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自作の液体セル

ドキュメント内 水の気液界面のナノスケール直接観察 (ページ 36-40)

2.2 試料の作製

2.2.1 自作の液体セル

自作した液体セルとその断面図を Figure 2.1 に示す.メンブレン付き TEM グリッド (Structure Probe. Inc., West Chester, PA, USA) を二枚重ね合わせて接着剤で固定し,それらの 間に純水を挿入して封止してある.メンブレン付きTEMグリッドはシリコン基板の上面と 下面に厚さ50 nmのSi3N4膜がついており,MEMS技術によって基板中央のシリコンがエッ チングされて観察窓が施されている.グリッドの諸元をTable 2.1に示す.

Figure 2.1 (a, b) Homemade liquid cell. (a) Top view and (b) schematic cross-section of the cell.

Table 2.1 Si-TEM Grid with a Si3N4 membrane window.

Silicon(100) substrate Silicon nitride membrane (Window’s area)

Length 3 mm 3 mm (500 µm)

Width 3 mm 3 mm (500 µm)

Thickness 200 µm 50 nm

2.2.1.1 作製方法

液体セルの作製は以下の手順で行った.

(1) グリッドの準備 (2) スペーサーの作製 (3) グリッドの重ね合わせ (4) 純水の挿入と封止

(5) 完成した液体セルの確認とTEMの試料ホルダーへの装着

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なお,(1)における基板上のコンタミの除去以外はすべてクリーンルーム内で行った.それ ぞれの行程について以下に詳細を記す.

(1) グリッドの準備

液体セルを作製する上で注意すべきことは,液体セルの内側のSi3N4膜上にコンタミを付 着させないことである.コンタミが残ると観察窓の破損やギャップの増大による分解能の 低下を招く恐れがある.そのため,タングステンプローブをマニピュレーター付き光学顕微

鏡(AxisPro, MicroSupport Co. Ltd., Japan)で操作しながら一つ一つコンタミを除去した.

(2) スペーサーの作製

二枚のグリッド間に隙間を確保するためのスペーサーを物理気相成長法(Physical vapor

deposition: PVD)を用いて蒸着した.PVDはターゲットの金属に電子線を照射し,電子線照

射によって気化した金属を試料表面に当てて蒸着する方法である.PVD による蒸着は,沸 点の高い金属を蒸着させることができる,電子線による試料のダメージが少ない,また,試 料の垂直方向に金属原子を当てることができるという特徴がある.蒸着前に観察窓の部分 にアルミニウム箔でマスクをし,その後,アドヒージョンレイヤーとしてチタン(8 nm)を蒸 着し,続いて白金(40 nm)を蒸着した.蒸着後にアルミニウム箔を取り除くとスペーサーが 完成する.(1)と同様に再度Si3N4膜上および白金薄膜上のコンタミを除去した.

(3) グリッドの重ね合わせ

二枚のグリッドを観察窓のついたSi3N4膜が向き合うようにアライメントして重ね合わせ 向かい合う二辺をエポキシ接着剤で固定して24時間乾燥させる.グリッドを固定するため にカンチレバーがついた自作の土台(Figure 2.2)を使用した.

Figure 2.2 Top view of a homemade holder for the fabrication of a homemade liquid cell.

26 (4) 純水の挿入と封止

毛細管現象を利用して純水を二枚のグリッドの間のギャップに挿入する.純水で共洗い した注射針の先端に微量の純水液滴を出し,(3)で作製したギャップの接着剤が塗布されて いない側面に液滴を接触させると毛細管現象により純水がギャップに入る.余分な液滴が 乾いたら,エポキシ接着剤で液体セルの全側面を封止して再度24時間乾燥させる.

(5) 完成した液体セルの確認とTEMの試料ホルダーへの装着

光学顕微鏡で観察窓が割れていないことを確認し,完成した試料をナイフで土台から外 す.クリーンルーム内の真空チャンバーで真空引きをし,純水が漏れ出さないこと,窓が割 れないこと,液体セル内に気泡が発生していないことを確かめてからTEMの試料ホルダー に装着した(Figure 2.3).液体セルの作製過程では,しばしば液体セルの観察部分に空気の気 泡が入ることがある[67],[83].もし,観察部分に大きな気泡が入ると,気泡と Si3N4膜の間 に非常に薄い液膜が残り,そこに電子線を照射すると気泡ではなく気泡のように見えるボ イド[83]が発生する.本研究では,TEM観察前にこのような大きな空気の気泡は液体セルの 中に含まれていないことを確認した[84].

Figure 2.3 (a, b) Top view of (a) a tip of a TEM holder and (b) a head part of a TEM holder.

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2.2.1.2 液体セルの液膜の厚さ計測

液膜の厚さをレーザー顕微鏡(VK-9710, KEYENCE, Japan)を用いて計測した.レーザー顕 微鏡は,試料にレーザー光を照射して試料の反射光の輝度が最大となる点の情報から表面 形状を測定するものである.レーザー光が透過する透明の層が複数重なった試料にレーザ ー光を照射すると,それぞれの層の界面で反射光の光量が異なる.それぞれの層での反射光 の最大値から焦点距離を検出し,高さ方向の差異を算出することで膜厚を測定することが できる.

液体が封止された液体セルの観察窓の部分にレーザー光を照射すると,2つのピークが得 られた.本来ならば,レーザー光を照射した部分には,上側のSi3N4膜と純水と下側のSi3N4

膜の3種類の層があり,レーザーは4種類の界面(大気と上側のSi3N4膜の界面,上側のSi3N4

膜と純水の界面,純水と下側のSi3N4膜の界面,下側のSi3N4膜と大気の界面)を透過するた め,4つのピークが得られるはずである.しかし,2つのピークしか得られなかった理由は,

Si3N4膜と純水の液膜がそれぞれ非常に薄いため,高さ方向に十分な分解能が得られずに,

上側のSi3N4膜と純水の界面と純水と下側のSi3N4膜の界面を識別できなかったためである と考えられる.このことから,レーザー顕微鏡の液膜測定で得られる膜厚は,上側のSi3N4

膜と下側のSi3N4膜の間の厚さつまり,液体セルのTEM観察部分全体の厚さとなる.また,

観察窓の中心と端付近の膜厚を測定したが,どの点でもピークは2つしか得られず,算出さ れた膜厚は700-750 nmだった.よって,Si3N4膜の厚さが50 nmであるから,上下二枚の Si3N4膜の厚さを除くと,純水の液膜の厚さは600-650 nmであると求められた.TEMを用 いた観察では電子線の照射によってSi3N4膜がたわむことが報告されている[85].そのため,

レーザー顕微鏡によって測定した膜厚よりも,TEM 観察時の膜厚は大きくなっている可能 性がある.しかし,本研究では,電子線を照射した位置は窓の縁付近であり,Si3N4膜のた わみの影響は少ないと考えられる.仮に観察時の膜厚が 600-650 nm より大きくなったと しても,考察内容には影響を与えない.

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