Ⅰ.はじめに
一昨年までの看護研究で,子どもに理解を得られ るような説明=インフォームド・アセントが必要で あることがわかった。その為,子ども自身が検査・
処置を理解し,受け入れるために,心理的準備段階
(プレパレーション)を実施している。病棟内にお いて,頻度の高い処置などを優先に,媒体を作成・
実施し,有効な効果を得てきた。
しかし,病棟外にて受ける検査については,媒体 はなく,看護師個々の手法で説明を行っている。子 どもが納得のうえ検査に降りるが,環境の変化,見 慣れない医療機器・見知らぬスタッフに囲まれ,恐 怖心を抱き啼泣する子どもが多くみられていた。
なかでも,レントゲン検査は,頻度が高く,覚醒 時に行われ,安全で確実な撮影を行う為に,子ども は抑制されることも多い。撮影回数を重ねた子ども であっても,恐怖心で啼泣する事が多く,病棟での プレパレーションが,子どもにとって全く活かされ ていない現状であった。原因として,検査前に受け るインフォームド・アセントの方法に問題があるの ではないかと考えた。
プレパレーションが特に必要とされる年代の子ど も(3〜7歳児)は,認知能力から見ると,一度理
解出来た事を,自分のこととして捉え続けることが 出来ない。
そこで,今回,病棟で受けるプレパレーションを,
検査終了まで途切れる事なく持続させることができ たなら,子どもは自分なりに,検査の目的を理解す ることができ,環境の変化にも,惑わされないので はないかと考えた。検査室にて撮影終了までプレパ レーションを持続させるには,放射線科スタッフの インフォームド・アセントへの理解とプレパレーシ ョンへの協力が必要不可欠になる。今回,放射線科 に協力を得て,子どもにとって良い結果が得られた ので報告する。
Ⅱ.倫理的配慮
研究の意義について紙面にて説明する。研究への 参加は自由であり,アンケートで知り得た情報は,
研究以外には使用しない事を伝え協力を得る。
Ⅲ.対 象
平成19年8月1日〜平成20年1月24日に入院し,
レントゲン検査を受けた患児とその家族。(2歳後
第5 8回日本病院学会 推薦演題
半〜7歳児)
プレパレーション実施前26例・実施後8例。
Ⅳ.方法・実施
①従来通りの説明で,レントゲン検査を受けた患児 26名のオリジナルスケール(表1)をつける。
②インフォームド・アセントの必要性を,家族に説 明する。
③病棟と放射線科の共通の媒体キャラクターとして 紙芝居と「とれたマン」を作成。(図1)
④放射線科スタッフに対し,子どもに対するインフ ォームド・アセントの必要性と病棟で行うプレパ レーションについて説明し協力を得る。
⑤検査前日,紙芝居を用いて,子どもに検査の必要 性を説明する。紙芝居の中に「とれたマン」を登 場させる。(図2)
⑥実際に模擬撮影が出来るように,「とれたマン」
模型を作成し練習する。写真をとるイメージがで きるように模型のカメラを作成し,子どもの背後 からシャッターをきる真似をする。
⑦説明後,家族から子どもへインタビュー形式でプ レパレーションの理解度を確認してもらう。
⑧検査当日,再度「とれたマン」にて模擬撮影を行 う。付き添う看護師は模型のカメラを首にかけ,
一緒に降りる。
⑨撮影室に降りたら,室内に貼ってある「とれたマ ン」を子どもと一緒に確認し,撮影準備をする。
⑩看護師は「お写真撮ろうね」とカメラで撮影する 真似をしながら技師室に回り,子どもの様子を見 てオリジナルスケールをつける。
⑪検査終了後,ごほうびカードにスタンプを押す。
⑫帰室後,家族から子どもへ実施後の心理状態をイ ンタビューしてもらう。
Ⅴ.結 果
「とれたマン」使用前のオリジナルスケールでは,
4点が84%であった。口頭のみの説明でも嫌がら ず出来る患児の割合は高かったが,子どもより「何 でしなくちゃいけないの?」「どうやってするの?」
等,自分なりの理解が出来ておらず,不安の発言が 多く聞かれた。
「とれたマン」使用後のオリジナルスケールでは,
4点が100%となった。検定結果にても,有意な結 果が得られている。子どもより「バイキンマンを探 す為にするんでしょ」「お写真を撮ったらバイキンマ ンが写るんでしょ」「痛くないやつでしょ」との声が 聞かれた。帰室後の心理状態のインタビューでは,
「恐くなかったよ」「頑張れたよ」など前向きな発言 が聞かれた。
実際の撮影での出来事で,レントゲン撮影対象の 2歳7ヶ月の子どもがいた。「とれたマン」使用前の 撮影では,激しく啼泣し,暴れた為,抑制し撮影を 行った。この子どもがレントゲン再検査となり,病 棟にて,プレパレーションを行ったところ,大変興 味を示し,「バイキンマン探しにいく」と言う発言が みられた。放射線科に降り撮影室に入ると,前回撮 影の印象が強かった為か,すぐに放射線科スタッフ より「抑制で行いましょうか?」と言われた。しか し,プレパレーションの反応が良かった為,看護師 が立位撮影でお願いし,撮影に臨む事となった。子 どもは室内の「とれたマン」を見て,立位のまま,
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表1 日
本 病院 学 会
︽ 推 薦 演 題
︾ 子 ど も 達 へ の イ ン フ ォ ー ム ド
・ ア セ ン ト
︱ プ レ パ レ ー シ ョ ン へ の 取 り 組 み
Ⅲ
啼泣する事はなかった。しかし,カメラの模型を看 護師が首からぶらさげていた為,そこに興味がいき,
正面保持が行えなかった。その場面を見た放射線科 スタッフが,「看護師さん出ててください」と言い,
看護師を退室させた。そして,自らカメラを首から ぶら下げた。それでも,子どもがカメラに執着する 為,正面保持ができる位置にカメラを置き,動物の ぬいぐるみを持ち出し,「ガオーっていうから見て てね」と声をかけた。すると,立位で撮影すること が出来た。撮影後,放射線科のスタッフは「泣かず に出来た。抑制せずに,出来るんですね」と言った。
子どもは,ごほうびカードのスタンプを「押して」
と言い,母親からは「前回はすごく暴れて,くくっ てしたのに,立ってできるなんて,初めてです。」と 驚きの声が聞かれた。実施後,撮影に携わった放射 線科スタッフに,聞き取り調査を行った。その結果,
プレパレーションは手間がかかるが,今後も継続し て実施していく必要があるという意見が聞かれた。
Ⅵ.考 察
ピアジェの認知発達段階によると,2〜3歳から 現象的・表面的な理解が始まると言われている。そ のため,プレパレーションが必要とされる年代の子 どもには,言葉での説明だけではなく,視覚的・聴 覚的に興味を引かせ,さらに理解を促がすためのア プローチが重要となる。今回,病棟内だけでプレパ レーションを終わらせず,子どもの理解が持続でき るように段階を追って「とれたマン」を意識させ,
検査直前までプレパレーションを継続させた。この ことは,子どもの不安や恐怖心を克服し,間違った 認識を軽減させ,意欲的に検査に取り組むことにつ ながったと考える。「とれたマン」という媒体を通じ,
検査をより具体的にイメージすることで,自分の持 つ対処能力を最大限に発揮させることができた。ま た,放射線科の協力を得る中で,「とれたマン」を通 じて,説明内容に一貫性を持たせ,子どもが混乱す ることを防ぐという共通の目的を持つことができた。
放射線科スタッフの子どもに対するイメージは「融 通が効かない」「泣くので手間がかかる」「接し方が わからない」というマイナスイメージであった。が,
キャスリン・E・バーナードは「ケア提供者の行動 が子どもに影響し,子どもはケア提供者に影響を与
え,互いが変化する」と述べている。上記の2歳7 ヶ月の児の場合,「とれたマン」のストーリー通りに は撮影がすすまなかった。しかし,放射線科スタッ フは,子どもが混乱しないように,カメラを目線の 位置におき,違うツールを用いて子どもの興味を引 いた。子どもの反応は様々であり,予定していたこ とが子どもに合わないことは当然予想される。プレ パレーションにおいてツールは勿論重要なものであ るが,最も不可欠なのは,それに携わる人の存在で あり,子どもの安心を導き,空想や誤解に対応して くれるような情緒的支援をしてくれる存在でもある。
ケア提供者の行動,子どもに関わる人の行動により,
プレパレーションの効果は向上したと考える。「と れたマン」導入後の放射線科スタッフの聞き取り調 査にて「今後もプレパレーションを続けるべきであ
図1 とれたマン
図2 プレパレーションの様子
日 本 病院 学 会
︽ 推 薦 演 題
︾ 子 ど も 達 へ の イ ン フ ォ ー ム ド
・ ア セ ン ト
︱ プ レ パ レ ー シ ョ ン へ の 取 り 組 み
Ⅲ