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2 海洋開発産業の背景と現状

2.2 海洋再生可能エネルギー開発

2.2.1 洋上風力発電

風力発電は、風の運動エネルギーを風車によって回転エネルギーに変え、その回転を直接、

または増速機を経た後に発電機に伝送し、電気エネルギーに変換する発電システムである。

風が持つ運動エネルギーは風を受ける面積に比例し、風速の3乗に比例して増大する性質 を持っており、理論的には風速が2倍になると風力エネルギーは8倍になる。従って、より 風の強い場所に設置すること、大きい翼で効率良く風を受けることが重要となる。

風力発電は欧州を中心に導入・普及のための取り組みが進んでおり、近年では陸上風力発

電(図 2.2.1)のみならず、 洋上に風車を設置する洋上風力発電の導入が進められている(図

2.2.2)。

(新出雲風力発電所) (London Array)

図2.2.1 陸上ウィンドファーム10の例 図2.2.2 洋上ウィンドファームの例

出典:ユーラスエナジーウェブサイト 出典:London Array ウェブサイト

10ウィンドファーム(wind farm)とは、多数の風力タービンを1カ所に設置し発電する施設を言う。

(1) 洋上風力発電のメリット

一般に、洋上の風速は強勢で乱れが小さいことから、風力発電に適している。つまり、

洋上では陸上よりも良い風況が得られる。世界の洋上の年間平均風力エネルギー密度の分

布を図 2.2.3 に示す。北半球冬季は、特に米国東岸や英国・ノルウェー沖の北海、日本沿

岸域などの風況が良い。また、豪州沿岸、南アフリカ、アルゼンチン南部などは一年を通 して風況に恵まれている。

※海上風(高さ10m)の平均風力エネルギー密度

図2.2.3 世界の風力エネルギー密度分布(洋上)

出典:NASAウェブサイト

風力エネルギーは風速の3乗に比例して増大するため、経済性を確保するためには、風 況の良い場所の選定が必要であり、その目安は年間平均風速 7m/s 以上とされている。図

2.2.4及び図2.2.5に、日本の陸上と洋上の風力ポテンシャルマップを示す。

図2.2.4から分かるように、陸上において7m/s以上の風況を得られる地域は少ないが、

北海道や北東北を中心に風況に恵まれた地域も存在する。一方、洋上において7m/s以上の 風況を得られる地域(下図のオレンジや赤い部分)が陸上より多く、北海道や北東北、関 東、九州などを中心に洋上の風況に恵まれている(図2.2.5)。

図2.2.4 日本の風力ポテンシャルマップ(陸上)

出典:「平成22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業(風力エネルギーの導入可能量に関する調査)」2011, 資源エネルギー庁)

図2.2.5 日本の風力ポテンシャルマップ(洋上)

出典:「平成22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業(風力エネルギーの導入可能量に関する調査)」

2011,資源エネルギー庁)

(2) 洋上風力発電の導入ポテンシャル

① 導入ポテンシャルに関する用語の定義

今後日本ではどの程度洋上風力発電が見込まれるのか、その量を表す用語として、「賦 存量」、「導入ポテンシャル」、「導入可能量」がある。其々の定義は、以下の通りで ある。

a) 賦存量

賦存量とは、設置可能面積、平均風速、河川流量等から理論的に算出することができ るエネルギー資源量である。

b) 導入ポテンシャル

導入ポテンシャルとは、自然要因(標高、傾斜など)、法規制(自然公園、保安林な ど)等の開発不可能地を除いて算出したエネルギー量である。

c) 導入可能量

導入可能量とは、経済性(固定価格買取制度、収益率など)を考慮し、導入ポテンシャ ルから絞り込んだエネルギー量である。

② 導入ポテンシャル及び導入可能量の試算

洋上風力発電については、試算によって幅はあるが、導入可能量は 17 万 kW~4500 万kWの間とされている。これは一般的な家庭の消費電力に換算すると12万世帯~3,200 万世帯分に相当する。

また、洋上風力の電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況を図 2.2.6 に示す。

同図より、電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況を見ると、九州エリアが最も 大きく、全体の29%を占めており、北海道エリアが26%、東北エリア14%でそれに続 いている。なお、九州地域の中でも、風速7.0-7.5m/s及び7.5-8.0m/sのエリアにお ける導入ポテンシャルが特に大きく、それぞれ全国のポテンシャル全体の12%と9%を 占める。

図2.2.6 洋上風力の電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況

出典:NEDO 再生可能エネルギー技術白書2(2014,NEDO)(平成22 年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査2011 環境省)よりNEDO 作成)

(3) 市場動向

① 世界の導入実績

世界及び主要国における洋上風力発電累積導入量の推移は図 2.2.7 の通りであり、近 年堅調な伸びを見せている。2011 年の累積導入量が 4,117MW に対し、2014 年に

8,739MWとなっており、3年の間に倍増していることがわかる。

世界的に見ると、イギリスの導入量が最も多く、全体の 50%を占めている。次いで、

デンマーク、ドイツ、ベルギーと続いており、遠浅の地形が多く地理的なメリットのあ る欧州で先行して導入が進められていることがわかる。中国もベルギーに次いで導入量 が多く、積極的な取り組みが窺える。日本でも導入が進められているものの、世界的に 見るとその量は僅かであるのが現状である。

図2.2.7 世界及び主要国における洋上風力発電累積導入量の推移

出典:“Global Wind Report – Annual Market Update2014, GWEC)

② 洋上風力発電産業におけるプレイヤーと市場シェア a) サプライチェーン

洋上風力発電産業を担うプレイヤー(企業)には、どのようなものがあるだろうか。導入 で先行する欧州において市場が拡大するにつれ、サプライチェーンが構築されつつある。

図2.2.8に、洋上ウィンドファームの主要構成要素とプレイヤーを示す。図2.2.8に示

すように、洋上ウィンドファームの主要構成要素としては、風力発電機、洋上変電所、

海底送電線・通信ケーブル、港湾施設などが挙げられ、様々な企業が関わっている。

風力発電機については、かねてからデンマークとドイツの企業が、主要サプライヤー としての役割を果たしてきた。また、オランダ、ベルギー、英国の企業は、北海の石油・

ガス開発のノウハウを生かし,海洋土木工事の分野で重要な役割を果たしている。関連 電気設備や海底ケーブルのサプライヤーは、ノルウェーやスウェーデン、ドイツ、イタ リアなど、各国に分散している。近年、洋上風力市場を牽引しているイギリスは、洋上 風力発電産業に積極的に投資しており、北海における国内外市場への展開を見据え、同 国東海岸に関連設備を増強している。このように、欧州は洋上風力発電市場を支えるサ プライチェーンの拡充が進んでおり、同市場の成長を支える基礎となっている。日本勢 でも、三菱重工業等が風力発電機の市場に参入している。

図2.2.8洋上ウィンドファームの主要構成要素とプレイヤー

出典:NEDO 再生可能エネルギー技術白書2 (2014,NEDO) (Wind in our Sails”(2011, EWEA)よ NEDO 作成)

b) 企業別市場シェア ―風力発電機市場の現状―

洋上風力発電の主要構成要素である、風力発電機の市場シェアについて、少し詳しく 見てみる。

i) 世界の市場

世界の市場シェアについては、洋上に限定したデータが見当たらないため、風力発電

機全体の市場について、図2.2.9にシェアの推移を示す。2010 年には欧米メーカーがシェ アを落とし、中国メーカー4 社が上位に進出した(Sinovel 第2 位、Goldwind 第4 位、

Dongfang 第7位、United Power 第10 位)。中国メーカー各社は、欧米メーカーから

技術供与を受け、低コストの製品を量産している。中国国内市場の立ち上がりによって 生産量を大きく伸ばし、生産技術の習熟、サプライチェーンの拡大を進めている。生産 能力の拡大によって、近年は国内市場に加え、海外市場への進出も進んでいる。また、

独自の技術開発を積極的に進めており、陸上風力発電に加えて、洋上風力発電市場の獲 得に向けた取り組みも進められてきた。

しかし、ここ数年で上位企業は大きく様変わりし、2012 年は中国メーカーがシェアを 落とす一方で、欧米メーカーがシェアを取り戻している(GE Energy 第1 位,Vestas 第

2 位、Siemens第3 位、Enercon 第4 位)。この巻き返しの背景には、欧州メーカーが

陸上風力発電に加えて、洋上風力発電市場の獲得に向けた動きを加速させたことにある。

特にSiemens はシェアを伸ばしており、欧州企業が産業を牽引している現状が、ここか

らも見て取れる。

欧州や中国メーカーと比較して、日本メーカーは世界市場におけるシェアは小さいの が現状である。

図2.2.9 風力発電機の世界市場シェア(2010年~2012 年)

出典:NEDO 再生可能エネルギー技術白書2 (2014,NEDO) (Emerging Energy Research 資料,BTM Consult ApS 資料よりNEDO 作成)

ii) 欧州市場

世界の洋上風力発電市場の中心となっている欧州の市場の現状を見てみる。洋上風力 発電市場においては現在、Siemens と Vestas の寡占状態にあり、その他 Repower や Winwind,BARD,GE,Areva などが少量を供給している(図2.2.10)。しかし、Doosan、

Gamesa、Alstom、Nordex、三菱重工業なども洋上風力市場参入への動きを見せており、

メーカー間の競争が激しくなることが予想されている。

図2.2.10 欧州の洋上風力発電機の市場シェア(2012年時点)

出典:NEDO 再生可能エネルギー技術白書2(2014,NEDO) (The European offshore wind industry-key trends and statistics 2012”(2013, EWEA)よりNEDO 作成)

iii) 日本の市場

日本国内の市場シェアについては、洋上に限定したデータが見当たらないため、風力 発電機全体の市場について示す。

2008年時点では、日本国内市場の風力発電機については、大半が欧米製であった(図

2.2.11)。日本メーカーの市場シェアが小さい要因の一つとし、市場が未成熟であるこ

とが挙げられる。世界市場シェア上位のメーカーは、いずれも拡大する自国市場におい て技術・実績を確立し、世界展開している企業である。一方、日本の風力市場は海外と 比較して小さく、海外市場で競争力を発揮できる日本メーカーを育成する環境が整って いなかったという背景がある。

しかし、図2.2.12に示すように、国産機の導入割合は2002 年頃から少しずつ増加し つつあり、日本メーカーも巻き返しを図りつつある。