表 7 壊疽性胆囊炎における各 CT 所見の診断能(n=75)
CT 所見 感度 特異度
胆囊壁内気腫,胆囊内気腫 7.6 % 100 %
内腔の膜様構造 9.8 % 99.5 %
胆囊壁不整・欠損像 28.3 % 97.6 %
胆囊周囲膿瘍 15.2 % 96.6 %
胆囊壁内線状構造 37.0 % 89.9 %
胆囊周囲肝実質濃染 27.2 % 89.3 %
胆囊周囲液体貯留 53.3 % 87.0 %
胆囊内結石 47.8 % 83.2 %
胆囊周囲炎症像 78.3 % 72.1 %
胆囊膨満 88.0 % 59.1 %
胆囊壁肥厚 88.0 % 57.7 %
(文献 86 より和訳引用)
a b
図 8 急性壊疽性胆囊炎の CT 所見(急性胆管炎・胆囊炎診 療ガイドライン 2013 より引用)
急性壊疽性胆囊炎,胃癌術後
a.単純 CT では胆囊腫大と壁肥厚を認める。胆囊内腔は 高吸収(*)を呈している。
b.造影ダイナミック CT 動脈相では胆囊壁には明らかな 造影効果は認められない(矢印)。緊急手術を施行した。
組織学的には胆囊壁に広範な出血性壊死を認めた。
図 9 急性結石性胆囊炎の MRI 所見 70 歳代男性,急性結石性胆囊炎
MRI T 2 強調像(ssfse)。拡散強調像 MRCP 画像(参考)
a:胆囊内に低信号の胆石を認める(矢頭)。胆囊は腫大し,壁肥厚(黒矢印)を認める。
b:拡散強調像では胆囊壁肥厚が明瞭である(矢印)。胆囊頸部に debris の堆積が高信号で描出されてい る(*)。
c:MRCP 画像。後区域胆管が描出されている(矢印)。
a b c
図 10 急性結石性胆囊炎の MRI 所見 40 歳代男性,急性結石性胆囊炎
上:造影 MRI 早期相(右)門脈相(左)
下:造影 CT 早期相(右)門脈相(左)
胆囊内に無数の signal void を認める(胆石,矢頭)。
胆囊壁の造影効果は明瞭である(矢印)。
造影 CT と比べ,造影 MRI のほうが壁の造影効果が明瞭に描出されている。また胆石の描出能も MRI が CT より優れている。
急性胆囊炎の画像診断として腹部超音波検査(US)がまず行われるべき検査であるが,術者のスキル,患 者の状態によって成因である胆石や総胆管結石がはっきりしない場合があること,また壊疽性胆囊炎の診断が 難しい(OS)88)ことがあるため,状況に応じて造影 CT 検査や MRI 検査が推奨される(CS)89,90)。
MRI は,濃度分解能が高く,胆囊の腫大や壁肥厚,胆囊周囲の炎症性変化の描出が可能で,急性胆囊炎の 存在診断に有用である(SR)91,92),(表 8)。
急性胆囊炎では MRI 上,胆囊腫大,壁肥厚,胆囊周囲の炎症性変化が生じる。特に T 2 強調画像での peri-cholecystic high signal は急性胆囊炎の診断に有用である(SR)92)。Pericholecystic high signal は,胆囊周囲 液体貯留像や浮腫像に相当する。ただし,急性肝炎や肝硬変などで腹水が存在するような場合,pericholecys-tic high signal と同様な所見を呈するので注意を要する(SR)92)。
造影ダイナミック MRI の動脈相ではダイナミック CT と同様に急性胆囊炎では胆囊床周囲肝に濃染を認め る。MRCP は造影剤を用いることなく全胆道の描出が可能であり,胆道系解剖の把握(副肝管や後区域胆管 の早期分岐などの破格)が容易であるため,術前精査に有用である。また MRCP では,胆囊頸部結石,胆囊 管結石の描出率が,US よりも良好である(OS)64)。
また,メタ解析(2012 年)では急性胆囊炎の MRI 診断能は感度・特異度 85 %(95 % CI:66 %─95 %)・
81 %(95 % CI:69─90 %)(MA)60)と良好な結果が報告されている(図 9,10,動画)
動画 URL【http://www.igakutosho.co.jp/movie/movie 06.html】(ユーザー名:igakutosho,パスワード:19641212)
しかし,このメタ解析は 2000 年前後の 3 本のコホート研究あるいは横断研究を元にした成績であるため,
最新の MR 装置および撮影シークエンスを用いるとさらに良好な診断能が十分に期待される。MRI/MRCP で は非造影である場合でも,胆囊壁肥厚,胆囊壁周囲液体貯留,胆囊腫大の描出は良好であり,造影 MRI に比 べて非劣勢であることが報告されている(OS)93)。慢性胆囊炎と急性胆囊炎の鑑別についても MRI が有用で ある。造影 MRI で胆囊壁肥厚と肝床の早期濃染がみられれば特異度 92 %で急性胆囊炎と診断でき(OS)94), CT と比較し,MRI T 2 強調像の胆囊周囲脂肪織の異常信号が特異度の高い所見と報告されている(OS)95)。 MRI/MRCP はコストが高い(CPG)17)ものの,診断能については MRI/MRCP が腹部超音波検査をやや上回っ ている。しかし,MRI/MRCP では良好な画像を得るために患者の安静が保てることが必須となる。
急性腹症を示す急性胆囊炎症例では安静維持が困難であることが多く,それにより画像クオリティの低下が 危惧される。また MRI 未対応の体内金属(ペースメーカーや人工内耳など)が埋め込まれている患者では検 査できないなど,US や CT と比べてややハードルが高い検査である。MRI/MRCP は腹部超音波検査で診断 が確定的でない場合に,行うことが推奨され,推奨度を 2 とした。
表 8 MRI の急性胆囊炎に対する診断精度
報告者(報告年) 症例数 感度 特異度
Håkansson91)(2000) 94 88 % 89 %
Regan92)(1998) 72 91 % 79 %
(文献 67 より引用)
5)ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)
急性胆囊炎の診断そのものには ERCP は不要である。かつては胆囊摘出術の術前検査として,胆管結石の スクリーニング,胆道系の解剖の把握を目的として広く行われていたが,MRCP,drip infusion cholangio-graphic─computed tomography(DIC─CT)などの非侵襲的な検査法の台頭,手術手技の向上によって,そ
の機会は減少してきている(OS)96,97)。治療的応用として,内視鏡的経乳頭的胆囊ドレナージがあるが
(CS)98),percutaneous transhepatic gallbladder drainage(PTGBD)や percutaneous transhepatic gallblad-der aspiration(PTGBA)の有効性(OS)99),(CS)100)が認められつつある現在,限られた症例(凝固障害や 腹水貯留による経皮経肝的アプローチ困難例や手術ハイリスク例など)のみが適応になっている。
6)EUS(endoscopic ultrasonography)
胃や十二指腸内腔側から走査する EUS は高周波による近距離走査を可能とし,消化管内のガスや患者の体 型に影響されず高い局所分解能を有する。検査の性格上,急性胆囊炎の急性期には行われることは少なく,存 在診断に関するまとまった報告はない。成因診断に関しては,体外式超音波検査よりも優れている。胆囊結石 の存在が疑われるものの体外式超音波検査で結石が描出されない症例でも EUS では高率に小結石が描出され る(OS)101,102)。また悪性疾患との鑑別および悪性疾患の進展度診断にも用いられる(CS)103)。合併症が少なく 安全に施行可能であるが,侵襲的で苦痛を与える場合がある。
7)
99 mTc ─ hepatobiliary iminodiacetic acid(HIDA)scan
99 mTc─HIDA は胆汁塩,遊離脂肪酸,そしてビリルビンとともに肝細胞に取り込まれ,ビリルビンと同様 に胆管に排泄される。この99 mTc─HIDA を用いた HIDA scan は 1980 年代より胆道疾患に対して広く用いら れてきた核医学検査の 1 つである(EO)104)。撮像プロトコールとして,核種注入後最初の 60 秒を 1 〜 3 秒お きに撮影(blood flow phase)し,以後 1 分おきに 1 時間撮影を繰り返す。通常,胆囊は 30 分程度で描出さ れるが,急性胆囊炎では炎症あるいは胆囊頸部に嵌頓した結石により,描出されない。静注後 60 分で胆囊が 描出されない場合,急性胆囊炎と強く疑うことができる。正診度を高めるために 4 時間後の追加撮影を加える 方法や 30 分後に塩酸モルヒネを投与する方法がある(EO)104)。HIDA scan の急性胆囊炎の診断能は感度 94 %(95 % CI 92─96 %),特異度 90 %(95 % CI 85─93 %)と報告されており(MA)60),この結果は腹部 超音波検査,MRI/MRCP 検査の診断能より勝る。しかしながら HIDA scan は核種を得るための時間がかか ること,検査時間がかかること,被ばくがあること,コストが高いことなどから,利便性に大きな制約がある ため,急性胆囊炎への利用は限定的である(CPG)2,17)。
近年は肝細胞特異性造影剤(特に Gd─EOB─DTPA 造影剤)を用いた contrast enhanced magnetic reso-nance cholangiography(EOB─MRC)の有用性が報告されており(OS)105),99 mTc─HIDA scan と比べて同 等という研究結果も報告されている(CS)106)。
8)DIC(drip infusion cholangiography),DIC ─ CT
DIC はヨード造影剤(ビリスコピンⓇ)を点滴静注した 30 分から 60 分後に,単純 X 線撮影することで胆管 と胆囊を可視化できる簡便な方法で,かつては術中胆道造影以外の唯一の胆道造影法として急性胆囊炎,胆囊 結石の診断に用いられていた。しかし,診断能が低く(CS)107),他のすぐれたモダリティーの台頭によってそ の役割は薄れている。一方ビリスコピンⓇ投与後に CT を撮影する DIC─CT は極めて良好なコントラストおよ び空間分解能を有しており,また三次元再構成による胆道解剖の立体的把握に有用である(EO)108)。しかし 直接胆道造影と同様に胆道閉塞部位より末梢側の胆道が描出されない欠点がある。また DIC─CT ではビリス コピンⓇによる副作用が 0.8 〜 3.4 %で認められる(CS)109)。通常はより非侵襲的で閉塞部より末梢側の胆道の 描出も可能な MRCP が優先されるが,MRI 検査ができない場合あるいは胆道手術前に詳細な胆道解剖情報が 必要な場合に,DIC─CT が考慮される。