ドル/年)

現在のコスト 10年間での確率加重

NPV 現在のコスト 10年間での確率加重

NPV サプライチェーンの影響:水

利用 範囲外 範囲外 11 DALYs

13万ドル

132 DALYs (割引な し)

$150万ドル サプライチェーンの依存度:

授粉 N/A 80万ドル 範囲外 範囲外

製造の影響:大気への排出 N/A 140万ドル 10万ドル 90万ドル

製造の依存度:洪水リスク 0ドル 210万ドル 範囲外 範囲外

430万ドル 240万ドル

適用ステージは、社内で結果を解釈、適用し、その結 果をもとに行動を起こす手助けをすることで、自然資 本評価プロセスを終了する。また、この評価と将来の 評価から価値を最適化する方法について検討するこ とも奨励する。

適用ステージは互いに関連する2つのステップから成り立っている。

ステップ 各ステップが答える問い アクション

08 結果を解釈しテス トする

評価のプロセスと結果をどう解

釈、確認、検証するか? 8.2.1 主な前提をテストする

8.2.2 誰が影響を受けるかを明らかにする 8.2.3 結果を照合する

8.2.4 評価プロセスと結果を確認、検証する 8.2.5 評価の強みと弱みをレビューする

09 アクションを起こ

結果をどう適用して自然資本を既

存のプロセスに統合するか? 9.2.1 結果をビジネスにあてはめ、それに基づいて行動する 9.2.2 社内外に伝える

9.2.3 自然資本評価をビジネスの一部にする 補注

ステップ02に述べたとおり、自然資本評価はなんらかの目的のために実施された。この目的に結果を適 用するには、プロセスと結果の信頼性に自信をもっていなくてはならない。

評価の強みと弱みを説明し、結果を解釈するには、重大な不確実性、主な前提、重要な注意点を明らか にすることが役立つ。これらを明らかにすることで、評価が目的を達成し、意思決定とアクションのベー スとして使えるかどうかを判断、伝達できるようにもなる。

正式な検証や外部監査は本書の必須要素ではないが、評価結果を伝える相手によっては(例:社外向け の報告)必要かもしれない。