第4章 小売プロモーションが顧客ロイヤルティ形成におよぼす効果
4.6. 本章の小括
本章により得られた知見を改めて結論として示すとともに、本章で取り組めなかった今後の課題
81 について以下に示す。
4.6.1. 結論
プロモーションの行動的ロイヤルティ形成仮説モデルの検証結果から、以下が明らかになった。
短期的プロモーション満足およびFSP充実度は行動的ロイヤルティに直接影響を及ぼさ ず、プログラム・ロイヤルティや顧客満足を通じて間接的に行動的ロイヤルティ形成に貢 献していること
長期的プロモーション満足は行動的ロイヤルティ形成に直接的な影響を与えていること
行動的ロイヤルティには長期的プロモーション、プログラム・ロイヤルティ、顧客満足が 影響を与えているが、顧客満足からの影響が最も大きいこと
態度的ロイヤルティ別分析結果からは、プログラム・ロイヤルティが行動的ロイヤルティに与え る影響は、低態度顧客が高態度顧客より有意に高いことと、顧客満足が行動的ロイヤルティに与え る影響は、高態度顧客が低態度顧客より有意に高いことが明らかになった。これらより、低態度顧 客にはプロモーションを積極展開することで、ロイヤルティなし状態から見せかけのロイヤルティ 状態へのレベルアップを図り、高態度顧客にはさらなる顧客満足の提供を通じて真のロイヤルティ 顧客へと育成していくことが重要となる。
市場地位の差による分析では、市場地位が高いコンビニエンスストア企業の方が低い企業よりも FSP充実度が有意に高いことが明らかになった。プロモーションの行動的ロイヤルティ形成モデル に当てはめると、市場地位が高い企業は、FSP充実度の高さがプログラム・ロイヤルティや顧客満 足を通じて、行動的ロイヤルティ形成に寄与していることが示された。
4.5.1. 今後の課題
本章で残された課題の一点目としては、長期的プロモーションの尺度の再検討と影響力について の研究を継続的に行うことが挙げられる。本章では、仮説段階において長期的プロモーションを潜 在変数として取り扱うことを検討していたが、実施状況が限定的であったため、観測変数として取 り扱わざるを得なかった。より望ましい尺度化が課題として残った。また、短期的プロモーション 同様、コンビニエンスストアで長期的プロモーションが定着してくれば、長期的プロモーションを 潜在変数として取り扱うことが可能になるとともに、プログラム・ロイヤルティや顧客満足に影響 を与える要素になる可能性が高く、継続的な研究が課題となっている。
課題の二点目としては、デジタル・マーケティングとしてのプロモーション効果を測定できなかっ たことが挙げられる。市場地位の高いコンビニエンスストア企業は、デジタル・マーケティングに ついても積極的に取り組んでいるため、SNSなどのアカウントや、スマートフォンのアプリなどを 通じて新商品情報、プロモーション情報などを発信している。当初、本章でもこれらのデジタル・
マーケティングの要素を、短期的プロモーション満足や長期的プロモーション満足の測定項目とし てモデルに組み込もうと試みたが、デジタル・マーケティングの接触経験を持つ消費者から十分量 の回答を得られなかったため、効果検証には至らなかった。デジタル・マーケティング施策の接触 者を抽出して、プロモーション効果を検証していくことは今後の研究課題として興味深い。
課題の三点目として、本研究はコンビニエンスストアに限定しているため、他の小売業態でも本 研究で得られた知見が適用されるかどうかは不明である点が挙げられる。峰尾 (2012)は、態度的ロ イヤルティが機能的店舗イメージ不一致度と心理的店舗イメージ不一致度により構成されるモデル を小売業五業態で検証し、本研究で対象としたコンビニエンスストアは心理的店舗イメージ不一致 度のみからの影響を、総合スーパーは機能的店舗イメージ不一致度のみからの影響を受けることを
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明らかにしている69。このことから、心理的店舗イメージ不一致度が影響を及ぼさない総合スーパー を対象に本研究を適用させると、態度的ロイヤルティ別の差が生じにくくなることが考えられる。
本研究を他の小売業界に適用して研究する余地が残されている。
最後に、実務的示唆として言及したブランド・コミュニティ活用マーケティングが、高態度顧客 にどのようなプラスの影響をもたらすのかについて、本章で明確に分析できていない点が挙げられ る。ブランド・コミュニティに関する研究はいくつかあるが(Muniz and O'Guinn 2001;
Algesheimer et al. 2005; 金森 2007; Sung et al. 2010; 宮澤 2013; 羽藤 2016a,b)、いずれも高関 与製品・サービスが調査対象となっており、小売業を対象とした研究が進んでいない点が課題であ る。また、研究内容も、ブランド・コミュニティが活性化に関する研究が中心で、顧客のブランド・
コミュニティ参加に関する研究は不十分である。したがって本研究では、小売業のブランド・コミュ ニティを対象に、ブランド・コミュニティの参加要因および参加後の態度・行動について第5章で 詳細に検討する。
69 詳しくは2.5.1.(1)顧客満足の項を参照。
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