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4 海洋再生可能エネルギー開発の実際

4.1 発電システム

4.1.2 その他の再生可能エネルギー発電システム

(1) 波力発電

海上を吹く風のエネルギーが海面に波を起こす。波の持つ運動エネルギーを取り出して 発電しようとするのが、波力発電である。

風力発電では、風のエネルギーを風車によって直接回転エネルギーに変換し、発電機を 駆動する。これに対して、波力発電の場合には、直接回転運動に変換することができず、

一旦別の媒体の運動エネルギーへと変換し、次に発電機を駆動する回転エネルギーを得る 方法を取っており、さまざまな方法が試行されている。このため、波力発電は波のエネル ギーを変換する方法によって、以下のような分類がされている。

① 可動物体型(Moving Body Type)

海面に浮かべた可動物体の動揺を機械的な運動エネルギーに変換し、これを動力源と して油圧発生装置(油圧ポンプ)などを動かして油圧モーターにより回転運動に変換し て発電機を駆動する。

可動物体型として分類される波力発電には、以下のようなものがある。

ア.固定点として利用する大型の浮体にヒンジやガイドなどによって取り付けた対象 海域の波長に比べて小さい寸法とした浮体・受圧板を波の力を受ける可動物体として使 用する一点吸収型(Point Absorber Type)

イ.ヒンジなどで接続された複数の同程度の大きさの浮体を入射波の進行方向に置き そ れ ぞ れ 異 な る 波 の 位 相 で 運 動 さ せ る こ と に よ り 生 じ る 力 を 受 け る 減 衰 器 型

(Attenuator型)

ウ.沿岸域海底に置かれた基礎にフラップをヒンジなどで接続し、沿岸では水粒子の 運動は楕円になることを利用してその水平運動成分(サージ)によりフラップを前後に 動かすOscillating Surge Wave Converter型

エ . 海 底 等 に 固 定 さ れ た 構 造 物 と そ の 上 の 波 に よ っ て 上 下 す る 浮 体 か ら な る Submerged Pressure Differential型

オ.海底をピン支持とした振動板の振動に伴い高圧の水が海底のパイプを通して海岸 に送られ陸上の水力発電装置を使用するOscillating Wave Surge Converter型

図4.1.11はスコットランドのオーシャン・パワー・デリバリー社が開発している「ペ

ラミス」(Pelamis、うみへび)と名付けられた可動物体型波力発電装置の一例である。

図4.1.11 ペラミス(可動物体型波力発電装置)

出典:Richard Yemm et al. ”Pelamis: experience from concept to connection”, Phil. Trans. R. Soc.

A (2012) 370, 365–380, 2011

ラムシリンダー 関節部

全長180m、直径4m、総重量約1350トン、4個の円筒形の浮体をまっすぐ3つの関 節で接続している。波の中では浮体をつなぐ関節の角度が変化する。関節角度の変化を 油圧に変換する。図 4.1.11(下)に、ペラミスの関節部分の切断図を示す。減衰器型の 名前の由来となるラムシリンダーなど油圧機構が装備されているのが見える。発電能力 は1基あたり約0.75MWである。

ペラミスとならんで最も実用化に近いものと見られる波力発電装置に米国のオー シャン・パワー・テクノロジー社(OPT: Ocean Power Technologies)が開発した一点吸 収型に分類される「パワーブイ」(PowerBuoy)がある。

図4.1.12に示すような装置で構造がシンプルかつ大部分が水中に没しているので、安

全性や信頼性で有利と見られている。

2005年から2008年にかけて、米国ニュージャージー沿岸に定格40kW級の初期の試 験機による試験を始め、2008 年にスペイン、2011 年にスコットランド・オークニー、

2011年から2013年にふたたび米国ニュージャージーでの試験など実績を積み、改良を 重ねてきている。

図4.1.12 一点吸収型パワーブイ

出典:Ocean Power Technologies社ウェブサイト

② 振動水柱型(OWC: Oscillating Water Column Type)

下面のみを開放した円筒を海面に差し入れると、波が通過するとき空気室内の海面は 少し上下するが、特定の周期の波の中では円筒内の空気が共振を起こして大きく上下す る。この現象は水柱振動と呼ばれる。波の通過によって水柱振動が起きている空気室内 では内部の圧力は大きく変化し、空気室の上面に穴があれば大きな空気の出入りが生じ る。そこに空気タービンを置き発電する方式である。空気タービンには往復気流中でも 常に一方向に回転することができ、形状や構造が簡単であるウェルズタービンが主に採

用されている。

図4.1.13は、浮体式振動水柱型波力発電装置の模式図及び航路標識ブイの電源装置と

しての利用例である。小型の波力発電機としては大いに実績がある。

図4.1.13 振動水柱型波力発電装置

出典:緑星社ウェブサイト

③ 越波型(Overtopping Type)

波は護岸や防波堤などの海岸構造物に衝突すると静水面上よりも高く打ち上がり、ま た傾斜海岸では遡上して行く。一般には、海岸構造物に衝突し打ち上げた海水が構造物 の天端を越えて陸側・堤内に流入する現象を越波と呼ぶ。

越波型とは、越波による海水を貯水池あるいは貯水槽等で一時的に貯留し、貯水面と 海面との高低差を利用し、排水路にタービン及び発電機を設置して発電する方式の波力 発電装置である。

図4.1.14はウエーブドラゴン社の開発した浮体式の越波型発電装置の例である。片側

が越波を考慮した断面形状となっている浮体本体、浮体本体の両側に設置する大きな波 の反射板、そしてこれらを係留する装置から構成されており、浮体上部に貯留した海水 を排水する際に発電するための低圧タービンと発電機が、排水路に複数設置されている。

図4.1.14 越波型波力発電装置の例

出典:Wave Dragon ApS ウェブサイト

(2) 潮流・海流発電(Tidal Current Power, Ocean Current Power)

潮流とは、月、太陽、地球などの天体運動により生じる潮汐現象により海水が移動する 流れであり、潮汐と同じように1日1回または2回の周期的な変化をする。

海流とは、太陽熱によって生じる海水や大気の循環によって引き起される流れであり、

ほぼ流れの向きや速さが一定している。

一般的に潮流は、地形の影響を受けて強まるため比較的浅い海域で見られ、海流は、地 球の自転の影響も受けており黒潮やメキシコ湾岸流のように大陸の西側において深い海域 を流れている。

潮流・海流発電システムは、このようにして生じた潮流あるいは海流による海水の流れ の持つ運動エネルギーを、流れの中におかれたタービンにより回転エネルギーに変換し、

このエネルギーを発電機の原動力として利用し、電気エネルギーを得るシステムである。

潮流・海流発電では、水平軸型タービンの一つであるプロペラ型が多くのプロジェクト で採用されている。一方、周期的な潮流の向きの変化に対応できるため、流れの方向に対 する依存性が無い垂直軸のダリウス式やサボニウス式などのタービン形式も採用されてい る。海底に設置した構造物にタービン部を固定する着底式、係留された浮体に取り付ける 浮体式に加えて、海底などから係止したタービン部を水中に浮遊させる浮遊式などがある。

潮流・海流発電はまだタービンの高効率化、係留システムの安定性などの諸課題を解決 すべく研究開発が進められている状況である。

着底式潮流発電の例(構想)を図4.1.15に、浮遊式海流発電の例を図4.1.16に示す。

図4.1.15着底式潮流発電の例(構想)

出典:川崎重工ウェブサイト(ニュース、20111019日)

図4.1.16 浮遊式海流発電(構想)の例 出典:IHI 技報 Vol.53 No.2 ( 2013 ) (3) 潮汐発電(Tidal Power)

潮位差が大きい湾や河口の入り口に堤防と水門を建設しダムを作る。高潮位の時には開 門し、低潮位の時には閉門する等の水門操作をすると堤防の内外で水位差ができる。こう して作ったダムに、水力発電の技術を応用したものが潮汐発電である。基本的には低潮位 の時に生じる流れに対応して発電する一方向式であるが、高潮時の流れにも対応して発電 する双方向式もある。

図4.1.17は、フランスにあるランス潮汐発電所であり、1966年11月26日に完成した

世界初にして当時の世界最高出力の潮汐発電所である。ランス川河口に全長750mとなる 2基のダムを建設しランス川を完全に堰き止め、平均で 8m、最大で 13.5mという大きな 潮位変化により24基のタービンが最大240MWの電力を生み出している。

図 4.1.18 は、韓国にある始華湖(シファホ)潮夕発電所、2011 年から運転を開始し設

備容量は254MWで世界最大級の規模である。

図4.1.17 ランス潮汐発電所(仏)

出典:Tidal Energy ウェブサイト

図4.1.18 始華湖潮汐発電所(韓国)

出典:韓国海洋研究所ウェブサイト (4) 海洋温度差発電(OTEC: Ocean Thermal Energy Conversion)

海水の温度は、太陽の熱によって温められた表層が高く、深度が上がるにつれて次第に 下がり、約 600m~1000mの深層部では一定となる、表層の海水と深層部にある冷海水と の間には約 10~25℃の温度差がある。例えば、赤道直下での海洋表層水は 30℃近くある が、水深数百メートルの海洋深層水は5~10℃であり、20~25℃の温度差がある。この海 洋に蓄えられた熱エネルギーを、表層水と深層水の間の温度差を利用して熱サイクルによ