第 6 章 建築計画支援システム主観評価実験 85
6.1.1 目的と概要
この実験の主な目的はシステムの有用性を実験データ及びユーザの反応から得 ることである.今のシステムではEMOだけでは20世代前後である一つ解に収束 してしまうが,IECによってその速度の変化や違う解が得られることはあるのか を調べる.
以下に実験の概要を述べる.
• 第5章より前段階の実験である.よって配置するのは4部屋である.計画範 囲は7m×7m=49m2,個体数は21個体,計画要件なども第4章の4部屋の場 合と同様である.
• 実験の設定は次の2種類とする.なお,第4章の実験においておおよそ第15 世代から第20世代で目的値(フィットネス)の収束が見られることにより実 験世代数を15世代とし,被験者の評価による疲労度を鑑みて1つの実験あ たりの評価回数を5世代までとした.また被験者の評価と予め設定した4目 的との組み合わせ方については[26]を参考に決定した.
– 実験1:まず4目的最適化を2世代行い,次に4目的とユーザ評価によ る最適化を1世代行う.それを5回繰り返す合計15世代の実験.
– 実験2:まず4目的最適化を10世代行い,次に4目的とユーザ評価によ る最適化を5世代行う合計15世代の実験.
• 被験者は5名ずつ3種類のグループで計15名の被験者に対して実験を行っ た.各グループの構成は次のように建築計画の経験及び学習の度合いによっ て分けられる.
– 建築計画の経験及び学習のまったく無いメンバー(九州大学芸術工学府 及び芸術工学部の芸術情報系の大学院生と学部学生)で構成されるグ ループ.
– 建築計画の学習を行っているメンバー(九州大学芸術工学部環境設計学 科(建築系)学部学生)で構成されるグループ.
– 仕事として建築計画を行っているメンバー(建築士を含む建築設計事務 所所員)で構成されるグループ.
• 実験場所:九州大学大橋キャンパス5号館7階ゼミ室.
• 使用機材:ノートPC(15インチワイド画面),マウス,マウスパッド,筆 記具(シャープペンシル,消しゴム,マーカー4色),アンケート用紙,間 取り用メモ用紙(7×7グリッド).
• 注意すべき設定事項:初期乱数を同じにする.評価前のGUIボタンはデフォ ルトではクリア(無評価)状態にしておく.
• GUI(図6.1)
– 「間取り図」表示:平面図
– 1〜5点のボタン:1点が最低で5点が最高の評価点である.
– 「Generation」表示:実験の進行状況を把握できるように進化的計算の 世代数を表示している.
– 「並べ替え」ボタン:ユーザの評価に伴う疲労を軽減するために設置し ている.提示しているいくつかの個体に評価点を付けた後は,異なる 点数がバラバラに並ぶことが通常である.そこで今一度その評価点を チェックしようとした場合,全体を見比べながらの作業は容易ではなく 疲労を伴う.「並べ替え」ボタンで評価点順に個体(間取り図)とその評 価点を合わせて表示の並び替えを行えば,個体の隣同士を比較するだけ で評点チェックが行え,疲労軽減になる.
– 「次の世代」ボタン:全ての個体(間取り図)についての評価が終了し,
設定した評価すべき次の世代へ進化的計算のプロセスを進める.
– 「終了」ボタン:評価すべき世代を全て評価し終わった,あるいは途中 で評価を終える際にこのボタンによってプログラムを終了させる.
– メニューにある「表示」で間取り表示を通常の2次元平面図と壁が立ち 上がって見えるアイソメ図(3次元)とを切り替えることが出来る(図 6.2).
図 6.1: GUI
図 6.2: 2次元/3次元の表示切替.
なお,本章の実験に用いるシステムはマイクロソフト社製のVisual Studio C++
で開発を行った.