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不安定波の非線形発達に伴う乱流遷移構造

ドキュメント内 衝撃波の干渉を伴う (ページ 92-99)

第5章 . 不安定波による衝撃波/超音速境界層における乱流遷移

5.2 不安定波の非線形発達に伴う乱流遷移構造

剥離を伴う流れにおいて,干渉点の位置および剥離領域の距離といった全体の流れ場の把握は 重要である.そのため,この章でもまず流れ場の特徴を強調するために平均場について示す.

図5.2.1に平均密度分布を示す.全体としては図3.3.1と同様のショックシステム・剥離泡構造

を確認することができる.x = 50δ*0近傍から境界層が剥離を始め,それに伴い発生した圧縮波が 下流で反射衝撃波を形成していることを確認できる.入射衝撃波と境界層が干渉する点において

expansion fanを確認することができ,さらに下流では境界層で発生した圧縮波が遠方で反射衝撃

波を形成していることを確認できる.そして,x = 130δ*0程度で境界層が再付着していることがわ かる.

図5.2.2には,壁面摩擦係数と壁面圧力分布を示す.剥離領域において,壁面摩擦係数は負の値

を取ることを確認できる.また,壁面圧力は剥離領域前半において急速に値を上昇させた後,い ったん一定の値となり,再付着領域近傍において再び値が急上昇していることを確認できる.剥 離再付着することによって形成される剥離領域の圧力分布が平坦 ( 一定 ) になる特徴と一致す

る.図3.3.2と比べると剥離泡が大きくなっていることを確認できる.図3.2.5で確認したように

剥離を伴う流れ場は撹乱に対して非常に敏感であり,撹乱の大きさが小さくなると剥離領域が広 範囲となり,再付着領域近傍における壁面摩擦係数の値の大きさは変化する.

図5.2.3 ( a ) には,平均主流方向流速分布を示す. x = 80δ*0になると境界層の剥離が大きくな

り,下流のx = 100δ*0では,y < 2δ*0において逆流を生じていることを確認できる.また,y = 0.5δ*0

近傍に変曲点の存在を確認することができる.干渉点 ( x = 110δ*0 ) を過ぎるとこの変曲点は壁か ら離れ,速度分布は一度,混合層のような分布となり,x = 200δ*0になると乱流境界層に近い分布

0 100 200 300

0 0.002 0.004

1 1.2 1.4 1.6

C f p wa ll /p 0

x/ δ * 0

Skin-friction

Wall pressure

( a ) Mean streamwise velocity ( b ) Van Driest transformed mean streamwise velocity

Fig. 5.2.3 Distribution of mean streamwise velocity at various streamwise stations.

となることを確認できる.

図5.2.3 ( b ) に壁スケールによる平均主流方向流速分布を示す.uvd はVan-Driest変換した主流

方向流速である.x = 140δ*0では対数則から大きく外れていることを確認できる.その後,下流に 進むにつれ対数則に近づいていき,さらに下流のx = 260δ*0になると,非常に狭いが対数則に沿 う領域が現れることを確認できる.一方で外層を示す領域は現れていない.これは,不安定波の 導入により生成される境界層遷移構造の特色であると考えられる.

次に,剥離領域における不安定波の非線形発達に伴う構造を調査するために,速度分布が混合 層の速度分布に類似した分布となる再付着領域近傍を中心として,衝撃波との干渉による影響を 受けた不安定波の時間発展を渦構造により可視化した.図5.2.4にx-z面,図5.2.5にx-y面の結果 をそれぞれ示す.干渉点よりも上流の不安定波構造は,非常に弱い.しかし,剥離領域において その構造は急速に強くなる.干渉点を通過するとx = 140δ*0付近において渦構造が互いに交差し 始め,また,交差することによって主流方向に引き延ばされ,強くなりながら下流へと流れてい くことを観測できる ( 図5.2.4, 5.2.5 ( b ), ( c ) ).また,これらの構造は超音速混合層において

Sandham & Reynolds ( 1991 ) が観測したλ状の渦構造や超音速平面ジェットにおいて渡邊 ( 2003 )

が観測した構造によく類似している.しかし,それより下流では,超音速混合層や平面ジェット とは違い,非圧縮性境界層 ( Brandt et al. ( 2004 ) ) で観測された構造と超音速混合層や平面ジェッ トで観測された構造とがまじりあったような構造となることを確認できる.すなわち,λ 状の渦 構造の直下にV型の構造が現れる.そして,このλ状の渦構造の直下にV型の構造が交差してい る領域から細かな横渦構造を生成するとともに崩壊し始め ( 図5.2.4, 5.2.5 ( f ) ) ,z/δ*0 = 0におい て次第にアーチ型の横渦構造が現れる ( 図5.2.4, 5.2.5 ( g ) ).このアーチ型の横渦ができると流れ は急速に複雑になり三次元化することを観察できる.

0 0.5 1

0 2 4 6 8

u / U

y/ δ *

0

x = 80δ*0 x = 100δ*0 x = 110δ*0 x = 140δ*0 x = 160δ*0 x = 200δ*0

10

0

10

1

10

2

10

3

0

10 20

y

+

u

vd

x = 160δ*0 x = 200δ*0 x = 240δ*0 x = 260δ*0

u

vd

= y

+

u

vd

= 1/0.41ln(y

+

)+5.2

Fig. 5.2.4 Time sequence isosurface plot of second invariant of velocity gradient tensor Q ( = 0.0002 ) at x-z plane: ( a ) t = 275δ*0 / U;( b ) t = 300δ*0 / U; ( c ) t = 325δ*0 / U; ( d ) t = 375δ*0 / U; ( e ) t = 400δ*0 / U; ( f ) t = 425δ*0 / U and (g) t = 450δ*0 / U.

次に図5.2.6には,干渉点前後におけるスパン方向渦度ωzの時間変化を示し,図5.2.7には主流 方向,主流垂直方向流速変動のR.M.S.値を時間とスパン方向について平均した値を示す.剥離領 域前半で形成された,せん断層がx/δ*0 = 180付近で急速にひずみはじめbreak downへと至ってい ることを確認できる.また,図5.2.7に示した速度変動を観察するとx/δ*0 = 180付近で,主流垂直 方向流速変動が最大となる点であることを確認できる.

ここで,せん断層が崩壊する過程をより詳しく調べるために,主流方向速度変動場を時間とス パン方向のフーリエ空間へと変換し,フーリエ成分の空間発達を調べる.ここでは,( ω/ω0, β/β0 ) というように表記をし,ω は時間の角周波数,β はスパン方向の波数,ω0,β0はその基本周波数 である.また,βは正,負両方の値を含むものとする.例えば,二次元T-S波は ( 1,0 ),斜行波対 は ( 1,1 ) と表す.図5.2.8に結果を示す.

x/δ*0 z/δ*0z/δ*0z/δ*0z/δ*0z/δ*0z/δ*0z/δ*0

(a)

(b)

(c)

(d)

(e)

(f)

(g)

Fig. 5.2.5 Time sequence isosurface plot of second invariant of velocity gradient tensor Q ( = 0.0002 ) at x-y plane). (a) t = 275δ*0 / U,(b) t = 300δ*0 / U, (c) t = 325δ*0 / U, (d) t = 375δ*0 / U, (e) t = 400δ*0 / U, (f) t = 425δ*0 / U and (g) t = 450δ*0 / U.

剥離領域の上流では,流入した斜行波 ( 1,1 ) と二次元T-S波 ( 1,0 ) はともに成長しているこ とを確認できるが,剥離領域においては二次元T-S波 ( 1,0 ) はほぼ線形的に大きくなっているの に対し,流入した斜行波 ( 1,1 ) は上流の値に比べ極めて大きな成長を示していることが分かる.

これらの結果は第4章の線形安定性解析で予想された結果と一致している.斜行波 ( 1,1 ) はx =

160δ*0付近で最大値を示している.図5.2.5で示すように,そこでは斜め構造が形成され,その下

流で細かな渦構造が次々と形成される過程が観察された.さらに,剥離領域の前半において ( 0,2 ) が成長しており,その結果,( 1,1 ) と ( 0,2 ) の非線形干渉により ( 1,3 ) が急速に大きくなって いることを確認できる.その後,剥離領域の後半においては,さらに高次の波数が急速に成長し ていることを確認できる.また,高次の波数の成長が飽和しているx = 180δ*0付近は,図5.2.6に おいてせん断層が干渉点で急速にひずみはじめbreak downへと至った点であり,さらに,主流垂 直方向速度の変動成分が極大値を取った点でもある ( 図5.2.7 ).これらの議論は,非圧縮性境界 層,超音速境界層の斜行波による遷移においても同様である ( Berlin et al. ( 1999 ),Mayer et al.

( 2010 ) ).一方,剥離領域において,斜行波の成長率は極めて大きく,その結果として超音速混 合層や平面ジェットに類似した構造が遷移領域において観測できたのではないかと推測できる.

y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0

(b)

(c)

(d)

(e)

(f)

(g) (a)

x/δ*0

Fig. 5.2.6 Time sequence of spanwise vorticity ωz at z /δ*0 = 0: ( a ) t = 275δ*0 / U;( b ) t = 300δ*0 / U;( c ) t

= 325δ*0 / U; ( d ) t = 375δ*0 / U; ( e ) t = 400/ U; ( f ) t = 425δ*0 / U and ( g ) t = 450δ*0 / U.

Fig. 5.2.7 Turbulence intensity distributions, ( a ) u'rms / U, ( b ) v'rms / U. x/δ*0

y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0y/δ*0

(a)

(b)

(c)

(d)

(e)

(f)

(g)

y/δ*0y/δ*0

x/δ*0 (a)

(b)

Fig. 5.2.8 Development of the Fourier amplitudes in the downstream direction of selected modes.

次に,図5.2.4 におけるそれぞれの特徴的な構造を速度ベクトルにより表し,図5.2.9 に示す.

図5.2.9 ( a ) では,z/δ*0 = ±2.5 程度に渦度が存在することを確認できる.この位置では,λ 状の渦 構造の直下に V 型の構造が交差しており,この構造が乱流遷移の重要な役割を担っていること を確認できる.また,逆流領域もスパン方向全体に広がっているわけではなく,この構造の近傍 に局所的に存在していることは,剥離領域の遷移構造を特徴付ける点で興味深い.一方,これら の構造は,下流に行くにつれて強くなり,x = 160δ*0ではスパン方向に細かな渦を生成しており,

ベクトル場においても渦として回転している様子が明確に観測できる.x = 200δ*0では z/δ*0 = 0 において低速流れの壁垂直方向への上昇が確認でき,x = 220δ*0 において上昇する低速流の周り にアーチ型の横渦構造を形成していることを確認できる.

ここで,図5.2.9 ( a ) で見られた逆流領域と渦構造についてさらに詳しく見るために,図5.2.10

( b ) に x = 140δ*0 における主流方向流速の平均場とその壁面垂直方向 ( uy;破線 ) およびス

パン方向微分 ( uz;破線 ) を示し,図5.2.10 ( c ) には,主流方向流速の平均場とR.M.S.値を示 す.図5.2.10 ( b ) を見ると,壁面垂直方向微分,スパン方向微分ともに逆流領域の周辺において 最も大きな値を示しており,また,微分が最大となる点において強い流れ場が発生していること を確認できる.すなわち,y/δ*0 = 2,z/δ*0 = ±5 において壁面垂直方向,スパン方向それぞれの変 曲点が存在し,この点における流れの不安定性によって強い渦構造が生成されていることを確認 できた.さらに図5.2.10 ( c ) では,壁垂直方向微分,スパン方向微分が重なる点において変動が 最大となることも確認できる.( なお,ここでは,図5.2.10 ( a ) において,z/δ*0 = ±2.5 にしか渦 が存在しないが,図5.2.4 ( g ) のような状態の瞬間場では,z/δ*0 = ±7.5 に渦が存在する.)

Fig. 5.2.9 Instantaneous velocity field ( velocity vectors ) and streamewise velocity ( color contour ), enclosed region in fig. 5.5: ( a ) x = 140δ*0; ( b ) x = 160δ*0; ( c ) x = 200δ*0 and ( d ) x = 220δ*0.

z/δ*0 z/δ*0 y/δ*0y/δ*0

(a)

(b)

z/δ*0

y/δ*0

z/δ*0

y/δ*0

(c)

(d)

Fig. 5.2.10 ( a ) Instantaneous velocity field ( velocity vectors ) and streamewise velocity ( color contour ), ( b ) Average velocity field with uy( broken line, 0.3 < uy < 0.9, contour increment 0.1 ) and

z u

( solid line, -0.18 < uz< -0.04, 0.04 < uz< 0.018, contour increment 0.02 ),( c ) Average velocity field with R.M.S ( 0 < u'rms / U < 0.024, contour increment 0.004 ).

ドキュメント内 衝撃波の干渉を伴う (ページ 92-99)