第3章 事例分析
3.13 科学者のトレーニングを行う場としての PHENIX グループ
3.13 科学者のトレーニングを行う場としての
図 3-25 PHENIX グループメンバーの学生による博士論文数 出典:PHENIX グループ博士・修士論文一覧92より筆者作成
(2014 年 3 月 26 日時点)
図 3-26 PHENIX グループメンバーの学生による修士論文数 出典:PHENIX グループ博士・修士論文一覧より筆者作成
(2014 年 3 月 26 日時点)
92 PHENIX グループ博士・修士論文一覧、http://www.phenix.bnl.gov/WWW/talk/theses.php, 2014 年 3 月 26 日アクセス。
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1998年 2002年 2005年 2009年 2011年 2012年
学生は、学部 4 年で研究室に所属して、専門分野の掟を学ぶことになる。教 員・先輩・同僚・査読誌・学会を通してである。新たに実験に参加する研究者・
学生は、高エネルギー物理学の「見えない大学」に入会し(クーン, 1971)、訓 練を積むことでグループのメンバーになる準備を行う。
BNL に滞在する際、シニア研究者は人を交流させる物理的配慮をする。まず、
ガラス張りの共有スペースの横を通らないと、自分の机にたどり着けないよう 研究室が配置されている。プリンターを共有スペースや図書館に置き、何かを 印刷するたびに必ず誰かと交流が発生する配置がされている。また、若手は個 室ではなく複数人で1室を割り当てている。このように、自然に交流を促進さ せられるよう、執行部が考慮する。例えば体調を崩して出勤してない場合は、
気づいた人が様子を見に行ったり病院に連れて行ったりするなど、特に若手に 対する防御ネットは働いている。在室中はドアを開け、交流を促しつつも集中 できる配置になっている。どうしても集中したい時は、ドアを閉めることも可 能である。こうしておくと、廊下を通る際に、他の研究者の顔や状況を覗くこ とができる。また、若手がシニア研究者の部屋を気軽に訪問することができる。
ただし、BNL 物理部門の場合、物理部門長の部屋だけは、秘書を通さないと顔を 見ることはできない作りである。
また、PHENIX グループが実験している BNL は NY 州郊外に位置するため、ある 意味閉鎖的な環境で合宿のような形で過ごすことで、公私共に研究グループの 掟を身につけることになり、暗黙知の共有が促進される。食事や各種イベント、
英語のサポートも研究グループで行われるし、滞在中のアパートも研究グルー プで手配される。実際食事やソフトボールの試合待ち中など、研究の話で盛り 上がっている場面に何度も出くわした。特に日本人にとっては、研究グループ がきめ細かに公私共々面倒を見てくれるので、初めての海外にしてはハードル が低い。
以上のように公私共に研究グループに頼らなければいけない環境であるため、
BNL を訪れる研究者は研究グループの仲間・競争相手グループの仲間・学会・ミ ーティング・他分野の仲間(理論物理グループ・加速器グループ)に囲まれな がら、研究グループの知識世界にどっぷり浸ることとなる。
よって、グループの掟に添えなかった人、他の可能性を見出した人、博士号
を取ることができなかった人は、この分野の研究から転出することになる。学 生、ポスドクの場合は、安定した職業を求めて、PHENIX グループを去ることも 多い。自然淘汰といえるのかもしれない。違う物理の分野、違う学問分野へ、
アカデミックの世界からも転出して、民間へなど様々な進路が選択される。