第3章 . ランダム撹乱による衝撃波/超音速境界層における乱流遷移
3.2 計算の信頼性についての検証
01 dy
u u u
u
(3.1.21)
*
H (3.1.22)
Fig. 3.2.1 Comparison of skin friction coefficient with literatures.
Fig. 3.2.2 Comparison of simulation results with experimental data ( a ) skin-friction coefficient and ( b ) pressure distributions upstream/downstream of the impinging point. ( ximp: impinging point ).
Fig. 3.2.3 Mean Mach number contour.
ここからは,過去に行われた衝撃波と干渉する層流境界層の乱流遷移に関する研究 ( Teramoto
( 2005 ) ) との比較を示す.本節では,下流での圧力比は1.91 となるよう設定した.主流マッハ
数はM = 2.0,流入部での排除厚さを基にしたレイノルズ数Reδ*0 = 1000とし,計算領域,格子点
数はそれぞれ,Lx×Ly×Lz = 300δ*0×130δ*0×2π/βδ*0, Nx×Ny×Nz = 751×241×60である.計算領域下 流 ( x = 260δ*0 ) における空間解像度はx+×ymin
+×z+ = 14.8×0.4×6.56とした.一方,流入撹乱には,
圧縮性境界層方程式の解に対する線形安定解析から得られた不安定波の固有関数を与えた.不安 定波は,二次元T-S波 ( 波長:λ2D = 2π/α,α = 0.2 ) と二次元T-S波と主流方向波数が等しい一対 の斜行波 ( 主流方向波長:λ2D = 2π/α,スパン方向波長:λ3D = 2π/β,β = 0.3 ) を用いた.また,そ の振幅は,流入T-S波を主流速度に対して主流方向成分固有関数の振幅最大値が0.1%となるよう に与えた.
x/δ*0
y/δ*0
Present
Teramoto
Fig. 3.2.4 Reynolds stress contour. ( y×5 )
Fig. 3.2.5 ( a ) Skin-friction coefficient and ( b ) pressure distributions upstream/downstream of the impinging point: Comparison LES ( Teramoto ( 2005 ) ) and experimental measurement ( Hakkinen (1959) ). ( ξ = (x-xR)/(xR -xs); xR: mean reattachment point; xs: mean separation point ).
Fig. 3.2.6 Comparison of the mean streamwise velocitiy with Teramoto (red circle) and Hakkinen ( green rectangle ).
まず,流れ場の特徴を把握するために,図3.2.3に平均マッハ数について示す. 図は,アスペク ト比を一致させて表示している.本計算結果はTeramoto ( 2005 ) 結果によく一致していることが 確認できる.境界層の剥離に伴い圧縮波が発生し,下流で反射衝撃波を形成していることが確認 できる ( x = 60δ*0程度 ).入射衝撃波と境界層が干渉する点においてはexpansion fanを確認する ことができ,さらに下流では境界層で発生した圧縮波が遠方で反射衝撃波を形成していることを 確認できる.そして,境界層が再付着し,その後急激に境界層厚さが増加していることを確認で きる.また,剥離領域の大きさや剥離の壁垂直方向距離についてもよく一致していることを確認 できる.( 詳細には,図3.2.5,3.2.6参照 )
Fig. 3.2.7 Comparison of the Van Driest transformed mean streamwise velocity with Teramoto (left).
Fig. 3.2.8 Comparison of the R.M.S. velocity profiles with Teramoto (blue triangle), Prozzoli ( 2011, red circle ) and Schlatter ( 2011, green rectangle ).
図3.2.4にはレイノルズ応力分布を比較している.ここでは,Teramoto ( 2005 ) の結果に合わせ
て壁垂直方向距離を5倍にした結果を表示している.この結果についても定性的に一致している ことが確認できる.境界層が剥離するに従い,剥離せん断層内部で徐々にレイノルズ応力の値が 大きくなり,衝撃波と干渉した直後に急激に大きくなっていることが確認できる.また,再付着 点で極大値を取った後は,徐々にその値が減衰していく特徴もよく一致している.ただし,本研 究では領域が広がっていくに対しTeramoto ( 2005 ) のLES計算結果ではレイノルズ応力が下流で
減尐して領域の広がりが小さくなっている.また,さらに下流では,本計算では壁面近傍でレイ ノルズ応力が大きな値を示しているのに対して、LES計算結果は非常に小さな値になっている.
図3.2.5 ( a ),( b ) には,壁面摩擦係数と壁面圧力分布をTeramoto ( 2005 ) の計算,さらには,
Hakkinen ( 1959 ) らの実験と比較した結果を示す.数値計算の結果を比べると,剥離領域の大き
さおよびその値の大きさについてもよく一致していると思われる.しかし,Hakkinen ( 1959 ) の 再付着領域付近における値は,数値計算結果に比べ小さな値を取っており,また,剥離領域も若 干小さくなっていることがわかる.これは,Teramoto ( 2005 ) の結果からも確認できるが,剥離 領域の大きさや壁面摩擦係数の値については,撹乱の大きさに非常に敏感である.Hakkinen
( 1959 ) の実験では,剥離上流の速度分布 ( 図3.2.6,x = 20δ*0 ) において完全な層流分布とはな
っておらず比較的強い撹乱が流入していることを推測できる.そのため,数値計算の結果とは異 なった値を取っているのではないかと考えられる.
図3.2.6では,各主流方向位置における平均主流方向流速分布をTeramoto ( 2005, 0.6% ) の計算,
Hakkinen ( 1959 ) らの実験と比較した結果を示す.Teramoto ( 2005 ),Hakkinen ( 1959 ) らの研究
は有次元で行われているため,ここでは,壁面摩擦係数の値を参考にして主流方向の位置を決定 した.また,Ue,local それぞれの位置における代表流速を表す.剥離領域上流の点 ( x = 20δ*0 ) に ついては,実験は多尐,層流分布から外れているものの,比較的よく一致していることが確認で きる.しかし,剥離領域ではそれぞれのデータがそれぞれの剥離領域の大きさを示していること を確認できる.一方,壁面摩擦係数が極大値となるx = 200δ*0 においては,全ての結果がよく一 致していることを確認できる.図3.2.3においても述べたが,剥離を伴う流れでは撹乱の大きさや その種類について非常に敏感であることがわかる.
図3.2.7は壁スケールによる平均主流方向流速分布を示す.uvd は Van-Driest変換した主流方向
流速である.レイノルズ応力が極大となる点 ( x = 180δ*0 ) では,どちらの結果も対数則から大き く外れていることを確認できる.その後,下流に進むにつれ対数則に近づいていき,さらに下流 ( x
= 280δ*0 ) になると,非常に狭いが対数則を示す領域が現れてくることを確認できる.一方,どち
らの結果にも外層を示す領域は現れておらず,完全な乱流境界層分布とはなっていないことを確 認できる.
図3.2.8には流速のR.M.S.値の壁垂直方向分布について壁スケールにより表した結果を示す.こ
こでは,Teramoto ( 2005 ) の計算とSchlatter et al. ( 2011 ),Pirozzoli et al. ( 2011 ) による非圧縮,
圧縮性乱流境界層の結果とともに示す.本計算とTeramoto ( 2005 ) の結果は,三成分とも示した 領域全体でよく一致していることが確認できる.一方, Schlatter et al. ( 2011 ),Pirozzoli et al.
( 2011 ) による計算と比較をするとy+ < 20 の領域まではよく一致しているが,それより壁から離
れた位置ではあまり一致していないことを確認できる.この領域は,乱流バルジの状態に依存し ており計算法や撹乱の種類などに非常に敏感な領域である.そのため,衝撃波を含まない乱流境 界層の計算でも 40 % 程度のばらつきが報告されている ( 第6章参照 ).しかし,本計算結果は,
壁垂直方向流速成分がスパン方向流速成分よりも大きくなっており,これはレイノルズ数の大き な乱流境界層の計算では見られない.これは流入撹乱として不安定波を用いたときに見られる現 象で,この不安定波による遷移が十分発達した乱流境界層に至っていないことに起因している.
Fig. 3.3.1 Mean density and pressure fields: ( top ) density field 0.6 <
< 1.3 ( 20 contour levels );( bottom ) pressure field 0.17 < p p < 0.28 ( 20 contour levels ).