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第4章 小売プロモーションが顧客ロイヤルティ形成におよぼす効果

4.3. 調査概要

4.3.1. 調査方法

調査は株式会社マクロミルの Web アンケートモニターを活用して、本調査回答対象者を絞り込 むためのスクリーニング調査と、本調査とに分けて実施した。スクリーニング調査は2015年11月 5日~10日に実施し、9,836名から回答を得た。本調査は2015年11月10日~11日に実施し、1,236

72 名から回答を得た。

本章では、売上規模が大きく全国展開しているコンビニエンスストアA社、B社、C社と、売上 規模が小さく特定の都道府県で展開しているコンビニエンスストアD社を対象に調査を行った。ス クリーニング調査はD社の回答を十分量得るために特定都道府県を対象に4,836名のデータを回収 し、また、それとは別に全国からも5,000名の回答を回収した。スクリーニング調査は性別・年代 別の人口に比例させ、年代については20代、30代、40代、50代から回収した。また、正確な評 価を得るために、消費者一人当たりの全コンビニエンスストアの訪問回数が平均的に月10 回以上 の回答者を抽出し、調査対象となるコンビニエンスストア4社の中から、日常生活において行ける 場所にあるコンビニエンスストアについて、各社の利用状況や態度について調査を行った。

4.3.2. 使用データの調整・特徴

売上規模の小さいD社については、売上規模の大きい企業と比較して実施しているプロモーショ ンが極めて少なく、A社、B社、C社と比較することが困難であった。よって、D社データは市場 地位の差の分析のみに供し、プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの検証はA社、B社、

C社のデータを用いる。

コンビニエンスストアのプロモーションは、ポイントカードを通じて実施されるプロモーション が多いため、プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデルの検証には、A社、B社、C社のポ イントカード保有者を抽出したデータを用いる。データ数は、コンビニエンスストアA社415件、

B社563件、C社376件の合計1,354件である。

プロモーション効果の市場地位の違いによる差の仮説の検証には、突出的ロイヤル顧客を多く抽 出したデータの活用が不適切なため、スクリーニング調査の出現率から分布を調整し、コンビニエ ンスストアA社340件、B社498件、C社360件、D社269件の合計1,467件の新たなデータセッ トを作成し、分析を行う。

4.3.3. 測定尺度

(1) FSP 充実度の測定

FSP充実度については、O’Brien and Jones (1995)が挙げた、ロイヤルティ・プログラムの価値 を定める五要素、すなわち、①償還報酬の金銭的価値、②償還報酬の選択幅、③償還報酬の魅力度、

④償還報酬の獲得可能性、⑤報酬スキームの利便性を参考に、Yi and Jeon (2003)で抽出した①償 還報酬の金銭的価値、③償還報酬の魅力度、④償還報酬の獲得可能性を本研究でも援用した。また、

剣持 (2008)を参考に、「ポイントカードの持ち運びやすさ」を加え、最終的には①該当コンビニ店 のポイントカードの持ち運びのしやすさ、②該当コンビニ店のポイントカードで得られる特典の金 額的なお得感、③該当コンビニ店のポイントカードで得られる特典の魅力度、④該当コンビニ店の ポイントカードで得られる特典の獲得のしやすさの四要素について五件法で測定した。

(2) 短期的プロモーション満足の測定

短期的プロモーション満足の測定については、コンビニエンスストアのプロモーション実施状況 の調査結果から、①特定商品の購入でもらえる特典、②特定の期間や特定の曜日にポイントが倍増 するサービス、③買上金額700円ごとのくじ引きサービスについて、A社、B社、C社ともに実施 実績があるため、これらを短期的プロモーション満足項目とした。プロモーションの評価について は、回答者がそのプロモーションの存在を知らない場合もあるため、本研究ではプロモーション認 知有無で分割して測定することとした。具体的には、該当プロモーションを知っている回答者につ

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いては、五件法による満足度の五段階評価 を行った。該当プロモーションを知らない回答者につい ては、そのプロモーションの必要性の評価を五件法で得て、そのプロモーションが「極めて必要」

との回答には、そのプロモーションが極めて必要であるにも関わらず、そのプロモーションの存在 を知らされていないという観点から満足度評価を1 とした。同様に、「やや必要」の回答には、満 足度評価 2 を対応させ、「どちらとも言えない」、「あまり必要ではない」、「全く必要ではない」に ついては、必要のない度合いによって満足度が高まるわけではないと考え、満足度評価3を対応さ せた。

(3) 長期的プロモーション満足の測定

長期的プロモーション満足については、コンビニエンスストアのプロモーション実施状況の調査 結果から、①1ヶ月利用額に応じて会員のランクがアップし、それに応じてポイント付与率がアッ プするサービス、②特定商品を期間内に一定回数以上買うともらえる特典、③一定回数以上の来店 でもらえる特典が見受けられた。これら三つのプロモーションすべてを実施している企業はなく、

各社一つもしくは二つを実施していたため、長期的プロモーションの満足度評価としては、二つの プロモーションを実施している企業については二項目の満足度の平均値を、一つのプロモーション を実施している企業についてはその項目の満足度を一つの長期的プロモーション満足の観測変数と して取り扱うこととした。このことにより、当初、長期的プロモーション満足は潜在変数として取 り扱うことを想定していたが、観測変数としてモデルに組み込むこととなった。なお、プロモーショ ン認知状況別の満足度評価は、短期的プロモーション満足と同様の処理を行っており、五段階で評 価している。

上記に示すように、調査を進めていくことで長期的プロモーションについては仮説を修正する必 要が出てきた。長期的プロモーションは図表4-3にも示した通り、現時点64ではまだ新しいプロモー ションであり、報奨内容が企業ごとに多様な状況にある上、報奨獲得コストの相場観も形成されて いない。したがって、プロモーションとしての価値評価がプログラム・ロイヤルティや顧客満足に 連動せずにばらつくことが考えられる。また、消費者からの認知が低く、一過性のプロモーション として捉えられている可能性があるため、まだプログラム・ロイヤルティや顧客満足に影響を与え る要素になっていないと想定される。これらより、仮説H1-3-1およびH1-3-2は削除し、仮説H1-3-3

をH1-3’として再設定する。

H1-3’: 長期的プロモーション満足が高まると、行動的ロイヤルティが高まる

(4) プログラム・ロイヤルティの測定

プログラム・ロイヤルティの測定については、Yi and Jeon (2003)の三要素を採用した。具体的 には、①該当コンビニ店が実施しているキャンペーンやポイントカードなどが他の店よりも好きで ある、②該当コンビニ店が実施しているキャンペーンやポイントカードがとても魅力的、③該当コ ンビニ店が実施しているキャンペーンやポイントカードを他の人にも薦めたいの三要素を五件法で 測定した。

(5) 顧客満足の測定

顧客満足の測定については、小野 (2010)に示されているJCSI における測定方法を採用し、①過

64 201511月調査時点。この頃はまだコンビニエンスストアの長期的プロモーションが始まったばかりの段階であった。

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去1年間の利用経験を踏まえて該当コンビニ店にとても満足している、②過去1年間を振り返って、

該当コンビニ店を選んだことはあなたにとって良い選択であった、③該当コンビニ店の利用は、あ なたの生活を豊かにすることにとても役に立っている、の三要素を五件法で測定した。

(6) 行動的ロイヤルティの測定

行動的ロイヤルティについては、様々な測定方法が存在する(Jacoby and Chestnut 1978)。守口

(2003)は顧客ロイヤルティをセグメント化する上で、購買比率を指標として用いている。また、Anne

(2003)は顧客ロイヤルティの指標として購買シェアと訪問シェアの二つを採用した。本研究でもこ

れらの先行研究の視点で測定する。具体的には、①該当コンビニ店訪問回数シェアについては、該 当コンビニ店訪問回数÷全コンビニエンスストア訪問回数より算出し、②コンビニエンスストアに 行く回数としては該当コンビニ店に一番多く行っている、③コンビニエンスストアで使う金額とし ては該当コンビニ店に一番多く使っているを五件法により評価した。

(7) 態度的ロイヤルティの測定

態度的ロイヤルティの測定は、ブランド・リレーションシップ研究の概念を参考に、久保田

(2010a,b)の九つの要素を採用した。具体的には、①該当コンビニ店との間に強い結びつきを感じる、

②私にとって該当コンビニ店は自分の一部のようなものだ、③もし人に例えるなら、私にとって該 当コンビニ店は単なる知り合いというより、家族・親友・恋人のような存在だ、④該当コンビニ店 のことを考えると、何となく楽しい気持ちになる、⑤該当コンビニ店のことを考えると、ちょっと 幸せな気持ちになる、⑥該当コンビニ店のことを考えると、何となくうれしくなる、⑦該当コンビ ニ店がお気に入りだということを誰かに自慢したくなる、⑧該当コンビニ店がお気に入りだという ことを誇らしく感じる、⑨該当コンビニ店がお気に入りだということを、他の人が気づいてくれる と何となくうれしくなるを五件法によって測定した。

なお、本研究では低態度顧客と高態度顧客との間でプログラム・ロイヤルティおよび顧客満足が 行動的ロイヤルティに与える影響の差の仮説検証を行う必要があるため、態度的ロイヤルティを分 ける基準値を設定する必要がある。そこで前述のブランド・リレーションシップの九つの要素の五 件法による評価結果の平均値を態度的ロイヤルティ得点として、五件法の中間値である3以上であ れば高態度顧客、3未満を低態度顧客とした。

4.3.4. 仮説の再設定

長期的プロモーションに関する仮説を再設定したため、仮説モデル全体を以下のように再設定す る(図表4-5)。