第5章 触媒層のアイオノマ付着率と発電特性の関係
5.3 結果及び考察
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Fig.5.6 Adsorption ratio of ionomer to particles.
5.3.2 アイオノマ付着率
Fig.5.7 にアイオノマを除去する前後における,各スラリー条件に対する触媒
層の比表面積を示す。アイオノマの除去後の触媒層の比表面積は,スラリーの調 製条件が異なっていてもほぼ同程度であった。アイオノマ除去後の比表面積は,
触媒粒子の充填性によって決定されると考えられるが,Fig.5.5 に示すスラリー の充填率との相関はみられなかった。これは,MEA作製時には遠心沈降試験よ りも大きな力が加わったために,もともと小さかった触媒粒子の充填性の差が さらに小さくなり,ほとんど差がなくなったものと考えられる。
アイオノマを除去する前の触媒層の比表面積は,I/Cを大きくすること及び分 散処理時間を長くすることにより,減少していくことがわかった。
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Fig.5.7 Surface area of catalyst layer before and after heat treatment.
Fig.5.8 に,(5.1)式にて算出したアイオノマ付着率と各スラリー条件との関係
を示す。I/Cの増加及び分散処理時間を長くすることにより,アイオノマ付着率 は増加する傾向となった。文献[96]においても,アイオノマ被覆率はI/Cに対し 増加する傾向が記されており,本検討の結果においても,この傾向は合致してい る。また,分散処理時間が長くなることで,アイオノマの付着率が増加すること については,分散処理時間を長くすることで,粒子及びアイオノマがより分散し たためであると推察される。Fig.5.5 のスラリー充填率の結果から分散処理時間 が増加すると粒子が分散していることがわかり,一方で,Fig.5.6から,アイオノ マの吸着量は分散処理時間にはほとんど依存しないことから,未吸着のアイオ ノマが乾燥過程において,より分散され比表面積が大きくなった粒子に対し付 着することで,アイオノマの付着率が分散処理時間とともに増加したものと考 えられる。
Fig.5.8 Ionomer adhesion ratio of catalyst layers.
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5.3.3 発電特性
Fig.5.9 に各スラリー条件で作製した触媒層の酸素輸送抵抗及びプロトン輸送
抵抗の関係を示す。I/Cの増加及び分散処理時間を長くすることにより,プロト ン輸送抵抗は減少する一方で,酸素輸送抵抗が増加する傾向が見られた。特に I/Cを増加させたときには,プロトン輸送抵抗が減少する一方で,大きく酸素輸 送抵抗が増加している。粒子周りに,より多くアイオノマが付着したことによっ て,プロトンの伝導性は向上するが,酸素輸送が阻害され,酸素輸送抵抗が大き くなったと考えられるが,酸素輸送抵抗がI/C=1.4を超えたあたりで急激に増加 することから,文献[78]のように触媒層の空隙がアイオノマにより閉塞されてし まっていると考えられる。分散処理時間を増加させると,Fig.5.8 に示したよう にアイオノマの付着率が増大するため,やはり,プロトンの輸送抵抗が減少し,
酸素輸送抵抗が増加するが,アイオノマの量そのものが増えているわけではな いため,その変化率は小さいと考えられる。
Fig.5.9 Electrode characteristics of catalyst layer at different I/C and sonication times.
Fig.5.10に,アイオノマ付着率と発電特性(酸素輸送抵抗,プロトン輸送抵抗)
の関係を示す。アイオノマの付着率の増加に伴ってほぼ線形的にプロトン輸送 抵抗が減少している。一方で,アイオノマの付着率と酸素輸送抵抗については,
アイオノマ付着率が0.7から0.8よりも大きくなると急激に増大している。
この要因について,触媒層の細孔径分布の評価結果より考察する。Fig.5.11は,
各触媒層の細孔径分布を示す。I/Cの増加及び分散処理時間を長くすると,細孔 径のピーク位置は小さくなる傾向がわかる。また,I/Cの増加によって細孔容積 も減少することがわかった。本結果より,先述の通り,アイオノマの量が増大し たことにより,触媒層の空隙がアイオノマにより閉塞されたと考えることは妥
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当であると考える[78]。一方で,分散時間を長くすると,細孔径のピーク位置が 小さくなるため,酸素輸送抵抗が増加しているものと思われる。
Fig.5.10 Relationship between ionomer adhesion ratio and electrode characteristics of MEAs.
Fig.5.11 Pore size distribution of catalyst Layer.
以上の実験から,スラリー調製時の分散処理時間を制御することで,スラリー の組成I/Cを変えなくても,アイオノマの付着率をある程度制御できることがわ かった。アイオノマ付着率は,発電特性であるプロトン輸送抵抗と特によい相関 関係があり,アイオノマの付着率を増加させることで,プロトン輸送抵抗を減少 させることが可能なことがわかった。I/Cを増加させることで,プロトン輸送抵
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抗を減少させることは可能であるが,ある値以上にまで増加させると,粒子の周 りにより多くのアイオノマが付着するだけでなく,触媒粒子の空隙を閉塞して しまうために,酸素輸送抵抗が極端に悪化することも分かった。
分散時間を長くすることでアイオノマ付着率が向上したのは,分散処理によ り,粒子及びアイオノマがよりほぐれ,未吸着のアイオノマが粒子の隙間に入り 込み,乾燥過程で付着したためと推察される。