下村 智美 井戸 誉子 草原 麻紀
独立行政法人 国立病院機構 熊本医療センター
日 本 病院 学 会
︽ 推 薦 演 題
︾ 新 人 看 護 師 の ス ト レ ス の 実 態 と コ ー ピ ン グ へ の 支 援 の 試 み
目標を明らかにし,目標達成する上での課題や 悩みを語る。
(2) 新人看護師6〜7名の班を構成し,副看護師 長がタスクとして1名参加。
(3) 研修時間は勤務終了後の18:00〜19:00の1時 間とした。
(4) 副看護師長による情緒的支援,手段的支援
(環境調整)によるソーシャルサポート
フリートークの状況とストレス指数の結果を統 合し,個人,集団への環境調整,情緒的支援を行 う。
①副看護師長会議での結果の報告と具体的支援の 検討。
②教育師長,研究者(副看護師長)より,部署の 副看護師長へ,個別の具体的支援の依頼。
メンタルヘルスケアの実際を図1に示す。
2) ストレス指数の調査
(1) ストレス指数は,厚生労働省のストレスチェ ック表を基に,身体症状,心理的症状を追加し独 自のものを作成。合計30項目とした。ストレス によって症状が表れたことを一項目1点とし点数 化した。
(2) 新人看護師の入職後,1カ月目・3カ月目・
6カ月目のストレス指数を調査。
事前に調査票を配布し,研修時に回収。合計点 数を個人別に集計。
ストレス指数の調査票を図2に示す。
(3) 分析方法
ストレス指数は,StatView5.0対応版の統計ソ フトにて分散分析を行う。
4.倫理的配慮
新人看護師には,個人が特定できぬようプライバ シーの保護に努めること,支援活動の意図を説明し た。また,資料を発表に使用することの同意を得た。
Ⅲ.結 果
1.メンタルヘルスケア
1) 1回目(入職後1カ月目研修)
新人看護師は,情報収集のため,早朝から出勤し 勤務終了が遅くなる傾向があった。身体面では,社 会人になり一人暮らしを始めるなど環境の変化に伴 い,食事を摂れず,体重が減少する人がいた。また,
睡眠時間が十分に確保できず,身体の疲労感を訴え た。休日は,気分転換が図られないまま,勉強をし て過ごすという訴えがあった。以上の結果を踏まえ,
副看護師長会議において,新人看護師の状況報告,
各副看護師長が取り組む具 体的支援策を提示した。主 な内容は,仕事量の調整を 行い勤務時間内の終了を促 したことであった。また,
承認行動を初めとした意図 的なコミュニケーションを 指示した。
2) 2回目(入職後3カ 月目研修)
新人看護師の発言は,看 護技術が出来るようになっ たことへの自信と,「看護 師に向いていない」などの
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図1 メンタルヘルスケアの実際 䝇䝖䝺䝇ゎᾘἲ䛾⤂
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図2 ストレス指数調査票
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自信をなくす発言に分かれていた。多く の新人看護師は指導者から褒められた実 感に乏しかった。帰宅時間は,早くなっ たという反応が多く見られた。副看護師 長会議では,できるようになったことや 課題を明確にするなど,引き続き承認行 動を促すようにした。さらに,自信をな くしている新人看護師には,当該病棟の 副看護師長へ情報を提供し,サポートの 強化を依頼した。
3) 3回目(入職後6カ月目研修)
ほぼ,全員の新人看護師が個人のスト レス解消法について発言出来ていた。
しかし,「課題に追われ,時間が取れな い」と余裕がない発言も多かった。一方,
職場内においては,モデルとなる指導者
が存在する人,先輩や上司からほめてもらったこと を励みにする人がいた。また,「重症者や急変にあ たってないのが不安」など新たな問題に直面してい る様子が伺われた。今後の課題を明確に捉えている 人と具体性に乏しい人がいた。副看護師長会議では,
個別性への対応を依頼した。
メンタルヘルスケア(フリートーク)の場面を図 3に示す。
2.ストレス指数の推移 1)ストレス指数の変化
入職後1カ月目,8.041±4.341,入職後3カ月目,
10±4.646,入職後6カ月目,9.21±4.9であった。
多重比較の結果,入職後1カ月目より,3カ月目が 有意(p=0.04)に高かった。しかし18名(24%)
の新人看護師は3カ月目より6カ月目が高くなって いた。又,入職後上昇しつづけた人は9名(12%)
であった。 ストレス指数の推移を図4に示す。
Ⅳ.考 察
入職後1カ月の研修では,新人看護師は時間内に 勤務が終了出来ず長時間の勤務になり疲 労困憊している状況が把握できた。指導 者は新人看護師に多くのことを指導した い時期であると同時に,新人看護師もわ からないことばかりの環境の中で,時間 延長につながりやすい時期である。吉村 らが「いつまでも帰れない,帰らない新 人ほど抑うつ傾向になりやすい3)」と述 べているように,指導者の介入は,まず 勤務調整を図り,規則正しい生活を整え ることからはじまる。この時期,意図的 に副看護師長が勤務調整を図り帰宅をさ せたことが,次の研修での新人看護師の
「早く帰れるようになった」という言葉 につながっている。
入職後3カ月の研修では,新人看護師 は少しずつ自分の時間を確保しているこ 日
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図3 フリートークの場面
図4 ストレス指数の推移 6.5
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8.041±4.341
9.21±4.9 10±4.646
とが把握できた。新人看護師のストレス指数は,3 カ月目より高くなっており,緊張状態が伺えた。先 行研究で一般的に示されている入職後3カ月から4 カ月目にストレスが最も高くなる傾向をA病院でも 示していた。特に今回注目したところは,先に述べ た「ソーシャルサポートの知覚」であった。ソーシ ャルサポートは,一般的に気持ちが通じ合ったり信 頼しあうことで生まれる情緒的支援,具体的な仕事 の調整や金銭的な面で助け合う手段的支援,問題解 決のための情報を与えてくれる情報的支援,仕事を 評価してくれる評価的支援などの支援を指す。最も ストレスが高いこの時期に,いかに新人看護師のコ ーピングを促すかが管理者としては重要になる。コ ーピングを促すためには,同僚のサポートの他,ラ インの関係にある副看護師長,看護師長からの承認 のサポートが有効であると考える。メンタルヘルス ケアは,新人看護師同士のフリートークの研修と自 己のストレス度を認識することからはじまる。フリ ートークの中で,自分だけではなく,同僚が同じ思 いでいることを自覚し,副看護師長の語りによって,
自己の建て直しのきっかけを得られているのではな いかと考える。さらに,職場においては,新人看護 師の発言にある,「褒められた実感」を得られるよう な工夫が図られたのではないかと推測する。
入職後6カ月目の研修の新人看護師の反応から,
1つの山を越えたという実感が伺えた。その背景に は,新人看護師の成功体験からくる自信があったと 考える。指導者の承認行動により,新人看護師がで きたことを実感し,次のステップに向かうことがで きている。また,目標とする先輩の存在によりモチ ベーションを高められている。全体のストレス指数 の平均は下がったものの,18名(24%)の新人看護 師はストレス指数が上昇している。一般的にリアリ ティショックは就職後6カ月以降徐々に回復に向か うと推測されている。リアリティショックの回復の 要因は,様々な研究がされているが,明確にはなっ ていない。久保らにより「リアリティショックの要 因は就職当初,技術的要因が大きいが,これは解決 しやすく,心理的・対人的要因がリアリティショッ クを長引かせる要因となること4)」が報告されてい る。ストレスやリアリティショックを回避すること はできないが,それを軽減するのは,同僚の支え,
職場の人間関係であるといえる。平成19年度の新人 看護師の離職率は4.1%であった。厚生労働省発表
の平成17年度の新人看護師の離職率は9.3%とされ ている。今後,新人看護師の定着率を図るため,さ らなるサポート体制の強化を図っていく必要がある。
Ⅴ.研究の限界
集合教育としての,フリートーク,ストレス指数 の調査は入職後6カ月目で終了している。ストレス 指数が最終6カ月目に上昇した,18名(24%)の新 人看護師の追跡調査には至っていない。今後の支援 活動の中で,個人的背景,要因の検討をしていく必 要がある。
Ⅵ.結 論
1.A 病院の新人看護師のストレス指数は,入職後 1カ月目より,入職後3カ月目が有意に高くなり,
入職後6カ月間の中で最もストレス指数が高いの は入職後3カ月目であり,一般的な傾向を示した。
2.メンタルヘルスケアは新人看護師のコーピング を促した。
3.入職後6カ月までの新人看護師には,情緒的支 援と環境調整が必要であり,それによって新人看 護師が得られる「語り」と「自覚」により適切な コーピングを促す。(図5に示す)
おわりに
今回,新人看護師の心理面の特徴,ストレスの実 態より,心理的サポートの重要性を痛感した。今後
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図5 新人看護師の適切なコーピングを促すための 支援の内容
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