2 簡易な屋内平面図を利用した3次元地理空間情報データベースの構築
3.3 総括
3.3.1 無線LANアクセスポイント設置密度や環境に適した設置方法と測位精度
の対応関係
1次実証実験では、10メートル毎、20メートル毎、30メートル毎に無線LANアクセ スポイントを置き、屋内測位環境を構築した。その結果、10 メートル毎、20 メートル毎 に置いた場合、14メートル程度の差が出て、30 メートル毎においた場合、18 メートル 程度の差がでることがわかった。次に2次実証実験では、電源の確保のしやすさや機 材の制限を考慮しながら、B1Fに無線LANアクセスポイントを密に設置し3〜5メート ルの測位差の実現を、1Fおよび2Fでは20メートル程度の測位差の実現を狙い、無 線LANアクセスポイント設置場所を決定した。1次実証の結果等も鑑み、検討の結果、
2Fには 17個、1Fには20個、B1Fには38個の合計75個の無線LANアクセスポ
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イントを設置し、屋内測位環境を構築した。その結果、B1Fでは測位差5メートル以内、
1F、2Fでは測位差10メートル以内で測位することが出来た。
1次実証実験及び2次実証実験を通じて、無線LANアクセスポイントを使った測位 環境の構築についての課題が明らかになった。無線 LAN アクセスポイントの設置方 法をまとめた。
表 3-6 無線LANアクセスポイントの設置の課題
課題 内容 解決策
設置の問 題
・ 壁際や床に置いた無線LAN アクセスポイントの電波があま り観測できなかった。
・ 施設によっては無線 LAN ア クセスポイントを設置する電源 の確保が難しい。
・ 無線 LAN アクセスポイントの 故障や盗難対策を施す必要 がある。
・ 無線LANアクセスポイントをあ る程度高さに上げたり、壁と無 線LANアクセスポイントが接着 しないような造作を行って設置 する。
・ 無線LANアクセスポイントの設 置を調整する期間を設ける。
・ 無線LANアクセスポイントが壊 れていないか管理を行うための チェックを行う。
出力の問 題
・ 無線LANアクセスポイントの 出力が弱く、距離による強弱 が付きにくかった。
・ 屋内測位に使う無線LANアク セスポイントは出力が強いもの を選ぶ。
・ 設置してからの電波の見え方 を調査し、設置方法を調整する 期間を設ける。
電波を受 け取る Android Operating Systemの 特性
・ Android Operating System から得られる電波強度の変化 が乏しかった。電波強度の強 弱がついていなかった。
・ Android Operating System の特性を考慮したライブラリを 検討する。
次に上記課題に対応した場合、どのくらいの精度が何メートル間隔だと実現できる かについて、以下の条件のもとに算出した。
<条件>
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・ 無線LANアクセスポイントの設置に関してある程度の高さを確保している。
・ 無線LANアクセスポイントの出力に関しては強弱がはっきり見える。
・ Android Operating Systemの特性を考慮したライブラリを作成している
表 3-7 無線LANアクセスポイントの設置間隔と測位誤差の関係 無線 LAN アクセスポイント
の設置間隔 10 メートル毎 20 メートル毎 30 メートル毎 測位誤差 5 メートル以内 10 メートル以内 30 メートル以内
この環境でサービス、事業を実施する場合には、事前調査を行い、対象空間の電 波調整し、測位誤差を考慮して屋内測位基盤を構築する必要がある。
3.3.2 3次元地理空間情報データベースの活用による測位データベース構築の
精度向上やコスト削減効果
昨年度の事業では、2章で述べているように、3次元地理空間情報データベースの 構築では、行政地図から世界測地座標を付与したが、利用する地図の縮尺等によっ て、安定的なデータが作れないことが課題となったが、アンカーポイントを設定すること で、安定的なデータが提供でき、正確に座標を取ることが出来たため、測位データベ ース構築の精度が向上した。
3次元地理空間情報データベースの活用による測位データベース構築のコスト削 減効果に関しては、従来のツールを使って無線LANアクセスポイントを位置取得して いた方法と同じ時間で3次元地理空間情報データベースを用いた場合でも達成でき た。但し、測位データベース構築をするにあたり、屋内の座標を緯度経度に変換する ために、変換の基準点を取らなければならない。その際は3次元地理空間情報データ ベースが無い場合、基準点を計測することは困難だったが、あることによって、正確に かつ簡単に基準点を取ることが出来るため、その優位性は明らかになった。
3.3.3 無線LANアクセスポイント測位インフラの事業性
無線LANアクセスポイントを用いた測位インフラを構築する際の初期導入コスト、運 用費を計算した。条件は以下の通りである。
<条件>
・ 無線LANアクセスポイント最大消費電力:2.8W(0.0028KW)
・ 使用時間:24時間連続稼働
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・ 電気料金:20円/kw
・ 無線LANアクセスポイント:3000円/個
・ 無線LANアクセスポイントの運用費に関しては電気代のみで算出している(管理 費は考慮していない。)
・ 測位データベースの各社料金体系は異なるので考慮していない
結果は以下の通りである。
表 3-8 無線LANアクセスポイントの設置コスト・運用コスト
個数 20 40 60 80 100
初期設置コスト 30,000 90,000 180,000 240,000 300,000 運用コスト/月 403 1210 2419 3226 4032
(単位:円)
無線LANアクセスポイント測位インフラを構築することで、複数のサービスを提供出 来ることが今年度の委員会、WGを通して明らかになった。
(1) マーケティング支援サービス
現在マーケティング分析で収集できるデータはPOSデータが一般的である。しかし、
POS データではものを買った人の情報は得ることが出来るが、ものを買っていない人 の情報や移動動線を取ることは難しい。カメラを使った分析を行っている場合もあるが、
その場に来た人の人数のみ把握できるのみで、動線に関しては把握できない。
無線 LAN アクセスポイント測位インフラを構築することによって、今まで取ることが 出来なかった動線の情報や来訪者の移動に沿った情報提供を行うことが出来る。また、
カメラセンサーと測位インフラの情報を組み合わせて、さらなるマーケティング分析を 行うことも可能である。
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図 3-20 行動履歴の可視化例
(2) 業務支援サービス
自分の位置を知るだけでなく、他の人の位置の状況、空き状況、混雑度、人の居る、
居ないが判れば、下記のように色々な分野で利活用が出来る。
・ 空調のコントロール
・ エレベータの制御等
・ 工場内の物流管理
・ 巡回業務の支援
・ 患者、スタッフのロケーション把握
(3) 安心・安全サービス
屋内測位を活用することで、地震発生前や火災発生直後の建物施設利用者の人 員把握を行うことが可能になり、災害発生時の安全な避難誘導や適切な情報通知を 行う事が出来る。また、事故、急病、火災等を見つけた場合、ユーザから位置情報を 付けて情報を発信することにより、災害時の行動が迅速化され、被害低減につながる ことが予想される。
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図 3-21 安心・安全サービス例
(4) ナビゲーションサービス
屋外では、GPSというプラットフォームは存在するが、GPSはそれに対応したユニッ トがあれば全国どこでも安定した「緯度・経度」座標を得る事ができる。しかしGPSでは、
地下街やビル等に入った場合、位置情報を得ることは出来ないが、屋内の測位インフ ラが構築されることによって、GPS の届かない屋内の人のナビゲーションや地下駐車 場での自動車のナビゲーションが可能になる。