第 5 章 二次式を活用した設備更新コスト平準化問題とその解法
5.3 設備更新コスト平準化問題の提案解法に対する数値実験
5.3.2 設備更新コスト平準化問題に対する最適解の例示
設備更新コスト平準化問題に対する数値計算事例として、小規模例題に対し、上記手法に よる最適解の例示を以下に行う。
なお、ここで扱う例示は、設備更新コスト平準化問題に対し、その定式化の拡張版を想定 した最適化問題に対して解いた結果を提示する。すなわち、以下の制約条件を付与された ものとして解法を展開した。
(PT) Min
X
TS X
s.t
∑
Nk1c
kx
kt C
(t=1,・・・,T)x 1
t k 1 t kt
∑
(k=1,・・・,N)x 0 ) x t a (
T 1 t
N 1 i
N i j , 1
j ij it jt
0 1) x (
xkt kt- = または xkt {0,1}
今回の例示で扱う構成としては、対象とする設備数を11設備とし、その系統構成を図 5.1 で示す。
なお、図 5.1で示す数値は、最大供給容量、または、最大供給需要を示す。ここで、電力 系統はN-1基準を満たしているものとする。ただし、2設備が同時に故障した場合、電力 供給支障が発生するが、その発生量を表 5-5に示す。
#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11
#1 0 6.9 0 0 0 0 0 0 0 0 0
#2 6.9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
#3 0 0 0 4.5 0 0 0 0 0 0 0
#4 0 0 4.5 0 0 0 0 0 0 0 0
#5 0 0 0 0 0 2.4 0 0 0 0 0
#6 0 0 0 0 2.4 0 0 0 0 0 0
#7 0 0 0 0 0 0 0 1.5 1.5 0 0
#8 0 0 0 0 0 0 1.5 0 1.5 0 0
#9 0 0 0 0 0 0 1.5 1.5 0 0 0
#10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2.4
#11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2.4 0
表 5-5 設備故障による電力供給支障量(MWh)
また、コスト平準化を行う期間内に全設備の更新を行うが、故障率に関し、経年の増加速 度を大きくすることにより、ここではその期間を5年と設定して検証を行うものとする。
更新コスト平準化のため、各設備は0年度に導入されたこととし、各設備の年度別故障推 移を表 5-6に示す。今回の想定は、一時期(0年度)に設備導入が行われ、設備更新コス トの発生年度である寿命時期が集中するように設定するために、このような前提での設備 導入を行っている。
#1 200MW
#2 200MW
#3 100MW
#4 100MW
#5 50MW
#6 50MW
#7 30MW
#8 30MW
#9 30MW
#10 30MW
#11 30MW
15MW
15MW
15MW
12MW
12MW
図 5.1 電力系統の構成
#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 1年目 0.006 0.01 0.002 0.006 0.003 0.003 0.002 0.01 0.006 0.01 0.006 2年目 0.01 0.023 0.006 0.006 0.011 0.011 0.006 0.023 0.006 0.01 0.01 3年目 0.023 0.06 0.002 0.02 0.04 0.003 0.015 0.01 0.01 0.023 0.023 4年目 0.006 0.16 0.006 0.07 0.12 0.011 0.05 0.023 0.023 0.06 0.06 5年目 0.01 0.01 0.02 0.2 0.4 0.04 0.15 0.06 0.06 0.16 0.16
表 5-6 各設備のライフサイクルにわたる故障率推移想
各設備の故障率の経年推移を図5-2で示す。また、図5-2で、各設備の更新時期を設備故 障率が0.1を超えた場合に、当該年度に、設備更新対象とし、また、各設備の故障率は0.2 を超えないよう設備更新が行われることを仮定する。
図 5.2 各設備の年度別故障率推移
このとき、図5-2で示した設備毎の故障率推移から、4年目、5年目での更新が必要とな ることが分かる。これにより想定される更新コストの算定を行うが、各設備の設備更新に かかるコストは、年度毎に変化がなく表 5-7のように設定されているものとする。
番号 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11
設備 変圧器 変圧器 系統 系統 系統 系統 変圧器 変圧器 変圧器 変圧器 変圧器 更新コスト 600 600 150 150 120 120 200 200 200 200 200
表 5-7 設備の更新コスト
このとき、経年における設備更新コストの推移は、図 5.3のようになる。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
1年 2年 3年 4年 5年
#1
#2
#3
#4
#5
#6
#7
#8
#9
#10
#11
各設備の年度別故障率推移
更新基準
設
備
故
障
率
図 5.3 更新コストの推移
図 5.3から、例示された電力系統例の場合、4年目、5年目での設備更新時期が集中する ため、その更新作業の平準化を行う必要があることが分かる。なお、このとき、電力供給 支障量の年度推移のグラフは図 5.4のようになり、電力供給支障量も突出していることが 分かる。
図 5.4 電力供給支障の推移(集中更新の場合)
このような電力系統に対し、本章で適用した設備更新コスト平準化手法を適用した場合の 結果について以下に記述する。
なお、コスト平準化にあたり、各年度の更新コスト制約を、660 の場合と 690 の場合の 2 通りに対し、策定を行った。その結果を、表 5-8 に示す。ただし、設備毎の数値は、最適 化された更新年度を示す。
0 0 0
1390 1350
0 500 1000 1500
1年 2年 3年 4年 5年
平準化目標コスト
1.5 7.2 53.8
435.4
121.9 0
200 400 600
1年 2年 3年 4年 5年
制約 コスト #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #1 0 #1
1 660 1 4 3 2 3 5 5 3 2 2 5
690 3 5 2 4 2 4 1 4 2 2 4 表 5-8 コスト平準化に向けた制約コスト別設備更新時期
上記の結果どおりに、設備更新を行った場合の年度別の設備更新コストの推移を、図 5.5 に示す。図 5.5からわかる通り、毎年の設備更新コスト上限値を設定し、それに解があれ ば、その範囲で設備更新コストの平準化を図ることができる。今回の場合、毎年の更新コ スト制約が660のときに、毎年の更新コストは600以下で実現しているので、平準化コス トを600として設定できることが分かる。
図 5.5 設備更新コスト平準化施策実施後の設備更新コストの年度推移
さらに、信頼性指標である電力供給支障リスク(EENS)について、設備更新コスト平準 化施策実施後の年度別の推移を、図 5.6に示す。0年度に設備導入がされたことを前提とし ているため、設備更新コスト平準化施策の実施有無に関わらず、3年までは電力供給支障量 も尐ない。そのため、4年目以降のみに対し考察を行う。
図 5.6のグラフから、毎年の更新コスト上限の制約が強ければ(更新コスト制約=660の とき)、電力系統の信頼性は悪化量が多くなる傾向にあるのに対し、毎年の更新コスト上限 制約が弱ければ(更新コスト制約=690 のとき)、電力系統の信頼性は、より低く維持され ていることが分かる。これらの結果から、保全計画策定段階で、企業保全方針として、毎 年の更新コスト制約をどの程度にすべきかについて、評価を行うことができ、本ツールの 有効利用が図れることが分かる。
0 200 400 600 800
1年 2年 3年 4年 5年 コスト=660
コスト=690
図 5.6 設備更新コスト平準化施策実施後の電力供給支障(EENS)の年度推移
なお、以下に、設備更新コスト平準化施策実施後の各設備の故障率推移を図 5.7、および、
図 5.8に示す。
以上の数値実験からの結果から、設備更新コスト平準化問題に対し、目的の平準化を実 現し、また、電力供給信頼性を最大とする更新優先度を決定することができることがわか った。
図 5.7 各設備の年度別故障率推移(制約コスト=660)
0 100 200 300 400
1年 2年 3年 4年 5年
コスト=660 コスト=690
0.0 0.1 0.2 0.3
1年 2年 3年 4年 5年
#1
#2
#3
#4
#5
#6
#7
#8
#9
#10
#11
各設備の年度別故障率推移(制約コスト =660)
故 障 率
図 5.8 各設備の年度別故障率推移(制約コスト=690)