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結論

ドキュメント内 結果複合動詞の日中対照研究 (ページ 197-200)

5.1 論文内容のまとめ

本研究は生成語彙論の枠組に基づき、英語の結果構文を参考にしながら、日中結果複合動 詞のリストを作成したうえで、日中結果複合動詞における意味制約、また対応するタイプと 対応しないタイプの原因及び特徴を体系的に考察し、その結果、中国語の結果複合動詞と日 本語の結果複合動詞の生起条件が異なっていることを発見した。

以下、5.1.1 節では語彙情報と文脈情報などと複合動詞の形成の関係についてまとめる。

5.1.2節では、目的語指向型の日中結果複合動詞を、5.1.3節では主語指向型の日中結果複合

動詞についてふりかえる。

5.1.1 直接的な因果関係と間接的な因果関係

第2章では、様々な先行研究に基づき、英語の結果構文、日中結果複合動詞の分類および それらの意味制約を検討した。その上で、日中結果複合動詞を「主語指向型」と「目的語指 向型」に分け、それぞれの対応状況及び特徴を第3章と第4章で述べた。

まず、英語の結果構文にある「直接的な因果関係」という意味制約について、日中結果複 合動詞にも適用されるかどうかを考察した。Goldberg(1991)やRappaport Hovav & Levin

(2001)は、英語の結果構文では行為と状態の間に直接的な因果関係がなければならず、V1 とV2の間にもう一つのイベントを挿入することをできないと述べている。例えばGoldberg

(1995)はHe ate himself sick.という文において、彼女がsickになる直接的な原因はsick になるまでずっと食べ続けることだとしている。しかしながら、中国語の結果複合動詞にお いて、“洗破”(洗う-破れる)のような直接因果関係を持たない例が多い。“洗破”(洗う-

破れる)では、「洗っている間にねじが服に当たったので、服が破れた」という意味解釈を取 る場合は、V1の“洗”(洗う)とV2の“破”(破れる)の間にはもう一つのイベント「ねじ が服に当たる」が挿入されることになる。そのため、中国語では、英語の結果構文に働いて いる「直接的な因果関係」制約を満たす必要がないと考えられる。これを図1と図2で示す。

193 e1

e2 e3

図1 直接因的な因果関係:動作自体の力で結果を引き起こす

e1

e2 e4 e3

図2 間接的な関係

一方、日本語では、V1とV2の間にもう一つのイベントを挿入することができず、「*洗い 破る」のような例は成り立たない。したがって、中国語の結果複合動詞とは異なり、日本語 の結果複合動詞は英語の結果構文と同様に、V1とV2の間に、直接的な因果関係がなければ ならない。

5.1.2 目的語指向型の日中結果複合動詞

第3章では、V2 が目的語の状態を叙述する「目的語指向型」の日中結果複合動詞につい て、項構造・イベント構造・クオリア構造の視点から、「目的語指向型」の日中結果複合動詞 の対応するタイプと対応しないタイプの特徴を分析した。まず、“踩坏”(踏む-壊れている)、

「踏み壊す」のようなものはプロトタイプである。なぜならば、これらの結果複合動詞では、

V1とV2の間に、内項が共有され、またクオリア構造も一致するという二つの特徴を持ち、

日中の結果複合動詞と英語の結果構文のほとんどが対応するからである。

(1)では、V1“踩”(踏む)は動作主と被動作主の二つの項を持ち、事象構造はprocess で、主体クオリアはxがyを足で踏むことを表す。V2“坏”(壊れている)の構造を見ると、

項が1つしかなく、事象構造はstateであるとともに、形式クオリアは被動作主が壊れた状 態にあることを示している。中国語の複合動詞の形成過程は英語の結果構文と同じで、まず 使役事象スキーマの形式クオリアは“坏”(壊れている)と同定される。それにより、V1の クオリアとV2のクオリアの間に共合成が行われた後、V1がその複合動詞に組み込まれる。

194

QUALIA

(1) a. FORMAL =[α_result(e2, y)]

AGENTIVE =[α _act(e1, x, y)]

b. “踩”(踏む)

ARG1=x:animate_individual

ARG2=y:physobj

S-ARG=z:foot

EVENTSTR= [E=e:process]

QUALIA= [AGENTIVE =step on_act (x,y) ]

“坏”(壊れている)

ARGSTR= [ARG1=y:physobj]

EVENTSTR= [E=e:state]

QUALIA= [FORMAL=broken_state (e,y)]

c. “踩坏”(踏む-壊れている)

ARG1=x

ARG2=y

E1=e1:process (x,y)

EVENTSTR= E2=e2:state (y)

RESTR=e1<e2

AGENTIVE =step on_act (e1,x,y)

FORMAL =broken_result (e2,y)

それに対して、目的語指向型の日本語の結果複合動詞では、V2 自身がすでに使役関係を 持つ。したがって、中国語の結果複合動詞や英語の結果構文と異なり、日本語の結果複合動 詞のクオリア構造はV1のクオリア構造とV2のクオリア構造を合成するのではなく、V1の 主体クオリアをそのままV2の主体クオリアと同定することになる。ただし、同定に際して、

英語の結果構文と同様に、同定されるV1の慣習的な結果の一つがV2の形式クオリアと一 致しなければならないという条件を満たさなければならない。

ARGSTR

QUALIA

ARGSTR

同定

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