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6 プロジェクト・マネジメント

6.1 プロジェクト・マネジメントとは

6.1.1 組織マネジメント (Human Resource Management) の概要

(1) 組織マネジメントの目的

プロジェクト組織は、プロジェクトを遂行するために編成された組織である。このため 限られた時間内でプロジェクトを成功裏に導くために、プロジェクト組織に対して次の項 目が求められる。

① 意思決定が迅速に行われること。

② 指示、命令が実質の実務担当者まで敏速かつ正確に伝達されること。

③ 実務者からの情報がタイムリーに上層へ伝達され、かつ実務担当者の意見が汲み上

がる構造になっていること。

④ 担当者の権限と責任が明確であり、下位階層のモチベーションが高まる構造になっ ていること。

⑤ 個人の遂行能力の弱点は組織全体でカバーできる構造になっていること。

(2) プロジェクト・マネージャーの役割

プロジェクト遂行にあたっては、プロジェクト・マネージャーが指名されることが多い。

プロジェクト・マネージャーは、プロジェクトの執行責任者であり、マネジメントに関し てトップとしての権限を有し、責任を負う。プロジェクト・マネージャーには、そのプロ ジェクトの目標を十分に理解した上で、組織の構築、リスクを踏まえた進捗確認、コスト とのバランスを考慮した品質管理、プロジェクト計画の変更管理や顧客との交渉等におい て、リーダーシップを発揮することが求められる。

(3) プロジェクト組織の形態

プロジェクトは有期であるが、企業経営が持続し発展していくためには、将来のプロジェ クトに対しても有効となるプロジェクト組織とはどうあるべきかを常に考える必要がある。

人材、技術、ノウハウとそれを最大限に引き出すべく、一つのプロジェクトだけで終わら ず、組織マネジメントの質を継続し高めることが望ましく、それが可能となる組織形態が 望まれる。

プロジェクトを遂行する組織形態は、機能型組織、プロジェクト型組織、それらの混合 であるマトリックス型組織と大きく三つに分けることができる。プロジェクトをどのよう な組織形態で実施するかは、プロジェクトの特性や定常の組織形態によって異なる。それ ぞれの組織形態の特徴を理解し、プロジェクトが効果的に遂行できる組織形態を選定する 必要があるが、一般的には、マトリックス型、プロジェクト型を採用するケースが多い。

図 6.1.3~図 6.1.5 にIT産業業界を例とした機能型組織、プロジェクト型及びマトリッ

クス型を示す。

① 機能型組織(ファンクショナル型組織)

機能型組織は、定常形態で機能別に分かれた部門のメンバーを、プロジェクトに対し て集約して構成する組織形態である。メンバーは、定常業務とプロジェクトの業務を兼 務することが多い。権限を持つプロジェクト・マネージャーは事実上存在せず、ライン・

マネジャーがリソースの調整を図る。そのため、適用できるプロジェクトは期間が短く、

小規模・ 低リスクなものに限られ、要件や環境の変化への対応も遅れがちになる。図

6.1.3に機能型組織の例を示す。

図 6.1.3 機能型組織

出典:日経BP Website: ITエンジニアのスキル向上ゼミナール

【上級】プロジェクトを成功させる組織作りの考え方、進め方

② プロジェクト型組織(タスクフォース型組織)

機能型組織が機能を単位とするのに対して、プロジェクト型組織ではプロジェクト単 位で部門を設置し、メンバーは既存の組織から完全に切り離され、プロジェクトの専任 となる組織形態である。プロジェクト・マネージャーは、プロジェクトに関する権限と 責任を持つ。大規模・高リスクのプロジェクトや、長期に及ぶプロジェクトに採用する ことが多い。図 6.1.4にプロジェクト型組織の例を示す。

図 6.1.4 プロジェクト型組織

出典:日経BP Website: ITエンジニアのスキル向上ゼミナール

【上級】プロジェクトを成功させる組織作りの考え方、進め方

③ マトリックス型組織

マトリックス型組織は、機能型組織とプロジェクト型組織を混合させた組織形態とな る。基本的には機能型と同様に機能を単位とする部門別の形態を保持し、機能部門が持 つリソースの調整の権限を実際にプロジェクトに参加するメンバーに委譲した組織形態 である。人的資源、技術サポートなどを得やすく、現場の問題点や要件・環境の変化に 柔軟に対応できる。プロジェクト・マネージャーが事実上存在しないウィーク・マトリッ クス型、その弱点を補うためにプロジェクト内に専任のプロジェクト・マネージャーを 置くバランス・マトリックス型、更にはバランス・マトリックス型をより発展させ、プ ロジェクト・マネジメントを専任で行う部門を独立させ、プロジェクト・マネージャー に各部門のライン・マネジャーよりも強い権限を持たせて指示系統を明確にしたスト ロング・マトリックス型組織モデルがある。図 6.1.5 は、ストロング・マトリックス型 組織の例である。

図 6.1.5 ストロング・マトリックス型組織

(出典:日経BP Website: ITエンジニアのスキル向上ゼミナール

【上級】プロジェクトを成功させる組織作りの考え方、進め方)

(4) プロジェクト・マネジメント・オフィス(Project Management Office, PMO)の役割 企業によっては、個々のプロジェクトのために編成されたチームとは別に、組織全体の プロジェクト・マネジメント能力を向上し活用することを目的として、PMOを常設の部門 として設置することもある。PMOは、プロジェクト進行中、プロジェクト・チームのマネ ジメントを支援し、プロジェクト完了と共に解散するチームに代わって、そこで得たマネ ジメントのスキルやノウハウを吸い上げ体系化し、次期のプロジェクトへ発展させる役割 を担う。