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第4章 小売プロモーションが顧客ロイヤルティ形成におよぼす効果

4.4. 分析結果と仮説の検証

本研究ではまず収集したデータを統計的に処理しても問題ないかどうかを確認した後、仮説の検 証を行う。なお、本研究ではIBM SPSS Statistics バージョン23およびIBM SPSS Amos 23.0.0 を分析に活用した。

4.4.1. フロア効果・天井効果の確認

本研究で取り扱う五件法で測定した観測変数がフロア効果・天井効果の影響を受けていないかを プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデル検証用データおよび市場地位の差の検証用データ について確認したところ、フロア効果も、天井効果も生じていないことが明らかになった。

4.4.2. 構成概念の信頼性と妥当性の確認

仮説検証を行う前に仮説を構成する概念の信頼性および妥当性について確認を行う。まず、観測 変数の妥当性を確認するため確認的因子分析(CFA)を行ったところ、すべてのパスが0.1%水準で有 意となった。適合度指標はχ2(94)=349.92(p=.000)、GFI=.97、AGFI=.95、CFI=.98、RMSEA=.045 である。χ2検定はp < .05であったが、本研究のデータ数(n=1,354)が十分であるため、その他の適 合度指標で適合度を判断することとした65。本研究の適合度指標をSchermelleh-Engel et al. (2003) のモデル採用基準と比較した結果、すべての基準を上回っていることから本研究で使用する観測変 数の妥当性が確認された。

また、信頼性を確認するためにクロンバックのαを算出したところ、.751 から.908 までの値と なった。この数値はHair, Black, Babin, and Anderson (2013)の推奨値Chronbach’s alpha>.7を満 たしており、信頼性についても問題のないことが確認された。

構成概念の妥当性の確認については、収束妥当性と弁別妥当性の検討を行った。収束妥当性は CFAの標準化推定値及び平均分散抽出度(AVE)より確認できる。標準化推定値は.527から.960まで の値となり、いずれもHair et al. (2013)の推奨値である標準化推定値≧.5の基準を満たした。平均

65 3.4.3. (1)構成概念の信頼性と妥当性の検証の項を参照。

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分散抽出度(AVE)についても.507から.773までの値となり、Hair et al. (2013)の推奨値であるAVE

≧.5の基準を満たした。以上の結果より、本研究で取り扱う構成概念の収束妥当性については問題 のないことが確認された。

図表4-6 弁別妥当性の確認

(出所)筆者作成

続いて弁別妥当性について確認を行う。図表4-6に示す通り、すべての構成概念でAVEが相関 係数の平方を上回っており、弁別妥当性が確認された66。以上の結果より、本研究で使用する構成 概念の信頼性、妥当性については問題ないと判断した。

4.4.3. プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの検証

プロモーションの行動的ロイヤルティ形成の仮説モデルの検証結果を図表4-7に示す。適合度指 標はχ2(109)=410.958(p=.000)、GFI=.96、AGFI=.95、CFI=.98、RMSEA=.045となり、χ2値は

p < .05であったが、本研究のデータ数(n=1,354)が大きく、他の適合度指標のいずれの数値もHair

et al. (2013)およびSchermelleh-Engel et al. (2003)のモデル採用基準を上回っていることから、仮

説モデルの適合性が十分に高いことが明らかになった。また、仮説同様すべてのパスの推定値がプ ラスで、5%を上回る水準で有意になったことから仮説H1-1-1~H1-5はすべて支持された。

当仮説が検証されたことにより、①短期的プロモーションおよび FSP 充実度は行動的ロイヤル ティに直接影響を及ぼさず、プログラム・ロイヤルティや顧客満足を通じて間接的に行動的ロイヤ ルティ形成に貢献していること、②長期的プロモーションは行動的ロイヤルティ形成に直接的な影 響を与えていること、③行動的ロイヤルティには長期的プロモーション、プログラム・ロイヤルティ、

顧客満足が影響を与えており、中でも顧客満足からの影響が最も大きいという知見が得られた。

66 Hair et al. (2013)は、構成概念のAVEが他の構成概念との相関係数の平方より大きいことで、弁別妥当性を確認できることを主

張している。

1 2 3 4 5

1. FSP充実度 .644

2. 短期的プロモーション満足 .381 .507

3. プログラム・ロイヤルティ .361 .291 .773

4. 顧客満足 .160 .197 .241 .750

5. 行動的ロイヤルティ .059 .109 .162 .266 .752

斜体太字の数値はAVE,それ以外の数値は相関係数の二乗

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図表4-7 プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの検証結果

(出所)筆者作成

4.4.4. プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの多母集団分析

プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルについて、低態度顧客と高態度顧客とでどのよ うな違いが生じるのかを明らかにすることを目的に、多母集団分析を行った。適合度指標は、

χ2(218)=557.596(p<.001)、GFI=.95、AGFI=.93、CFI=.98、RMSEA=.034となり、χ2値はp < .05 であったが、本研究のデータ数(n=1,354)が大きく、他の適合度指標のいずれの数値も Hair et al.

(2013)およびSchermelleh-Engel et al. (2003)のモデル採用基準を上回っていることから、多母集

団分析の適合性が十分に高いことが明らかになった。

低態度顧客と高態度顧客の標準化推定値および非標準化推定値の差の検定結果を図表4-8に示す。

行動的ロイヤルティへの二要因の影響の差についての仮説の検証結果としては、H2-1:プログラ ム・ロイヤルティ→行動的ロイヤルティは5%水準で有意差があり仮説は支持された。H2-2:顧客 満足→行動的ロイヤルティについては10%水準で、有意傾向が見られた。

図表4-8 低態度顧客と高態度顧客の標準化係数および非標準化係数の差の検定

(出所)筆者作成

本仮説が支持されたことにより、低態度顧客の行動的ロイヤルティを高めるためには各種プロ モーション展開によるプログラム・ロイヤルティの向上が有効で、高態度顧客の行動的ロイヤルティ を高めるためには顧客満足向上の促進が有効であることが明らかになった。

非標準化

推定値 標準誤差 標準化 推定値

非標準化

推定値 標準誤差 標準化 推定値 H2-1 プログラム・ロイヤルティ

→行動的ロイヤルティ .034 .008 .167*** .010 .007 .067n.s. -2.105*

H2-2 顧客満足

→行動的ロイヤルティ .064 .009 .319*** .087 .010 .446*** 1.713

n.s. 非有意 + p<.10 * p<.05 ** p<.01 *** p<.001

仮説 パス

低態度顧客 高態度顧客 差の

検定 統計量

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4.4.5. 市場地位の差の分析

市場地位の高いコンビニエンスストアA社、B社、C社と市場地位の低いD社との間でプロモー ション効果がどのように異なるか、t検定を行った結果を図表4-9 に示す。短期的プロモーション については、D社が唯一実施しているプロモーションである「特定商品の購入でもらえる特典」に ついて、A,B,C社と平均の差を比較したが、有意差はなく、仮説H3-1は支持されなかった。特定 商品の購入でもらえる特典のプロモーションは、ポイントカードが導入されている企業であればど こでも実施しているプロモーションであり、企業による差が認知されにくいことから、市場地位の 差による効果の差が出なかったと考えられる。

図表4-9 プロモーション効果の市場地位の差の検定

(出所)筆者作成

FSP充実度については、本研究で観測変数として抽出した、①該当コンビニ店のポイントカード の持ち運びのしやすさ、②該当コンビニ店のポイントカードで得られる特典の金額的なお得感、③ 該当コンビニ店のポイントカードで得られる特典の魅力度、④該当コンビニ店のポイントカードで 得られる特典の獲得のしやすさ、の四要素について市場地位による差のt検定を行った。持ち運び のしやすさについては、有意差が生じず、仮説H3-2-1は支持されなかった。市場地位の高い企業 では、ポイントカードをスマートフォン・アプリにするなど、持ち運びやすさを考慮しているが、

まだ消費者には十分に認知されていないため仮説が支持されなかったのではないかと考える。金銭 的なお得感、特典の魅力度、特典の獲得のしやすさについては、市場地位が高い企業が低い企業よ

り1%水準で有意に高い効果を発揮していることが検証された。したがって、仮説H3-2,3,4は支持

された。市場地位の高い企業は購買金額合計700円単位でくじ引きが引けるサービスや、特定の期 間や特定の曜日にポイントが倍増するサービスなど、顧客に飽きが来ないよう変化をつけたプロ モーションを展開しているため、その点が評価されたのではないかと考える。