第 3 章 電力設備に対する保全活動
3.2 設備保全モデルの提案
3.2.1 設備単体保全モデル
当セクションでは、設備単体保全モデルについて、その記述を行う。
3.2.1.1 設備単体保全モデルへの要件抽出
ここでは、これまでの議論を踏まえて、設備単体保全モデルへ反映すべき要件内容を列挙 する。モデルに取り込むべき事項としては、以下が挙げられる。ここでは、それぞれに対 し、その概要を記述する。
- 設備の構造
- 务化事象と非务化事象 - 設備に対する保全活動
- 設備に対する保全活動に必要となるパラメタ
3.2.1.2 設備の構造
FMEAでは、設備を信頼性ブロック構造図を活用して設備アイテム(部品)に分解し、その 設備アイテム毎に故障モードの抽出を行い、故障モードに対する発生原因の分類を行い、
故障モード事象の発生よる影響度の算定を行った。このとき、設備はこれら複数の設備ア イテムから構成される構造体としてみることができる。本書では、FMEA に合わせて、抽 出された故障原因や务化原因に対し、その故障原因または务化原因のメカニズムの究明を 行い、务化状態の把握方式(点検箇所・点検箇所のタイミングの抽出など)やその修復方 式といった、設備アイテムに対する保全活動の選定を行うことを提案している。そして、
この設備アイテムに対するミクロの状態や定量的情報を総合化して、それらによる構造体 である設備に対する状態や定量指標値など、設備を評価する指標を策定することによって、
設備保全の高度化が行えることを提案している。すなわち、設備と設備アイテムの間の関 係を明確化して、ミクロの情報の総合化により、設備に対する保全活動やそのタイミング を選定することを提案している。
このような設備構造に関連した2つの留意点を以下に記述する。
1つは、設備構造の捉え方である。その設備構造の最小管理単位を定め、それに対する保 全で活用する評価指標を付与することについてである。そして、2つ目は、それぞれ分解さ れた設備アイテムに対し、故障率、リスクなどの信頼性指標が付与された場合、複数の設 備アイテム毎の指標を総合化して、設備単体としての信頼性指標をどのように導くか、に ついての記述を行う。
(1)設備構造の捉え方に関する留意点
保全計画を策定するにあたり、保全を行う設備に対し、「保全の最小管理単位」を決定す る必要がある。この最小単位は、設備保全の考え方や管理方式によって変わる。
設備はいくつかの設備アイテムから構成されており、各設備アイテムに対して、故障率な どの信頼性指標、または、指標定量値が付与されることを前提とする。すなわち、設備ア イテムはこのような指標の付加が可能なものでなければならない。言いかえれば、設備ア イテムは、独立した機能を持ち、点検や保全活動における1単位として定義できることが 条件となり、このような設備アイテムの最小単位を「保全の最小管理単位」として捉えこ ととする。
そのためには、設備構造は、信頼性ブロックと呼ばれる機能ごとの構成要素に分解し、階 層的に表される必要がある。このような階層構造化により、要素間の機能的な相互依存関
係や、直列・並列といった機能間の関係を明確にする。また、このような構造の「保全最 小管理単位」の設備アイテムに対し、故障モード、故障原因を定義することにより、「保全 の最小管理単位」で発生する故障に対し、务化を含む故障事象がどのようなメカニズムで 発生するか?を明らかにする。また、その故障への進展プロセスやその状況把握の方法が わかれば、その故障メカニズムの進展状況を信頼性指標として付与することで、個々の設 備アイテムに対する信頼性指標に関する属性が付与することができるようになる。
各状態での故障率が統計的に把握されている場合は、信頼性指標値として故障率が活用で きる。しかしながら、故障メカニズム、その進展状況把握、ましてや、統計的故障情報は 現段階では、完全なデータとして収集することは難しい。なお、複数の設備、および、設 備アイテムにわたって、信頼性指標となりうる1つの統一基準で、各設備、設備アイテム に定量値が付与できれば、それを信頼性指標として設定してよい。したがって、統計情報 がない場合でも、このような信頼性指標が定義できれば、それを、設備、または、設備ア イテムに付与することで、「故障率」と同等の指標になることを付記しておく。
本論では、このようなメカニズムや進展状況が将来解明されていくことを想定し、また、
設備保全の理論的展開を図ることを目的とするため、故障メカニズム、その進展状況把握 が明らかであることを前提に進める。その上で、その信頼性指標として、設備アイテムに 対する故障メカニズムに対する、务化や故障の進展状況に対応して、故障確率分布が定義 され、進展毎の故障率を設定することを仮定とする。
(2)設備アイテム毎指標の総合化
各設備アイテムに対する信頼性指標として、その進展状況毎に故障率が付与されたことを 前提に、それらを総合して、設備の信頼性を指標の算定を行う。算定にあたっては、
① 故障メカニズム間の関係設備構造を明確化
② 設備アイテム間の階層構造の明確化 が必要である。
①、②において、それぞれの設備アイテム間の構造が判明しており、その間の関係が独立 であることを前提とすれば、直列・並列といった要素間の関係をもとに、故障メカニズム 毎の信頼性指標値を総合することで、設備に対する指標値が設定される。
なお、この総合化にあたっては、3.2.2.5.1で定義した「ユニバーサル母関数」の考え方を 活用することで、構造体を構成する各要素に指標が付与されている場合に、その構造体に 対する指標値の算定手段を与えることができる。
3.2.1.3 务化事象と非务化事象
故障モードに対する発生故障は、その原因が务化によるものと、前兆現象もなく、偶発的 な要因によって突発的に発生する故障(ランダム故障)との2つに分類することができる。
後者の故障は、時間基準保全(TBM)や状態基準保全(CBM)による方式をとって保全
を行っても、その予防は難しく、一般的に事後保全で対応することとなる。その場合、故 障発生時のリスクを低減する施策を取る必要がある。設備アイテム毎の信頼性指標には、
このような非务化による故障も考慮する必要があるが、故障原因のメカニズムが判明して いない故障を含め、これらをランダム故障と捉え、一定の故障率で故障発生となるものと して、捉えることにする。
前者に関しては、前セクションで仮定を置いたように、その詳細解析のため、原因となる 务化事象に対し、务化や故障の進展状況に対応して、信頼性指標との関係を捉え、それを 故障確率分布として設定し、定量的に扱うこととする。
しかしながら、その原因が务化とわかっていながら、その务化メカニズムが判明していな い事象が多数ある。务化メカニズムが判明していない事象には、2つの場合がある。
a) 前兆事象発生から故障までの期間が概算想定できる
b) 前兆事象の発見手段が確立されていない、もしくは、前兆事象発生から故障まで の期間が定まらない
定量化に向けては、a)は、故障発生までの期間が分散の大きくない確率分布でその進展状 況を想定することが可能である。しかしながら、b)は、その原因メカニズムが判明していな いため、原因不明で突発的に発生するランダム故障と同様の扱いとして仮定できる。
1故障モードに対する务化事象に対して、务化メカニズムが解明されている場合、時間の 経過とともに、設備の離散的状態の連鎖として、その务化の進展を表現することができる。
ここで、务化メカニズムの進展に対応して、故障率などの連続した信頼性指標を活用して、
その务化状態の度合いを定義・表現できると仮定する。ただし、その連続した务化状態を 示す信頼性指標値を観察することは難しく、一般的には、いくつかの離散的状態群を定義 しておき、この離散的状態の遷移として务化の進展を捉えることが多い。したがって、こ の仮定は、観察可能な離散的状態と务化メカニズムが持つ論理的な連続的な务化状態の進 展を表す指標値との対応づけができることを前提とすることを意味する。
さらに、1つの離散的状態に対しても、連続的务化状態指標値の進展との対応にあたって、
論理的に連続的务化状態指標値の進展・変化として注目すべき離散的状態群(偶発故障期 間から摩耗故障期間への状態遷移、設備更新時期への遷移等)と、上記の意味での観察可 能な離散的状態群と2つの離散的状態群の階層を考える。このとき、2つの離散的状態間 は、階層関係となって表現できる。本論文では、前者を「隠れ離散状態群」、後者を「観察 可能離散状態群」と呼ぶこととする。
これらの関係を図 3.11 に図示する。ここでは、連続务化状態指標値として、故障率を利 用している。なお、観察可能状態離散群は、点検などの観察(I)によって、初めてその 状態を知る。また、保全活動(M)によって、その状態を維持、または、改善することが できる。ただし、保全活動や点検にあたっては、設備自身を停止させて実施する場合があ り、実施カテゴリを分けて記述している。