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藤本 幹雄 1)   美原  盤 2)

ドキュメント内 09flN02„”“ƒ…O…›…r…A.QX (ページ 94-99)

はじめに

 平成20年度の診療報酬改定において,回復期リハ ビリテーション(リハビリ)病棟入院料1を算定す るためには,自宅復帰率が60%以上であることが 求められ,自宅退院を医療政策として推進している。

川北1)は,回復期リハビリ病棟からの円滑な自宅退 院のためには,入棟初期よりリハビリゴールやその ために要する期間をしっかり検討することが必要で あると述べている。

 リハビリゴールを考える上で,転帰先を含めた予 後を予測することは不可欠である。脳血管障害患者 の退院先に影響する要因としては,医学的重症度

(機能障害・能力低下)の程度に加え,年齢,性別 や介護者・配偶者の有無,経済状況といった社会的 要因も関連すると報告されている2)3)。また,金丸 ら4)は,非言語的判断力や構成能力といった認知機 能が保たれていることも自宅退院と関連することを 示唆している。このように,脳血管障害患者の転帰 先に影響する要因は数多く考えられるが,いずれの 要因が最も大きく影響を及ぼすかは明確ではない。

 そこで,今回,回復期リハビリ病棟入棟時の患者 の,医学的情報,機能障害,動作能力,日常生活活 動Activities of Daily Living(ADL)能力について,

自宅退院を規定する要因を抽出するために,ロジス ティック回帰分析を用いて検討した。

当院の現状

 当院は,群馬県伊勢崎市(人口約21万人)にある 脳・神経疾患専門の民間病院である。99床の回復期 リハビリ病棟を有し,リハビリ対象者の8割を脳血 管障害患者が占める。施設基準は脳血管障害等リハ

(Ⅰ),運動器リハ(Ⅰ),呼吸器リハ(Ⅰ)を取得して いる。回復期リハビリ病棟のスタッフ数は理学療法 士20名,作業療法士16名,言語聴覚士6名で,365 日勤務体制を採用しており,セラピスト1名につき 算定単位数は1日平均18.4単位である。

対  象

 平成19年1月〜11月まで,当院回復期リハビリ 病棟に入棟し,リハビリを実施した脳血管障害患者 から,死亡退院,全身管理のための転院を除いた 390名(平均年齢70.0±12.1歳,自宅退院310名・他

転帰80名:自宅退院率79.5%)を対象とした。

方  法

 ロジスティック回帰分析を用いて,自宅退院を規 定する要因の抽出を行った。転帰先(自宅退院・他 転帰)を独立変数とし,回復期リハビリ病棟入棟時 の医学的情報,身体機能,動作能力,ADL能力を 表す指標を従属変数とした。ロジスティック回帰分 析に先立ち,多重共線性の問題を避けるために相関

退

第5 8回日本病院学会  推薦演題

脳血管障害患者の自宅退院を

係数の高い指標を削除した結果,以下の16項目を従 属変数として選択し,転帰先との関連を検討するこ ととした。

従属変数(表1)

【医学的情報】

年齢,病型,脳血管疾患既往の有無,合併症,意 識障害の有無,回復期リハビリ病棟入棟までの期 間

【身体機能】

麻痺の種類,失語症の有無,半側空間無視の有無,

認知症の有無,麻痺重症度

【動作能力】

 座位保持能力,立ち上がり能力

【ADL 能力】

機能的自立度評価表 Functional Independence

Meas-ure(FIM),下位項目トイレ,階段,理解

 さらにロジスティック回帰分析によって抽出され た 要 因 か ら,名 義 尺 度 を 除 い た 変 数 の Receiver-Operating-Characteristic(ROC)曲線を用いて,自宅 退院と他転帰を最適分類するためのカットオフ値を 求めた。統計解析には,医学統計ソフトDr.SPSSを 用い,有意水準5%未満とした。

結  果

1.自宅退院を規定する要因

 ロジスティック回帰分析の結果,意識障害の有無,

麻痺重症度(重度),FIMトイレ,FIM理解が転帰先 と有意な関連を示した。オッズ比は意識障害0.3,麻 痺 重 症 度(重 度)0.3,FIMト イ レ1.3,FIM理 解

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表1 従属係数

1.04-1.69 1.3

FIM⌮ゎᚓⅬ

0.68-1.31 0.9

FIM㝵ẁᚓⅬ

1.00-1.79 1.3

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0.83-5.46 2.1

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0.21-1.12 0.5

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0.10-0.78 0.3

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0.47-2.09 1.0

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0.28-1.17 0.6

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0.15-1.11 0.4

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0.82-2.11 0.4

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0.98-1.00 1.0

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0.08-0.95 0.3

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0.60-3.03 1.4

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0.57-2.64 1.2

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0.15-3.84 0.7

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表2 ロジスティック回帰分析結果

1.3であった(表2)。つまり,意識障害があ ること,麻痺が重度であることにより自宅退 院率はそれぞれ0.3倍と低くなり,FIMトイ レ得点,FIM理解得点が1点あがることで,

自宅退院率はそれぞれ1.3倍と高くなるとい える。

2.FIM トイレ・FIM 理解得点のカットオフ値  その後,選択された要因のうち,名義尺度 を除いたFIMトイレ,FIM理解についてROC 曲線を作成した(図1)。FIMトイレは,曲線 下面積0.81,カットオフ値3.5点で,自宅退 院に対する感度72.3%,特異度82.5%であ った。FIM理解は,曲線下面積0.75,カット オフ値4.5点で,感度69.4%,特異度72.5%

であった。

考  察

 ロジスティック回帰分析,ROC曲線を用いた分 析の結果,自宅退院を規定する要因として,回復期 リハビリ病棟入棟時に,①意識障害がないこと,② 麻痺が中等度〜軽度,③FIMトイレ得点4点以上,

④FIM理解得点5点以上であることがあげられた。

 二木ら5)による脳卒中患者の早期自立度予測基準 においても,2・3桁の意識障害は自立の阻害要因 としてあげられている。近藤6)は,意識障害は,

非活動の時間を長くする要因であり,廃用性の変化 により患者の体力を低下させ歩行自立を阻害すると 述べている。また,意識障害を呈していると,痰の 吸引や,経管栄養,導尿といった医学的管理が必要 となる場合が多く,退院後も継続して管理が必要に なる可能性がある。医学的管理を必要としているこ とにより,在宅福祉サービスである福祉施設でのデ イサービスやショートステイの利用を断られること も多く,在宅生活の介護負担が大きくなる。そのた め意識障害は自宅退院を阻害する要因となり,この 項目が選択されたと考えられる。

 二木ら2)は,脳卒中患者が自宅退院するための3 条件のひとつとして,リハビリにより歩行が自立す ることをあげている。戸島ら7)は,転帰先とFIM分 野別合計得点の関連について検討した結果,移動能 力と社会的認知の寄与が大きいことを示し,歩行自 立できず,知的に問題があると自宅退院を諦める傾 向があると示唆している。このように,歩行能力が 転帰先に与える影響は大きいと考えられる。下肢随

意性は歩行の可否と獲得レベルに大きく影響してい るといわれており8)9),麻痺重症度が選択されたの は,歩行能力との関連が強いためと考えられる。し かし,歩行自立度の予後予測には座位能力が関与し ているという報告もあるが0),今回は選択されな かった。これは転帰先を独立変数として分析を行っ たため,項目の重要度が異なっている可能性が考え られる。

 多くの先行研究で,ADLレベルが退院先を規定 する中心的要因であるといわれており,特に,トイ レ動作能力が,退院先に最も強く関連する因子であ るとの報告もある1)。今回ADL能力の指標である FIMトイレ得点が選択されたことはそれを支持する 結果となった。また,金丸ら4)は,非言語的判断力 や構成能力といった認知機能が保たれていることも 自宅退院と関連することを示唆している。認知機能 に関しては,FIM認知項目の理解が選択された。

FIM理解5点では,複雑な内容,抽象的な内容の理 解に手助けが必要であるが,基本的な情報,食事や 疼痛への投薬の必要性,身体介助など日常のことに ついての質問は理解することができる状態である。

このように介助者とコミュニケーションをとること ができれば,より円滑に自宅生活への移行が可能に なると考えられる。

 以上より,今回の結果から得られた4項目は,自 宅退院規定要因として妥当であると考えられる。回 復期リハビリ病棟に入棟した時点で,上記4項目を 満たしていれば自宅退院となる可能性が高いと予測

退

3.5Ⅼ 4.5Ⅼ

図1 FIM トイレ得点・理解得点の ROC 曲線

される。よって,早期から自宅退院という目標を持 ち,計画を立て,自宅生活を想定したリハビリや,

早期からの家族指導・外泊訓練,ソーシャルワーカ ーの早期介入を開始することが必要である。一方,

4項目を満たしていなければ,その患者は自宅退院 が難しい状態であると予測される。その状態から自 宅退院を促していくためには,介護状況の把握,在 宅福祉サービスの情報提供など,環境面へのアプロ ーチも重視する必要がある。こうして,双方へアプ ローチを行うことで,自宅退院推進に繋がると考え られる。

 本研究は,後方視的に行った検討であるため,予 測の信頼性を高めるためには,前方視的な検証が必 要である。また,介護者・配偶者の有無,経済状況 といった社会的要因は取り上げておらず,転帰先を 予測する際は,4項目に加え,社会的要因を含めた 検討が必要である。

参考文献

1)川北慎一郎:在宅復帰,維持期への課題,『リハ 医学』,42(9);623−626,2005.

2)二木立:脳卒中患者が自宅退院するための医学 的・社会的諸条件,『総合リハ』,11(2);895−

899,1983.

3)砂子田篤・他:脳卒中患者の退院先に関わる家 族状況,『総合リハ』,21(1);57−61,1993.

4)金丸晶子・他:脳血管障害リハビリテーション 後の退院先と認知機能の関連について,『日本 老年医学会雑誌』,35(4);307−311,1998.

5)二木立・他:脳卒中の早期リハビリテーション,

医学書院,1987.

6)近藤和泉・他:自立歩行を阻害する要因は何か,

『総合リハ』,27(12);1117−1121,1999.

7)戸島雅彦・他:脳梗塞急性期入院例の入院期間 と退院先に影響する因子,『リハ医学』,38(4) 

;268−276,2001.

8)原寛美:我々が用いている脳卒中の予後予測Ⅳ,

『リハ医学』,10(4);313−319,2001.

9)前田真治・他:脳卒中患者の屋外歩行能力獲得 要因について―ロジスティック分析による予測 モデル,『第37回日本リハ医学会学術集会抄録 集』,184,2000.

10)石神重信・他:我々が用いている脳卒中の予後 予測Ⅴ,『リハ医学』,10(4);326−330,2001.

11)植松海雲・他:高齢脳卒中患者が自宅退院する ための条件―Classification and regression trees 

(CART)による解析―,『リハ医学』,39(7); 396―402,2002.

12)中村好一:『論文を正しく読み書くためのやさ しい統計学』,診断と治療社,2006.

13)千野直一:『脳卒中患者の機能評価SIASとFIM の実際』,シュプリンガーフェアラーク東京,

2003.

図・表

表1 ロジスティック回帰分析に用いて検討する要 因(従属変数)16項目をあげた。

  カッコ内は各変数のカテゴリーを示した。

表2 転帰先(自宅退院・他転帰)を独立変数とし たロジスティック回帰分析の結果,各従属変数 のオッズ比とオッズ比95%信頼区間を示した。

  重度意識障害あり,重度麻痺あり,FIM トイレ 得点,FIM 理解得点の4項目が転帰先と有意 な関連を示した。

図1 FIM トイレ得点,FIM 理解得点による ROC 曲線を示した。

  図中の数字はカットオフ値とした得点を表した。

退

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