第1節 地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野
3. 経済単元における地域目的地域理解型実践事例の構成
本項では、地域目的地域理解型の授業構成について述べていく。地域目的型地 域理解型は、地域教材を目的的に取扱い、地域の個別的な社会的事象に関する 知識を獲得することで、地域で起こっている社会的事象について理解することが授業 のねらいとなっている実践を指している。本項では、教材の学習過程ごとに教授型・
資料読解活動型・調査活動型・討議活動型の実践事例の構成について説明する。
(1)地域目的地域理解型:教授型実践事例の構成
教授型には、No.36rETの自転車は今?」38、No.37「水俣病一水銀とヘドロを持 ち込んで」39、No.53「地域スーパーの奮闘1」40、No.58「水俣から自分の生き方を問 う」41の4事例が該当した。
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教授型の典型的な事例としては「水俣病一水銀とヘドロを持ち込んで」を挙げるこ とができる。本事例の目標は記述されてはいないが、「水俣病問題に関心を持たせる。
水銀の怖さ、水俣病による差別や差別を受けた人々の苦しみについて理解する。」こ とにねらいがおかれていると考えられる。
本事例では、地域教材として「水俣病」が取扱われている。学習内容と地域教材 は同一のものとみなされ、地域教材が直接的な学習内容として位置付いている。
本事例は、水俣病の実態と水俣病にかかったことによって影響を受けた人々の様 子について理解することが中心的な学習活動となっている。以下の【表2−9】に本実 践の授業展開を示す。
【表2−9「水俣病一水銀とヘドロを持ち込んで」の授業展開】
▽義血活動・●発問 ●答え・○知識 資料
導
▽瓶に入っているものについて予想す 資料①:袋に
入 る。 入れたヘドロ
■これは、いったい、なんだと思います ●水銀、チッソが垂れ流したもの…。 の入った瓶
か? oヘドロ…工場廃水などで汚れた泥が港湾の底に蓄積し
たもの。
●これはヘドロの中に含まれているものの 。水銀。水の14倍の重さ。
一つです。何だと思いますか?
展 ▽水俣病についての説明を聞く。 O水銀をチッソという会社が工場廃水として、何年も垂れ
開 流していた。当然、この水銀は魚介類に濃縮され蓄積さ
れていく。それらの魚介類を食べた入達が病にかかり、
「水俣病」と呼ばれるようになった。1956年に発見されて から30年以上経っていて、かかった人はいろんな差別を 受けた。
▽水俣病の障害について説明を聞く。 。持続する頭痛、視野狭窄、難聴、臭覚障害、口周囲し
びれ、構音障害、四肢末端しびれ、知覚障害、歩行・運 資料②:水俣 動障害、記憶力低下、精神障害…。 病に関する障
▽発生当時の自然界の変調についても Oタイが口をあけてあがってくる。ボラがくるくる回る。カラ 害
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第H章地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野経済単元における実践の類型と構成
説明を聞く。 スが飛べなくなり畑に落ちる…、
●水俣病にかかった人達にどんな差別が o就職試験で上京して「水俣病はうつらないの」と聞かれ 資料③:水俣 なされたのでしょう? た。「水俣の人間は奇病があるから教室に入れるな」とあ 病における差
る学校でささやかれた。…など。 別
。何の根拠もない差別を受け、患者の皆さんには、病気 の苦しさ、生活の苦しさなど、こ二重、三重の苦しみがあっ
た。
。公害病の発生と患者への直接的な差別の2つの側面が
あった。
●水俣病を終わらせるための方法にはど ●保障金をたくさん出す。水俣湾の埋め立てを急ぎ、汚染 のような方法があるだろう。 魚を一掃する。認定患者の数を増やして救済を急ぐ。不
知火海の魚を一切食べないようにする。社会福祉の充実
etc.
●「水俣病は人が人を人と思わなくなった 。最初の「人」…水俣病にかかっていない人 ときから始まった。」それぞれの「人」は 。二番目の「人」…水俣病にかかった人
何? Q三番目の「人」…人間という意味の人
終 ▽本時のまとめをする。 。水俣病には予防の責任、拡大防止の責任、救済の責
結 任という3っの責任がある。しかし、原因がわかっていな
がら何の処置もしなかった。
○経済的に救済するだけでなく、一人一人の意識が水俣 病を終わらすことができる。
導入部では、ヘドロを実物教材として提示し、ヘドロの中に水銀が含まれていること を示している。そして、水銀の持つ質的特性について説明し、人体に悪影響を与える 物質であるということを把握させることで水俣病に関する学習の動機付けを行ってい
る。
展開部では、水銀が水俣病の原因となっていることや水俣病の概要に触れ、水俣 病にかかった人達が長い間社会的に苦しい生活を送らざるを得なかったことに気付か せている。また、その後の活動で水俣病にかかった人達が受けてきた差別の実態をい くつかの事例をもとに把握させ、水俣病の差別や障害の実態に関する理解が図られ
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ている。その後、水俣病の差別をなくしていくために必要な方策について考える活動 が設けられ、その活動の後には差別対象としての水俣病が発生した原因を分かりや すく表した表現について、その意味内容を説明することで水俣病に関する差別につ いてより理解を深められるように構成されている。
終結部では、本時のまとめとして、水俣病に関する3つの責任がまとめられ、経済 的な救済とともに、一人一人の人権に関する意識が水俣病の解決を進めていくという ことを認識させている。また、本実践は授業全体を通して人権教育の側面が強い実
践となっている。
授業の中で学習者が獲得する知識は水俣病の原因やその結果、そして、障害や 差別の実態に関する知識であり、地域的な社会的事象について説明する個別的な 知識となっている。これは地域教材「水俣病」に直接的な学習内容としての側面があ ることを表しており、教材が目的的要素を有していると言える。そして、これらの知識は 相互に関連しながら追究がなされるように構成されてはおらず、並列的に提示されて いる。また、これらの知識の獲得過程としては授業者の説明が中心的に位置付いて いることが授業展開から分かる。そのため、学習者自身が主体的に水俣病に関して 追究していく活動は行われていない教授型の授業だと考えられる。
以上の考察から、本実践の授業構成は【図2−9】のようになっていると考えられる。
【図2−9地域目的地域理解型:教授型の授業構成】
段階 学習内容 地域教材 学習過程
事実認識過程 U ﹁﹇牽ユー1 闘魚病め概要1 ︵旨i騰に曇る障害1一Il l水俣病による差別1噌l i;一一一一一一一一↓一一一一一一一﹂ lil亟授il﹇1一麺國1極國
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lj ll章 地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野経済単元における実践の類型と構成
【図2−9】は、地域目的地域理解型:教授型に該当した「水俣病一水銀とヘドロを 持ち込んで」の授業構成をモデル化したものである。地域教材「水俣病」は学習内容 と同一的に取り扱われているため、授業の学習内容は水俣病の「概要」「障害」「差 別」といった水俣病に関する個別的な事象となる。獲得される知識はそれらの事象に 関する知識となるため、本実践は地域の社会的事象「水俣病」の構造や影響につい て理解する事実認識過程とすることができる。そして、それらの事象の学習過程には 教師側からの教授活動が中心的に位置付いている。
(2)地域目的地域理解型:資料読解活動型の構成
資料読解:活動型にはNo.10「生活環境と公害問題」42、No.19「公害の防止と環 境保全一琵琶湖の汚染防止一」43、No.30「奥多摩町の水道のしくみ」44の3事例が
該当した。
資料読解活動型の典型的な事例としては「生活環境と公害問題」を挙げることが できる。本事例の目標は「茨城県内で生じているいろいろな公害問題を、新聞記事 等の具体的事例から選び出して、その種類・広がりを知り、公害学習の課題を設定
することができる。」である。
本事例では、地域教材として「茨城県の公害問題」が取扱われている。学習内容 と地域教材は同一のものとみなされ、地域教材が直接的な学習内容として位置付い
ている。
三時を貫く学習課題として「茨城県の公害について調べよう」が設定され、地域の 新聞記事等の資料から茨城県の公害の実態について読み取ることが中心的な学習
活動となっている。以下の【表2 ・一 to】に本実践の授業展開を示す。
【表2−10「生活環境と公害問題」の授業展開】
●艶問・▽学習活動 ●答え・○知識 資料
導
▽VTRを見る。 資料①:「水質浄
入 ・写った池は何という池ですか? ●大塚池。 化に取り組んでい
●それでは、これは何の機械でしょう? ・水をきれいにする機械。 る大塚池のVTR」
●なぜこんな機械が置いてあるの? ●水が汚いから。
・水や空気の汚れを何と言いますか? ●公害。
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