立。
7. UNIFACモデルの適用とPBDDsmsのSwおよびH.Wの推算
7.3 結果と考察
まず、pBBzとpBDEsのSwとKowの実測データから求めたH20‑Br間の相互作用パラメータ(aH20,
a.およびaB,,H2。)と、実測値と計算値の比較を図7・1と7・2および表7・4に示す.図7・1と7・2の対角線は計算値と実測値が一致する線であり、計算値がこの線に近いほど実測値をよく再現してい
ることを意味している. pBBzsに対しては、実測値と計算値が良く一致し、 logSwとlogK.Wの平 均誤差はそれぞれ0.20と0.15であった.また、 logK.Wに対する結果が良好であったことから、
オクタノール相の活量係数も良好に計算できることを示唆している。したがって、ベンゼン骨格 を有する有機臭素化合物に対しては、 UNIFACモデルは推算精度の高い結果が得られるものと予
想される0 ‑方、 pBDEsに対しては、 logSwとlogK.Wの平均誤差はそれぞれ0.69と0・14であり、
logK.Wに対して非常に良好な結果が得られているが、 Swに対してはlogK.Wの計算結果ほど実測値 を再現できなかった。図7.1から明らかなように、 4臭素化以下のPBDEsに対しては比較的良好 に実測値を再現しているものの、5および6臭素化では一桁低く見積もってしまう結果となったo
したがって、 PBDEsのようなベンゼン環をエーテル結合で繋ぐような構造を有する有機臭素化合 物に対しては、 UNIFACモデルはlogK.Wの推算には非常に有用であるが、高臭素化物のSwの推 算に対しては定性的な利用にとどめておくべきであるo今年度のDeBDEのlogK.Wの実測値が得
られなかったことから、 UNIFACモデルを用いてDeBDEのlogK.Wの値を推算したoその結果、
DeBDEのlogK.Wの値は10.75となった。この値は非常に高く、測定が大変困難であることも示唆 している。
aH2。,a.およびaBr, H20の値が決まったことにより、本研究の目的であるPBDDs/FsのlogSwと
logK.Wの計算が可能となる。 logSwの計算には、式6・2のように融点(Tm)と融解エンタルピー(AHAIS) が必要となる。 AHfuSはYalkowskyの代替近似7 (ASAIS‑56.5)が利用できるが、融点については推 算が困難であることから、文献値8のあるPBDDs/Fsだけを計算の対象とした。計算に用いた㍍
とAHfuSの値は表7.5に示した. UNIFACモデルによるPBDDs/FsのlogSwとlogK.Wの推算値をそ れぞれ表7.5と表7.6に示す。 pBDDs/FsのSwは4×10J〜6×10ー15mol・L‑1範囲となり、一方、 】ogK.W
は4.7‑9.3となった。構造活性相関タイプのモデルから推算された文献値8と比較すると、本研 究の値は4臭素化PBDD/FのSwと08BDDのSwとlogK.W以外はオーダーが一致する結果となっ た。 4または8臭素化PBDD/Fの乱の文献値は比較的大きいことから、本研究の値の方が妥当で はないかと考えられる。 PBDDsの計算値と塩素化ダイオキシン類(pcDDs)の文献値9,10を比較 したプロットを図7.3と7.4に示すo 同じハロゲン数で比較すると、 logSwとlogK.Wに関しては pBDDsとPCDDs (8ハロゲン化物以外)は比較的近い値となった。また、蒸気圧データ8を用い て、 ‑ンリー定数(Hw)を求めて表7.5に示すとともに、図7.5でPCDDsの文献値11とも比較し た。低臭素化ではPBDDsのHwはPCDDsよりも一桁低い結果であるが、4臭素化以上では、PBDDs のHwは数桁高くなる結果となった.つまり、 4臭素化以上のPBDDsは大気‑の分配性は数桁高
131
くなることを意味している。したがって、 SwとlogK.Wにくらべて、 HwではPBDDsとpCDDsに
大きな違いがあった。
最後に、 BPhsのんともWの実測データからACOH‑Br間の相互作用パラメータαACOH,Brと叫 ACOHを決定した結果を表7.7および図7・6と7・7に示すo Swについては、 tmIFACモデルによる計 算値は良好に実測値を再現できていたが、 logK.Wについては、 Swほどではないが比較的良好に実 測値を表すことができた。図と表から、 UNIFACモデルはフェノール基を有した有機臭素化合物 に対しても有用である可能性を示した。しかL',これはフェノール基が解離していない条件にの み適用が可能であるので、フェノール基を有した有機臭素化合物に対する推算には注意しなけれ ばならない。
3
【(I.1・tOu)JIm As]Bot
∠U
̲12 ‑9 ‑6 ‑3
log lSwexP / (mol・L l)】
図7.1 PBBzsとPBDEsのSw (25℃)に対するUNIFACモ
デルによる計算値(SwCd)と実測値(Swexp)の比較。
▲:pBBzs、口:PBDEs、 ‑:パーフェクトフィット。
表7・4 決定されたaH,0,B.とaBr,H20の値とPBBzsおよびPBDEsのSwと K.Wに対する実測値と計算値の誤差(AlogSwとAlog K.W)
compound Temp./ K AloglSJmol・L‑I ] Alog K.W
PBDEs 4,4'‑DiBDE
2,2 '4,4 ㌧TeBDE
2,2'4,4',5‑PeBDE
2,2'4,4',5,5㌧HxBDE
ADD BBzs
1 ,4‑DiBBz I ,2,41TrBBz I ,2,4,5‑TeBBz HxBBz AAD
283.15 ‑303.15
283.15 ‑303.15
283.15 ‑303.15283.15 ‑303.15 283.15 ‑303.15
283.15 ‑303.15 283.15 ‑303.15 2$3.15 ‑303.15 283.15 ‑303.15 283.15 ‑303.15
2 5 ′0 00 9 0 ′h〉 2 0 ∠U
o o I L o
0ノ 4 5 ′b 0 0 O . 1 3 2 0 0 0 0 0
2 ∠U 0 O 4 3 0 . 1 」 」 0 0 0 0 0
∠U O 3 0 5 1 2 2 0 」 0 0 0 0 0
決定された値: aH,0,a,≡ 90511, aBr,HIO=J3・24
AlogSw= 1咽logSwexP‑ logSwcdr叩:データ数、 swexP :実測値、 Swcd:計算値) AIog K.W ‑ Ilog K.wexP‑log K.W当( Kow叩:実測値、 Kowcd:計算値)
AAD:平均絶対誤差
表7.5 PBDDsnsの25℃のSw、 KLw、 Hwに対するUNIFACモデルによる推算値と推算で用いた融 点(T.n) 、融解エンタルピー(AHbs)、蒸気圧(ps)の値および文献値S (推算値)との比較
pBDDs/Fs Tm/K loglSw logK.w Hw/ Ps/ Pa 文献値 文献値 AHfuS/J・
/mol ・ Pa ・ m3 ・ loglSw logKow morJ
L 1】 mol 1 /mol ・ L 11
2‑M IBDD 366 ‑5.37 4.72 2,3‑D2BBDD 430.4 ‑6.89 5.37 2,3,7,8IT4BDD 607 ‑1 0.38 6.68
08BDD 649 114.2 1 9.2i 2‑M2BDF 3 82 ‑5.74 4.75 2,3,7,8‑T4BDF 574 ‑10.27 6.7 1
0.95 4.00E‑03 1.27 1.60E‑04
I 5.5 1 6.40E‑07
6.60 4.10E‑1 1
NA NA NA NA
‑6. 12 5.62 20700
‑6.9 6.25 24300
‑等.72 6.50‑7.74 34300
・1 1.69 10.0$ 36700
‑5.42 5.05 21600
‑7.99 5.98‑7. 14 32400
NAは入手不可および計算不可を示すo A〃鮎はYalkowskyの近似計算7から求めた。 Tmとpsは文献値8
表7.6 UNIFACモデルから推算されたpBDDs/Fsの臭素数ごとのlogK.W
PBDDslogKow $DG6ニ tカ r PBDFslog&W $Dg6ニ tイ蚌
Mono‑Br4.72 V蹤 ヤ'#r 2 Mono‑Br4.75 V蹤 ヤ'#r b Di‑Br5.37 陪W ヤ'#r纉 Di‑Br5.40 陪W ヤ'#ゅ Tri‑Br6.03 陪W F ヤ'#ゅc2 Tri‑Br6.05 陪W F ヤ'#ゅcb Tetra‑Br6.68 尾7F ヤ'#偵# Tetra‑Br6.71 尾7F ヤ'#偵3
133
′‑U OO O つ一 4 l l 1 1 1
lll
【(I‑1・tOtu)Jl.m ^S]叫oT
0 2 4 6 8
ハロゲン数
図7.3 Sw (25℃)に対するPBDDsとPCDDsの比較o
◇:pBDDs、 :PCDDs9
0 2 4 6 8
ハロゲン数
図7.4 Kw (25℃)に対するPBDDsとPCDDsの比較。
◇:pBDDzs、 Lt‑ :PCDDs10
(I.TOtU・etu・dd)\JhH
表7.7 決定されたaACOH,B,とOB,,ACOHの値とBPhsのSwとK.Wに
対する実測値と計算値の誤差(AlogSwとAlogKow)
compound Temp./ K AloglSw/mol・L‑1 ] Alog K.W
BPhs
4‑MoBPh 283.15 ‑303.15 2,4‑DiBPh 283.15 ‑303.15 2,4,6‑TrBPh 283.15 ‑303.15 PeBPh 283.15 ‑303.15 ADD 283.15 ‑303.15
4 1 5 00 7 0 . 1 0 0 0 0 0 0 0 0
決定された値: aACOH,Br L395・5, aB,,ACOH ≡ ‑240・4
4 5 ∠U 1 9 2 4 5 3 3 0 0 0 0 0
AlogSw‑ 1/N∑llogSw叩‑ lo軌cdF (N:データ数、 SwcxP :実測値、 Swcd:計算値)
Alog K.W ‑ tlog KowexP‑log K.wcdl ( K.wexP :実測値、 K.wcd=計算値)
AAD:平均絶対誤差
4 7 0 l I 1
I
∩(I‑1・TOu)JLc;S]叫ot
.5l
#
ー13 ・10 ‑7 ・4 ‑1
1og lSwcxP / (mol・Lー1 )】
図7.6 PBBzs、 PBDEsおよびBPhsのSw (25℃)に対する UNIFACモデルによる計算値(swcal)と実測値(swexp)の比較。
▲:pBBzs、口:PBDEs、 ●:BPhs、 ‑:パーフェクトフィット。
10
8
ち
i b<0 6
叫0
4
2
i /
● ●
2 4 6 8 10
1og Kowexp
図7.7 PBBzs、 PBDEsおよびBPhsのK.W (25℃)に対する
UNIFACモデルによる計算値(K.weal)と実測値(Kow叩)の比較。▲:pBBzs、 □:PBDEs、 ●:BPhs、 ‑:パーフェクトフィット。
135
7.4 結論
本研究で得られたPBBz、PBDEsおよびBPhsの実測データから、UNIFACモデルにおけるH20‑Br 間およびACOH‑Br間のグループ間相互作用パラメータを決定した。このパラメータを用いた1‑
オクタノール/水分配係数の計算値は実測値と定量的に一致した。分配係数の推算に関しては本研 究で拡張したUNIFACモデルの有用性が示されたoそこで、実測が困難であったDeBDEの分配 係数をUNIFACモデルで推算したところ、 10.75という値が得られたo水‑の溶解度に関しては、
UNIFACモデルは全体的に実測値を良好に再現もたが、 5と6臭素化PBDEsに対して計算値が実 測値より一桁低い結果となった。高臭素化PBDEsの溶解度に関する推算には注意が必要である。
H20‑Br間の相互作用パラメータを整備することでUNIFACモデルによりPBDDs/FsのSw、 K.Wお
よびHwの推算が可能となったoこれが本研究の大きな成果であり、次章の環境動態挙動の予測 に応用できる. UNIFACモデルによる推算結果を表7.8に示す.得られた結果を同じハロゲン数 のPCPDsの値と比較すると・ 8ハロゲン化以外はPBDDsとpCDDsのS‑とKowは共にほぼ同等 の値であった。しかし、 Hwについては、低臭素化PBDDsのHwの値は同じ塩素数のPCDDsの値
よりも一桁以上小さいが、高臭素化では逆に一桁以上大きくなった。
表7.8 UNIFCモデルを用いたPBDDs/DFsの推算結果
pBDDsnTs Tm/K loglSw /mol・LlI] logK.w Hw/Pa・m3・mo1‑1