第1節 地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野
1. 経済単元における地域手段社会認識型実践事例の構成
第H章 地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野経済単元における実践の類型と構成
第2回忌地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野
経済単元における実践の構成
本節では、第1節で明らかになった分類を踏まえ、それぞれの実践事例の構成に 関する特徴について述べる。第1項では社会認識型の構成について、第2項では社 会参画意識育成型の構成について、第3項では地域理解型の構成について、第4 項では地域住民意識育成型の構成について述べる。それぞれの構成は教材の学習 過程ごとに細分化して述べる。
おらず、地域教材は学習内容に対して手段的に位置付いている。
本時は、札幌市中央卸売市場で取扱われる青果物や水産物の価格変化を視点 に、市場経済における価格決定理論を理解させることが中心的な学習活動となって いる。以下の【表2−3】に本実践の授業展開を示す。
【表2−3「価格の上下と生産の調整」の授業関関】
▽学習活動・●発問 ●答え・○知識 資料
導
▽札幌市中央卸売市場の土地利用図を提示し、 資料①:「中央
入 機能の分布を確認する。 卸売市場の土
●仲卸売場はどんな役割でしょう? ●「せり」によって、商品が取引されている。 地利用図」
価格はどのように決定し、取引はどのように行なわれるのだろう?
展 ▽卸値(市場価格)が「せり」によって決定される市
開
場の各関係機関についての説明を聞く。
▽班ごとに札幌市中央卸売市場で扱っている青 ●きゅうり・トマトなど:生産の最盛期で出荷量 資料②:「青果 果物や水産物の数量と市場価格の月別の変動を の多い時に価格は下がり、 出荷量の少ない時 物や水産物の
グラフ化する。 に価格は上がる。 数量と月別の価
格変化」(統計
▽それぞれの出荷物の価格がどのように上下して ●ばれいしょ・たまねぎなど:産地によって価格 資料とグラフ)
いるか理解する。 が上下している。
▽商品の価格は何によって決められているのか説 o需要は消費者の必要とする量に関係して決
明を聞く。 定され、供給は生産者から出荷される数量に
関係して決定される。
。需要と供給のバランスがとれたところで価格 は決定される。
終
●さけやえびのような水産物の価格の変動が青果 ・魚類は冷凍保存がきく。
結 物と比べて少ないのはなぜか?
▽商品の価格を安定させるための努力について 資料③:録音テ
市場業務課の人の話を聞く。 一プ
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第E章 地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野経済単元における実践の類型と構成
導入部では、札幌市中央卸売市場の土地利用図を提示し、卸売市場でせりが行 われていることを確認している。そして、本時のB.Qとなる学習課題「価格はどのように 決定し、取引はどのように行われるのだろう」を設定している。
展開部では、札幌卸売市場で取扱われている水産物や農作物の月別の価格変 化を示したグラフを作成させ、商品となっている水産物や農作物の価格がどのように 変化しているのかをとらえさせることによって、価格変化の特徴を明らかにさせている。
そして、明らかになった価格変化の特徴からそれぞれの共通性を導き出すことで「需 要は消費者の必要とする量に関係して決定され、供給は生産者から出荷される数量 に関係して決定される。需要と供給のバランスがとれたところで価格は決定される。」と いう市場経済における価格決定の理論へと導いていることがわかる。商品の価格は季 節や天候、収穫量など供給量に関わる要因と深く関わっており、それらと需要量の相 関関係によって決定される。需要と供給の関連によって導かれる価格決定理論を身 近な市場で取引される商品を視点としてとらえさせていることになる。
終結部では、価格を安定させるための工夫について市場の人のお話を出し、授業
を終えている。
授業の中で獲得される知識は、各商品作物の価格決定に関する知識ではなく、そ れらを包括的に説明することのできる知識であり、社会一般に通じる一般的な知識で ある。また、授業で取扱われている地域教材「札幌市中央卸売市場の「せり」と扱わ れている商品の価格変動」は直接的な学習内容としては位置付いておらず、価格決 定の理論について学習させるという手段的要素を持っている。そして、それらの知識 は教師からの教授活動によって獲得されるように構成されていることが授業展開から 読み取れる。
以上の考察から、本実践の構成は【図2−3】のようになっていると考えられる。
【図2−3】は地域手段社会認識型:教授型に該当した「価格の上下と生産の調 整」の授業構成をモデル化したものである。地域教材「札幌市中央卸売市場の「せ り」と扱われている商品の価格変動」は学習内容と同一的に取扱われてはおらず、授 業の学習内容となる市場経済における価格決定のメカニズムを理解させるための具 体的な社会的事象として手段的に位置付いている。獲得される知識は価格決定のメ カニズムという一般的な社会的事象に関する知識となるため、本実践は地域の社会 43
的事象「札幌市中央卸売市場の「せり」と扱われている商品の価格変動」を通して一 般的な価格決定メカニズムの構造や要因について理解する事実認識過程とすること ができる。そして、価格決定に関する事象の学習過程には教師側からの教授活動が 中心的に位置付いている。
【図2−3地域手段社会認識型:教授型の捜業構成】
段階
学習内容■
地域教材 学留過程
■ ■
r 一■一■一ロー一一■「
市場の「せり」< 1札幌市卸売市場の 1
Dj l」
麺
■ 1、
圏 「せり」 1
事 一 騨 一 脚 一 噸 一 一 一 一 一 一
実事
出荷物の価格←
一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ケ札幌市卸売市場で取引1・・
圏
四過
の決定
I l
Gされる青果物・水産物の1
程 = 讐 il 価格変化 ■
▼
1__コ_____聰_藺己
商品の価格決定 ( ■
・匪國
u
のメカニズム(2)地域手段社会認識型:資料読解活動型の構成
資料読解活動型には、No.4「予算と国民生活一公共施設の建設と財政収支一」
10、No.11「これからの福祉と生活環境一国のお金のやりくり一」11、No.21「職業の意 義と役割」12、No.23「価格と市場」13、 No.32「高齢化社会と福祉の充実」14、No.33
「国・地方の財政」15、No.38「地方財政の仕組みと働き」16、No.42「地方公共団体 の仕事と財政」17、No.47「給料が二倍になる一高度経済成長一」18、No.52「日本 経済の現状」19、No.56「わたしたちの生活と国の役割」20、No.57「介護保険制度
H」21の12事例が該当した。
資料読解活動型の典型的な事例としては、「これからの福祉と生活環境一国のお 金のやりくり一」を挙げることができる。本事例の目標は、「国と地方公共団体の財政 問題について、解決策を考えることができる。公債発行の問題点について、説明する
ことができる。」である。
本事例では、地域教材として、「花巻市の財政収支」が取り扱われている。学習内 容と地域教材は同一のものとしてとらえられておらず、地域教材は学習内容に対して 44
第H章地域教材を視点にした中学校社会科公民的分野経済単元における実践の類型と構成
手段的に位置づけられている。
本時は、「国や地方公共団体の財政にはどのような問題があるのか」が授業を貫く 学習課題として設定され、関連する資料を読解することが中心的な学習活動に位置 づけられている。以下の【表2−4】に本実践の授業展開を示す。
【表2−4「これからの福祉と生活環境一国のお金のやりくり一」の授業展開】
●亮問・▽学習活動 ●答え・o知織 資料
導
▽前面の税の種類について復習する。 o国税収入ベスト3(所得税、法人税、消費
入 税)
●消費税が値上がりしたらどうですか? ●たくさんお金を払わないといけないからイ
▽谷垣前財務大臣の消費税増税案が紹介される。 ヤだ。
●なぜ国民が嫌がる消費税の増税案を提案したのだ ●国のお金が足りないから。●借金があるか
ろう? ら。■歳出が増えているから。
▽学習課題を把握する。
匝政にはどんな問題があるのだろう?
展 ▽どんな問題があるか予想、ワークシートに記入し、 ●税収入だけでは、国のお金が足りない。
開
発表する。学級全体の仮説を立てる。 ●国にはたくさんの借金がある。
●資料1から国の財政にはどんな問題があります 。税収入だけでは不足しており、国民からの 資料①:2004年
か? 借金(公債費)で補っていることに問題があ の国の歳入と歳
●これに資料2を関連付けるとどんな問題があります
る。
寫総ツは返済しきれない状態である。
出の内訳ρグラ t資料②:国債の
か? 発行残高と国の
▽国の財政における問題点をノートに記入する。 歳入に占める国
債の依存度のグ
ラフ
.花巻市の財政のバランスはどのようになっているの 。国債依存度と国債残高は変化しており、ど 資料③;花巻市
だろう? ちらも増加してきている。 の歳入と歳出の
O市税や市債、国庫支出金、地方交付税交 グラフ
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