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第6章 結論と今後の課題

6.1. 結論

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6.1.1. 将来的再訪行動の概念提示

本研究では将来的再訪行動を「○○○は1年後も最もよく行く店であると思う」、「○○○は3年 後も最もよく行く店であると思う」で測定する、「再購買・再利用の見込みないしは可能性」として 解釈した。将来的再訪行動の概念は、将来に対する項目であることから、将来にわたって強い態度 を示す意欲的ロイヤルティ(論文によっては購買意図、訪問意図)と混同されやすく、再購買・再 利用に関する項目であることから過去から現在までの行動に関する項目である行動的ロイヤルティ と混同されやすい。本研究では、将来的再訪行動を顧客ロイヤルティの結果行動として、意欲的ロ イヤルティおよび行動的ロイヤルティと分離して捉えた点に独自性がある。態度的ロイヤルティの 一部である意欲的ロイヤルティと、行動的ロイヤルティ、将来的再訪行動を明確に区分したことに より、第3章の顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルの分析において、それぞれの役割を 明確にすることができた。

6.1.2. 顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルの構築と検証

顧客ロイヤルティと先行要因に関するモデルはこれまでも研究されていたが、そこに顧客ロイヤ ルティの結果行動を統合させ、顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルという大きなモデル を作る展開は、これまで行われてこなかった。先行要因が顧客ロイヤルティを形成し、形成された 顧客ロイヤルティがその後生じる顧客行動に及ぼす影響について示すことができた点は、非常に有 意義であると考える(図表6-1)。

図表6-1 顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルの検証(再掲)

(出所)筆者作成

6.1.3. 顧客ロイヤルティの結果行動の明確化

これまで十分に研究・整理されていなかった顧客ロイヤルティの結果行動を明らかにした点も本 研究のユニークな点であると考える。本研究では顧客ロイヤルティの結果行動として、①将来的再 訪行動、②口コミ行動、③顧客間支援行動、④競合忌避行動、⑤共創行動の五つの行動の存在を示 した。将来的再訪行動については、購買確率の推定のテーマで古くから研究されている領域である

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ため、仮説を設定することができた。しかし、残る四つの行動については、十分な先行研究がない ことから仮説が設定しにくいものの、顧客ロイヤルティが形成されると一斉に行動が起こるという ものではなく、段階を経て行動されるものと想定された。そこで第3章では予備分析として重回帰 分析を行うことによりその前後関係を推測し、顧客ロイヤルティの先行要因・結果行動モデルに取 り入れた。このモデルの分析結果から、顧客ロイヤルティの結果行動は、態度的ロイヤルティおよ び行動的ロイヤルティが将来的再訪行動に影響を与える「顧客囲い込みによる収益の安定化」ルー トと、口コミ行動をはじめとして、顧客間支援行動、競合忌避行動、共創行動に影響を与える「リ レーションシップ強化によるブランド価値向上」ルートの、二つのルートを持つことが明らかになっ た。

6.1.4. 長期的プロモーション満足の行動的ロイヤルティ直接影響効果の明示

第4章ではプロモーションを短期的プロモーションと長期的プロモーションに分類し、それぞれ の満足度と FSP 充実度がプログラム・ロイヤルティや顧客満足を通じて、行動的ロイヤルティに どのような影響を与えるのかについてコンビニエンスストアを利用する消費者を対象に、モデルの 検証を行った(図表6-2)。コンビニエンスストア業界において、まだ緒に就いたばかりの長期的プロ モーションに対する満足が行動的ロイヤルティに直接影響を与えることを示したことは、本研究の 独自性の高い結果の一つである。

図表6-2 プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの検証結果(再掲)

(出所)筆者作成

6.1.5. 高態度顧客・低態度顧客ごとの行動的ロイヤルティ向上戦略の明確化

第4章のプロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルにおいて、態度的ロイヤルティが低い 顧客(低態度顧客)は高い顧客(高態度顧客)より、プログラム・ロイヤルティが行動的ロイヤルティに 与える影響が大きい、すなわちプロモーションの効果が高いことを明らかにした。また、高態度顧 客は低態度顧客より、顧客満足が行動的ロイヤルティに与える影響が大きい、すなわち顧客満足向 上戦略の効果が高いことを示した。第4章のこの結果と第3章の態度的ロイヤルティの先行要因の 結果から、行動的ロイヤルティが低く態度的ロイヤルティも低い顧客には、プロモーションの積極 展開によりまずは行動的ロイヤルティを高めることが重要となり、行動的ロイヤルティが低いが、

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態度的ロイヤルティが高い顧客には、顧客満足の向上を通じて行動的ロイヤルティを高めることが 重要であるという示唆が得られた。態度的ロイヤルティが低い顧客には、日常に存在する様々な手 がかりとの連携を深めるようなコミュニケーションを行い、顕現性を向上することで態度的ロイヤ ルティを高めることが重要となる(図表6-3)。顧客の態度的ロイヤルティ、行動的ロイヤルティの状 況によって有効となる異なるマーケティング戦略を提示できたことは極めて有意義であると考える。

図表6-3 態度・行動分類別に有効となる顧客ロイヤルティ向上マーケティング(再掲)

(出所)筆者作成

6.1.6. ブランド・コミュニティ参加の先行要因の明確化

ブランド・コミュニティに関する先行研究はそれなりに蓄積があるが(Srinivasan et al. 2002;

Dholakia et al. 2004; Algesheimer et al. 2005; 金森 2007; Stokburge-Sauer 2010; Sung et al.

2010; Brodie et al. 2013; 羽藤 2016a,b)、ブランド・コミュニティ参加の先行要因に関する研究は

ほとんど行われておらず、本研究においてそれを明らかにすることに意義がある。第5章にて分析 を行った結果、ブランド知識と感情的ロイヤルティがブランド・コミュニティへの参加に大きな影 響を与えていた(図表6-4)。小売業は一部の人しか知らないようなブランド知識を与えたり、自己・

ブランド連結性や顕現性を高めることで感情的ロイヤルティを醸成する等して、ブランド・コミュ ニティへの参加を促進させられる。

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図表6-4 小売業態別二項ロジスティック回帰分析の結果(再掲)

(出所)筆者作成

6.1.7. ブランド・コミュニティ活性化に有効となるマーケティング戦略の明示

ブランド・コミュニティ活性化に関する先行研究はこれまでに行われているが、より具体的にど のようなマーケティング活動が有効になるのかについては、管見によれば研究されていない。本研 究では第5章のブランド・コミュニティ参加後の態度・行動分析において、コミュニティ支援活動 とオンライン・コミュニティ・ユーザビリティが重要であり、コミュニティ支援活動の方が、より コミュニティ同一性に大きな影響を与えることを示した。コミュニティ支援活動としては、①コミュ ニティ・メンバーの表彰、②コミュニティ・メンバーから出た意見を商品・サービスへ反映、③コ ミュニティ・メンバーから出た意見を経営活動へ反映などを行う、といった活動が重要であり、ユー ザビリティについても同様に、①オンライン・コミュニティの場でチャレンジする要素を提供する、

②発言しやすいよう工夫する、③発言やコメント内容を検索しやすくするなどの工夫をすることが 重要である。企業のブランド・コミュニティ・マネジャーがすぐにでも実践できる具体的なレベル でマーケティング戦略を示すことができた点を有意義と考える。