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総合考察一子どもにとって病気体験とは何か一

 本研究の9的は、病気の受容の観点から病弱養護学校に在籍している子 どもたちが体験している病気についての理解を深め、子どもたちが人間的 健康を実学していくために病弱養護学校は彼らをいかに援助していけばよ いかということを考察することである。本研究では、心理臨床の観点から 子どもと病気の関係性に焦点を当てる。子どもの主観的意味体験としての 病気を調査するために、子ども自身による語りとアンケート調査が使われ た。語りでは資料として子どもの作文と面接記録が使用された。アンケー ト調査では病気およびソーシャル・サポートに関する質問と生活満足度尺 度を組み合わせることで、子ども自身による病気体験の評価を試みた。ま た、学校現場での心理的援助を実践・考察するために事例研究を行った。

これらによって、子どもの病気の受けとめ方が子どもの1漉(生活、人生)

にどのような意味をもっているかが明らかにされ、病弱養護学校における 病気受容に向けた真理的援助のあり方が検討された。本章は第1章で挙げ た具体的な研究課題に沿って、第3章一第5章で得られた知見を総括する。

第1節 考察1;子どもにとって病気が意味するものは何か

 1,子どもの自己への病気の影響は何か

 病気は子どもにとって自己と他者、社会および時間とのつながりを切断 する。病気と自己とのかかわりを意識し始めるのは中学生以上であった。

病気体験は「自己変化の機会(Frank,1993, p.39)Aとして積極的に捉え られる一方、将来に関しては「自分を制約するもの1として悲観的に捉え られている。病気を受容するためにはePiphany的体験のような賞しい自 已の枠組みへの転換が必要である。

 2.子どもの生活への病気の影響は何か

 病気は生活の中に具体的に取り込まれており、その意味が付与されてい る。その中心は賃常性の喪失であるが、加齢に伴って入院生活や養護学校 への転入等の病気体験を積極的に捉えることが可能になる。また、ライフ・

スタイルは子どもの病気の受けとめ方を反映している。

 3.病弱児に共通する体験は何か

 本研究の病弱児の語りや調査から、以下のことが共通体験として挙げら

れた。

  1)病気に対する意駿づけの変化

 病気に対する意味づけの変化は否定・消極的から肯定・積極的の方向性 をもっている。変化のプロセスには個人差があるが、自我の成熟が影響し ており、自d変容のプロセスの中で自己意識が拡大する小学部高学年(石 原,1998)から変化が起こりやすくなる。変化には周囲のサポートが重要 な役割を果たす。また、病弱養護学校高等部入学も病弱児だ病気と共に生 きていかなければならないという自覚を促すイニシエーション的機能をも つことが示唆された。

  2)疾患に関する情報の必要性

 疾患に関する情報は病気の受けとめ方や態度を変化させるきっかけとな る。キャンプ等による同病の友人との出会いや病弱養護学校における病気 についての学習は疾患に関する情報源としての役割を果たしている。また、

疾患に関する情報への意識には性や発達段階、病気の受けとめ方による差 がある。従って、truth一 tellingは中学部の生徒や病気を消極的に受けと めている子どもに対しては慎;重に行われなければならない。

  3)「スティグマ」としての病気の意識

 病気に付与されている社会・文化的な:負の意味づけを子どもたちはつよ く意識している。スティグマとしての病気は病弱児にとって「特徴的な論 理的あるいは精神的な苦悩の形式(Kleinman,1988, p.32>」を与えてい

る。

  4)病気の受けとめ方とライフ・スタイルの関連

 病気の受けとめ方は偲々のライフ・スタイルに反映している。

  5)ソーシャル・サポートの重要性

 ソーシャル・サポートは病気の受けとめ方に影響を及ぼす。特に、ソー シャル・サポートを自分の体験として実感できているか否かは重要である。

サポートの申でも、f三次的ヘルパー(石隈,1995, p.36)」の果たす役割 が大きいことが示唆された。

第2節 考察2;子どもの病気の受容に影響する要因は何か

 1.以下に挙げる変数によって病気の受けとめ方に差異はあるか 1)発達段階、2)性.3>疾患種、4)発症時期、5)罹病期間

 病気の受けとめ方には自我の成熟が関連していた。小学部では病気体験 を否定的に捉える者淋多い。特に小学部低学年は病気俸験をすべて否定的 に捉えていた。高等部では病気体験を肯定的に捉える者が多かった。また、

病気の受けとめ方には罹病期間が関連していた。病気の受けとめ方が変化 するためにはモーニング・ワークのためのある程度の時間が必要だと考え

られる。性、疾患種、発症時期によって病気の受けとめ方は差がなかった。

 2.病気を肯定的に意味づける子どもと否定的に意味づける子どもの差 は何か

 病気へのかかわり、生活や人生に対する態度、ソーシャル・サポートの 有無において、病気を肯定的に意味づける子どもと否定的に意味づける子 どもの間に差が見られた。病気や生活・人生への主体的なかかわりや、ソ ーシャル・サポートは病気の受容につながることが示唆された。すなわち、

病気を肯定的に受けとめている者は、時間的展望をもち、生活・人生に対 する態度が積極的・実存的であり、自分の病気についてよく理解している と考えていた。また、自分淋支えられていることを実感しており、病気に 対して現実的かつ積極的に対応している。自尊感情や自己効力感が高い。

一方、病気を否定的に受けとめている考は、自己と他者、社会、時間との つながりが分断されていた。自分の病気に対して受身で病気に関する情報 を自ら遮断しており、自分の病気を理解しようという意欲が低かった。社 会性の未熟さや対人関係の狭さ、孤独感があることが示唆された。

第3節 考察3:子どもの病気の受容と生活満足度との関係は何か

 1.以下に挙げる変数によって病気の受けとめ方に差違はあるか

1)日常生活の充実、2)生き方の態度、3)自己認知、4)将来への展 望、5)自己評価

 日常生活の充実と生き方の態度、将来への展望には関連があった。すな わち、病気の受けとめ方が肯定的な者は否定的な者よりも、生活満足度が 高く、日常生活が充実し、生き方の態度や将来への展望が積極的である。

また、自己評価が高い傾向にある。特に、生き方の態度と将来への展望は 病気の受けとめ方にのみ影響されており、病気の受容にはh鉛および時問 と自己とのつながりが重要な役割を果たしていることが示唆された。病気 の受けとめ方と自己認知には関連がなかった。

 2,病弱児の生活満足度に影響する要因は何か

 病気の受けとめ方以外に、以下のものが生活満足度や各下位尺度に影響

している。

①発達段階:自己認知において発達段階の差があった。小・中学部の児童 生徒淋高等部の生徒よりも自己認知が肯定的であった。

②性:日常生活の充実、自己認知、自己評価、生活満足度において性差が 見られた。すなわち、男子が女子よりも欝常生活が充実しており、自己認 知が肯定的で、自己評価および生活満足度が高かった。

 また、小学部の男子以外は、自己認知が肯定的であるほどB常生活が充 実しており、将来への展望が積極的であった。しかし全学部に共通して自

己認知と生き方の態度には相関閣下がなかった。

第4節 考察4:子どもの病気体験に病弱養護学校はどのような役割を果 たしているか

 1.病弱養護学校での体験を子どもはどのように受けとめているか  病弱養護学校への転入は、加齢に伴って積極的な意味づけをする考が増 加していた。病弱児は養護学校を①管理される場、②差別問題など様々な ことを学習する場、③病気をもつ仲間との出会いの場、④自分を表現する 場として評価している。更に、病弱養護学校が病気体験の質的変容の場で

あることが示唆された。教師はサポート源であり、日常的なかかわりの中 で病弱児に「添う人」であった。教師の存在や門葉が子どもの守りになっ た例もみられた。

 2.病弱児は教師にどのような援助を期待しているか

 教師への相談内容は、勉学、進路、友人関係の悩みの順に多かった。相 談内容は性差、発達段階差があったが、実際している相談内容と希望する 相談内容にはいくつかずれがあった。病弱児は自我が危機的な時期におい て教師の援助を期待していた。対人関係が限られた養護学校において教師 はnew objectの役割も担っており、学校ストレッサーや発達課題の解決 のための援助が期待されていた。また、生き方に対する援助も期待されて いることが示唆された。

 3.子どもに病気の受容を促すような心理的援助とはどのようなものか  病気を受容している者は積極的・実存的な生き方をしており、支えられ ているという実感があった。未来志向的で、自己評価や自己効力感、自尊 感情が高い。これらのことから、病気受容への援助とは、「よりょく生きる

こと」に対する心理的援助であることが示唆された。病弱養護学校におけ る病気受容への心理的援助は、病弱養護学校の「場」を生かし、病弱児の 特性および発達下階に応じた統合的・連携的な臨床援助である。臨床援助 は、①児童生徒と教師の関係において、②日常生活の中で、③教育の営み としてなされなければならない。具体的には進路への援助、授業における