第 5 章 二次式を活用した設備更新コスト平準化問題とその解法
5.4 設備保全コスト平準化への応用
5.4.1 設備保全コスト平準化問題の定式化
設備保全コスト平準化問題への拡張にあたって考慮すべき事項として、以下が挙げられる。
なお、定式化にあたっては、これまでの前提条件を踏襲するものとする。
対象とする設備・保全活動の選定
各設備のライフサイクルにわたる設備保全活動計画の策定
設備保全活動により停止を伴う点検・修理活動の扱い
設備保全計画を策定する場合、特に、コストに関しては2つの側面で考慮が必要となる。
1つは保全計画を立案して活動を行う予防保全のためのコストであり、他は事後保全や突 発事象への対応を図るための保全活動へのコストである。
予防保全計画に基づいた保全活動の対象とする設備の選定にあたっては、これまでみたよ うに、重要設備を対象として扱うことを前提とする。しかしながら、更新コストが大きく ない設備を含めて定式化を行っても、それらの更新コストの集約値が、事後保全や突発事 象への対応するコストから見ても大きくない場合は、その更新コストを、事後保全・突発 事象のための不確定なコスト範囲で吸収されると仮定し、更新コストの大きい設備のみを 対象として定式化するものと考える。なお、この考え方は、設備更新だけでなく、保全活 動全般に適用できると考える。そのため、設備保全コスト平準化問題を考慮するにあたり、
保全活動のうち、その保全コストが大きい保全活動のみを対象として議論を行うことを前 提とする。ただし、設備停止を伴う保全活動は、その活動によって電力系統への信頼性に 影響を与える可能性があるため、選定対象とする。具体的保全活動としては、設備更新の ほかに、定期的に行うオーバーホールを含む定期点検などが挙げられる。
選定された設備に対し、設備単体保全モデルで示したように、設備単体としてのライフサ イクルにわたる保全活動計画が立案される。ただし、保全活動は、上記で選定された対象 のみに限定される、と仮定する。このとき、ライフサイクルにわたる予防保全計画が各設 備に対し策定される。この計画は、老朽化に伴う設備更新時期を確定させると、当該設備 のライフサクルにわたる設備保全コスト最小化を実現する保全活動計画が算定される、と 考えられる。
設備iの保全活動の集合を
A
i とおく。設備iの設備更新をt
i年度に実施すると仮定した 場合、年度t(1tti)における設備保全活動をA
tiitと置き、設備保全活動A
tiitを実施する ためのコストをc c
ti( A
tiit)
ti i
it
とおく。また、設備保全活動A
tiitを実施したことによる年度 t における故障率ptiitをとおく。なお、年度 t における故障率とは、保全活動をその期間の中間箇所で実施すると想定した場合の年度の平均故障率とする。このとき、更新前と更新後 の設備に対する保全計画の方針は異なる。更新前は、設備の現状態から策定される保全活 動計画であり、更新後は、新規に設備導入を行った場合に想定される対象設備に対する保 全活動である。そのため、設備i の設備更新を
t t
i年度で実施した場合、年度 t(t
i t
)における保全コスト、および、故障率は、更新前の推移とは異なり、新規導入後の当該設 備に対しての標準的な保全活動を実施した場合の保全コストの推移で設定される。
このように、ライフサイクルにわたる保全計画が策定されていることを前提として、設備 i が年度k tiに設備更新が行われた場合xik1とおき、設備更新が行われなかった年度 k tiのとき、xik0とする場合、設備iが年度tにおける保全コスト、および、故障率は 以下のように設定される。
・設備iの年度tにおける保全コスト:
Tk1 ik k itit
c x
c
・設備iの年度tにおける故障率 :
p
it
Tk1p
kitx
ikこれまでは、
c
kit 0 t k
であったが、対象を設備更新だけではなく保全活動全般にし たことにより、各年度で保全活動の発生が考慮されている。次に、設備保全活動により停止を伴う点検・修理活動の扱いについての記述を行う。これ まで、設備更新コスト平準化問題のときは、設備更新時のみ当該設備は停止することとな り、平準化期間中1回のみ設定されていた。しかしながら、保全活動全般にわたる場合は、
定期点検や修理等の保全活動で設備稼働を停止する事象が多く発生する。しかしながら、
電力系統では、N-1基準という制約があり、2設備が同時に停止状態となると、電力供給支 障の発生、すなわち、計画停電の可能性がある。設備更新コスト平準化問題の定式化にあ たり、制約条件の拡張として、計画停電に対する制約を付与したが、設備iの年度tにおけ る保全活動による設備稼働の停止有無を以下のように、
y
itで表すこととする。
しない)
で設備稼働停止が発生 年度における保全活動
する)
で設備稼働停止が発生 年度における保全活動
t ( 0
t ( 1 y
itなお、
x
itとy
itの関係は、以下として、設定することができる。各設備iの設備更新時期
t t
iが決定すると、すなわち、xit 1となる年度tが決定すると、ベクトルyi
yi1,yi2,,yiT
の値(パターン)が決定する。すなわち、y
itはx
itの従属変数 である。以上の考慮点を含めて、設備更新コスト平準化と同様に、設備保全コスト平準化問題に対 する定式化を行う。
目的関数は、設備更新コスト平準化と同様に、電力供給支障リスクの最小化とする。なお、
設備保全活動に伴う稼働停止期間は 0 と仮定すれば、毎年の電力供給支障リスクは、故障 に伴う供給支障のみとなるので、設備更新コスト平準化の時と同様となる。そのため、目 的関数は、毎年の電力供給支障リスクの和で設定できる。
X S X 2X 1 S 2 X
X 1 S 2 X
1 T T
1
t t
T T 1
t t
T
ただし、各記号は、5.1で設定したものを活用している。
また、制約条件は、以下のように設定することができる。
1)毎年の保全活動コストの制約条件
上記の議論から、年度tにおける対象設備全体の設備保全コストが、年度の設備保全コ スト上限C設以下であることを定式化すると、以下のような式となる。
x C c
N i
T 1
k ik
k
it
(t1,,T)2)設備更新は期間内1回とし、設備毎の更新期限を持つ制約条件
設備i の更新期限を
t
iとし、また、設備 i の更新可能開始時期をt
0とすると、以下の式 が成り立つ。x 1
ti tt0 it
∑
(i1,,N)3) 設備更新フラグに対する制約条件 }
1 , 0
xit{ (alli,t)
以上が、コスト平準化問題の定式化の基本形であった。拡張形では、以下のような追加 制約条件が企業保全方針で設定されている場合、オプションとして付与される。
4) 各年度の信頼性の上限設定
各年度の電力供給支障リスクがある限度Rを超えないことを制約条件に付与する場合に、
設定される。以下で設定される。
X R X S 2 1
t
T (t1,,T)
5) 設備保全活動に伴う信頼性に対する制約条件の付与
設備更新コスト平準化の場合の制約条件の拡張で、設備稼働停止に伴う電力供給支障へ の影響回避のための制約条件付与を行ったが、同様の制約条件を付与した場合の定式化 について記述する。設備保全活動全般に拡張された場合、各設備の保全活動が設備の稼 働停止を伴う作業であるかが問題となる。設備毎、年度毎の設備稼働有無を
y
it(x
itの値 の決定による確定するx
itに対する従属変数)で表すと、制約条件は以下のように設定で きる。y 0 ) y t a (
T 1 t
N 1 i
N i j , 1
j ij it jt
y 1
T x
1
t it it
i1,,N
ここで、2 つ目の等式は、iN1xit1
1tT
により、各設備に対し、ある年度 t に対し、x
it 1
となるが、このとき、y
it 1
であることを示している。すなわち、設備更 新が発生する場合は、設備稼働停止となる条件を示している。以上により、設備更新コスト平準化問題と同様の制約条件を付与して設備保全活動に対す るコスト平準化問題への定式化の拡張が得られる。すなわち、以下の(MQP)に示すとおり である。
(MQP) Minimum X S X 2
1 T
(1)
s.t i N
c x C
T 1
k ik
k
it
(t1,,T) (2)x 1
ti tt0 it
∑
(i1,,N) (3) }1 , 0
xit{ (alli,t) (4)
X R S 2 X 1
t
T (t1,,T) (5)
y 0 ) y t a (
T 1 t
N 1 i
N i j , 1
j ij it jt
(6)y 1
T x
1
t it it