※ TG13/18 急性胆管炎診断基準(表1)と TG13/18 急性胆囊炎診断基準(表 2)を用いる。
† TG13/18 急性胆管炎重症度判定基準(表 3)と TG13/18 急性胆囊炎重症度判定基準(表 4)を用いる。
‡ Charlson co-morbidity index(CCI)(文献 10)と米国麻酔学会(ASA)術前状態分類(文献 11)を参照する。
基本的初期治療,臓器サポート(必要時)
専門施設へ搬送
急性胆管炎・胆囊炎 フローチャート
に基づいた 治療 重症度判定 †
全身状態の評価 と ‡
・バイタルサイン
・診察 の測定
・検査 ・診断基準 ※
他疾患 急性胆道炎
の疑い
急性胆管炎 急性胆囊炎 または
図 1 急性胆道炎に対する初期対応フローチャート
急性胆道感染が疑われる患者の初期診療においては,まず,バイタルサイン測定による緊急性の有無の評価 を行う。緊急性ありと判断された場合は診断確定を待たずに初期治療と必要に応じて呼吸・循環管理を直ちに 開始するべきである。
次に詳細な診察(問診,理学的所見)に引き続き,血液検査と画像検査を行い,それらの結果を踏まえて急 性胆管炎・胆囊炎の診断基準(CS)4,7),(CPG)5,6,8,9)を用いて診断を確定する。
診断が確定したら直ちに初期治療を開始するとともに急性胆管炎・胆囊炎の重症度判定基準を用いて重症度 判定を行うとともに全身状態の評価を行う。全身状態の評価には Charlson co─morbidity index(CCI)(Ob-servational study:以下 OS)10)や The American Society of Anesthesiologists(ASA)Physical Status(PS)
classification(Expert opinion:以下 EO)11)が有用である。重症度を判定したら急性胆管炎・胆囊炎診療フ ローチャートに基づいて治療方針を決定し迅速に遂行する。
①急性胆道炎が疑われる全身症状・所見
急性胆道炎を疑うべき症状としては,発熱,悪寒,腹痛,黄疸,悪心,嘔吐,意識障害がある。これらの症 状を 1 つでも認める場合は急性胆道炎を疑って,診断を進める必要がある(CPG)12)。
②急性胆道炎が疑われる患者に対する診察
バイタルサインには,血圧,脈拍数,呼吸数,体温,尿量,動脈血酸素飽和度,意識レベルなどが含まれ る。問診では,症状の出現時期と性状について詳細な聴取を行う。既往歴,常用薬についても詳細に聞き取り を行う。理学的所見では,意識状態の評価とバイタルサインの測定は言うに及ばず,眼球結膜の黄染の有無,
圧痛の部位と程度,腹膜刺激症状の有無を必ず確認する。急性胆囊炎に特徴的な所見である Murphy’s sign
(右季肋下部を圧迫することで深吸気時に痛みのために呼吸が止まる徴候)の有無も必ず確認する。
③急性胆道炎の診断に必要な検査
表 1 急性胆管炎診断基準
急性胆管炎診断基準
A.全身の炎症所見
A ─ 1.発熱(悪寒戦慄を伴うこともある)
A ─ 2.血液検査:炎症反応所見 B.胆汁うっ滞所見
B ─ 1.黄疸
B ─ 2.血液検査:肝機能検査異常 C.胆管病変の画像所見
C ─ 1.胆管拡張
C ─ 2.胆管炎の成因:胆管狭窄,胆管結石,ステント,など
確 診:A のいずれか+B のいずれか+C のいずれかを認めるもの 疑 診:A のいずれか+B もしくは C のいずれかを認めるもの
(文献 4 より引用)
→ p. 58(第Ⅴ章 急性胆管炎の診断基準と重症度判定基準,1.診断基準)を参照。
表 2 急性胆囊炎診断基準
急性胆囊炎診断基準
A.局所の臨床徴候
A ─ 1.Murphy’ s sign
A ─ 2.右上腹部の腫瘤触知・自発痛・圧痛 B.全身の炎症所見
B ─ 1.発熱
B ─ 2.CRP 値の上昇 B ─ 3.白血球数の上昇
C.急性胆囊炎の特徴的画像検査所見
確 診:A のいずれか+B のいずれか+C のいずれかを認めるもの 疑 診:A のいずれか+B のいずれかを認めるもの
(文献 7 より引用)
→ p. 86(第Ⅵ章 急性胆囊炎の診断基準と重症度判定基準,1.診断基準)を参照。
血液検査は,診断と重症度判定のために,白血球数,血小板数,CRP,アルブミン,ALP,γ─ GTP,
AST,ALT,ビリルビン,BUN,クレアチニン,プロトロンビン時間(PT),PT─INR などを測定し,血液 ガス分析も行う(CPG)12)。高熱を認める場合はこの時点で血液培養を施行することが望ましい。
画像検査では,腹部超音波検査と CT は急性胆道炎の診断に有用で,少なくともどちらかを行うべきであ る。特に腹部超音波検査は,術者の技量や患者の状態に左右されやすいなどの短所があるものの,低侵襲性,
普及度,簡便性,経済性から急性胆道炎が疑われる患者に対して最初に行うべき画像検査である(CPG)6)。 急性胆管炎については画像検査では炎症の有無についての評価は困難だが,胆管拡張,胆管閉塞・狭窄や胆 管結石など胆汁うっ滞の有無とその成因の評価が可能である(CPG)12)。
急性胆囊炎に特徴的な画像所見は,胆囊腫大,胆囊壁肥厚,胆囊結石,胆囊周囲液体貯留,胆囊周囲膿瘍 と,腹部超音波検査での胆囊内の sludge・debris 像と sonographic Murphy’s sign(プローブで胆囊を圧迫す ると痛みを訴える)などである(CPG)12)。
④急性胆道炎の診断基準
上記で得られた診断に必要な所見を踏まえて,TG13/18 急性胆管炎診断基準(表 1)(CS)4),(CPG)5,6)と TG13/18 急性胆囊炎診断基準(表 2)(CPG)8,9)を用いて診断を行う。
1)初期治療
急性胆管炎または急性胆囊炎の診断が確定したら,血圧,脈拍,尿量の厳重なモニタリングの上で,すぐに 十分な輸液,抗菌薬投与,鎮痛薬投与などの初期治療を開始する。ショック状態にある場合は診断確定を待た ずに初期治療を開始するべきなのは言うまでもない。急性胆管炎・急性胆囊炎における絶食の是非に関する質 の高いエビデンスはないが,緊急ドレナージに即応できるように絶食を原則とする(CPG)12)。鎮痛薬投与 は,理学的所見がマスクされ診断を誤ることが懸念されるが,腹痛を主訴に救急外来を受診した患者に対する 塩酸モルヒネ静注とプラセボ静注による無作為化比較試験(RCT)では両者で診断率に差がなかったとされ
(Randomized controlled trial:以下 RCT)13,14),早期から積極的に行うべきである。なお,塩酸モルヒネに代
表される麻薬性鎮痛薬とその類似薬(非麻薬性鎮痛薬,pentazocine など)は,Oddi 括約筋の収縮作用のため 胆道内圧が上昇する可能性があるので,慎重な投与を要する。
重症化,すなわち,ショック(血圧低下),意識障害,急性呼吸障害,急性腎障害,肝障害,DIC(血小板 数減少)のいずれかを認める場合は,適切な臓器サポートや呼吸循環管理(人工呼吸管理,気管挿管,昇圧剤 の使用など)とともに緊急に胆道ドレナージを考慮する必要がある(CPG)12)。
抗菌薬投与については,TG18:Antimicrobial therapy for acute cholangitis and cholecystitis(CPG)15)を 参照のこと。
2)重症度判定と全身状態の評価
初期治療と並行して TG13/18 急性胆管炎重症度判定基準(表 3)(CS)4),(CPG)5,6)または TG13/18 急性胆 囊炎重症度判定基準(表 4)(CPG)8,9)を用いて重症度判定を行うとともに,CCI と ASA─PS classification で 全身状態の評価を行う。初期治療に対する反応に応じて,頻回に重症度の再評価を行うべきである。
対応が困難な場合は,緊急手術・IVR・内視鏡などの対応可能な専門施設への搬送を考慮する。
表 3 急性胆管炎重症度判定基準
急性胆管炎重症度判定基準 重症急性胆管炎(Grade Ⅲ)
急性胆管炎のうち,以下のいずれかを伴う場合は「重症」である。
・循環障害(ドーパミン≧5 μg/kg/min,もしくはノルアドレナリンの使用)
・中枢神経障害(意識障害)
・呼吸機能障害(PaO
2/FiO
2比<300)
・腎機能障害(乏尿,もしくは Cr>2.0 mg/dL)
・肝機能障害(PT ─ INR>1.5)
・血液凝固異常(血小板<10 万 /mm
3) 中等症急性胆管炎(Grade Ⅱ)
初診時に,以下の 5 項目のうち 2 つ該当するものがある場合には「中等症」とする。
・WBC>12,000,or <4,000/mm
3・発熱(体温≧39℃)
・年齢(75 歳以上)
・黄疸(総ビリルビン≧5 mg/dL)
・アルブミン(<健常値下限×0.73 g/dL)
上記の項目に該当しないが,初期治療に反応しなかった急性胆管炎も「中等症」とする。
軽症急性胆管炎(Grade Ⅰ)
急性胆管炎のうち,「中等症」,「重症」の基準を満たさないものを「軽症」とする。
(文献 4 より引用)
→ p. 74「第Ⅴ章 急性胆管炎の診断基準と重症度判定基準,6.重症度判定基準」を参照。
表 4 急性胆囊炎重症度判定基準