2 簡易な屋内平面図を利用した3次元地理空間情報データベースの構築
3.2 実証実験
3.2.1 1次実証実験での屋内測位基盤構築
(1) 1次実証実験での測位インフラ構築概要
2010年9月19日から21日かけてパシフィコ横浜で開催されたG空間EXPOに て、1次実証実験を実施した。1次実証実験では、以下を検証した。
表 3-1 1次実証実験検証内容
No 検証項目 内容
① 測位誤差測定 ・ 無線 LANアクセスポイントの設置密度が10m毎、
20m毎、30m毎の状態作り、測位誤差(実際にいた 場所からのズレ)を測定する。
② 屋 内 測 位 基 盤 構 築コスト
・ 無線 LAN アクセスポイントを密に設置した場合 (10m毎)の屋内測位基盤構築コストを算出する。
屋内測位基盤として、無線LANアクセスポイントの設置、測位用データベースの構 築、実証各社のアプリケーションと連携して測位機能を提供するクライアントソフトの開 発・提供を行った。展示会場であるパシフィコ横浜 展示ホールCにおよそ10メートル 置きになるよう58個の無線LANアクセスポイントを設置した。無線LANアクセスポイ ントの設置場所は、主催者や出展者と協議し、ブースの造作の関係で設置可能なとこ ろから、設置間隔や設置高度がなるべく均一になるように決定した。具体的な設置場 所は、図 3-1に示す。図中、赤矢印が示すポイントが無線LANアクセスポイントの設 置場所で、添えられている番号は管理用の通し番号である。壁沿いの無線 LAN アク セスポイントは会場の関係で床に置く形で設置したが、それ以外の無線LANアクセス ポイントは床からおよそ2メートルから2.5メートルのところに設置した。
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図 3-1無線LANアクセスポイント設置場所 (約10メートル毎)
1次実証実験で用いられた無線LANアクセスポイントの配置例を図 3-2に示す。
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図 3-2 1次実証 無線LANアクセスポイントの設置例
10メートル毎を最も密な状態とし、無線 LANアクセスポイントを間引いて行くことで、
無線LANアクセスポイント設置間隔20メートル毎、30メートル毎の状態を定義した。
それぞれ、28個および14個の無線LANアクセスポイントを利用することとした。具体 的な設置箇所は、図 3-3および図 3-4に示す。
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図 3-3 無線LANアクセスポイント設置場所 (約20メートル毎)
図 3-4 無線LANアクセスポイント設置場所 (約30メートル毎)
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なお、無線 LAN アクセスポイントはプラネックス社の MZK-MF150W およびに
MZK-150B を利用した。また、1次実証実験で用いた屋内測位に利用するデータベ
ースは、次のような工程でクウジット株式会社により作成された。
1. 座標変換の基準点の座標を取得する。
2. 各無線LANアクセスポイントのフロア図上の座標を取得する。
3. 各無線LANアクセスポイントの座標を緯度経度に変換する。
4. 無線 LANアクセスポイントの BSSID(MAC アドレス)、SSID、緯度、経 度、フロア/エリア情報の一覧リストを作成する。
5. その一覧を専用のツールを用いて符号化および暗号化を行う。
工程1では、緯度経度座標変換の際の2点の基準点は空間参照系データベース構 築ツールを用いて取得した。工程2では、目視で無線 LAN アクセスポイントの座標を 取得した。工程3では、工程 1 で求めた基準点を基に、無線 LAN アクセスポイントの 座標を緯度経度に変換を行う。工程4で、10メートル毎、20メートル毎、30メートル毎 に一覧リストを作成し、計 3 つのデータベースを作成した。その作成したデータベース を使って、測位誤差測定、測位インフラ構築コストの検証を行った。
(2) 1次実証実験での屋内測位の検証結果
① 測位誤差測定
無線 LAN アクセスポイントの密度を変更して測位精度を計測する実験では、実際 に無線LANアクセスポイントを停止させるのではなく、この3つのデータベースを使い 分けることで、擬似的に密度が異なる環境で、測定者が実際にいるポイントと測位結 果のずれを計測した。測定観測地点を図 3-5に示す。
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図 3-5 測位誤差測定観測地点
10メートル毎、20 メートル毎、30 メートル毎に無線 LAN アクセスポイントを置いた 場合の測位誤差測定結果を表 3-2のようになった。各点においておよそ50回測位を 行った。
100
表 3-2 測位誤差測定結果 条件
地点
10M毎 20M毎 30M毎
1 27 16 37
2 19 19 26
3 18 5 2
4 8 14 19
5 10 22 36
6 10 7 10
7 9 6 19
8 28 17 4
9 7 12 20
10 7 10 8
11 24 19 31
12 7 24 21
13 6 11 14
14 14 8 10
15 6 7 11
16 16 20 25
平均 14 14 18
測位誤差 5 メートル程度を期待していたが、それを得ることはできなかった。また、
20メートル毎に無線LANアクセスポイントを設置した場合にでも10メートル毎に無線 LANアクセスポイントを設置した場合と同様の測位誤差であることが分かった。
解析の結果、期待した精度を得られなかった原因としては次の点があげられる。
101 (精度が得られなかった原因)
壁際の床に設置した無線 LAN アクセスポイントがあまり観測することができなか った
利用した無線LANアクセスポイントの出力が展示ホールのような、開けた広い空 間で利用するには出力が弱く、距離による電波強度の強弱がつきにくかった
Android Operating Systemから取得できる無線LANスキャン結果の特性を把
握しきれていなかった (後述)
図 3-6 G空間EXPO無線LANアクセスポイント電波強度の変化
図 3-6に2秒おきに測位 (無線LANスキャン) を行いながら会場を移動した際の、
観測できたG 空間EXPO 無線 LANアクセスポイント電波強度の変化を示す。横軸 がサンプル回数、縦軸が電波強度 (dBm)であり、無線 LAN アクセスポイントはそれ ぞれ異なる色の折れ線で示している。グラフより、長い横棒が多いことから Android
Operating Systemから得られる電波強度の変化が乏しかったこと、-80dBm前後が
大部分であることから電波強度の強弱がついていなかったことが分かった。
② 屋内測位基盤構築コスト
今回G空間EXPOの屋内測位基盤を構築した場合の費用は表 3-3のようになっ た。
-100 -90 -80 -70 -60 -50
-40 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111 121 131 141 151 161 171 181 191 201 211 221 231 241 251 261 271 281
102
表 3-3 屋内測位基盤構築コスト3 配置間隔 個数 無線LANアクセスポイント
1個当たりの構築費用
構築費用
10m毎 58個 18,000 1,070,000
20m毎 28個 24,000 660,000
(単位:円)
1 次実証実験では、10 メートル毎の配置間隔と20メートル毎の配置間隔では構築 費用は40 万円ほど差があった。今回の実証実験では、設置してからの電波の見え方 を調査し、設置方法を調整する時間を設けることが出来なかった。そのため会場の10 メートル毎の配置間隔と20メートル毎の配置間隔であまり変わらない精度だったため、
屋内測位基盤を構築する際には事前にどのくらいの測位精度が出るか、サービスを する上で問題が無いか調査した上で、屋内測位基盤を構築する必要がある。
3.2.2 2次実証実験での屋内測位基盤構築
(1) 2 次実証実験概要
2011年2月8日から20日かけて、クイーンズスクエア横浜内のクイーンズイースト およびクイーンズモールのB1F〜2Fにて、2次実証実験を実施した。2次実証実験で は1次実証実験で得られた結果を基に、実証サービスの実現に必要な測位精度を実 現する最低限の無線 LAN アクセスポイント数をもちいて測位インフラを構築し、以下 を検証した。
3 本表では、クウジット株式会社が屋内測位基盤を構築した際のコストを示している。これは、屋内測位 基盤を提供する会社によって料金体系が変わるため参考情報である。
103
表 3-4 2次実証実験測位基盤検証内容
No 検証項目 内容
① 測位誤差測定 クイーンズイースト及びクイーンモール 1F、2F を対 象に、誤差 20−30m程度の測位環境を構築、B1F を対象に、誤差 5m程度の高精度測位環境を構築 し、測位誤差を測定する。
② フ ロ ア/エリア 判 定
吹き抜けを含む空間においてフロア/エリア判定が正しく 行われるか検証する。
③ 測位時間 1次実証実験(30秒)より短い測位時間で測位結果を送 れるかを検証する。
④ 測位精度と構築 コストの比較
無線 LAN アクセスポイントを設置した座標を3次元 地理空間情報データベースから参照した場合、① で想定した測位精度が得られるか検証する。
3次元地理空間情報データベースをもちいた場合と そうでない場合の測位データベースの構築コストを 比較して、データベース作成コストが削減されるか 検証する。
2 次実証実験では、電源の確保のしやすさや機材の制限を考慮しながら、1次実証 実験の結果等も鑑み、検討の結果、2F には 17 個(約20m毎)、1F には20個(約2 0m毎)、B1Fには38個(約10m毎)の合計 75個の無線LANアクセスポイントを設 置した。具体的な設置場所は、それぞれ、図 3-7、図 3-8、図 3-9 に示す。図中、○
が無線 LAN アクセスポイントの設置場所で、○に添えられている番号は管理番号で ある。
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図 3-7 無線LANアクセスポイント設置場所 (2F)
図 3-8 無線LANアクセスポイント設置場所 (1F)
105
図 3-9 無線LANアクセスポイント設置場所 (B1F)
図 3-10 に無線 LAN アクセスポイントの設定例を示す。例でも示したように、無線
LANアクセスポイントは天井のライティングレールもしくは床から15cm程度上に設置 されているコンセントから電源をとる形で設置された。また、実証実験の対象エリアが 商業施設であることを考慮して、無線 LAN アクセスポイントは化粧箱に入れて設置し た。測定者が実際にいるポイントと測位結果のずれ、測位にかかる時間を計測し、また 吹き抜け空間においても高精度なフロア/エリア推定を行えるか検証した。