2 簡易な屋内平面図を利用した3次元地理空間情報データベースの構築
4.1 概要と目的
3次元地理空間情報データベースが利用されるためには、適切に管理・運用されて いる必要がある。
3次元地理空間情報データベースの構築・運用は、その扱う情報の内容(2章参照)
やレベル、変更タイミングの把握の観点から、主にビル内の店舗管理者(店舗管理会 社含む)や施設管理者(管理会社)が行うのが妥当と思われる。
従って、3次元地理空間参照系 DB に含まれる情報の扱い関して、店舗管理者や 施設管理者からヒアリングを行った結果を整理し、課題の抽出を行った。
また、3次元地理空間情報データベースのより良い運用の在り方を模索するため、
近年見受けられる建築情報の統合化(BIM)の動きや屋内屋外を統一した情報モデ ル(OGC)で扱う動きについて、調査し、検討を行った。
4.2 3次元地理空間情報データベースに関わる店舗運用の現状と課題
3次元地理空間参照系DBに含まれる情報の扱い関して、店舗管理者や施設管理 者からヒアリングを行った結果を以下に示す。
アンカーポイント
通常、建物内外の設備管理では、地図的な位置(緯度経度)を意識することはほと んどない。出入り口の緯度経度を測量してもらえば良いだけであれば、どこにどのよう な申請を行ったり、やり方が決まっていて明瞭になれば良い。
施設および設備
エスカレータやエレベータ、トイレといった共用部分の施設や設備は、建物自体の 改修や老朽化対策といった何年に一度の工事で行われるため、通常はほぼ変更され ない。複数フロアをまたぐ大型店舗の設置等の場合は店舗内にエスカレータを設置す るケースが稀に見受けられる。
通路や間仕切り
店舗管理や施設管理において、店舗エリア内の通路や店舗の内装工事レベルの 間仕切り変更は、内装工事用発注用の図面としては保持しているが、施設管理図面と しては設備位置が変わるような工事があったり、フロアの大部分が変わるようなレベル でなければ図面として作成しなおすことにはならない。
また、避難経路図であっても避難通路が変わってしまうような変更でなければ更新 はしない。
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案内図についても工作が必要になるため、あまり細かくは作成しない。
店舗代表点および店舗情報
店舗の入れ替えは、店舗側の都合や管理側との調整等の状況によるため、頻度は 一概には言えないが、概ね数ヶ月前には判る。ただ、セールやフェア等のイベント情 報は月1の店長会議等で報告を受けている。
こうしたヒアリング内容から、アンカーポイントの効果は本年度成果として確認できた が、適切に屋内空間を世界測地系に対応させるためには、
どのような測量成果として扱うのか?
測量方法の規定が必要か?
測量位置に標識等必要か?
座標以外に管理用の情報が必要か?
制度化すべきか?
等、アンカーポイントはどのような枠組みを設定するのかを今後検討していく必要があ る。
また、3次元地理空間情報データベースについて、その更新タイミングは、3次元地 理空間情報データベースが扱っている情報の内容から、フロアレイアウトの変更や店 舗入れ替え時となる。
まず空間参照系データベースにおいては、フロア内の間仕切りや店舗代表点の変 更とこの変更に伴う店舗出入り口点と屋内ネットワークデータの変更を行う必要がある。
しかし、従来の管理上は、フロア全体として図面的なメンテナンスはあまり考慮されて いないため、店舗管理者にとっては従来に無かった業務が発生することになる。
次に空間参照系データベースと紐付く地理情報データベースへ、新しい店舗情報 の登録を行う必要がある。
これらの作業は、現実空間での営業タイミングに間に合うよう3次元地理空間情報 データベースを使用している各サービスの更新に必要な期間を勘案して行う必要があ る。
4.3 3次元地理空間情報データベースを利用するサービスと要求位置精度 3次元地理空間情報データベースの利用の面から、屋内空間における5つのサー ビス分野において要求される位置精度の検討を行った。それぞれの分野内において も様々なレベルのサービスがあり得るため、あくまで一つも目安ではあるが、表 4-1
122 サービス分野と要求位置精度イメージに示す。
表 4-1 サービス分野と要求位置精度イメージ 分野
位置精度
1m 以内 1〜10m 10〜20m 20m 以上
設備管理
安全安心
ナビゲーション
マーケティング
アミューズメント
設備管理分野においては、エレベータやエスカレータ、空調や照明、非常ベル、電 源設備、各種配管等が複数の系統でつながっているため、それらを管理するための 位置精度は非常に高いレベルが求められる。
安全安心分野においては、トイレ情報(多目的トイレ等)の提供や、AED 位置、消 火器位置の提供、避難経路の事前確認から、大規模災害発生前の屋内人員状況の 把握まで、日常レベルから災害時までの様々なシーンが想定されるが、要求される位 置精度は概ね数mから十数m程度と考えられる。
ナビゲーション分野においても対象により、かなり要求される位置精度が異なる。例 えばロボットによるナビゲーションであれば、数cmレベルでの制御が必要と考えられ、
また一方では人に大まかな方向を示す程度であれば、細かな精度が必要な個所も想 定されるが、10m程度でも有用な案内が行えるケースもあり得る。
マーケティング分野においては、店舗情報の配信やお店までのナビゲーションとい ったサービス提供側からの要求と店内の顧客移動履歴情報としての要求が考えられ る。
例えば位置に応じた店舗情報提供であれば、自位置と対象店舗位置の識別ができ れば良いので概ね5〜10m程度の位置精度があれば問題無いと思われる。
顧客の移動履歴情報として考えると、後述する実証実験結果からも判るように、測 位精度 10〜20m 程度では店舗内のどんな種類の商品付近で滞留しているのかも判 別し難く、その動きも測位誤差との影響も識別し難い。測位精度2〜3m程度であれば 通過しただけの店舗や店舗内のどの辺りで滞留していたかあるいは店舗内のどこまで 分け入ったのかといった行動が見て取れる。従ってマーケティング分野としては、2〜 10m程度が妥当な位置精度と考える。
アミューズメント分野では、どのような企画とするかによって、要求される位置精度が 大きく変わりえるが、例えばチェックイン方式による位置情報ゲームを想定した場合に、
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チェックイン範囲をあまり狭くするとゲームとしてのユーザビリティおよび同時チェックイ ン数を低下させてしまうため、現実的ではないと考える。そうしたことから屋内であって も5m程度以上の位置精度があれば問題無いと考えられる。
以上のように各分野によって要求される位置精度は様々である。
従って3次元地理空間情報データベースの運用にあたっては、屋内測位環境を踏 まえた上で空間参照系データベースの構成要素について、使用されるサービスからど の程度の正確さで構築・更新されなければならないかを把握している必要がある。空 間参照系データベースが CAD データや管理平面図から作成されており、フロアレイ アウトの変更に伴う内装工事図面から更新作業を行うのであれば、特に気にする必要 はない。しかし、空間参照系データベースが簡易案内図から作成されている場合は、
位置精度は簡易案内図そのものに影響されるため、注意を要する。
例えば、簡易案内図は概ね通路幅を広く表現するため、屋内測位で位置を調整す ることが考えられるが、そのまま測位環境で空間参照系データベースを更新すると本 来、通路上に表示される位置が通路を外れて表示されるケース(図 4-1 更新におけ るズレのイメージ)が想定される。
:測位での補正位置 :実際の位置 実際の通路幅
更新
図 4-1 更新におけるズレのイメージ
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4.4 3次元地理空間情報データベースの構築・運用及び屋内の代表点の配置、管 理おける国内外の整備・管理状況等の実態整理
前述したように3次元地理空間情報データベースの構築・運用は、店舗管理者にと って、従来にない業務となることから、店舗運営業務の一環として合理化され行くこと が望ましい。
その観点から、屋内空間を含む空間情報モデルが施設管理や店舗運営において メンテナンスされ、結果として屋内空間サービス用の3次元スライスモデルも同時にメン テナンスされていく姿が理想と考える。
そのため、最新の屋内空間を含む空間情報モデルとその普及状況や実際の適用 範囲・運用について、国内・国外に事例を調査し、最新の空間情報モデルへの対応 方法についての検討をおこなった。
以下にその動向を示す。
(1) BIM (Building Information Modeling)
海外では建築物の設計・施工から管理まで3次元の建物形状に様々な建設プロセ スの属性情報を付加・データ化して全体最適化を図る手法。
非営利の国際組織 IAI (International Alliance for Interoperability)によって世界的に 推進されおり、我が国においても平成22年度の官庁営繕事業において対象事案を設 定し、BIMの試行が始まっている。
BIM の中核をなす3次元建物情報データモデル IFC(Industry Foundation Classes) が IAI に よ っ て 策 定 ・ 国 際 標 準 化 活 動 が 進 め ら れ て お り 、 後 述 す る
『CityGML』にも整合性を取る形で取り込まれている。
図 4-2 BIM(Building Information Modeling)