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第一章 原因理由の接続表現「によりて」

第二節 「により(て) 」の接続助詞への発展

四 結 び

以上、中古・中世に定着していった接続助詞的用法の「により(て)」は、日常言語の中 で自然に成立したものであることを述べた。

『万葉集』の段階では、「により(て)」の文法化の度合いが未だ低く、論理的な原因理 由を伝達する表現として、実用性を求めていない韻文では接続助詞的用法が現れにくいと 考えられる。「により(て)」は実用的な用語として、和文においても男性の会話文や原因 理由を強調的に言う必要がある部分に用例が現れやすいが、用法の面から、表現上のバラ エティがあり、接続助詞的用法としての発達が認められる。一方、漢文訓読文では、元漢 文の文脈に左右されるため、「ニヨリテ」の用言接続の比率が低くなり、「により(て)」の 用法に影響した可能性は低い。変体漢文において、「ニヨリテ」は用例が多いものの、「依 有」「依無」のような存在表現に接続する例が多い点では、用法上の偏りが見られる。この 点は、和漢混淆文での使用傾向にも影響を及んだと考えられる。和漢混淆文における「ニ ヨリテ」の全体的傾向としては、和文のそれに近似するように見えるが、実は日常言語を

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背景に用いられたと考えられる。このように、「によりて」の接続助詞的用法は、日常言語 を基盤に発生し、和文、漢文訓読文、変体漢文、和漢混淆文に共通して、広く原因理由の 接続表現として定着したと捉えられる。

【注】

(1)用例検索・調査には、下記のデータベース・テキストを使用し、また、公刊されて いる索引も使用している。

[和文]土佐日記、竹取物語、伊勢物語、落窪物語、大和物語、枕草子、源氏物語、

紫式部日記、和泉式部日記、平中物語、堤中納言物語、更級日記、讃岐典侍日記、蜻 蛉日記、大鏡、古今和歌集:『日本語歴史コーパス(CHJ) 平安時代編』を利用し、

本文は小学館『新編日本古典文学全集』による。/[漢文訓読文]春日政治(1969)

『西大寺本金光明最勝王経古点の国語学的研究』勉誠社、中田祝夫(1980)『古点本 の国語学的研究 訳文篇』勉誠社(東大寺本大乗大集地蔵十輪経)、中田祝夫(1969)

『東大寺諷誦文稿の国語学的研究』風間書房(東大寺本大乗大集地蔵十輪経・知恩院 蔵大唐三蔵玄奘法師表啓)、大坪併治(1968)『訓点資料の研究』風間書房(南海寄帰 内法伝、妙法蓮華経)、築島裕(1965)『興福寺本大慈恩寺三蔵法師伝古点の国語学的 研究』東京大学出版会、太田次男・小林芳規(1982)『神田本白氏文集の研究』勉誠 社、『高山寺古訓点資料第一』東京大学出版会(論語・史記)、『高山寺古訓点資料第二』

東京大学出版会(荘子)、築島裕[ほか](1995)『醍醐寺藏本遊仙窟總索引』汲古書 院/[変体漢文]瀬間正之(1993)『古事記音訓索引』おうふう(本文は『古事記新 訂版』による)、『高山寺資料叢書二 高山寺本古往來表白集』東京大学出版会、三保忠 夫・三保サト子(1982)『雲州往来享禄本 研究と総索引』和泉書院、築島裕(2004)

『高野山西南院藏本和泉往來總索引』汲古書院、『御堂関白記』と『小右記』の調査に は、『古記録フルテキストデータベース』を利用した。/[和漢混淆文]馬淵昌子[ほ か](1971-1981)『今昔物語集文節索引』笠間書院(本文は日本古典文学大系本によ る)。北原保雄・小川栄一(1999)『延慶本平家物語 本文篇と索引篇』勉誠出版、『方 丈記』『徒然草』『十訓抄』:『日本語歴史コーパス(CHJ) 平安時代編』を利用し、

本文は小学館『新編日本古典文学全集』による。/[その他]北川和秀(1982)『続 日本紀宣命 校本・総索引』吉川弘文館(引用した本文は新日本古典文学大系『続日本

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(2)築島裕(1963)による。

(3)下記の例の示したように、古事記では用言接続の例がしばしば見られる。

ト相而詔之、因女先言而不良。(卜相ひて、詔りたまひしく、「女先に言へるに因 りて良からず。」)(古事記・上巻)

故、因此八嶋先所生、謂大八嶋国。(故、此の八島を先に生めるに因りて、大八島 国と謂ふ。)(古事記・上巻)

古賀精一(1976)によれば、古事記において、「因」字を「……ニヨリテ」と訓む のが殆どである。

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ドキュメント内 古代日本語の因果関係を表す接続表現 (ページ 46-49)