第2章 触媒層スラリー特性及び発電特性の評価方法
3.3 結果及び考察
3.3.3 発電特性
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3.3.3 発電特性
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Fig.3.8 Oxygen transport resistance of MEAs fabricated from the prepared slurries.
Fig.3.9 は,エタノール濃度に対するカソード触媒層のプロトン輸送抵抗の関
係を示す。エタノール濃度の増加に伴い,触媒層でのプロトン輸送抵抗が増大す ることがわかる。Fig.3.7においても,エタノール濃度の増加により0.5 A/cm2よ り小さい範囲にて,電圧降下が増加傾向にあることがわかり,エタノール濃度は 触媒層のプロトン輸送抵抗の増加に影響を及ぼしていることがわかる。
Fig.3.9 Proton transport resistance of MEAs fabricated from the prepared slurries.
10 20 30 40
0 5 10 15 20 25 30
R other [s/m]
Ethanol concentration [mass%]
0 50 100 150 200 250
0 5 10 15 20 25 30
R ion [m・cm2 ]
Ethanol concentration [mass%]
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以上をまとめると,エタノール濃度0 mass%においては,カソード触媒層のプ ロトン輸送抵抗が小さく,一方で酸素輸送抵抗が大きいため,他の条件で作製し た触媒層に比べ,低電流密度での電圧降下は小さいが,高電流密度域における電 圧降下が大きい。一方で,エタノール濃度の増加はプロトン輸送抵抗が上昇し,
酸素輸送抵抗が低下するため,さらに出力を向上させるには,酸素輸送抵抗とプ ロトン輸送抵抗の両方を低下させることができるスラリー調製指針を明らかに する必要がある。
Fig.3.10に本実験により得られたスラリー特性と,スラリーを塗布・乾燥して
得られた触媒層の微構造及び発電特性の関係を模式的に示す。
Fig.3.10 Schematic illustration of the microstructure of cathode slurry and catalyst layers fabricated from slurries with different water/ethanol weight ratio.
スラリーの特徴としては,3.3.2に記載したように,エタノール濃度が0 mass%
のスラリーでは,凝集してサイズが大きくなっているアイオノマに,複数の粒子 が取り込まれ,凝集体を形成している。 そのため,触媒層中では粒子まわりの アイオノマが酸素供給を阻害し,酸素輸送抵抗が高くなったと考えられる。一方 で,エタノールを少量添加するだけで,アイオノマはほぐれ,サイズが小さくな りかつ溶媒への親和性が高くなるとともに,粒子への吸着量が減少した。アイオ ノマの吸着量が減少したことで,触媒層中での酸素の供給が容易になった反面,
プロトンの移動が困難になったものと推察される。したがって,プロトンの輸送
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抵抗及び酸素輸送抵抗をどちらも低減させるためには,アイオノマの吸着量を 適度な値に制限し,かつアイオノマのサイズを小さくすることが有効であると 考えられる。Fig.3.11にエタノール濃度0 mass%及び15 mass%にて作製したカソ ード触媒層の断面SEM観察結果を示す。
Fig.3.11 Photos of cross section of cathode catalyst layers fabricated from slurries with different water/ethanol weight ratios of 100/0 and 85/15.
エタノール濃度0 mass%のスラリーは,粒子が凝集し,その周りにアイオノマ が覆っている様子が見られる。一方で,エタノール濃度15 mass%では白金担持 カーボン粒子の分散が進んでいるように見られる。アイオノマは白金担持カー ボン粒子の周りに被覆しているが,エタノール濃度0 mass%の場合ほど厚く広範 囲には吸着していないと見える。これらの触媒層微構造観察結果は,上記のスラ リー評価結果並びに発電特性ともよく対応している。すなわち,エタノール濃度 0 mass%では,粒子周りに厚く吸着したアイオノマによって酸素輸送が阻害され,
酸素輸送抵抗が大きくなり,一方でエタノール15 mass%では,粒子へのアイオ ノマ吸着量が少ないために,アイオノマのネットワーク形成が不十分になり,プ ロトン輸送抵抗が大きくなったと考えられる。
以上の実験から,スラリー中のエタノール濃度によって,アイオノマのサイ
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ズ,アイオノマの吸着量,粒子の分散性に大きな違いが見られ,それが発電特性 に大きく影響していることが分かった。酸素輸送抵抗及びプロトン輸送抵抗の 両方を低減することが重要であるが,溶媒中のエタノールの割合を増加させる と,アイオノマのサイズを小さくすることはできたが,同時にアイオノマの吸着 量も減少する結果となった。