• 検索結果がありません。

第3章 顧客ロイヤルティの先行要因と結果行動

3.5. 考察と実務的示唆

61

図表3-10 顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルの検証49

(出所)筆者作成

適合度指標はχ2(814)=8916(p=.000)、GFI=.90、AGFI=.89、CFI=.96、RMSEA=.050、AIC=9180 となった。χ2検定はp < .05であったが、久保田 (2010a)の解釈と同様、χ2検定が有効に機能す るための上限データ数を示すホルターの臨界標本数(Hoelter .05=187)を、本研究のデータ数

(n=4,024)が十分に上回っていることから、その他の適合度指標で適合度を判断する。GFI、AGFI、

CFI、RMSEAは、Schermelleh-Engel et al. (2003)に示された基準をいずれも満たしていることか

ら、本研究で設定した顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動に関する仮説モデルの適合度に問題 がないことが確認された。続いて潜在変数間に設定したパスについて見てみると、バラエティ・シー キングから行動的ロイヤルティへのパスが5%水準で、それ以外のすべてのパスが0.1%水準で有意 となり、パス係数の符号も仮説と一致した。これより、H2-1-1~H2-4-5 の仮説はすべて支持され た。

62

50。長期的プロモーションは、ある一定の基準に達するまで購買を続けた顧客に対して、報奨を 提供するプロモーションであり、長期的プロモーションの実施は購買行動を習慣化させる役割を持 つ。このことから、長期的プロモーションの実施が習慣的行動を促進させ、行動的ロイヤルティの 醸成につながるという流れが想定される。

態度的ロイヤルティに大きな影響を与える顕現性に関する実務的示唆としては、セブンイレブン の「開いててよかった」が挙げられる。コンビニエンスストアが初めて登場した際、セブンイレブ ンの「開いててよかった」というメッセージが消費者の頭に刷り込まれた。消費者は、「店が開いて いない時間であった深夜や早朝に何かが急に必要になって困った」という状況をきっかけとして、

「開いててよかった」を連想し、「セブンイレブンがあって良かった」という態度的ロイヤルティを 醸成した。セブンイレブンのメッセージは、消費者の態度的ロイヤルティ形成の一連の流れを作り 上げた点で効果的であった。しかしコンビニエンスストアの24時間オープンが定着した現在、コ ンビニエンスストアで顕現性を高めるために、利便性以外の新たな価値を想起させる企業メッセー ジが求められている。北海道を中心に展開するセイコーマートは、北海道への地元愛51とできたて の温かいお弁当52をきっかけに顕現性を高めることに成功している。セイコーマートは北海道の食 材の地産地消にこだわった展開をしており、北海道色の強い店舗であることを消費者にアピールし ている。また、コンビニエンスストアでは珍しく、店で調理した出来立てのお弁当を提供するホッ トシェフというサービスも特徴としている。北海道に対する地元愛を、ある状況で感じたり、でき たての温かいお弁当が頭の中に浮かんだりすると、セイコーマートが連想されるという顕現性を作 り出している。コンビニエンスストア各社は自社を思い出させるきっかけとなるような自社の価値 体系を表したキャッチコピーを発信していくことが重要となる。

行動的ロイヤルティに大きな影響を与える習慣的行動の実務的示唆としては、コンビニエンスス トアが近年取り組み始めた長期的プロモーションが挙げられる。ローソンはペットボトル飲料を30 本購入すると、景品をプレゼントする長期的プロモーションを行った。このプロモーションが「ペッ トボトル飲料を買うならローソンで」という行動につながり、やがてはそれが習慣的行動となって、

プロモーションが終了しても店に行くという行動的ロイヤルティにつながる展開が考えられる。同 様に、セブンイレブンはコーヒー飲料に絞って、対象商品を五つ購入するごとに対象商品を一つプ レゼントする長期的プロモーションを行った53。ローソンよりも報奨が得られる基準を下げたこと で、よりお得感を演出したと考えられる。これら長期的プロモーションは購買行動の習慣化を促進 させ、行動的ロイヤルティの向上に有効に機能することが期待される。

コンビニエンスストアは、様々なメディアを活用して顧客とのコミュニケーションを深め、自社 に対する顕現性を高めるとともに、習慣的行動を促進させるようなプロモーション展開を行うこと が重要となる。これらのマーケティング活動は、態度的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの双方 を高め、その後の望ましい顧客行動(顧客ロイヤルティの結果行動)を誘引する。

3.5.2. 顧客ロイヤルティの結果行動の考察と実務的示唆

本研究では、これまで十分に整理されていなかった顧客ロイヤルティの結果行動を、将来的再訪 行動、口コミ行動、顧客間支援行動、競合忌避行動、共創行動の五つに整理している。この中で、

将来的再訪行動を除く四つの顧客ロイヤルティの結果行動については、重回帰分析により、第一段

50 詳細は第4章参照。

51 株式会社セコマWebページよりhttp://secoma.co.jp/index.html(20178月2日アクセス)

52 株式会社セコマ・ホットシェフのWebページよりhttp://www.seicomart.co.jp/instore/hotchef.html(20178月2日アクセス)

53 ローソン、セブンイレブン、いずれも2015年8月~11月までの期間に調査した時点で実施していたプロモーション。

63

階として口コミ行動が、続く第二段階で顧客間支援行動、競合忌避行動、共創行動が行われるとい う二段階の構造になっていることを明らかにした。また、本章では、顧客ロイヤルティの結果行動 は、態度的ロイヤルティおよび行動的ロイヤルティが将来的再訪行動に影響を与えるルートと、口 コミ行動をはじめとして、顧客間支援行動、競合忌避行動、共創行動に影響を与えるルートの、二 つのルートを持つことを示した。将来的再訪行動が高まるということは、将来にわたって安定的に 売上が維持されることと等しく、企業サイドから見ると「顧客囲い込みによる収益の安定化」ルー トと解釈できる。一方、口コミ行動をはじめとするもう一つのルートは、顧客と小売業との関係の みならず、顧客同士との関係も含めて、その良好な関係が小売ブランドの価値向上に資することか ら「リレーションシップ強化によるブランド価値向上」ルートと解釈できる。顧客ロイヤルティを 高めることで、企業は、「顧客囲い込みによる収益の安定化」と「リレーションシップ強化によるブ ランド価値向上」が期待できることを明らかにした点で本研究は有意義であると考える。

将来的再訪行動は態度的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの双方から、同じくらいの大きな影 響を受ける。したがって、「顧客囲い込みによる収益の安定化」を目指す小売業は、態度的ロイヤル ティと行動的ロイヤルティをバランスよく高めていく必要がある。具体的には前述の通り、顕現性 向上のためのコミュニケーション戦略の実施と、習慣的行動促進のためのプロモーション戦略の実 施が有効となる。低成長かつ過当競争の市場においては安定的な収益確保が重要な課題になってい る背景からも(高橋 2004b)、コンビニエンスストアにとって将来的再訪行動を高めることは極めて 意義深い。

「リレーションシップ強化によるブランド価値向上」ルートにおいては、第二段階の顧客間支援 行動、競合忌避行動、共創行動を促進させるためにも、最初の口コミ行動をいかに活性化させるか が大きなポイントとなる。口コミ行動へは態度的ロイヤルティの方が行動的ロイヤルティより大き な影響を与えているため、態度的ロイヤルティの向上がより重要となる。近年ではSNSや口コミ サイト、各社独自のコミュニティサイトが普及していることから、消費者はこれまで以上に口コミ をしやすい環境になっている。ブランド・コミュニティは、便利な情報やお得な情報を収集すると いう点で認知的ロイヤルティを、ファン同士での楽しい会話という点で感情的ロイヤルティを醸成 できるため、態度的ロイヤルティと口コミ行動が相乗効果を発揮しやすい。コンビニエンス業界に おいては、これらの環境をうまく活用し、顧客ロイヤルティの高い顧客の口コミ行動を促進させる ことが重要となる。セブンイレブンは「セブンプレミアム向上委員会54」という名称のコミュニティ サイトを運営しており、セブンプレミアム商品に関する口コミやセブンプレミアム商品を使ったレ シピの投稿、トークルームでの会話などが楽しめるようになっている。ローソンは「ローソン研究 所55」という名称で、メールマガジン登録者を対象に新商品試食会への招待や新製品開発のアイデ ア募集などを実施している。これは口コミ行動を促進させるだけでなく、本研究において顧客ロイ ヤルティの結果行動の第二段階の行動として示した共創行動にも結びつける展開になっている点で 有効なマーケティング施策と考えられる。コンビニエンスストア各社はいずれもFacebook、Twitter、

InstagramといったSNSを通じて情報発信を行っているが、これらを発展させ、熱烈なファンが

ファン同士で語り合うようなブランド・コミュニティの場を作り上げていくことがロイヤルティ活 性化の観点から求められている56

54 株式会社セブンイレブン・ジャパンのセブンプレミアム向上委員会Webページよりhttps://7premium.jp/(2017年82日アク セス)

55 株式会社ローソンWebページよりhttp://www.lawson.co.jp/lab/(20178月2日アクセス)

56 ブランド・コミュニティについては第5章で詳しく述べる。