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発見事項のまとめ

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 148-153)

第 4 章 結論

4.2 発見事項のまとめ

本節では、第 3 章の事例分析から導き出された発見事項を整理して提示する。

1.3 節に示した 3 つのサブシディアリー・リサーチ・クエスチョン(SRQ)に回答 した上で、それらを統合した形でメジャー・リサーチ・クエスチョン(MRQ)に 回答する。

4.2.1 SRQ1 の答え

SRQ1:PHENIX グループは、いかにマネージされているのか?

PHENIX グループでは、グループ内で大きな力を持つ参加機関がなく、様々な 機関からメンバーが参加している。そのため、実験計画や運営ルール等グルー プ運営の重要事項を決める際には、参加大学・研究機関の代表者がグループ代 表者を選び、グループの重要事項を議論する、間接民主制によってマネージし ている。運営に主に関与するのは、シニア研究者である。意思決定は、原則民 主的に行われており、各研究者も民主的な組織だと自覚している。論文生産シ ステムに関する事項や組織運営に関するルール等の変更は、必要に応じて適宜 行われており、その際は参加機関委員会の議決等によって決定される。

PHENIX グループでは、物理研究の遂行にあたっても民主的な意思決定が行わ れる。明文化されたルールに従って常時複数の物理解析グループや PPG が物理 の研究を進め、全員の合意がなければ先のプロセスに進むことができない。

PHENIX グループメンバーであれば、誰でもいつでもどの活動へも参加が可能 である。プレリミナリーの取得や論文発表最終決定等、明確な内部審査ルール を持っていると共に、それらのマイルストーンまでの間は、自発的な進捗報告

等、緩い管理で研究が進められている。中堅研究者が定例報告会で司会を務め つつ、保有する知識・知恵を活用して厳しい質問を浴びせること、シニア研究 者が今まで培ってきた知識・知恵によって論文に問題ないか判断することによ り、物理研究の品質保証に貢献しつつ実験グループを運営している。

また、自発的な役割分担・分業化により、グループ全体の作業が滞りなく進 むよう、緩やかな調整が行われている。

4.2.2 SRQ2 の答え

SRQ2:PHENIX グループは、いかに論文を生産しているのか?

グループの総力を最大化するため、少人数での議論・中規模での議論・グル ープ全体での議論に、段階を分けている。具体的には、①検出器製作・アップ グレード、②検出器の運転,各検出器からのデータ収集、③実験データキャリ ブレーション・プロダクションジョブ、④データ解析、⑤予備的承認会議、⑥ 学会発表、⑦論文執筆、⑧論文のレビュー/論文内部審査、⑨論文発表最終決 定と 9 段階を経て論文が生産される。物理研究の品質に大きく関わる予備的承 認会議や論文執筆については、手順・ルールを定めている。

検出器の製作・アップグレードから実験データキャリブレーション・プロダク ションジョブまでは、PHENIX グループ全員が働き、最低限求められる責務を果 たし、協調しないと、実験データの統合までたどり着かない。

実験データの統合後始められるデータ解析から学会発表までは、少人数での 議論、中規模での議論が中心となる。たとえば PHENIX グループ内で人気のある テーマの場合、より早くより正確な物理研究の成果を出すことをめぐって、激 しい競争が起きている。競争の状況は、PWG における研究進捗状況の報告と質疑 応答などを通じて、PHENIX グループ全体に公開されている。データ解析チーム を中心とした少人数での議論と、PWG における中規模での議論は、適宜繰り返さ れる。どの議論の場にもシニア研究者・中堅研究者が積極的に関わり、大学院 生・ポスドクの知の創造を助ける役割を果たしている。

論文執筆以降は、PHENIX グループとして発表する論文の品質を向上させるこ とに全力が注がれる。品質の担保に重要な役割を果たしているのは、内部レビ ュー委員会と PHENIX グループ全体のレビューである。メンバーから寄せられた コメントを全て解決して全メンバーの合意が得られないと、論文発表すること

はできない。

このように、論文完成までの 9 段階で、バランスを取りつつ競争と協調のモ ードに分かれることで、大規模グループのスケールメリットを活かして論文の 品質を担保しながら論文を生産している。

4.2.3 SRQ3 の答え

SRQ3:PHENIX グループのメンバーはどのようなインセンティブに影響を受けて、

モチベーションを維持しながら研究活動を行っているのか?

大前提として PHENIX グループのような大規模加速器実験は、ある程度の研究 者がいなくては成立しない。参加メンバー数が予算額にも影響すると共に、ラ ンのシフトをカバーする人数がいないことには、実験を行うことができないの である。自発的な意思により加入した研究者により構成される自律的な組織に おいて、大人数の協調に基づいた実験であると言える。ゆえに、シフトだけを 取ってプロダクションジョブや物理の解析等の追加の貢献をしないメンバー、

フリーライダーに対して、シフトを取ってくれるだけでもありがたいと考えら れ、何も罰則を設けていない。シフト以外の貢献については、メンバーの自発 的な意思に任されている。

この前提を踏まえると、グループの執行部がマネジメントをする上で、多く の人材、できる限り良い人材を PHENIX グループに引き付けること、グループに 加入している研究者が良い研究成果を出すよう研究に邁進する環境を整えるこ と、メンバーにモチベーションを高く維持してもらうことが、最優先となる。

執行部としては、実験をまず成立させること、その上で、研究者の人数が増え れば、研究成果の数も増えるという戦略を取らざるを得ない。したがって、グ ループメンバーとしての義務はランのシフト取得 1 週間のみとしている。その 他の活動は各メンバーの自発性に任されているが、論文の仕上げにおいてはグ ループ全員の参加を促した上、グループ内の誰にでも良い成果を出せるチャン スがあると全員が納得できるようなグループ運営を行い、公平性を担保した上 で、物理研究の内実で正々堂々と勝負できる環境を整えている。

個々の研究者は、環境を十分に利用して、自分の関心のあるテーマに取り組 み、研究成果を出し、PHENIX グループから報奨として学会発表者に指名され、

より良いキャリア・ポジションを得ることをモチベーションにしている。そし

て、PHENIX グループとしては研究者の貢献度に報いるための仕組みを整え、イ ンセンティブを参加者に提供できるよう準備している。

4.2.4 MRQ の答え

MRQ:多様なメンバーから成る PHENIX グループでは、いかに知を創造・共有・

活用して研究を行っているのか?

民主的な組織運営・意思決定を土台にした上で、自発的な分業・役割分担に よって研究を進めている。科学研究の本来の競争的な性質に加え、協調しなけ れば実験が成り立たない分野の特徴を、フェイズによってバランスを取ること で、大規模グループのスケールメリットを活かしている。保有している知的資 産や場はメンバーに原則全て公開している。やる気さえあれば、蓄積されてい る知を共有・活用し、論文という新たな知を創造することが可能であるように、

公平性を担保したグループが運営されている。そして、メンバーがモチベーシ ョンを高く維持し、良い研究成果を出せるように、執行部が環境を整え、国際 学会発表者や PPG という主著者チームメンバーという報奨機会を提供すること で、知の創造プロセスを回す原動力としている。

知の創造プロセスに焦点を当てると、PWG や PPG、投稿論文案内部コメントサ イトなどの場は PHENIX グループ全体に開かれているものの、現実的には 500 人 以上の研究者がいつも議論に参加しているわけではない。しかし、原理的には 機会が平等にメンバーへ与えられている。

1) 協調に基づく実験

検出器の製作・アップグレードを行い、次の検出器運転に備える。加速器を 運転するラン中に、衝突して飛び散った粒子がつくる微小な信号を、衝突点を 取り囲む検出器で測定する。検出器に不具合が起こった場合はラン担当者が伝 えられている対処法で対応できない場合はサブシステムの専門家や、困難な事 象の場合はノウハウ・知恵を蓄えたシニア研究者が呼ばれ、鮮やかに対処する こともある。測定結果に対して、キャリブレーションとプロダクションジョブ を行うことで、実験データをデータセットに統合する。PHENIX グループのメン バーが協調して実験データを創造・共有しないと、データセットを作り上げる ことができず、そもそも各自のやりたい物理の研究に辿り着けない。実験デー

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