第2章 触媒層スラリー特性及び発電特性の評価方法
3.3 結果及び考察
3.3.2 スラリーのアイオノマ吸着量 / 流動特性 / 充填率
Fig.3.3にエタノール濃度に対するアイオノマ吸着率の関係を示す。エタノー
ル濃度の上昇に伴い,吸着率は減少する傾向がみられた。水中(スラリーpHと 同等の約pH=3)での白金担持カーボンのゼータ電位を測定したところ-13.1 mV と負に帯電していたため,アニオン性のアイオノマは静電的な相互作用では吸 着しにくく,白金担持カーボンとアイオノマの間の疎水性相互作用によって吸 着していると考えられる。Shuang Maらは,カーボンへのアイオノマ吸着量につ いて,カーボンに Pt が担持されることにより吸着量が低下すること[71],カー ボンの酸処理による官能基付与により吸着量が低下[72]することを示している。
また,アイオノマは疎水性骨格を有するため,エタノールが添加されること で,溶媒との親和性が高くなる。したがって,今回の系でエタノール濃度が増加 することによって,白金担持カーボン粒子の表面が親水化した事,及びナフィオ ンの溶媒との親和性が向上したことにより吸着量が減少したと考えられる。
Fig.3.3 Adsorption ratio of ionomer to particles.
Fig.3.4 に各エタノール濃度に対するスラリーの流動曲線を示す。エタノール
の濃度が増加すると,全体的に見かけ粘度は低下する傾向が確認された。また,
エタノール濃度0 mass%では,流動曲線に降伏値がありヒステリシスが生じてい ることから,粒子同士が凝集していることがわかる。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0 5 10 15 20 25 30
A d sor p ti on r a ti o x
M[ - ]
Ethanol concentration [mass%]
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Fig.3.4 Flow curves of the prepared slurries.
Fig.3.5 に異なるエタノール濃度で調製したスラリーの遠心場における充填率
を示す。エタノール濃度が増加するとわずかだが充填率が向上し,白金担持カー ボン粒子が分散する傾向にあることがわかった。
Fig.3.5 Final packing fractions of the prepared slurries by sedimentation.
0 5 10 15 20 25
0 50 100 150 200
0 mass%
5.0 mass%
15.0 mass%
23.0 mass%
Shear rate [1/s]
Shear stress [Pa]
0 0.05 0.10 0.15
0 5 10 15 20 25 30
Ethanol concentration [mass%]
Packing fraction [ - ]
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ここまでのスラリー評価結果より,溶媒の組成がスラリー中のアイオノマ及 び白金担持カーボン粒子の分散・凝集状態に及ぼす影響を,Fig.3.6 に模式的に 示す。エタノール濃度が0 mass%では,凝集してサイズが大きくなっているアイ オノマに,複数の粒子が取り込まれ,凝集体を形成している。 そのため,アイ オノマの吸着量が多く,スラリーの粘度が高いため,充填性が悪くなったと考え られる。一方で,スラリーの溶媒中にエタノールが存在すると,アイオノマがほ ぐれ,サイズが小さくなりかつ溶媒への親和性が高くなるとともに,粒子への吸 着量が減少する。粒子もエタノールによって表面が親水化され,分散した結果,
スラリー粘度が低下し,充填性が向上したと考えられる。
Fig.3.6 Schematic illustration of the particles dispersion state in slurries.
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