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第4章  総合考察

第1節  総合考察

 本研究の目的は,1.小学生版心理的居場所感尺度の作成および小学生の「心 理的居場所感」の構造の検討,および小学生の「心理的居場所感」の性差およ び学年差の検討,2.小学生の「心理的居場所」の構造について描画法を用い た質的検討,および教室における「心理的居場所感」の促進を目的とした介入 プiコグラムの実施とその効果の測定,加えて介入プログラムの効果について事 例の検討を通した質的検討であった。本章ではこれらの目的について,1)小 学生の「心理的居場所」とは何であるのか,2)何を提供すれば,小学生の学 校における「心理的居場所感」が促進されるのか,二点に焦点を当て考察を加

えることとする。

1.小学生のr心理的居場所」とは

 まず,小学生版心理的居場所感尺度の因子分析の結果,小学生の心理的居 場所は,被受容感,充実感,自己肯定感,安心感の四次元から構成されるこ

とが明らかにされた。このことから,小学生は「誰かが側にいてくれる気が する」,といった他者から受け入れられている感覚,「やる気いっぱいだ」「生

き生きしている」といった何らかの対象に対して打ち込んでいる状態に伴う 感情,「自分はかけがえのない存在だ」,「自分には価値がある」といった,自 分で自分を肯定できる感覚,「穏やかな気持ちだ」,「ほっとする」といったそ の環境における安定・安心に伴う感情がもてる場所を「心理的居場所」とし ていることが示された。

 次に,居場所感尺度における下位尺度得点を説明変数,「心理的居場所イメ ージ」描画の形式分析における各分析項目得点を従属変数とした重回帰分析 の繰り返しによるパス解析を行った結果,「被受容感」を持てる子どもほど自 信や自己主張への力,臨機応変さや柔軟さ,率直さや自分を顕示する力,自

己像や他者への親しみ,自分が今居る環境に馴染んでいく力を,「充実感」を 持てる子どもほど臨機応変さや柔軟さ,安心して生き生きと,自分の自由な 心の動きを表現できる力,柔軟で,上手く物事に対応するカ,現実世界に「心

の居場所」を見出している可能性を,「自己肯定感」を持てる子どもほど臨機 応変さや柔軟さ,力強さを,「安心感」を持てる子どもほど安心して「反抗」

できるだけの強さ,人物への否定的な感情を表現できるだけの強さ,自分の 自由な心の動きを表現できる力を備えている可能性が示唆された。すなわち,

描画の分析を通して,小学生の「心理的居場所」とは,自信や自己主張への 力,臨機応変さや柔軟さ,率直さや自分を顕示する力,自己像や他者への親 しみ,自分が今居る環境に馴染んでいく力,安心して生き生きと自分の自由 な心の動きを表現できる力,柔軟で,上手く物事に対応する力,現実世界に

「心の居場所」を見出していく力,力強さ,安心して「反一折」できるだけの 強さ,人物への否定的な感情を表現できるだけの強さを得ることができる場 所であることが示唆された。

 総じて,小学生の「心理的居場所」とは,他者から受け入れられている感 覚,何らかの対象に対して打ち込んでいる状態に伴う感情,自分で自分を肯 定できる感覚,環境における安定・安心に伴う感情がもてる場所であり,加 えて,r力強さを発揮できるだけのエネルギー」を蓄えられ,r率直に自分の 心の動きを表現できる」場であり,「否定的な感情を認めることができる強さ」

や「自分や他者への親しみ」を持て,「自分が環境に馴染んでいく力」,加え てr『居場所』を見出していくよう環境に働きかけられる力」が持てるような 場所であると明らかになった。

2.小学生の学校における「心理的居場所感」を促進する方法とは

 まず,本研究で行った「療法的音楽活動による心理的居場所感促進プログ ラム」による介入効果を検討するために,本プログラム実施前後の居場所感 および各下位尺度得点の変化を検討したところ,居場所感得点および充実感 以外の下位尺度得点において肯定的な変化は認められなかったことから,本 プログラムを実施することによりすべての子どもにとって教室が居場所にな るという効果は得られないことが示唆された。一方で,充実感水準L群にお いて実践群に肯定的な変化がみられたことから,教室で生き生きと自分に満

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足できるといった感情を持ちにくい子どもには,プログラムの効果により,

それらが実感できるようになることが明らかにされた。

 そこで本研究における介入の効果が認められた,充実感水準L群の子ども の特徴とは何であるのかを分析したところ,作品制作に対する姿勢に特徴が 見られ,すべての子どもが作品に自己を投影することを肯定的に捉えている

〈内的作業型タイプ〉であった。中でも充実感L群に属する児童は,全3回 のプログラムにおける自由記述の中で,①自己像の有無に関する記述,③体 験的距離の近さ,⑤作品への評価,⑥洞察の有無,⑦なぐり描き制作の意味 づけ,に関する記述が明確にみられるものが多く,外在化や自己洞察が深く 行われたことが肯定的に働き,効果的に充実感を高めていることが示唆され た。また充実感L群の児童における「心理的居場所感」得点および各下位尺 度得点の変化を個別に概観したところ,すべての児童がpretest・fo11ow・up teSt間において得点が増加しており,これも〈内的作業型タイプ〉の特徴を 色濃く持っていることに帰依するところが大きいと推察された。以上のこと より,本研究における介入が明確に効果的であったのは〈内的作業型タイプ〉

の特徴を色濃く持った児童であったことから,小学生の学校における「心理 的居場所感」の促進には内的な作業ができる場の提供が必要なのではないか

と考察できる。

 また前述の通り,「充実感」を持てる子どもほど,現実世界に「心の居場所」

を見出している可能性が示唆されていることから,小学生の学校における「心 理的居場所感」を促進する上で,学校での「充実感」を促進することは非常 に意義のあることであると考えられる。

 総じて,小学生の学校における「心理的居場所感」の促進には,「充実感」

の促進が大きな意義を持ち,加えて子どもたちが自己洞察を深める.ことがで きるような「内的作業の場」としての教育実践が効果的であることが示唆さ

れた。

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