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計算結果と考察

ドキュメント内 衝撃波の干渉を伴う (ページ 101-108)

第5章 . 不安定波による衝撃波/超音速境界層における乱流遷移

5.3 不安定波の非線形発達に伴う剥離泡内のトポロジー構造

5.3.2 計算結果と考察

図5.3.2 の上図には,逆流領域と流線の関係について,下図には逆流領域と渦構造の関係につい て示す.逆流領域と流線の関係についてみると,剥離領域に沿って 2 つのフォーカス構造を確認 することができる.また,下図と併せてみると,この 2 つのフォーカス構造により V 型の渦構 造が生成されていることを確認できる.このフォーカス構造が生成される x = 130δ*0 程度の点に

z/δ*0z/δ*0

x/δ*0

おいては,主流方向流速のR.M.S.値 ( u'rms / U ) が急速に大きくなり,すぐ下流で極大となって いることを確認できる ( 図5.2.7 ).さらに,図5.2.8 では,x = 130δ*0 付近で ( 0,2 ),( 1,3 ) が極 大となっており,さらに高次の波数についても急速に成長していることを確認できる.すなわち,

このフォーカス構造の出現に伴い,流れが急速に三次元化し,乱流遷移が促進されていることが わかる.

この剥離に伴うフォーカス構造は衝撃波/乱流境界層干渉を扱った実験においても観測されて いる ( Dussauge et al. ( 2005 ) ).また,剥離を伴う非圧縮性境界層においては,これらの構造は "

U-Shaped separation " と呼ばれ ( Perry & Chong ( 1986, 1987 ) ),古くから注目されてきた.近年,

Rodrỉguez et al. ( 2010 ) は,剥離を伴う非圧縮性境界層において,この U-Shaped separation を

Global instability analysis により導き,U-Shaped separation がグローバルモードに由来することを

明らかにした.図5.3.2 に示した構造は Perry & Chong ( 1986, 1987 ) によって明らかにされた構造 とよく類似しており,三次元不安定波とU-Shaped separation に深い関係があることを示唆してい る.一方,Robinet et al. ( 2006a, 2006b ) は,層流境界層と衝撃波の干渉において,DNS と Rodrỉguez

et al. ( 2010 ) と同様の Global instability analysis を行い,干渉領域における複雑な三次元構造を明

らかにしている.さらに,剥離を伴う非圧縮性境界層の不安定波による遷移構造を PIV により可 視化した実験結果 ( Lang et al. ( 2004 ) ) においても U-Shaped separation と類似した構造が観測さ れている.

図5.3.3 では,壁からの垂直距離と周期に対するトポロジー構造の関係を示す.ここで T は二 次元 T-S 波の一周期を表す.これらの二つの図からは,y/δ*0 = 1.0 におけるフォーカス構造と壁 面近傍 ( y/δ*0 = 0.25 ) の結節点との関係を確認できる.つまり,y/δ*0 = 1.0 においてフォーカス 構造が下流へと進むと,壁面近傍の結節点は上流へと移流していることを確認できる.また,こ こには掲載していないが 2/3 T ~ T では,その逆に,フォーカス構造が上流へと移流し,結節点 が下流へと移流していることを確認できる.さらに,フォーカス構造は z/δ*0 = 0 から z/δ*0 = Lz/2 に向かって ( 2/3 T ~ T ではその逆に ) 三次元的に下流へと移流するのに対して,結節点は二次元 的に下流へと移流することを確認できる.

次に x-y 断面で構造を観察する.図5.3.4では,z/δ*0 = 2.6 での周期に対するトポロジー構造の 関係を示す.この z/δ*0 = 2.6は,図5.2.9 ( a ) において渦が確認できる点である.また,ここでは 剥離泡内部を明確に観測するため,図は壁面垂直方向距離を 2 倍にして結果を表示している.図

5.3.4 ( b ) では,二つの center 構造の存在を確認することができる. 一方,図5.3.4 ( a ) では,

これらの二つの center 構造が下流へと進んでおり,下流側の center 構造は,x = 130δ*0 付近から フォーカス構造へと変化していることを確認できる.すなわち,今回の計算では,center 構造が 不安定波によって下流へと伝播し,その結果,フォーカス構造へと変化することにより流れが急 激に三次元化し不安定となっていることを確認できた.

一方,壁面における壁面垂直方向微分を示した図5.3.5 では,極小となる点が結節点の位置とよ く一致しており,二次元不安定波が剥離領域の大きさおよび逆流の強さに対し深い関係にあるこ とを示唆している.安定性解析の結果では,壁面近傍において三次元不安定波に対し二次元不安 定波の方が優勢な領域が存在することを確認でき,その傾向は干渉点近傍において特に顕著であ ることがわかる ( 4章 図4.2.6,4.2.7 参照 ).

Fig. 5.3.3 Comparison of instantaneous streamline between two time (a) 1/3 T, (b) 2/3 T: ( top ) at y/δ*0 = 1.0; ( bottom ) at y/δ*0 = 0.25; red broken line shows zero instantaneous longitudinal velocity.

z/δ*0z/δ*0

x/δ*0 (a)

z/δ*0z/δ*0

x/δ*0 (b)

Fig. 5.3.4 Comparison of instantaneous streamline between two time (a) 1/3 T, (b) 2/3 T: at z/δ*0 =2.6; red broken line shows zero instantaneous longitudinal velocity.

(a) z/δ*0 = 0 (b) z/δ*0 = Lz/2

Fig. 5.3.5 Comparison of instantaneous wall-normal differential streamwise velocity between two different times: black solid, red broken lines and blue dotted show 1/3 T, 2/3 T and averaged values.

図5.3.6 には,主流方向各点における壁面圧力のエネルギースペクトル密度を示す.x = 120δ*0

では,不安定波として流入した基本周波数 f = 0.017 が成長していることを確認できる.さらに x

= 140δ*0 になるとその harmonics が成長し始めていることを確認できる.これらの基本周波数な

らびに harmonics は,下流において成長し,x = 160δ*0 程度まで成長し続けることがわかる.こ れらは,図5.2.8 で示した主流方向速度変動の結果と同様の傾向を示しており,壁面圧力変動の変 化もフォーカス構造による渦構造の発生によって流れが三次元化したことに起因すると考えられ る.一方で,流れが干渉点を通過し,再付着する x = 160δ*0 では基本周波数に対し一桁程度大き な波数が成長し始めることも確認できる.x = 200δ*0 程度になるとこの一桁程度大きな波数が徐々

50 100 150

-0.2 0 0.2 0.4 0.6

x/ δ *

0

50 100 150

-0.2 0 0.2 0.4 0.6

x/ δ *

0

y

wall

u

y

wall

u

y/δ*0×2y/δ*0×2

x/δ*0

(a)

(b)

Fig. 5.3.6 Energy spectral density of the wall-pressure at various streamwise locations: ( a ) x = 120δ*0; ( b ) x = 140δ*0; ( c ) x = 160δ*0;( d ) x = 200δ*0 and ( e ) x = 260δ*0 .

に離散的から連続的へと変化し,x = 260δ*0程度では乱流境界層のような連続スペクトルを示すよ うになる.しかし,基本周波数は依然としてはっきりしており,剥離の影響を強く受けているこ とを確認できる.

図5.3.7 には,壁面圧力のエネルギースペクトル密度を第 3 章の比較的振幅が大きなランダム 撹乱による遷移のケースと比較したものを示す.撹乱の大きさが異なるために同じ位置で同じ現 象が起こるわけではないが,どちらのケースでも遷移の前半では,f < 0.1 において基本周波数と

(a) Instability wave case (b) Random disturbance case

Fig. 5.3.7 Comparison of energy spectral density of the wall-pressure between instability wave case and random disturbance case.

その harmonics が離散的に存在するのに対し,f > 0.1では連続スペクトルが大きくなり始めるこ とを確認できる.乱流に近い状態になると,f = 0.1程度において連続スペクトルが大きくなり乱 流境界層のような分布を示す.一方,基本周波数 ( f = 0.017 ) は依然としてはっきりしており,

剥離の影響を強く受けていることがわかる.すなわち,これら二つの結果の比較から,衝撃波の 干渉による剥離を伴う超音速境界層の乱流遷移には強い周波数選択性が存在する.これは,剥離 せん断層における不安定波の大きな成長率に起因していると考えられ,剥離を伴う非圧縮性境界 層流れのGlobal instability analysisおよび二次元DNSによる研究結果 ( Arizard et al. ( 2009 ) ) と同 様の結論を得た.一方,これらの強い周波数選択性には,剥離泡内部におけるトポロジー構造の 変化も強く関係しており,この変化は二次元DNSでは表すことはできない.また,その剥離によ る周波数の影響は強く,境界層厚さの10倍以上の距離を経ても残っていることを確認できた.

fE

p

/p

rms

f f

f f

x/δ*0= 200

x/δ*0= 260 x/δ*0= 200

x/δ*0= 120

fE

p

/p

rms

fE

p

/p

rms

fE

p

/p

rms

5 章のまとめ

線形解析から得られた不安定波により加振された三次元衝撃波/乱流遷移境界層 DNS を行うこ とにより以下のこと確認された.

 時間平均場において,剥離を伴う流れ場を実現でき,その結果,反射衝撃波,expansion fan といった衝撃波を伴う境界層特有の構造を確認することができた.一方,線形解析から得ら れた二次元,三次元の不安定波を用いたDNSによりその非線形過程を導くことができた.

 再付着領域における非線形過程では,非圧縮性境界層 ( Brandt et al. ( 2004 ) ) と超音速混合層 や平面ジェット ( Sandham & Reynolds ( 1991 ),渡邊 ( 2003 ) ) との構造がまじりあったよう な構造となることが確認でき,この構造が起因となって複雑な三次元構造を生み出すことを 示した.一方,主流速度変動に対するフーリエ成分の主流方向距離に伴う変化についても示 し,こちらは,これまでの斜行波対による非圧縮性,超音速境界層 ( Berin et al. ( 1999 ),Mayer

et al. ( 2011 ) ) の遷移結果と同様の傾向を示しており,三次元衝撃波/乱流遷移境界層において

二次元,三次元の不安定波の大きさが同じ時,斜行波対による乱流遷移が起こることを確認 した.

 干渉領域における三次元構造について示し,剥離領域に沿って 2つのフォーカス構造が発生 していることを確認した.また,この構造は,Perry & Chong ( 1986, 1987 ) によって明らかに

された U-Shaped separation構造とよく類似しており,三次元不安定波とU-Shaped separation

に深い関係性があることを示唆した.

 衝撃波の干渉を伴う超音速境界層の乱流遷移には,剥離せん断層における不安定波の強い成 長率に起因する強い周波数選択性が存在する.また,その周波数の影響は強く,境界層厚さ の10倍以上の距離を経ても残っていることが確認できた.

ドキュメント内 衝撃波の干渉を伴う (ページ 101-108)