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第 4 章 進化的多目的最適化 39

4.5 進化的多目的最適化(6 部屋と廊下の場合)実験

4.5.3 考察

第4試行:共同通路側の2つの寝室は,1つは狭く,もう1つはアクセスが 出来ない.水廻りには住戸内廊下を通じてアクセスできる.その住戸内廊下 はL字形になっており,先に述べた水廻りへのアクセスから曲がった先は無 駄である.これらの他は台所の一部からのアプローチと居間への繋がり,ベ ランダ側の寝室などは問題ない.

第5試行:住戸内廊下の端が玄関として上手く機能し,台所へと繋がってい る.そして台所から居間への繋がりは90度曲がっているので,住戸内廊下と 台所の接点だけで視線の制御を行へば良い.居間の広さは十分すぎるので,

それを狭い台所,共同通路側の2つの寝室,水廻りの大きさと調整の必要が ある.この間取りも第1試行の間取りと同様に,採光のために居間と台所の 境界を可動間仕切り等にする必要がある.

第6試行:設定した条件によって最も一般的に考え得る間取りである.住戸 内廊下の幅が大きいが,好みによってはL(居間)とK(台所)が入れ替わっ た良いとすることも考えられる.この間取りも第1試行の間取りと同様に,

採光のために居間と台所の境界を可動間仕切り等にする必要がある.

第7試行:住戸内廊下の端が玄関になり,90度曲がって居間へと繋がる.そ こでの住戸内廊下の幅は2mとやや大きめであるが,上下2つの寝室への入 り口をここに設定するのならばあり得る大きさである.居間と台所の位置関 係は好みの分かれるところではある.この間取りも第1試行の間取りと同様 に,採光のために居間と台所の境界を可動間仕切り等にする必要がある.さ らに寝室の1つも無窓となるので,この寝室と居間・台所の境界も可動間仕 切り等にする必要がある.

第8試行:住戸内廊下が上手く機能していないが,台所から共同通路側の寝 室へ,居間から水廻りへは住戸内廊下を通じてアクセスにすることも出来る.

水廻りとベランダに面する寝室に挟まれた寝室は無窓なので,ベランダ側の 寝室あるいは居間との境界を可動間仕切り等にする必要がある.

第9試行:住戸内廊下の一端が玄関となり居間へと短い距離で続く.この間取 りも居間と台所の位置関係は好みの分かれるところである.3つの寝室と水 廻りは大きさ,形状,位置に問題は無い.この間取りも第1試行の間取りと 同様に,採光のために居間と台所の境界を可動間仕切り等にする必要がある.

第10試行:台所の一角からのアプローチになっている.この台所の幅が狭く 十分でない.一方でこの台所から続く住戸内廊下の幅が大きい.居間もやや 狭い.住戸内共同廊下を調整し北東角に位置する寝室の大きさも確保したい.

設定のような条件が与えられた時,一般に第6試行のような間取り案が考えら れるが,本システムはそれ以外にも目的条件に近い多様な間取り案を作成するこ とが出来ると言える.これらの間取り案が直接的に設計図面となるのではないが,

複数の計画案を作る際のヒントとなり,十分に空間計画支援システムの役割を果 たすと考えられる.

図 4.13: 6部屋と住戸内廊下の配置が最適化された間取りの例.10試行の中から代

表的な間取り各1を選別した.上段左から第1〜5試行,下段左から第6〜10試行.

本論文のシステムでは21個体での実験検証を主に行っているが,この個体数は 一般的なECでのものと比べて非常に少ない.この個体数で問題は無いのかを確認 するために1000個体,6目的,50世代,6部屋と住戸内廊下の計画での実験を行っ た.その結果は図4.14の通りである.21個体の場合(図4.12(b))と比べて目的6

(給排水管長)は0.07ほど良くなっているが,これ以外の目的ではそれほど差は見 受けられない.今回のシステム設定では少なくとも5つの目的については21個体

でも1000個体と同様の最適化が行われると言える.なお,計算コスト(時間)は 6日15時間13分かかった.実験では数値解析プログラミング環境はScilab-4.1.2, 計算機はDell社(Pentium 4 CPU 3.2GHz 3.19GHz, RAM 1GB),OSはMicrosoft Windows XP SP2を使用した.

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

6 Objectives

Generation

Fitness

Obj1 Area Size Obj2 Proportion Obj3 Circulation Obj4 Sunlighting Obj5 Wall Obj6 Duct

図 4.14: 1000個体,6目的,50世代,6部屋と住戸内廊下の計画での10試行平均の 収束特性.各収束曲線は,Obj1=床面積,Obj2=部屋形状,Obj3=動線,Obj4=

採光,Obj5=壁長,Obj6=管長の目的に対する収束特性を表す.