日 本 病院 学 会
︽ 推 薦 演 題
︾ 病 院 医 師 の 医 療 機 能 的 役 割 か ら み た 外 来 収 益 に つ い て の 検 討
横須賀市立うわまち病院
病院長
沼田 裕一
る外来診療の経済的必要性という観点から,外来収 益には,紹介患者,救急患者,一次受診患者(初診・
再診)の主に3つのリソースのいずれに重点を置く べきかという検討が必要であると考えた。
今研究では外来診療の効率性を,外来に来院する 患者の来院形式で患者をリソースとしてタイプ分け し(紹介患者,外来患者,再来患者,初診患者,新 規患者,救急車搬入患者など),どのタイプのリソー スに力を入れることで効率があがるか外来収益を指 標として明らかにし,さらに外来診療の占める比率 に関しても一部検討する。
Ⅲ.対象と方法
対象は平成14年7月から平成18年11月までの医 業収益に係わる指標であり,これらの関係を回帰分 析にて検討した。
従属変数を外来収益(円/月)とし独立変数を外 来患者数(人/月),初診患者数(人/月),時間 内・時間外救急車搬入患者数(人/月),紹介患者 数(人/月),外来単価(円/人・日),新規患者数
(ID)(人/月),再来患者数(人/月),以下同様 に医師一人あたり紹介患者数,外来患者数,再来患 者数,初診患者数,新規患者数,救急車搬入患者数 とした。
統計学的検定は単回帰分析と重回帰分析を用い,
p <0.05を有意差ありと判定し,各因子の関連の強 さは自由度調整済み決定係数にて評価した。統計解 析ソフトは Stat View 5.0を用いた。
Ⅳ.結果
当院のプロフィールは法定許可病床数417床。外 来患者数430人/日,初診患者率26%,病床利用率 88%,平均在院日数11日台,年間救急車搬入患者 数は6300人,紹介率約50%,逆紹介率約60%台で ある。
結果1.外来収益と各因子の関係
まず外来収益と各因子の関係を単回帰分析にて調 べた(図1)。その結果外来収益と各因子の関連の強 さ(自由度調整済み決定係数の大きさ)は,外来単 価>紹介患者数>新規患者数>初診患者数>時間 内・時間外救急車搬入患者数>外来患者数>再来患 者数の順であった。
結果2.外来収益と医師一人あたりの患者数の関係
(単回帰分析)
次に外来収益と医師一人あたりの各種の患者数で 見るとその関連の強さは,紹介患者数>救急車搬入 患者数>新規患者数>初診患者数>再来患者数>外 来患者数(/医師数)の順であった(図2)。ただし,
外来収益と再来患者数/医師数の関係は有意の負の 相関であった。また外来収益と医師一人あたりの外 来患者総数との間には有意の関連は見いだせなかっ た。また,外来収益と関連の強い医師一人あたりの 紹介,救急車搬入,新規,初診患者数(/医師数)
のグラフを見ると,医師一人あたりの患者数がある 一定以上になると外来収益が頭打ちになる傾向があ った。
結果3.外来収益と医師一人あたりの患者数の関係
(重回帰分析)
最後に交絡因子の影響を排除するために外来収益 と医師一人あたりの患者数(前記6因子)の関係を 重回帰分析してみると,外来収益に影響する有意な 因子は医師一人あたりの紹介患者数,次に医師一人 あたりの救急車搬入患者数であった(表1)この重 回帰分析の自由度調整済み決定係数も0.904と高値 で,外来収益の変動を約90%説明することが出来 た。
Ⅴ.考察
結果1.は外来収益に及ぼす因子の影響把握のた めの検討であるが,外来収益は圧倒的に外来単価に 依存することが示された。次に影響が大きいのは紹 介患者数であり,紹介患者の外来単価の高さを反映 しているとも考えられた。さらに続く新規患者数,
初診患者数,時間内・時間外救急車搬入患者数など はやはり最下位の再来患者数に比べて外来単価の高 いものほど順位が上であった。つまり,外来収益に 及ぼす影響はやはり外来単価の比重が高く,外来収 益は主に外来単価×患者数×診療日数の3因子で表 されることを考えれば,病院の外来収益には外来単 価が重要であることを示唆している。
次に外来の医療機能的役割から見た病院における 経済性は,勤務医師一人あたりの外来仕事量と外来 の収益の関係において明らかにする必要がある。そ の観点から行った結果2.の解析では,外来収益の 増加は医師一人あたりの紹介患者数,救急患者数の
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増加,新患者数(全くの未受診),初診患者数の順 番で関連するという結果であった。結果3.の重回 帰分析でも外来収益は医師一人あたりの紹介患者数 と救急車搬入患者数に最も強く関連し,病院は外来 においても紹介や救急などの二次医療的な仕事に重 きを置いて医療機能的役割を果たす方が通常の一次 の新規患者に重きを置くより,外来収益的にも良好 であることを示している。更に医師一人あたり再来 患者数が増加すると外来収益は低下し,医師一人あ たりの外来患者総数が増えても外来収益とは関係な
いという結果になった。これらはまさに診療所と病 院の役割分担の必要性を経済的にも説明している。
つまり,比較的安定した再来患者の診療は診療所を 中心に行い,初診も明らかに重症のものや特殊な専 門性が必要なものをのぞけば診療所受診を主とすべ きということである。病院はリソースとして紹介患 者,救急患者に重きを置くことで医療機能的役割に おいても経済的にも有用であることが示唆された。
また,再来患者数をむやみに増やすことは外来収益 の悪化に繋がることも示唆された。さらに結果3.
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
10000 11000 12000 13000 14000 15000 16000 እ᮶ᝈ⪅ᩘ
Y = -81693.834 + 13.102 * X; R^2 = .709 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
1000 1400 1800 2200 2600 3000
ึデ⪅ᩘ
Y = 26347.974 + 31.509 * X; R^2 = .831 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
40 80 120 160 200 240
㛫ෆᩆᛴ㌴ᩘ
Y = 36436.596 + 318.538 * X; R^2 = .827 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
50 100 150 200 250 300 350 400
㛫እᩆᛴ㌴ᩘ
Y = 44058.174 + 174.277 * X; R^2 = .827 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
0 100 200 300 400 500 600
⤂ᝈ⪅ᩘ
Y = 51524.111 + 111.233 * X; R^2 = .907 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500 እ᮶༢౯
Y = -30351.496 + 17.123 * X; R^2 = .917 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
500 700 900 1100 1300
᪂ᝈᩘID Y = 14685.028 + 79.015 * X; R^2 = .888 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
8500 9500 10500 11500 12500
᮶ᝈ⪅ᩘ
Y = -75994.125 + 14.712 * X; R^2 = .409 ᅇᖐ䜾䝷䝣
P<0.0001 Adj.R
2=0.916 P<0.0001 Adj.R
2=0.905
P<0.0001 Adj.R
2=0.885
P<0.0001 Adj.R
2=0.396 P<0.0001
Adj.R
2=0.824 P<0.0001 Adj.R
2=0.824 P<0.0001 Adj.R
2=0.827 P<0.0001 Adj.R
2=0.703
図1 外来収益と各患者数の関係(単回帰分析)
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の重回帰式の自由度調整済み決定係数は0.904と極 めて高く,外来収益の変動の90%以上を医師一人 あたりの紹介患者数,救急車搬入患者数,新規患者 数,初診患者数,再来患者数,外来患者数という6 因子で説明できることになる。
それではなぜ,このような結果になったかを考え る。通常医師に対して患者数が少ない場合には,医 師は診断治療のためのツールをフルに使い診療する ことが出来る。しかし,徐々に患者数が増え,患者 数が過剰になってくると,医師は診療内容を落とさ
ざるを得ない。今でも昼食も食べずに午後3時4時 まで外来で診療をし,その後に病棟の業務をしてい る医師がいるが,このような医師に外来患者に充分 な診療時間を取り,質を保証せよ,というのは酷で ある。外来で待ち時間が長いとクレームを付ける患 者の声は更に医師を追い立てる。意図的ではなくと も今できるが急がなくて良い検査や治療は後回しに なる。この結果,患者一人あたりの一日の外来単価 は低下していく。前述したように患者数は重要では あるが,外来単価は患者数に比しさらに重要なファ
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
220 240 260 280 300 320
እ᮶ᝈ⪅ᩘ䠋་ᖌᩘ
Y = 28881.097 + 198.428 * X; R^2 = .036 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
20 25 30 35 40 45 50 55 60
ึデᝈ⪅ᩘ䠋་ᖌᩘ
Y = 22503.582 + 1600.222 * X; R^2 = .669 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
10 12 14 16 18 20 22 24 26
᪂つᝈ⪅ᩘ䠋་ᖌᩘ
Y = 3853.486 + 4357.093 * X; R^2 = .746 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
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Y = 37456.394 + 5940.591 * X; R^2 = .788 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
⤂ᝈ⪅ᩘ䠋་ᖌᩘ
Y = 48932.205 + 5852.776 * X; R^2 = .884 ᅇᖐ䜾䝷䝣
50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000 120000
እ᮶┈䠄༓䠅
180 190 200 210 220 230 240 250 260 270
᮶ᝈ⪅ᩘ䠋་ᖌᩘ
Y = 163133.827 - 357.551 * X; R^2 = .085 ᅇᖐ䜾䝷䝣