急性胆管炎は胆管内に急性炎症が発生した病態であり,胆管内の著明に増加した細菌の存在および胆管内圧 の上昇の 2 因子が不可欠である。そのため,急性胆管炎診療の画像検査における役割は,胆管内圧上昇を反映 した胆管拡張所見の検出と,その原因の検索が中心となる。実際,腹部超音波検査による急性胆管炎そのもの の診断に関する報告はなく,成因となっている胆管狭窄/閉塞の診断能に関する報告が認められるのみであっ た。腹部超音波検査ではドプラ超音波を適宜使用しながら,門脈に伴走する胆管の異常拡張を容易に捉えるこ とができ,またそのような場合,原因検索を同時に行うことができる。胆道結石は acoustic shadow を伴う結 節状の高エコーを呈し,また胆管の悪性狭窄では狭窄した胆管周囲の腫瘤が通常低エコー域として描出可能で ある(図 1 a,b,図3a)。Abboud らの meta─analysis によると腹部超音波検査における胆管拡張および総胆 管結石の診断能(間接所見)の感度・特異度はそれぞれ 42 %(95 % CI: 28 ─56 %)・96 %(95 % CI: 94─
98 %),38 %(95 % CI: 27─49 %)・100 %(95 % CI: 99─100 %)と報告され,特異度は高いものの十分な 感度が得られていない(EO)43)。一方,閉塞性黄疸症例に対する腹部超音波検査による成因診断のうち,胆管 結石の診断感度・特異度は100 %・89 %,胆管癌の感度・特異度は 98.78 %・83.33 %と報告されている(OS)44)。 腹部超音波の検査精度は CT 検査と比べ術者の技量や患者の状態(息止めや安静を保てない,腸管ガスが著 明,胆道気腫症併存など)に左右されやすい(OS)45)などの弱点があるものの,低侵襲性,普及度,簡便性,
経済性から急性胆管炎が疑われる患者に対するまず行うべき画像検査といえる。
CT 検査は,腹部超音波検査と比べ客観性に優れている(図 2 a,b)。しかし,結石の吸収値は結石内のカ ルシウム濃度(リン化カルシウム,炭酸カルシウム)に依存するため(OS)46),CT での胆道結石の検出感度 は 25 %〜 90 %に留まる(EO)47)(図 2 a,図 3 b)。造影 CT では肝実質が染影されることで胆汁を容れる拡 張した胆管は鮮明な低吸収構造として描出できる。また胆道狭窄の原因診断(胆道癌,膵癌,硬化性胆管炎な ど)の向上に大きく貢献する(図 4)。また,造影 CT は局所合併症(肝膿瘍,門脈血栓などの局所合併症)
の診断にも有用である(EO)47),(OS)48,50),(CS)49)(図 5,6)。さらにダイナミック CT では直接的に胆管の 炎症を反映した一過性早期濃染(transient hepatic attenuation difference:THAD)により,急性胆管炎の診 断に寄与する可能性がある(図 4 b,c)(CQ 12.Future Research Question 参照)。
MRCP は非侵襲的に胆管を描出することができ,閉塞の成因となる胆管結石や悪性疾患の描出は良好であ る(EO)51)(図 2 f,図 3 d)。
臨床的には急性腹症を示すその他の疾患の除外も必要であるため,広範囲に撮影できる CT が腹部超音波に 先んじて施行される場合も多い。したがって急性胆管炎を疑う場合は腹部超音波検査あるいは CT 検査を行う
*
CBD tumor Pancreas
a b
図 1 腹部超音波検査による急性胆管炎の成因検索(文献 1 より引用)
a:腹部超音波検査
急性胆管炎症例にみられた総胆管結石 膵内胆管に結石を認める。
b:胆管炎の原因としての膵頭部癌
胆管拡張がみられ,胆管は膵頭部腫瘍により急峻に途絶,閉塞している。
a c
e b
d f
*
図 2 総胆管結石,非嵌頓例(文献 1 より引用)
単純 CT(a),造影 CT(b),MRI T 1 強調像(c),MRI SSFSE T 2 強調像(d),MRI SSFSE T 2 強調 像冠状断(e),3 D MRCP(f)
a:単純 CT で総胆管内に高吸収結節を 2 つ認め,総胆管結石と診断できる(矢印)。
b:造影 CT では総胆管結石は周囲の臓器の造影効果により見えにくくなっている(矢印)。
c:MRI T 1 強調像では結石は明瞭な高信号を示す(矢印)。
d:T 2 強調像では結石は signal void を呈するため,高信号を示す胆汁を容れた胆管内において良好なコ ントラストを示す(矢印)。
e:SSFSE T 2 強調像冠状断では 2 つの総胆管結石が明瞭に同定できる(矢印)。
f:MRCP(heavily T 2 強調画像)では結石は signal void を示す(矢印)。本例は左肝管が右肝管より右 側にまず分岐し,次いで右肝管を腹側に跨いで分岐している。左肝管にも結石(矢頭)があり,外側区胆 管末梢に拡張を認める(*:肝囊胞)。
a
c
b
d
CBD
図 3 総胆管結石,非嵌頓例(文献 1 より引用)
腹部超音波(a),単純 CT(b),MRI T 2 強調像冠状断(c),MRCP(d)
a:B モード超音波では総胆管内に高エコー構造を認める。アコースティックエコーは 弱い。総胆管結石と考えられる。
b:単純 CT では総胆管に明らかな異常は指摘できない。
c:MRI T 2 強調像冠状断では総胆管内に 2 つの低信号結節を認める。
d:MRCP でも同様に総胆管結石が同定可能である。上流側の胆管の拡張はみられな い。
図 4 肝外胆管癌(文献 1 より引用)
単純 CT(a),ダイナミック造影 CT 早期相(b),ダイナミック造影 CT 早期相冠状断像(c)
a:単純 CT では上部胆管の全周性壁肥厚を認める(矢印)。
b:造影 CT では上部胆管壁の全周性壁肥厚に造影効果が明瞭である(矢印)。
c:造影 CT 冠状断像では上部胆管の壁肥厚が明瞭にみられる(矢印)。また上流側の胆管拡張も明瞭に認 められる(矢頭)。
なお,b,c では肝実質に不均一な造影効果を認め,胆管炎が併発していると考えられる。
a b c
図 5 急性胆管炎,肝膿瘍(十二指腸癌術後例)(文献 1 より引用)
ダイナミック CT 早期相(a,b,c から順に頭側→尾側)
肝実質の不整な早期濃染を認める(矢印)。胆管内には胆管空腸吻合術後の pneumobilia を認める。
b,c:asterisk で示すように S 3,S 5 に多房性囊胞を認め,壁の造影効果を伴っている。膿瘍と考えられ る。
a b c
*
*
図 6 急性胆管炎,門脈血栓(文献 1 より引用)
ダイナミック CT(a:単純,b:早期,c:平衡相)
単純 CT では門脈臍部が淡い高吸収を示すが,不明瞭である(a,矢印)。門脈左枝に造 影効果はなく,門脈血栓と考えられる(b,c 矢印)。早期相で左葉に区域性の早期濃染 を示すが(b,破線),平衡相では不明瞭となる。門脈血流低下に伴う代償性動脈血増 加の所見である。
a b c
図 7 急性胆管炎症例(a,b)と正常例(c,d)(文献 1 より引用)
それぞれダイナミック造影 CT 早期相を 2 種類の表示条件で示した。
a:通常の条件では肝のびまん性不均一早期濃染は不明瞭である。
b:Window level を上げ,window width を狭く設定することで肝のびまん性不均一早期濃染が明瞭とな る。
本例のびまん性不均一早期濃染は後期相で消失した(THAD)。
c:a と比べ,早期相において肝の濃染は弱い。正常肝の早期相画像所見である。
d:b と同一条件の Window width/level においても肝に異常濃染は指摘できない。
THAD なしと判断できる。
WW : window width, WL : window level, THAD : transient hepatic attenuation difference
a b c d
WW/WL:350/30 WW/WL:70/100 WW/WL:350/30 WW/WL:70/100
ことを推奨する。MRI/MRCP 検査は十分な診断能を有する客観性のある検査ではあるものの,普及度および 簡便性の観点から通常第一選択的検査にはなり得ない。