第4章 . 衝撃波を伴う超音速境界層の線形安定性解析
4.2 計算結果
Fig. 4.2.1 ( top ) instantaneous velocity field with streamline and ( bottom ) streamwise velocity at various streamwise points.
Fig. 4.2.2 Growth rate of two-dimensional wave at various streamwise stations.
Fig. 4.2.3 Growth rate of three-dimensional wave ( β = 0.3 ) at various streamwise stations.
長率となっていることがわかる.さらに,二次元波の結果をよく見ると成長率はα < 0.1, 0.1 < α
< 0.3,0.3 < αという三つの領域に分けられるように見え,複数のモードが存在するように見える.
非圧縮性の剥離を伴う境界層に対する安定性解析 ( Cherubini et al. ( 2010 ) ) では,いくつかのモ ードについて議論されており,Kelvin-Helmholtzモードのほかにもいくつかの定在波モードが存在
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 0.005 0.01 0.015
α G row th r at e ω
ix/ δ *
0= 60 x/ δ *
0= 80 x/ δ *
0= 90 x/ δ *
0= 100 x/ δ *
0= 110 x/ δ *
0= 130 Without shock
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 0.01 0.02 0.03
α G row th rat e ω
ix/ δ *
0= 60
x/ δ *
0= 80
x/ δ *
0= 90
x/ δ *
0= 100
x/ δ *
0= 110
x/ δ *
0= 130
Without shock
Fig. 4.2.4 The most unstable value of instability wave growth rate ( red circle ) with wall pressure distribution ( solid line ).
することを強調している.しかし,剥離を伴う流れでは,壁からかなり離れた領域まで分布が大 きく変化するために解の収束性があまりよくない.そのため,ここでは複数のモードの存在を示 唆するだけに議論をとどめ,最も成長率が大きい不安定波について焦点をあてる.
図 4.2.4 には,最も不安定となる不安定波と衝撃波/境界層の干渉に伴う圧力変化の関係につい
て示す.圧力の上昇とともに成長率が大きくなり始め,圧力が一定になる点では成長率がより大 きくなることを確認できる.一方,圧力が再付着領域に向けて急上昇し始めるx = 130δ*0からは,
成長率は急速に減尐することを確認できる.
図4.2.5に,剥離領域における三次元成長モードに対する不安定領域の変化について示す.剥離
が大きくなるにつれて不安定となる波数領域が広がり,成長率が増加していることを確認できる.
また,図4.2.2,4.2.3からもわかるが,三次元モードの方が二次元モードに比べ成長率が大きく,
三次元モードの最も不安定な領域においては三次元モードが二次元モードに比べ2倍程度大きい ことを確認できる.これらの結果は衝撃波と境界層が干渉する流れ場においても,超音速境界層 では斜行波による遷移が優勢であることを示唆している.
図4.2.6,4.2.7にそれぞれ二次元モード,三次元モードに対する主流速度,主流垂直方向速度,
密度,圧力の固有関数について示す.二次元モードに対する主流方向流速の固有関数を除いて,
二次元モード,三次元モードに対するどの固有関数も剥離せん断層近傍 ( 変曲点近傍 ) に極大値 を取っていることを確認できる.一方,二次元モードに対する主流方向流速の固有関数は,剥離 領域において剥離せん断層近傍だけでなく壁面近傍にも極大値を取る点が存在することを確認す ることができる.このような分布は,剥離を伴う非圧縮性境界層においてDNS,安定性解析で示 される結果によく類似している ( Rist & Maucher ( 2002 ) ).
50 100 150 200
0 0.01 0.02 0.03
1 1.2 1.4 1.6
x/ δ *
0ω
ip
wall/p
0Fig. 4.2.5 Contours of ωi obtained from LST: ( contour interval is 0.001 ) ( a ) x = 60δ*0; ( b ) x = 80δ*0; ( c ) x = 110δ*0 and ( d ) x = 130δ*0.
二次元モードの成長率について述べた部分で,剥離を伴う流れでは壁からかなり離れた領域ま で分布が大きく変化するために解の収束性があまりよくないことに触れた.そこで,安定性の解 の有効性について議論するために圧縮性粘性線形解析結果とDNS ( 撹乱3% ) の結果の比較を図
4.2.8に示す.ここでは主流方向速度と圧力の固有関数を主流方向速度は最大値で,圧力は壁面の
値で規格化したものを示す.DNS結果には,衝撃波との干渉の影響が強く出ており安定性解析の 固有関数と比較をする際に差異となって表れていることがわかる.しかし,それでも上述した極 大値の数や極大,極小値の位置などはよく一致しており,二次元モードが剥離領域において空間 的にどのように変化するかを考える上では,大いに参考となるデータであることを確認できた.
Fig. 4.2.6 Eigen functions for two-dimensional at various streamwise stations: black line: x = 60δ*0,; red line: x = 80δ*0; blue line: x = 110δ*0 and green line: x = 130δ*0.
Fig. 4.2.7 Eigen functions for three-dimensional at various streamwise stations: black line: x = 60δ*0,; red line: x = 80δ*0; blue line: x = 110δ*0 and green line: x = 130δ*0.
Fig. 4.2.8 Comparison between DNS and eigen function: black line and red line show DNS and eigen function respectively; solid line and broken line streamwise show velocity component and pressure component respectively.
ここまでは,二次元,三次元モードの剥離領域における成長率や固有関数について議論をした.
次に,二次元モードの剥離領域おける成長の様子および衝撃波との干渉の様子について調べるた め二次元DNSを行う.本計算では,主流マッハ数はM = 2.0,流入部での排除厚さを基にしたレ イノルズ数Reδ*0 = 1000とし,計算領域,格子点数はそれぞれ,Lx×Ly = 300δ*0×130δ*0,Nx×Ny =
751×241とした.一方,流入撹乱として二次元撹乱波ω = 0.09 ( α = 0.2 ) とω = 0.3 ( α = 0.49 ) と
いう二つのケースについて計算を行った.また,ここでは二次元モードの衝撃波に与える影響を 明確に観測するために撹乱はω = 0.09のケースでは3%,ω = 0.3のケースでは5%という比較的大 きな振幅の撹乱を用い計算を行った.
図4.2.9に主流方向流速変動を,図4.2.10には主流方向流速のR.M.S.値を示す.図4.2.2で尐し触れ
たが,ここでは,ω = 0.09のケースとω = 0.3のケースでは異なった反応をしていることを確認で
きる.ω = 0.09のケースでは剥離せん断層およびその内部で撹乱に強く反応しているのに対し,ω
= 0.3のケースでは,剥離せん断層よりも壁から離れた位置において撹乱に反応していることを確
認できる.
Fig. 4.2.9 Instantaneous streamwise velocity fluctuation obtained from two-dimensional DNS: ( top ) ω = 0.09 case and ( bottom ) ω = 0.3 case.
Fig. 4.2.10 Comparison of streamwise velocity R.M.S. value between ω = 0.09 case and ω = 0.3 case at various streamwise stations: black line and red line show ω = 0.09 case and ω = 0.3 case respectively.
y/δ*
0y/δ*
0y/δ*
0y/δ*
0Fig. 4.2.11 Instantaneous density gradient |∇ρ| obtained from two-dimensional DNS, ( top ) ω = 0.09 case and ( bottom ) ω = 0.3 case.
図4.2.11 には,密度勾配の瞬間場を示す.どちらのケースについても,波は下流に進むととも
に衝撃波に沿って壁から離れた方向にも伝播しており,格子縞模様を描いていることを確認でき る.また,衝撃波,二つの圧縮波,expansion fan はすべて伝播してきた波の影響によりその周波 数に応じて振動していることが確認できる.
4.3 4 章のまとめ
衝撃波を伴う超音速境界層の線形安定性解析をChebyshev 級数を用いたスペクトル法によって 計算し,時間成長不安定波について調査を行うことにより以下のこと確認された.
二次元,三次元波どちらの不安定波についても衝撃波を伴わないケースに比べ剥離領域では 大きな成長率を示していることが確認できた.特に,三次元波ではその傾向が顕著に出てお り,剥離領域では斜行波による遷移が優勢であることを推測できる.さらに,剥離が大きく なるにつれて主流方向波数,スパン方向波数ともに不安定となる領域が広がり,成長率が大
x/δ*0 y/δ*0y/δ*0
きくなることを確認でき,剥離領域においてはより多くの不安定波が受容されやすい状態に あることが確認できた.
二次元DNSと線形安定性解析の結果を比較し,二次元DNSには衝撃波との干渉の影響が強 く出ており安定性解析の固有関数と比較をする際に差違となって表れていることを確認した.
しかし,極大値の数や極大,極小値の位置といった定性的な点についてはよく一致しており,
二次元モードが剥離領域において空間的にどのように変化するかを考える上では,大いに参 考となるデータであることが確認できた.