(A)
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・書
9100
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) 50空
(A)の海岸付近の地上風に巻き上げられた海塩の沈着量は、11 月〜3,月にかけて大きく、12,月〜1月と3,月にピークを示した。
これは、北西季節風の強まる11月〜3月にかけて多量の海塩エ アロゾルが巻き上げられていることを示している。このことから、
海岸付近で海塩を巻き上げる地上風は、12月〜1月がもっとも強 いと考えられる。
(B)の海塩の半減距離は、11月〜3,月にかけて大きく、3月に ピークを示した。これは、北西季節風の強まりとともに、陸上を 吹く風も強くなり、海塩物質が内陸部まで運ばれるようになった
ことを示している。一般に、海塩粒子は粒形が大きいため、地上 風が弱いとそのほとんどが発生地点である海岸線付近に降・下して しまい、内陸部へと運ばれていくことはない。3月には半減距離 が一番大きく、強い地上風によって、より内陸部まで運ばれたと 考えられる。
しかし、(A)から求められる地上風の強さは12月〜1月に一番 強く、この結果とは一致しない。これは、12月〜1月における降 水の回数が3月の降水の回数に比べて多く、多量の海塩エアロゾ ルが巻き上げられても、そのほとんどが内陸部に輸送される途中 で、降水や降雪によって捕捉されたためと考えられる。これに対 して、3月は海塩エアロゾルが巻き上げられる量は、12月〜1月 に比べれば少ないが、降水の回数が少ないため、捕捉される海塩 エアロゾルの量が少なく、より内陸部まで届く量が多いためだと
考えられる。
(C)の高層の風によって遠距離輸送された海門の沈着量は、11
.月〜3,月にかけて大きく、12,月〜1月にピークを示した。9月以 降、高層の風によって長距離輸送される海塩粒子の量が増加し、
・129・
多くの海塩粒子が運ばれるようになったことを示している。その ため、海岸から遠く離れた内陸部でも海塩が増加する。
また、高層の風によって輸送される海塩粒子の量は、海岸付近 の地上風によって巻き上げられる海塩粒子の量のほぼ1/5程度で あるヒとから、地上風によって運搬される海塩粒子の寄与が非常 に大きいことがわかる。
一130幽
5.4.6 降水を酸性化する汚染物質
(1>pH:とpAi(2)との関係
nss−SO42一イオンやNO3一イオンを、中和を全く受けなかったと 仮定したときの1{2SO4と}INO3の濃度を表していると考えるこ とができる。降水試料から測定される水素イオン濃度[H:+]は、
最初にあった且2SO4やHNO3がアルカリ性の汚染物質によって 中和を受けた後の濃度であり、中和が全くなかったと仮定すると き、pHはもっと低くなるはずである。その値(全く中和されな かった仮定した時のpH)をpAiと表す。
pAi=一loglo([nss・SO42一]+[NO3「)
図5.33(A)、5.33(B)、5.33(c)に各調査地点におけるpHとpAi との関係を示す。pHが、3.5から7まで分布しているのに対して、
pAiの値は、3〜5という狭い範囲にあり、中和される前の酸の 濃度がほぼ同じような値であったことがわかる。
秋田から福井にかけての地域では、実試料のプロットが、1:
1の直線の近くに分布しているものが多数みられる。これは、秋 田から福井の冬季(11月〜2月)の降水が中和作用をほとんど受け ていないことを示している。
しかし、鳥取、米子では分布範囲がやや広がり、萩や福岡では 1:1の直線から外れたところに分布するプロットが多くなる。
これは、西目掌側に向かうにしたがって、黄砂などのアルカリ物 質による中和作用の影響がしだいに大きくなることを示している。
特に、福岡や萩の冬季の多くの試料は、pAiの値が4以下であ るにもかかわらず、高pH:域に分布している。これは大陸から多 くのH2SO4や且NO3などの酸性物質が飛来してきていると同時 に、アルカリ物質が地域的な汚染や黄砂によって酸性物質以上に
一131一
8.0 7。0 6.0 迂
α
5.0 4.0 3.0
面
。短評
ロロ oロ埠巳8 0
口
3.0 4.0 5.0
H
6.0 7.0
。7月 》10月△11月〜2月口3月〜6月
8.0
8.0 7.0 6.0 避
Ω
5、0 4.0 3.0
。鰭ぶ。。=
3.0 4.0 5.0
pH
6.0 7.0 8.0
。7月〜10月△11月〜2月ロ3月〜6月
8.0
7ρ
6.0 そ
Ω
5.0 4.0 3.0
O o
ら。輪静.・。・
3.0 4.0 5.0
pH
6.0 7.0 8.0
。7月〜10月△11月〜2月ロ3月〜6月
図5.33(A)日本海側地域におけるPHとpAiの関係
・132・
8.0 7.0 6.0 ξ 5.0Ω
4.0 3.0
む
・蝿瞭・・曳巳
o o
3コ 4.0 5.0
pH
6.0 7.0 8.0
・7月 》10月△11月〜2月ロ3月〜6月
8.0 7.0 6.0 迂 Ω 5.0 4.0 3.0
。。 (も
騨・・》。♂
3.0 4.0 5.0 6、0 7.0 8.0
pH
。7月〜10月△11月〜2月回3月〜6月
8.0 7.0 6.0
ξ Ω 5.0 4.0 3.0
o OO 口
蝿響丸。皇回
口
3.0 4.0 5.0 6.0 7ρ 8.0
pH
。7月〜10月△11月 》2月口3月〜6月
図5.33(B)日本海側地域におけるPHとpAiの関係
・133・
8.0 7.0 6.0 迂
α
5.0 4.0 3.0
ロ
嘘込叩辱 。
も醜新ロ8宅
3.0 4.0 5.0 6.0 7,0 8.0
pH
。7月〜10月△11月〜2月03月〜6月
8.0 7.0
._6.0
舌 5.0 4.0 3.0
。謎 地回.真。
只ぜ・。・㌔△△
3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0
pH
。7月〜10月ム,1月〜2月03月 》6月
8.0 7,0
._6.0
舌 5.0 4.0 3。0
轟 O o
鱒△鬼峨・2.
回。
3。0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0
pH
・7月〜10月△11月 》2月ロ3月〜6月
図5.33(c)日本海側地域におけるPHとpAiの関係
.134・
降水中に取り込まれていることを示している。pHだけをみると福 岡や萩のpHは高く、酸性雨は弱いと感じるが、 pHとpAiの関係 をみると、越境汚染による酸性物質(硝酸や硫酸)の沈着が多い地 域であることがよくわかる。
また、3月〜6月の試料をプロットした点は、日本海側のすべて の地域で1:1め直線よりも大きく右側に離れ、アルカリ物質によ る中和の寄与が大きくなっていることを示している。これは、日本 海側のすべての地域で、黄砂が飛来したことを示している。
一135一
(2) NO3−1nss・SO42一濃度比
図5.34の(A)、(B)、(C)にNO3『/n.ss・SO42}濃度比の二月変化 (2000年7月〜2001年6.月)を示す。
この濃度比によって、酸性の汚染物質のうち、どちらの寄与が 大きいかを知ることができる。比の値が大きいほどnss−SO42『イ オンよりもNO3一イオンの寄与が大きいことを示している。
年平均値は、秋田0.43、柏崎0.46、富山0.46、石川0.48、福 井0.36、鳥取0.53、米子0.48、萩0.53、福岡0.52であり、0.36
〜0.53の範囲にある。これは、第3次酸性雨対:策調査の全国の平 均値が0.25〜0.5の範囲である(2)ことから考えると、日本海側地 域は、やや高めであることがいえる。福岡や萩の年平均値は、他 の地域より高い値を示しており、NO3一イオンの寄与が大きい。
:NO3−/nss−SO42一濃度比の経,月変化では、どの地域においても
7月〜8月に大きな値を示した。また、秋田を除く地域では、1 月に濃度比が小さくなった。これは、中国大陸からの越境汚染に よって11ss−SO42一イオンが、NO3一イオンよりも相対的に増加した ためと考えられる。
図5.35の(A)、(B)、(C)に季節によるNO3一/nss・SO42一濃度比の 変化を示す。
冬季(11.月〜2月)には、萩と米子で、濃度比の大きな上昇が みられた。これは、萩と米子ではnss・SO42一イオンよりも、大量 のNO3一イオンが越境汚染していることを示している。
それに対して、石川から柏崎の地域にかけては越境汚染による nss・SO42一イオンの寄与の方が大きく、濃度比は小さい。
また、冬季には、濃度比が西にいくにしたがって高くなる傾向 がみられた。これは、西目本側の地域ほど、NO3一イオンの越境
・136一
(A)
1.2