第3章 事例分析
3.12 著者分析
密に繋がっていることが明らかになった。また、引用が何段階にも行われてい る状況を見ると、執筆メンバーや執筆時期に関わらず、PHENIX グループ全体と して論文を蓄積している様子、また論文を蓄積することが研究成果である知識 を蓄積していることに直結する様子が見て取れた。
さらに、1 番目の論文が発表されてから、140 番目の論文が出るまで 14 年が経 過しているが、年に偏った傾向は見られない。最近の論文であっても、古い論 文を引用している。このことから、実験開始当初から複数のテーマが脈々と続 き、継続的に知識を蓄積していること、グループ内で 1 本の論文の執筆という 競争を繰り返しながら、長期的な視点では時間を超越してグループ内で協調し ていることが推測される。
人
No.
図 3-23 PHENIX グループ論文の著者数推移
続けて、880 人が 140 本中何本の論文著者として登録されているかを分析した のが、図 3-24 である。実験立ち上げ期の 2001 年から 2003 年を除くと、毎年論 文は 10 本前後生産されている状況である。PHENIX グループの論文 3 本に名を連 ねる人が 73 人、13 本には 63 人とピークができている一方、140 本全てにおい て著者である人が 115 人存在する。これは、PHENIX グループの在籍期間が 2-3 年と短い人が多い、他方、継続的に貢献する人も多い、という事実がある。在 籍期間が短い人は、学生・ポスドクが大きな割合を占めている。140 本全てにお いて著者である人は、主にアメリカの国立研究所所属か、大学等でテニュア資 格を持ったシニア研究者であると考えられる。
なお、科学者は国際志向が強く流動性の高い労働者であるが、科学者のキャ リア・パスは圧倒的に個別国家のコンテクストの中で形成される(トーブス, 1988)が、日本人メンバーの場合、日本の大学・研究機関で次の職を探すことが 多く、結果として他分野へ転出する例も少なくない。
0 100 200 300 400 500 600 700
1 7 13 19 25 31 37 43 49 55 61 67 73 79 85 91 97 103 109 115 121 127 133 139
人
本数 図 3-24 PHENIX グループ論文の著者本数分布
メンバーの中には、PHENIXグループ内に学生の時から参加して、ポスドク やテニュアポジションを得ている研究者も数人いる。しかし、PHENIXグルー プの主力メンバーは
115
人の主にシニア研究者で固定化しており、ポスドクや 若手研究者がPHENIX
グループに継続して参加できるポジションを見つけるこ とが困難であるため、他のグループや分野に転出することが多い。また、PHENIX
グループとSTAR
グループの間で、研究者が異動することもある(金田,2003)。PHENIX
グループ主力メンバーの新陳代謝が悪くなっていることがインタビューで報告された90。
著者本数分布においても、PHENIXグループで
1
本から35
本までの著者に なっている人数が342
人であり、PHENIXグループの在籍年数が短い層は約4
割という結果と、一致している。ただし、PHENIXグループが研究者を長期間 惹きつけている、とも言える。
90 N 氏・X 氏インタビュー(2015 年 4 月 2 日)。