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本教材は 平成 27 年度国土交通省委託事業 海洋開発技術者育成のための基盤整備業務 において作成されたものです

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海 洋 開 発 産 業 概 論

1 版

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本教材は、平成27 年度国土交通省委託事業「海洋開発技術者育成のための基盤整備業務」にお いて作成されたものです。

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1 序論 ... 1 1.1 海洋開発産業の定義 ... 1 1.2 海洋開発の意義 ... 2 1.2.1 海洋開発の必要性~世界的な流れ~ ... 2 1.2.2 海洋開発産業の規模 ... 3 1.3 海洋開発に影響を与える要因 ... 4 1.4 海洋開発における沿岸国の権利 ... 4 1.5 日本における海洋開発の重要性 ... 7 2 海洋開発産業の背景と現状 ... 11 2.1 海洋資源開発 ... 11 2.1.1 海洋石油・天然ガス開発 ... 11 2.1.2 新たな資源開発への挑戦 ... 29 2.2 海洋再生可能エネルギー開発 ... 39 2.2.1 洋上風力発電 ... 39 2.2.2 その他発電システム ... 55 3 海洋石油・天然ガス開発の実際 ... 83 3.1 一般的な開発の全体工程 ... 83 3.1.1 開発の全体工程 ... 83 3.1.2 各段階での主なタスク ... 84 3.2 プロジェクト事例 ... 97 3.2.1 イクシス LNG プロジェクト ... 97 3.2.2 国内プロジェクト ... 107 4 海洋再生可能エネルギー開発の実際 ... 115 4.1 発電システム ... 115 4.1.1 洋上風力発電 ... 115 4.1.2 その他の再生可能エネルギー発電システム ... 125 4.2 開発の全体工程 ... 134 4.2.1 工程全体の流れ ... 134 4.2.2 各段階の主なタスク ... 137 4.3 プロジェクト事例 ~福島復興・浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業~ ... 140 4.3.1 概要 ... 140 4.3.2 研究課題 ... 141

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5.2 HSE (Health, Safety and Environment) ... 153 5.2.1 HSE とは ... 153 5.2.2 リスク評価の手法 ... 162 5.3 環境影響評価 ... 164 5.3.1 環境影響評価とは ... 164 5.3.2 海洋開発における環境影響評価の必要性 ... 166 5.3.3 環境影響評価の事例 ... 171 6 プロジェクト・マネジメント ... 179 6.1 プロジェクト・マネジメントとは ... 179

6.1.1 組織マネジメント(Human Resource Management)の概要 ... 181

6.1.2 プロジェクト計画の概要 ... 185 6.1.3 スケジュール管理の概要 ... 188 6.1.4 コスト管理の概要 ... 189 6.1.5 リスク管理(Risk Management)の概要 ... 191 6.1.6 品質管理の概要 ... 196 6.2 契約・保険・ファイナンスの基礎 ... 200 6.2.1 契約とは ... 200 6.2.2 契約の種類 ... 200 6.2.3 主な保険の種類 ... 204 6.2.4 ファイナンスとは ... 204 7 (付録)世界のプロジェクト ... 209 7.1 海洋石油・天然ガス開発プロジェクト ... 209 7.2 海洋再生可能エネルギー開発プロジェクト(洋上風力発電) ... 235

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1 序論

地球表面の約70%は海で覆われている。古来から人類は広大な海を交通、貨物輸送、水産資 源確保の場として利用してきたが、経済、社会の発展のため、海洋に豊富に存在する鉱物資源、 エネルギー等の有効利用の必要性が、益々高くなってきている。すなわち、海洋開発産業の重 要性が高まっていると言える。 海洋開発産業とは何か。また、どのような背景でその重要性が増しているのか。本章で概説 する。

1.1 海洋開発産業の定義

「海洋開発産業」と一口に言っても、その領域は多岐にわたる。例えば、ブリタニカ国際大 百科事典では、「海洋開発産業」の定義は下記のように述べられている。 海洋開発にたずさわる産業の総称。おもな部門としては海底油田,海底鉱物資源,熱水鉱床 や温度差発電,波力発電,水産増養殖を対象とした資源エネルギー開発,海上空港,人工島と いった海上,海中のスペース利用や海底パイプラインの敷設などの海洋土木などがある。 本書では、海洋開発産業の中でも、海洋資源(Ocean Resources)開発及び海洋再生可能エネル ギー(Ocean Renewable Energy)開発を対象とし、その産業の全体像や開発の各工程の概要 を説明し、関連する基礎知識について紹介する。 図 1.1.1 に示すように、海洋資源開発、海洋再生可能エネルギー開発の中でもいくつかの分 類に分かれるが、その中でも、既に商業化されている分野と、商業化に向け研究開発の段階に ある分野とがある。 (1) 海洋資源開発 「資源」とは、産業等に利用可能な自然から採れる有用物であり、海洋資源の中には、 石油・天然ガスの他、メタンハイドレート(methane hydrate)1、海底熱水鉱床(sea-floor

hydrothermal deposit)2などの海底鉱物資源などがある。海洋資源開発のうち、既に商業 化されているのは、海洋石油・天然ガス開発である。本書では、海洋石油・天然ガス開発 を中心に扱うこととするが、海洋石油・天然ガス開発と密接に関連するその他の資源開発 についても、新たな開発分野として紹介する。 水産資源の増養殖についても、海洋資源開発の一分野と捉えられるが、本書では扱わな いこととする。 (2) 海洋再生可能エネルギー開発 エネルギーとは、ある物体が“仕事をする(ものを動かす、温める、光らせる等)力” 1メタンハイドレートとは、天然ガスの主成分であるメタンをカゴ状の水分子が取り囲んだ物質で、低温高圧の海底下や凍土下 に存在する。第3 章で詳述する。 2海底熱水鉱床とは、海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿してできたものであり、鉄、亜鉛、銅、コバルト、鉛、 金、銀などが含まれている。第3 章で詳述する。

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を指す。再生可能エネルギーは、石油・天然ガスや石炭といった有限な資源である化石エ ネルギーとは異なり、自然界に常に存在するエネルギーのことである。大きな特徴として、 「枯渇しない」「どこにでも存在する」「発電時(利用時)に CO2を排出しない(増加させ ない)」の三点が挙げられる。海洋再生エネルギーとは、洋上の風力、波力、潮流・海流 等の海洋の自然エネルギーを指し、これらのエネルギーを電気エネルギーに変換して発電 を行う。 本書では、海洋再生可能エネルギー開発のうち、欧米を中心に商業化されている洋上風 力発電を主に扱う。また、将来の事業化を見据え研究開発が進められている波力発電、潮 流・海流発電等についても紹介する。 は商業化に向け研究開発段階の分野 ※   は既に商業化されている分野 洋上 風力発電 波力発電 潮流・海流 発電 海水温度差 発電 海洋再生可能 エネルギー開発 潮汐発電 海底鉱物 資源開発 メタンハイド レート開発 海洋石油・ 天然ガス 開発 水産資源 の増養殖 海洋資源開発 図 1.1.1 本書で扱う海洋開発産業の領域のイメージ

1.2 海洋開発の意義

1.2.1 海洋開発の必要性~世界的な流れ~ (1) 海洋資源開発 世界の一次エネルギー3需要は、これまで拡大を続けてきた。その中でも、石油・天然ガ スは、現在、一次エネルギー全体の過半を占める重要なエネルギー源である。 石 油 ・ 天 然 ガ ス 需 要 は 、 今 後 長 期 的 に も 成 長 が 見 込 ま れ 、 国 際 エ ネ ル ギ ー 機 関 (International Energy Agency(IEA))の見通しによると、2035 年の世界のエネルギー需 要は2009 年の約 1.4 倍に、天然ガス需要は約 1.6 倍に増加すると予想されている。また、

3 一次エネルギーとは、石油、石炭のように、自然から採取されたままの物質を源としたエネルギーを指す。電気、都市ガス などは、一次エネルギーを加工した二次エネルギーと呼ぶ。

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一次エネルギー需要に占める石油・天然ガスのシェアは、2035 年時点でも過半となる見通 しである。 石油・天然ガス開発は、開発コスト及び生産効率性の観点から、技術的に開発が容易な 所謂「イージーオイル・ガス」から優先的に進められるため、これまで陸上もしくは浅海 の在来型油ガス田が従来の石油・天然ガス開発の中心的役割を担ってきた。しかし、将来 的に更なる石油・天然ガスの生産が必要となる中、今後はより難易度の高い場所での探鉱・ 開発・生産を進めていくことが求められる。

石油・天然ガス需要の成長を支えるため、近年は、シェールオイル・ガス(shale oil and gas)を代表とする非在来型資源4の生産拡大が顕著である。一方で、中長期的に拡大する石 油・ガス供給を支えるために重要な役割を担う可能性がある生産手段の一つが、海洋での 石油・天然ガス開発であると言える。現在の世界における生産量のうち海洋油ガス田から の生産が約4 割とされており、今後も海洋における開発の拡大が期待される。 (2) 海洋再生可能エネルギー開発 世界的に地球温暖化対策が強く求められる中、温室効果ガスであるCO2の削減が課題と なっている。化石燃料と異なり、利用時に温室効果ガス(greenhouse gas)である CO2 を排 出しない、再生可能エネルギーへの期待が高まっている。 このうち、風力発電に関しては、陸上に比べ強く安定した風が吹く海洋が注目されてい る。洋上風力発電は、欧州を中心に商業化されており、今後も世界的に更なる普及が見込 まれている。 この他、潮汐発電が一部の国で商業化されており、波力発電、潮流・海流発電、海水温 度差発電についても、実証研究段階ではあるが、今後の利用可能性に期待がもたれている。 1.2.2 海洋開発産業の規模 現状において、海洋開発産業はどのくらいの規模を有するのだろうか?上述のように、海 洋開発産業の中で、既に商業化されているのは、海洋石油・天然ガス開発と洋上風力発電の 二つである。これら二つを比較すると、海洋石油・天然ガス開発の方が、圧倒的に市場規模 が大きいことから、以下で、海洋石油・天然ガス開発産業を例に、他の産業との比較を試み る。 一般財団法人エンジニアリング協会が平成26 年度に実施した試算によれば、探査船、洋上 掘削リグなどの海洋石油・天然ガス開発に必要となる設備の年間建造費は$1080 億(仮に 1 $=100 円とすると、およそ 11 兆円)である。集計や試算の方法の違いもあるため厳密な比 較はできないが、これらの設備の製造業は、現在において既に造船業や民間航空機製造業と 比較しても遜色ない規模を誇っている。(表 1.2.1 参照) 4 非在来型資源とは、通常の油ガス田以外から開発される石油・天然ガスであり、固い岩石中に閉じ込められている「シェール オイル」、「シェールガス」のほか、高粘度の油を含む砂岩である「オイルサンド」などが代表例とされる。また、近年脚光を 浴びている「メタンハイドレート」も非在来型資源と言われる。これらは通常の油ガス田からの石油・天然ガス(=在来型資源) に比べて開発が難しい特徴を持つ。

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さらに、「海洋石油・天然ガス開発産業」全体を見渡すと、これらの設備の製造業のほか に、これらによって探査、掘削などの操業を行う市場も存在する。この市場の規模は、同試 算によると年間約$1500 億(およそ 15 兆円)である。このように、設備投資や操業に要する 費用などをすべて足し合わせると、海洋石油・天然ガス開発の市場規模は$4000 億(およそ 40 兆円)とも試算され、巨大な市場が形成されていると言える。 表 1.2.1 世界市場における海洋石油・天然ガス開発と他産業との規模の比較 海洋石油・天然ガス開発 造船業 民間航空機産業 市場規模 (年間) $1080 億 (およそ11 兆円) $ 930 億 (およそ9 兆円) - 11.5 兆円 データの説明 エンジニアリング協会 による設備建造費試算 額※1 2014 年竣工船舶の取引 額※2 2012 年の市場規模※3 ※1出所:エンジニアリング協会:平成26 年度「海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査」報告書 ※2 出所:Clarksons Research :World Shipyard Monitor, Volume 22, No.11, 2015

※3 出所:経済産業省 産業技術環境局:我が国企業の国際競争ポジションの定量的調査 海洋石油・天然ガス開発の必要性、重要性は今後益々高まることが予想され、市場の成長 が見込まれることから、海洋開発市場全体としての規模は更に大きく拡大していくものと考 えられる。

1.3 海洋開発に影響を与える要因

資源、再生可能エネルギーの種類の別は問わず、我々は、存在する資源やエネルギーの全て を利用できるわけではない。環境上の制約や、技術的な制約等により、利用できるものは限ら れる。また、そうした制約がクリアされた場合でも、開発コストが高く、収益が得られない場 合、または他の選択肢と比較して収益性に乏しい場合には、開発を断念するという判断がなさ れることとなる。 すなわち、資源・エネルギー開発において、経済性が成り立つかどうかという点は、最も重 要な要素の一つであり、海洋開発についても同じことが言える。例えばシェールオイル・ガス や深海での石油・天然ガス開発、再生可能エネルギー開発等の新たな分野への投資は、中長期 的に必要であることは変わらないものの、陸上の油・ガス田からの産出に比べてコストがかか るため、短期的には石油価格の変動に左右される面がある。

1.4 海洋開発における沿岸国の権利

海洋開発においては、沿岸国にどのような権利が与えられているかという点も押えておく必 要がある。

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20 世紀に入り、貿易や遠洋漁業の拡大などによって海洋の利用が広がり、国際的な慣習法の 法典化に向けた動きが見られるようになった。中でも重要な契機となったのは、1945 年トルー マン米大統領が行った「トルーマン宣言」である。同宣言は、大陸棚の海底と地下の天然資源 に対する管轄権や沿岸の漁業を規制する水域を一方的に主張したものであった。この宣言を受 け、他国も追随するかたちで一方的に沿岸海域の管轄権を主張することになったことから、国 際連合は 1958 年に第一次国連海洋法会議を開催し、ここで「領海と接続水域に関する条約」 や「公海に関する条約」等、後の国連海洋法条約のベースとなる「ジュネーブ海洋法四条約」 が採択された。その後1960 年代に入り、アフリカや中南米の新興国が基線5から200 海里6

でを領海(territorial sea)または、排他的経済水域(exclusive economic zone, EEZ)である、と主 張するようになったこと等を受け、10 年間という長い時間をかけた各国の粘り強い交渉の後、 領海等の範囲について合意に至り、1982 年に国連海洋法条約(UNCLOS: United Nations Convention on the Law of the Sea)が採択された。同条約は「海の憲法」とも呼ばれ、海域分 類や権利義務関係、海洋環境の保全、紛争解決手続きなどが規定された。 沿岸国では、下記の通り、領海内での主権の行使が認められている他、EEZ や大陸棚 (continental shelf)においても権利が与えられている。 (1) 領海: 領海の基線からその外側12 海里(約 22km)の線までの海域を指す。沿岸国の主権は、 領海の上空並びに領海の海底及びその下にも及ぶが、外国船舶は無害通航権を有する。 (2) EEZ: 領海の基線からその外側200 海里(約 370km)の線までの海域(領海を除く)を指す。 EEZ においては、以下の権利が認められている。 ① 天然資源の開発等に係る主権的権利 ② 人工島、設備、構築物の設置及び利用に係る管轄権 ③ 海洋の科学的調査に係る管轄権 ④ 海洋環境の保護及び保全に係る管轄権 EEZ では、沿岸国は水域と海底とその下の天然資源の探査、開発に主権的権利を有して いる。すなわち、海水中の水産資源及び海底の鉱物資源に対し権利を行使できる。 (3) 大陸棚: 領海の基線からその外側200 海里(約 370km)の線までの海域(領海を除く)を基本と するが、大陸辺縁部の外縁がこれを超えて延びている場合には、延長することができる。 なお、大陸棚においては、以下の権利が認められている。 5 基線:海岸の低潮線、湾口もしくは湾内等に引かれる直線 6 海里:長さを表す単位で、1 海里が緯度 1 分に相当する。メートル換算にすると、1 海里は 1852 m である。

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① 天然資源の開発等に係る主権的権利 ② 人工島、設備、構築物の設置及び利用に係る管轄権 大陸棚では、沿岸国は海底とその下の天然資源の探査,開発に権利を有していると言え る。海底の鉱物資源や海底に定着性の生物資源が対象となるが,海水中の資源については 対象外となっている。 尚、大陸棚の外は「深海底」とし、そこにある資源は人類共通の財産とされている。 海上保安庁海洋情報部が公表している海域分類のイメージを図1.4.1 に示す。 海上保安庁海洋情報部 ウェブサイトより 図1.4.1 海域分類のイメージ 図 1.4.2 に、海上保安庁海洋情報部が公表している日本の領海等の概念図を示す。他国と の境界が未確定の海域もあるが、日本が海洋開発の権利を行使できる海域は、概ね同図の通 りであると考えられる。日本の領海・排他的経済水域(EEZ)・大陸棚は世界第 6 位の広さ を誇る。 (基線)

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注)外国との境界が未画定の海域における地理的中間線を含め便宜上図示 海上保安庁海洋情報部 ウェブサイトより 図1.4.2 日本の領海等概念図

1.5 日本における海洋開発の重要性

日本は、世界第6位の面積を誇る広大な領海・排他的経済水域(EEZ)・大陸棚を有している。 近年、これらの海域でメタンハイドレートや海底熱水鉱床などの鉱物資源の存在が確認されて おり、資源開発の期待が高まっている。他方、資源国における資源ナショナリズムの高まり等 により、資源の安定供給が脅かされる可能性があり、他国の資源政策に左右されない資源の確 保は重要な課題である。また、メキシコ湾、北海、ブラジル沖などでは既に海洋開発のフィー ルドが存在し、今後も開発が進められると見込まれる中、我が国が有する優れた技術を海外に 展開することで、我が国の産業の更なる発展が望める。このように、海洋開発に挑戦すること は、資源の確保や経済成長の観点から非常に重要である。 しかしながら、我が国の周辺で資源を採掘することが経済的・エネルギー的に合理的である かどうかの判断をしたり、環境に配慮しながら生産を続けたりするためには、賦存量7・賦存状 況や、採掘に伴う環境への影響を予め把握しなければならない。また、生産に必要となる技術 の開発も必要となる。このように、我が国周辺の海域における海洋開発には、多くの解決すべ き課題が残されている。海洋開発分野は国際的な競争に晒されており、これらの問題を一つ一 つ解決していかなければ、目の前にある資源の開発ビジネスを諸外国に奪われる事態にもなり かねない。 このように、海洋開発は極めて重要であるが、一方で課題も山積しており、中長期的な観点 から計画的に課題解決に向けた取り組みを推進していく必要がある。 7 賦存量:ある資源について、理論的に導き出された総量。

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こうした背景の中、海洋に関する施策を総合的、一体的、計画的に推進するため、「海洋基 本法」が制定され、それに基づく「海洋基本計画」が策定されている。また、経済産業省は、 メタンハイドレートや海底熱水鉱床などの商業化までの工程表を示すなど、国においても中長 期的な視点で、計画的に海洋開発に取り組んでいる。 また、このように重要な海洋開発分野において、海洋資源の成因に関する科学的研究、将来 の開発を見越した生態系調査及び長期監視技術開発を進めるとともに、民間と協力して海洋資 源調査技術の開発を進めるため、国家プロジェクトとして「戦略的イノベーション創造プログ ラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program, SIP)8」の10 の課題の一

つとして「次世代海洋資源調査技術研究開発計画(海のジパング計画)」が進められている。 本プログラムは、得られた技術等を民間に移転し、世界に打って出ることができる海洋資源調 査産業を創出することが狙いであり、海洋開発分野の可能性をまた一つ広げるものである。 さらに、国土が狭く、土地確保が難しい日本では、資源開発、再生可能エネルギー開発以外 でも海洋の活用は重要であり、過去にも洋上施設建設のプロジェクトが進められてきた。例え ば、急激な石油価格の変動や戦争などの有事に備え、日本では10 カ所の国家石油備蓄基地があ るが、そのうち、長崎県の上五島、福岡県の白島の2 箇所の石油備蓄基地は、「浮遊式海洋構 造物(洋上タンク方式)」による洋上石油備蓄システムをとっている(図 1.5.1)。 また、日本で技術開発されたメガフロート(超大型浮体構造物)は、水深や地盤に関係なく 海域を利用可能であり、耐震性に優れ、埋め立て工事と比較して環境への影響が少ないことな どから、洋上空港への利用等が期待される。2000 年には、横須賀沖にて長さ 1000m 級の実証 浮体が建造され、実際にYS-11 機等を用いた離着陸試験が行われている(図 1.5.2)。 (上五島国家石油備蓄基地) 出典:上五島石油備蓄株式会社ウェブサイト (白島国家石油備蓄基地) 出典:白島石油備蓄株式会社ウェブサイト 図1.5.1 洋上石油備蓄の例

8戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program, SIP): 内閣府の総合科

学技術・イノベーション会議が司令塔となり、府省の枠や旧来の分野の枠を超えた科学技術イノベーションを実現するために創 設されたプログラム。

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図1.5.2 横須賀港沖合の浮体空港実証実験用の空港モデル (出典:一般社団法人海洋産業研究会ウェブサイト) 日本は、四方を海に囲まれた海洋国家であり、石油や鉱物等のエネルギー資源の輸入のほぼ すべてを海上輸送に依存している。また、国土面積が小さく、天然資源の乏しい島国である日 本にとって、海洋の生物資源や周辺海域の大陸棚・深海底に埋蔵される海底資源は、非常に重 要である。このように、我々の生活と海洋は切っても切れない関係にあり、環境保全等に配慮 しつつ海洋開発を行っていくことは、海洋立国を目指す日本にとって最重要課題の一つである。 それを担う海洋開発産業は、将来にわたり極めて重要な役割を果たしていくものであると言え る。

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<参考資料リスト> (1) ブリタニカ国際大百科事典 (2) 造船業・海洋産業における人材確保・育成方策に関する検討会 第一回検討会資料「海 洋開発分野の技術者育成の方向性について(案)」 (3) 一般財団法人エンジニアリング協会:平成 26 年度「海洋石油ガス開発技術等に関する動 向調査」報告書 平成27 年 4 月 (4) 経済産業省 産業技術環境局:我が国企業の国際競争ポジションの定量的調査報告書、 2014 年 3 月

(5) Clarksons Research: World Shipyard Monitor, Volume 22, No.11, 2015 (6) International Energy Association: World Energy Outlook 2013

(7) みずほ銀行産業調査部「海洋資源開発産業の現状と展望」2014 年 (8) 三井海洋開発株式会社ウェブサイト http://www.modec.com/jp/business/domain/offshore.html (9) 外務省ウェブサイト わかる!国際情勢 トップページ Vol.61「海の法秩序と国際海洋法 裁判所」2010 年 7 月 23 日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol61/ (10) 海上保安庁海洋情報部ウェブサイト 管轄海域情報~日本の領海 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/ryokai_setsuzoku.html (11) 総合海洋政策本部「海洋基本計画」2013 年 5 月 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/kihonkeikaku/ (12) 経済産業省「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」2013 年 12 月 http://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/strategy/001.html (13) 資源エネルギー庁「石油・天然ガスをめぐる最近の動向」平成 23 年 11 月 (14) 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当) 「次世代海洋資源調査技術(海 のジパング計画)研究開発計画」、2015 年 5 月 (15) 上五島石油備蓄株式会社ウェブサイト http://www.kamigoto.co.jp/index.html (16) 白島石油備蓄株式会社ウェブサイト http://shirashima.co.jp/index.html (17) 一般社団法人海洋産業研究会ウェブサイト 「浮体構造物(マリンフロート)の活用に 関する調査研究」 http://www.rioe.or.jp/marinefloat2.htm

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2 海洋開発産業の背景と現状

2.1 海洋資源開発

海洋開発の領域の一つである海洋資源開発の背景とその現状について、海洋石油・天然ガス 開発を中心に、開発の歴史、その分布と賦存量、開発及び生産産業を構成するプレイヤーなど を紹介するとともに、今後の産業界の動向について紹介する。更に、海洋石油・天然ガスと密 接に関連するメタンハイドレート、海底熱水鉱床などの海底鉱物資源の開発についても新たな 資源開発への挑戦として紹介する。 2.1.1 海洋石油・天然ガス開発 (1) 海洋石油・ガス開発の歴史 ① 石油産業の成立と発展 a) 石油産業の誕生 その歴史は19 世紀、1859 年米国ペンシルべニア州オイルクリークと呼ばれる地域で、 鉄道員であったエドウィン ドレークが機械堀りで、世界で初めて、地下 23m の地層か ら石油を採掘したことから始まると言われている。当時の石油の用途は灯油が主であり、 その後、現代の石油産業への歴史を作ったのは、1870 年に米国オハイオ州クリーブラン ドにスタンダード石油を設立し、原油の精製により軽質油、中質油、重質油を分留する ことで多用途の石油を販売して成功を収め、多数の傘下企業を抱えるスタンダード・ト ラストとして成長させたジョン・ロックフェラーである。 その後、20 世紀に入り、米国で更に大規模な油田の発見が続き、米国の石油産業は大 きな成長を遂げ、テキサコ、ガルフ・オイルなどの新しい石油会社が生まれて来た。 しかしながら、一大帝国を築いたスタンダード・トラストは米国世論の反発もあり、 1911 年に裁判により解体され、エクソン、モービル、シェブロン、アモコ、コノコの前 身会社が生まれた。 一方、米国以外でも、帝政ロシアのアゼルバイジャンにあるバクー地方で、スウェー デンのノーベル兄弟によって油田が開発され、ロスチャイルド家によりヨーロッパ、ア ジア市場にコーカサス鉄道で輸送され、灯油として販売された。このバクー石油はまた、 タンカーで極東にも運ばれている。1892 年に初めて成功したこの試みは、スエズ運河を 経由した世界で初のタンカーによる海上輸送であり、横浜でマーカス・サミュエル商会 を設立して運輸商事に携わっていた英国人のマーカス・サミュエルによって行われた。 同社はその後、1897 年に北ボルネオの油田開発権を獲得し、シェル運輸商事として、世 界の貿易港毎に船舶用の給油施設を設け、燃料油の販売も手掛け、成功を収めた。また、 その当時、オランダ領のジャワ島、スマトラ島、ボルネオ島の石油開発はオランダのロ イヤル・ダッチ石油会社が一手に手掛けていた。しかしながら、同社は十分な販売網を 有していなかったため、1903 年にアジア、アフリカ、ヨーロッパへの販売について、マー カス・サミュエルの会社であるシェルトランスポート&トレーディング・カンパニーと 業務提携を行った。その後、1907 年に両者はロイヤル・ダッチ・シェル社として完全統

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合し、1914 年にメキシコ、1928 年にベネズエラのマラカイボ油田の開発に成功し、米 国スタンダード石油とともに世界の石油産業界の二大巨星となった。 b) 石油産業の成長 1910 年代以降、スタンダード石油(スタンダード・トラスト解体後 スタンダード石油 ニュージャージー、後のエクソン)とロイヤル・ダッチ・シェルの二大石油会社に加え、 米国系のモービル、シェブロン、テキサコ、ガルフ及び英国系のブリティッシュ・ペト ロリアム(BP)を加えた 7 社がメジャーズ(セブン・シスターズとも言われる)と呼ばれ世 界の石油産業を形成した。 時に、第一次世界大戦を通じて、船舶、飛行機、自動車など の燃料として役割の重要性が増し、エネルギー源の中心となって来た。その状況下、石 油の大量消費に新しい油田の発見の必要性が増し、その中から、先ずは英国アングロ・ ペルシャ会社(後のブリティッシュ・ペトロリアム)が 1906 年にイランで石油を発見し、 第二次世界大戦までに次々とイランの大油田が発見された。それに続いてトルコ領で あったイラクでもブリティッシュ・ペトロリアムを中心としたトルコ石油会社(後のイラ ク石油会社)によって、キルクーク油田が 1927 年に開発された。中東での石油開発は、 英国系石油会社を中心として、その後もクウェート、アラブ首長国連邦、オマーンと進 められた。この中東での油田発見により、それまでの米国とロシアを中心とした世界の 石油産業の地図は大きく塗り替えられることとなった。 そのなかで、出遅れた米国系石 油企業は、サウジアラビアにその利権を求め、シェブロンとテキサコはアラムコ社をサ ウジアラビアに設立し、1940 年にアブ・キェーク油田、以後 第二次世界大戦後にガワー ル油田やサファニア油田などの世界最大級の油田を次々と発見、開発に成功した。 c) 民族資本の台頭、OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries, 石油 輸出機構)の設立とメジャーズの市場独占の排除 第二次世界大戦後、新しい歴史の流れは植民地主義の終結、民族自決主義の台頭と言 うナショナリズム中心の世界観となり、石油産業の構造もこの新しい動きとともに変遷 することとなった。1951 年のイランにおけるアバダン紛争に代表される、かつて被植民 地であった産油国で石油利権を産油国に取り戻そうとする動きが起こった。この紛争は 産油国側の挫折となるが、これを契機に国際石油資本と産油国との長い闘いとなり、10 年後の1960 年に、中東産油国(クウェート、サウジアラビア、イラン、イラク)とベネズ エラによるOPEC の結成、設立に結び着くこととなった。 更に、ナショナリズム中心の世界観の台頭は、石油資源を国内に持たない消費国によ る国有石油会社の設立とその国際舞台への登場につながり、また、1950 年代以降の石油 開発の舞台を陸上から大陸棚を中心とした海洋へと変遷させてきた。 d) オイルショックと OPEC 離れ 1970 年代に入ると、産油国 OPEC の力が国際石油資本に対抗できるまで育ってきた ことがあり、国際石油資本の力に陰りが見えてきた。 その状況下、1973 年の第 4 次中東紛争を契機に、OPEC は石油価格の引上げと生産量 削減(石油戦略)を決定、その結果起こった第一次オイルショックは、石油を世界の経済ば

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かりか政治をも動かす戦略物資に変えてしまう結果となった。これを武器にOPEC は国 際石油資本が持つ石油利権を次々と接収、国有化していった。 クウェートの KOC、サ ウジアラビアのアラムコ、イランのNIOC、イラクの INOC が国有化された。 この動きは、1979 年のイラン革命を引き金に、再びオイルショックを引き起こすこと となった(第二次オイルショック)。 この二度にわたるオイルショックは、世界の石油産業の構造、世界の経済構造まで大 きく変えて行くこととなった。世界的に石油節約、代替エネルギー開発の動きが主流と なってくるとともに、政治リスクの少ない地域での石油開発、および、自国でのエネル ギー確保の動きが強くなり、メジャーズも含めて、海洋油田の開発へと向かっていった。 具体的には、1970 年代以降の北海油田の開発、メキシコのユカタン半島沖合の油田開発、 ブラジル沖合プレソルト1油田などの開発はOPEC 離れを象徴する出来事となった。 以下に、最近の世界の石油開発の生産量分布マップ(図 2.1.1)および生産量マップ(図 2.1.2)を示す。 図2.1.1 世界の石油開発マップ (出典:BP Statistical Review of World Energy 2013)

1プレソルト油田:ブラジル沖合のエスピリトサント盆地、カンポス盆地、サントス盆地の大水深に存在する延長約1,000km、

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図2.1.2 世界の原油生産量・原油確認埋蔵量・可採年数 (出典:今日の石油産業 2015 石油連盟 編) 現在では、世界の石油開発、石油生産の拠点は、従来のOPEC 中心からグローバルな 分布へと変化している。また、米国では、1990 年代から新しい石油・天然ガス資源とし て重要視されていたシェールオイル・シェールガスが、石油・天然ガス価格の上昇や水 平破壊、水平坑井などの掘削、生産技術が進歩、確立したことを受けて、また、米国政 府のサポート(2005 年 Energy Policy 法など)もあり、2000 年代に入り急激にその生産量 を増加させている。米国におけるシェールオイルの生産量は、2008 年の日量約 500 万バ レル2から、2015 年の予想では 900 万バレルを超えるとされている。更に、シェールガ スでは、1996 年は年量 0.3 兆立方フィートに過ぎなかったが、2012 年には年量 10 兆立 方フィートを超えており、2013 年以降、従来の天然ガスを含めると、天然ガスの生産量 で、ロシアを超えて世界第一位の生産国となっている。 以上のように、米国でのシェールオイル・ガス開発、生産増大が可能になったことよ り、世界のエネルギー事情が大きく変わりつつあり、これを称して、シェールガス革命 と言われている。 2 バレル:米国の油田で、石油の輸送に樽(たる)(バレル)が使われたことから、その後、国際的な原油・石油製品の取引の体積の 単位となった。1 バレルは約 158・987 リットル。

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② 天然ガス産業の成立と発展 a) 天然ガス開発の創生期 天然ガス田の開発及びその利用は、第二次世界大戦前から世界に先駆けて、米国に於 いて始まった。米国中西部での石油探鉱とともに発見された大量の天然ガスは、パイプ ラインで東部の需要地へ輸送された。更に、第二次世界大戦後も大規模高圧パイプライン からなる供給ネットワークを拡大し、カナダ西岸も含む国際パイプラインを形成してい る。 欧州においては、第二次世界大戦後、先ずフランス南部、イタリア北部でガス田の発 見があり、天然ガスの利用が始まった。その後、1959 年にオランダの北海周辺で巨大な ガス田であるフローニンゲン・ガス田が発見され、これを契機に欧州各国にパイプライン が敷設され、天然ガス供給ネットワークが形成された。 このネットワークへの天然ガス 供給源として、北海の中部、北部のガス田の開発、更にはロシア、アルジェリア(地中 海横断パイプライン)のガス田開発と供給ラインの拡大が続き、大規模な供給ラインが 整備された。 2000 年代に入り、中央アジアのトルクメニスタンのガス田およびロシアのガス田や、 ASEAN のインドネシア、ブルネイのガス田、中南米のボリビアのガス田などでもパイ プライン・ネットワークの建設が始まり、一部供給を開始している。 b) 液化天然ガス(LNG)の出現と躍進 天然ガスの主成分のメタンは、常温では気体であり、臨界点のマイナス82.5℃、45.8 気圧、或は沸点のマイナス161.5℃、1 気圧で初めて液化する。 21 世紀のクリーンな主 要エネルギーとして期待される天然ガスであるが、この性状が輸送・貯蔵効率の改善、 設備、管理面での高い障壁を作り、その供給ネットワークは圧力を加えてパイプライン で圧縮輸送する方式に頼っていた。 従って、そのネットワークはガス田に近いパイプラ イン網が設置できる国域に限られていた。 つまり、主要な天然ガス産業、貿易は、米国 を中心とする北米圏、欧州を中心とするロシア、北アフリカ圏に限られていた。 このような状況ではあったが、超低温域での熱力学、材料力学の進歩に伴い、1940 年 代には米国が夏場(非需要期)にLNG をタンクで貯蔵する試みを、1950 年代には欧州 が大西洋地域でLNG を輸送する試みを行い、LNG の輸送に関連する技術、材料・機器・ 装置品の開発、ノウハウの蓄積が進められた。 そして、1954 年に米国で、LNG 輸送用のバージ“Methane”が建造され、ミシシッ ピー河口のガス田よりシカゴまで LNG 試験輸送を行った。この輸送はタンク損傷が激 しく、失敗に終わったが、LNG 輸送船開拓史の第一番船として、“Methane”はその名 を刻むこととなった。 その後、英米両国を中心に、LNG の洋上輸送が推進され、1959 年 戦時標準船を改造 した“Methane Pioneer”で、米国ルイジアナ州のレイク・チャールズより大西洋を渡 り、英国テムズ河口のキャンベイ島へ輸送したのが最初の洋上輸送の成功となった。 その後、本格的なプロジェクトとしての洋上LNG 輸送は、1964 年に、アルジェリア から英国へのLNG 輸送用に、LNG 専用船として“Methane Princess”及び“Methane

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Progress”が建造されて始まった。 しかしながら、このプロジェクトは、翌 1965 年に 北海の英国鉱区でガス田が発見されたため、途中で棚上げとなってしまった。 この LNG 成立期において、我が国では、高度経済成長を成し遂げていたが、その反 動として、1960 年代より深刻な大気汚染、水質汚染の公害問題が発生していた。これに 対処するために、クリーンなエネルギー源である天然ガスが石炭、石油の代替として用 いることが検討され、1969 年から LNG 船”Polar Alaska”による米国アラスカから横 浜への洋上LNG 輸送・輸入が始まった。これが世界における本格的な大型 LNG 船によ る洋上輸送の始まりである。 この本格的な洋上 LNG 輸送プロジェクトの開始と成功、及び遠距離の天然ガスの国 際パイプライン・ネットワークの拡大を契機に、更には、1970 年代からの2度のオイル ショックもあり、アジア、中東、豪州などの以前まで開発の目が向けられていなかった 地域での開発が始まり、天然ガス田の開発は世界的に広がることとなった。具体的な新 規開発田は、アラスカ、リビア、ブルネイ、アブダビ、インドネシア、更には、マレー シア、カタール、ナイジェリア、エジプト、豪州などである。当初は、LNG の価格は石 油より高かったが、大気汚染などの環境対策費が不要であり、2度のオイルショックに よる石油価格の高騰もあり、石油に対し価格面でも有利となったことにより、1980 年代 以降、世界的に、LNG の導入が着実に増加することとなった。 更に、前項で概説のシェールガス革命により、2010 年代半ばより、米国は石油・天然 ガス輸入国から輸出国に転じることとなり、世界の天然ガス事情は大きく変わりつつあ る。 ③ 海洋石油・天然ガス開発の歴史 a) 海洋石油・天然ガス開発の創成期 海洋での石油・天然ガス発見のために最初に行われた海洋掘削は、1896 年に米国カリ フォルニア西海岸のサンタバーバラのサマーランド油田の海への延長部で行われたもの であると言われており、その後、1910 年代に行われた米国の内陸湖カドー湖の岸から離 れた水上での掘削が最初の油田開発と言われている。 1920 年代に入り、ベネズエラの マラカイボ湖、ソ連のバクー油田のカスピ海部分、1930 年代に、米国のカリフォルニア とメキシコ湾岸及び英領ボルネオのブルネイ沖で海洋油田の開発が盛んに行われるよう になった。但し、この頃までは、開発地域は、岸に近く、水深が浅く、静穏な地域であ り、生産方法は、海岸から延長された桟橋又はプラットフォームを用いた掘削或は海岸 から傾斜堀りによるものだった。 その後、米国ルイジアナ沖で全域が海に分布している油田が発見され、さらに、カナ ダのエリー湖水域でのガス田が発見されるなど、徐々に陸域から離れていくことになる。 そして、1938 年にはルイジアナの海岸より約 2.5km 離れた場所で、メキシコ湾で初の 油井が掘られた。ルイジアナの油田海域は非常な遠浅で、海岸より100km 位離れても水 深50m 程度で、豊富な石油が存在するため、海洋石油開発はルイジアナ沖を中心にして 始められることとなった。ここで海洋石油の開発技術が発達、確立し、世界に拡がって いった。

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b) 本格的な海洋石油・天然ガス開発の開始 世界で初めての商業的な海洋での石油掘削、生産は、1947 年に、海岸より陸地が見通 せないほど離れたルイジアナの沖合海域で、オクラホマのKerr-McGee Corporation が 固定式プラットフォームによって行ったとされている。これを契機に本格的な海洋石 油・天然ガス開発が開始され、1947 年は海洋油田の開発が始まった年とされている。 c) 海洋石油・天然ガス開発の発展期 メキシコ湾米国海域で始まった海洋石油開発は、1950 年代に入り、従来の固定式プ ラットフォームに代わってジャッキアップ型、ドリル・シップなどの移動式掘削装置が 開発され、新たな局面を迎えた。これらは、海洋油田探査、掘削に大いに寄与し、1950 年代後半の米国、中東でのさらなる海洋油田の発見に、更には世界各地での海洋油田開 発に繋がっていくこととなった。 その後、1961 年にセミサブ型(セミサブマージ型、半潜水型)掘削装置が開発され、ア ラスカのクック湾、ナイジェリア、ガボン、エジプトのスエズ湾、オーストラリアのバ ス海峡、ブルネイ、北海、イタリアのアドリア海などの海洋油田の開発が行われた。 海洋で石油開発が始まった当初は、生産プラットフォームは着底式であり、その設置 海域は水深200m~300m 以浅が限界であった。つまり、開発海域も浅海域に限定されて いた。 1970 年代に入ると、前項 「石油産業の成立と発展」で記しているオイルショック後 の世界の石油産業の構造、世界の経済構造の変化に伴い、海洋石油・天然ガス開発は更 に活発化し、着底式プラットフォームの設置が困難な水深の海域へ拡がることとなり、 浮体式生産設備の開発へと繋がることとなった。 最初の浮体式生産設備は、1975 年 地 中海で運用を開始し、更に、ブラジル沖海域での浮体式生産設備による海洋石油・天然 ガス開発の拡大に繋がっていった。 1977 年にブラジルの国営石油会社であるペトロブ ラスは掘削リグを改造したセミサブ型生産設備の運用を開始した。 なお、1970 年代から 80 年代にかけて、日本の造船所も半潜水式リグ、FPSO3などの 海洋開発用の浮体構造物を建造していた。しかしながら、1985 年のプラザ合意以降の円 高の影響で競争力を失い、これらの建造から撤退してしまった。現状ではシンガポール、 韓国、中国が中心となって建造している。 海洋石油・天然ガス開発は、その掘削設備、生産設備及び石油探査技術の発展、進化 に伴い、1970/1980 年代には、北海油田、メキシコのユカタン半島沖合の油田、ブラジ ル沖合プレソルト油田の開発活発化、更には 1980 年代のサハリンなどの氷海域での石 油開発、2000 年代のメキシコ湾大水深海域などでの油田開発と世界的に拡大するととも に、より水深の深い海域(深海域)へも拡がっていった。 更に、2000 年代後半より、クリーン・エネルギー源としての天然ガスの重要度が増し たことに伴い、海洋天然ガス田の開発が活発化している。このような背景のなかで、オー

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ストラリア西海域で進められている開発ではFLNG4などの新しい技術、高度な洋上生産 設備が用いられている。このような技術・設備の高度化、進化とともに新しい海域での 海洋石油・天然ガス開発が始まっている。 図2.1.3 に海洋石油・天然ガス開発の歴史、図 2.1.4 に掘削リグ等の種類、図 2.1.5 に 石油生産プラットフォームの種類を示す。 図2.1.3 海洋石油・天然ガス開発の歴史 (出典:横浜国立⼤学・統合的海洋教育・研究センター・シンポジウム 「海洋石油開発技術と船舶工学」佐尾邦久 編 講演資料)

4 FLNG:Floating Liquefied Natural Gas の略称で、広義には洋上における LNG の液化設備および再ガス化設備全般を差す。

狭義には洋上にて液化・貯蔵・出荷を行うLNG-FPSO(Floating Production, Storage and Off-loading system)を差すこともあ る。

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図2.1.4 掘削リグの種類

(出典:みずほ銀行産業調査部「海洋資源開発産業の現状と展望」2014 年)

図2.1.5 石油生産プラットフォームの種類

(出典:みずほ銀行産業調査部「海洋資源開発産業の現状と展望」2014 年)

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表 2.1.1 石油・天然ガス開発の歴史 石油開発 天然ガス開発 アメリカ南北戦争 普仏戦争 ドイツ帝国成立 アメリカのエジソンが蓄音機を発明 ノーベル賞が創設される ライト兄弟が飛行機による人類初の有人動力飛行 血の日曜日事件、ロシア第1次革命開始 米海軍が真珠湾に基地を建設 伊土戦争-1912年迄 中華民国建国 第二次バルカン戦争 第一次世界大戦勃発 ロシア革命が起こる 第一次世界大戦が終わる パリでベルサイユ条約 ワシントン会議 ソビエト社会主義共和国連邦成立 国共内戦-1949年迄 ジュネーブ国際経済会議開催(52カ国) パリ不戦条約 世界大恐慌 ヒトラーが独首相に就任、ナチス政権始まる 第二次エチオピア戦争-1936年迄 スペイン内戦 第二次世界大戦(ヨーロッパ戦争)勃発 ダンケルクの戦い モスクワの戦い、スターリングラードの戦い イタリアが連合国に無条件降伏 連合軍によるノルマンディー上陸作戦 ドイツが連合国に無条件降伏 ギリシャ内戦-1949年迄 第1次中東戦争 中華人民共和国が成立、中華民国→台湾) 朝鮮戦争-1953年迄 朝鮮戦争が休戦 アルジェリア戦争-1962年迄 第一次スーダン内戦-1972年迄 第2次中東戦争(スエズ戦争) ソ連が人工衛星スプートニク1号の打上げ成功 金門砲戦(中華人民共和国VS中国人民解放軍) 中印国境紛争-1962年迄(中国VSインド) 1896年:米国カリフォルニア西海岸のサ マーランド油田の油田の海への延長部で 世界で初めての海洋掘削を実施 1947年:世界で初めての固定式プラット フォームによる本格的な海洋油田の掘削 (陸地が見通せない米国ルイジアナ沖合) ・米国 石油産業の伸長(1901年 ガルフオイ ル、1901年テキサコオイルなどの新しい石油 会社が設立される) 1930代 1940年代 1950年代 1936年:シェブロン及びテキサコによるサウジ 進出(アラムコ社設立) 1920年代 ・1906年:英国アングロ・ベルシャ(後のブリ ティッシュ・ペトロリアム:BP)がイランで油田 発見 ・1911年:スタンダード・トラスト解体(エクソン、 モービル、シェブロン、アモコ、コノコの前身会 社発足)。後継会社はスタンダード石油ニュー ジャージー(後のエクソン)) ・1927年:BPを中心としたトルコ石油会社によ りイラン・キルクーク油田の開発が始まる 1940年代後半:アラムコによるガワール油 田、サファニア油田と世界最大級の油田が 次々に開発される ・1897年:マーカス・サミュエル商会(シェル商 事) 北ボルネオの油田開発権を取得し、世界 の貿易港に船舶用燃料施設を設け、燃料の 販売を開始 ・1902年:シェル商事は蘭ロイヤル・ダッチ石 油会社と石油の欧州、アジア、アフリカへの 販売の業務提携。 ・1907年:ロイヤル・ダッチ・シェル社設立 ・1870年中頃:帝政ロシア・バクー地方で、 ノーベル兄弟によって油田開発が始まる ・1886年ごろより、ロスチャイルド家がバクー 油田の石油生産を担い、欧州、アジアへの鉄 道による輸送わ始める 1870年代 1880年代 1890年代 1940年:アラムコによるアラブ・ アブ キェーク油田開発 1938年:メキシコ湾の米国ルイジアナの海 岸より、2.5km離れた水深の浅い海域で、 初めて油井を掘る 世界の主な出来事 1850年代 ・1959年:米国オイルクリークで世界で初めて石油採掘 ・1970年:米国オハイオ州で、ジョン ロックフェ ラーがスタンダードオイル設立(石油産業の始 まり) 1900年代 1910年代 ・1890年:マーカス・サミュエルにより、タン カーによるスエズ運河経由の石油輸送に初 めて成功する。 1954年:米国で世界に先駆け、LNG輸送 バージ"Methane"によるLNGの試験輸送実 施。 1959年:LNG輸送船"Methane Pioneer"に よる世界初めての海上輸送(米国~英国) 1959年:オランダ北海周辺で巨大なフロー ニンゲンガス田発見 石油・天然ガス開発(全般) 海洋石油・天然ガス開発 西暦(年) 天然ガスの商業的利用の始ま り:1800年代後半より、世界に 先駆けて、米国で、中西部での 石油採掘と共に産出される随 伴の天然ガスをパイプラインで 東部に輸送し利用。 石油メジャーズ=セブン・シスターズ (スタンダード石油ニュージャー ジー、ロイヤル・ダッチ・シェル、 モービル、シェブロン、テキサコ、ガ ルフおよびBP)による世界の石油 開発・供給市場の独占が続く 民族資本の台頭 ⇒ メジャーズによる市場独占の 排除の動きが活発化 欧州における天然ガス利用の始 まり:フランス南部、イタリア北部で のガス田発見により天然ガス利用 が始まる ベネズエラのマラカイボ湖、ソ 連のバクー石油のカスピ海岸 部分の水深の浅い海域で海洋 油田の開発が始まる 1950年代:より深い水深での海 洋油田開発の為、ジャッキアッ プ型、掘削船などの移動式掘 削装置が開発され、米国、中東 での新油田発見に繋がる。

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石油開発 天然ガス開発 ベトナム戦争勃発 キューバ危機 キプロス内戦-1964年迄 コロンビア紛争-継続 南ローデシア紛争-1979年迄 第3次中東戦争(六日戦争) プラハの春(チェコ事件、ソ連のチェコ介入) 中ソ国境紛争 ヨルダン内戦(黒い九月事件) カンボジア内戦-1992年迄 第4次中東戦争(十月戦争)(第一次石油危機) キプロス紛争 ベトナム戦争が終わる イラン革命、第2次オイルショック イラン・イラク戦争-1988年迄 フォークランド紛争(マルビーナス戦争) ペレストロイカが始まる チェルノブイリ原子力発電所事故 ベルリンの壁崩壊(米ソ「冷戦終結宣言」 湾岸戦争-1991年迄、東西ドイツの統一 湾岸戦争、ソビエト連邦崩壊 香港が中国に返還される 1999年:氷海サハリン2生産開始 1999年:氷海サハリン2生産開始 アフガニスタン侵攻、アメリカ同時多発テロ事件 イラク戦争 ロンドン同時爆破事件 世界同時不況 シリア内戦 1990年代半ば:氷海海域での海洋石油開 発の開始 2003年:メキシコ湾にて、Drilling Shipによ る水深 3051mでの掘削に成功(世界記録) 1964年:世界最初のLNGの商業的輸送とし て、アルジェリア~英国間のLNG船によるプ ロジェクト開始(翌年中断、通り止め) 2000年代 1960年代 1990年代半ば:氷海海域 サハリン 沖での海洋石油開発プロジェクト 開始 1973年:OPEC 石油戦略を決定(石油価格の の引上げと生産量削減) 1980年代 1960年:中東産油国とベネズエラによりOPEC 設立される 1990年代 世界の主な出来事 1970年代 1975年:世界で初めての浮体式生産が地 中海 イタリア海域に設置。 1964年:LNG船"Polar Alaska"による本格的 LNG洋上輸送(アラスカ~日本)開始 2010 海洋石油・天然ガス開発 西暦(年) OPEC諸国による、メジャーズの石油 利権の接収と国有化(KOC,ARAMCO、 NIOC、INOCなどの設立 新しい石油開発の対象は、陸上 から大陸棚を中心とした海洋石油 開発への進出となる。 フローニンゲンガス田発見を契機に 欧州各国を結ぶパイプラインによる 供給ネットワークが敷設される 石油の代替エネルギー、クリーン なエネルギーとして、大々的なガス 田の開発加速(アラスカ、リビア、ブ ルネイ、アブダビ、インドネシア、マ レーシア、カタール、ナイジェリア、 エジプト、豪州など) 1961年:セミサブ型掘削装置の 開発により、アラスカのクック入 江、ナイジェリア、ガボン、エジ プトのスエズ湾、オーストラリア のバス海峡、ブルネイ、北海、イ タリアのアドリア海などでの海洋 油田に繋がる。 これを契機に、従来の着床式生 産設備(水深 200~300mが設 置限界)に代わり、より深い海域 での油田開発へ拡大する。 ブ ラジルのカンボス海盆及びサン トス海盆、メキシコのユカタン半 島沖合など

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(2) 石油・天然ガスの分布と資源量 ① 世界の石油・天然ガスの分布と資源量 地下に存在するすべての石油の量は「資源量(Resources)」といい、この資源量のう ち、既発見であり、かつ経済的・技術的に回収(採取)可能な量を「埋蔵量(Reserves)」 という。また、「可採年数(R/P)」は現在の技術と価格の下で採掘可能であると考えら れる石油埋蔵量(R)をその年の石油生産量(P)で割ったものをいう。 2014 年時点での世界合計で確認埋蔵量は、約 1.7 兆バレル、可採年数は 59 年と言わ れている。かつて可採年数は約 30 年と算出された時期もあったが、最近の可採年数は OGJ(Oil and Gas Journal)で 59 年、BP 統計で 53 年(カナダの・ベネズエラのオイル サンド、米国のシェールオイルを含む)とむしろ伸びる状況にある。これは、技術革新 による新規油田の発見や採掘技術の進歩や、原油価格上昇に伴う採算性の向上などに よって、生産量を上回るペースで石油埋蔵量が増加を続けてきた結果である。 石油の地域分布は偏っており、アジア、特に中東地域が約60%を占める。ついで北ア メリカの約20%、ヨーロッパと南アメリカの 10%である。 尚、世界的には、オイルサンド、オイルシェール等の「非在来型石油」が豊富に存在 している。オイルサンドは大部分がカナダに、次いでナイジェリア、マダガスカル、ア メリカなどに賦存しており、オイルシェール(油母頁岩)はアメリカ、ブラジル、中国、 カナダ、ロシア、コンゴなど世界各地に分布している。また、オイルサンドの一種であ るオリノコタールはベネズエラのオリノコ川流域を中心に存在する超重質油である。最 近、このような非在来型石油資源の開発が進んだこともあり、石油の埋蔵量は飛躍的に 増加している。 世界全体の石油の生産量、確認埋蔵量、可採年数に関しては、前掲の図 2.1.2 に示し たように石油連盟のデータを発表している他、BP 社がデータを発表している(図 2.1.6)。

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図2.1.6 1994 年、2004 年、2014 年における世界石油可採埋蔵量 (出典:BP Statistical Review Of World Energy-2015)

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② 海洋石油・天然ガスの分布と賦存量 1980 年代以降、新しい油田の開発は、海洋に主体を移しており、北海油田、メキシコ のユカタン半島沖合、ブラジル沖合プレソルト油田、アフリカ東岸、西岸、フィリピン、 マレーシアなどの新しい油ガス田が開発されている。この海洋油ガス田開発地域の確認 埋蔵量は情報、データが乏しく、正確な割合は不明ながら、生産量ベースでの海洋石油 占める割合は、2015 年時点で約 30%(図 2.1.7)とされており、近々 40%を超えると言わ れている。 図2.1.7 世界の海洋石油・天然ガス生産量推移 (出典:Infield Systems 社ウェブサイト)

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(3) 産業を構成するプレイヤー 海洋石油・天然ガスの開発・生産には、多くの企業が関与している。この産業を作り出 している源泉はエクソン、シェル、BP、ペトロブラスなどの石油上流会社である。石油会 社が発注する物理探査・掘削(試掘と生産井掘削)・開発(生産設備の設計・建造・設置)・ 生産業務、さらに生産終了後の廃鉱・撤去・再利用・処分の業務によって、これらの業務 に必要となる設備の製作と操業、さらにはそれらの検査・保守・補修という広範な業務が 作り出されている。

業務は、発注者から主請負会社(Main Contractor 或いは EPCI5 Contractor)、造船所

などの部分請負会社(Sub-Contractor)を経て、機器メーカーや材料メーカーのような細 部まで発注が順次なされていく。設備の製作はこの逆であり、機器や材料から順次組み立 てられ、何段階もの検査・試運転を経て完成する流れとなる。 (4) 極地・氷海、大水深での石油・天然ガス開発への挑戦 世界の一次エネルギー需要は、これまで順調に拡大を続け、そのなかで石油・天然ガス は全体の過半を占める重要なエネルギー源となっている。すなわち、世界経済の全体の活 発化のために、安定したエネルギー源として、石油・天然ガスの生産量を増加・確保して いく必要がある。 石油・天然ガスは、現在注目を集めている再生可能エネルギーに比べると、そのエネル ギー投入効率(100 のエネルギーを生み出すに必要なエネルギー比率)が非常に良く経済的 であり、且つ、発電、燃料用エネルギー源としてのみならず、化学製品などの原材料とし ても重要な資源であるため、その安定供給は世界経済に大きく影響する。 シェールガスを代表とする非在来型資源の生産拡大は、石油・天然ガスの供給量拡大の 顕著な事例であるが、長期的、安定的な石油・天然ガス供給源として、更なる海洋石油・ 天然ガス資源の開発が重要視され、期待されている。現在、世界の石油生産量のうち海洋 油ガス田からの生産は約40%とされているが、大水深海域、極地海域での石油・天然ガス 開発が進むことで、生産量の更なる伸長が期待されている。 ① 大水深海洋石油・天然ガス開発 海洋石油・天然ガス開発の歴史で概説したように、開発のフィールドは水深300m 未 満の浅い海域から、徐々に深い水深へと拡大して行った。特に 2003 年のイラク戦争勃 発による石油価格暴騰以降、大水深油ガス田の開発が本格化し、その中で水深の深い海 域での海底油田の探査技術、掘削技術、生産技術の進歩、確立したことで、現在 では 3,000m の海域での石油・天然ガスの開発・生産が可能なまでに至っている。 更なる大水深での安全で、安定した海洋石油・天然ガス開発、生産の拡大を目指し、 現在、新しい生産方式として海底生産システム(Subsea Production System:SPS)が脚光 を浴びており、海底仕上げ井(Subsea Completion Well)と海底機器、海底に設置される 生産・処理設備、貯油設備及び積出設備、その操作、補修を行う水中ロボット、AUV な

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どの新規開発、信頼性向上などが急務の課題として取り組まれている。

図2.1.8 に大水深石油・天然ガス開発海域マップ、図 2.1.9 に海洋石油・天然ガス開発 の水深の推移、図2.1.10 に各水深に適合した生産設備の推移を示す。図 2.1.10 に示すよ うに、水深に応じて、前述のTLP や FPSO に加え、CPT(Compliant Piled Tower)、SPAR やFPS(Floating Production System)などが用いられる。

図2.1.8 世界の大水深海洋石油・天然ガス開発マップ (出典:JOGMEC 大水深石油開発のトレンド:概説)

図2.1.9 開発水深の推移 (出典:国土交通省海事レポート 2015)

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図2.1.10 洋上石油生産設備の水深推移 (出典:「海洋工学ハンドブック(第 5 版)JOGMEC 編」) ② 極地海域での石油・天然ガス開発 既発見の深海域の巨大石油・ガス田の他、ニューフロンティアとして今後有望視され ているのが北極圏での資源開発である。元々北極圏にはかなりの量の地下資源が眠って いると言われてきたが、地球温暖化の影響で海氷面積が減少するに伴い資源探査も容易 になり、資源量の推定が正確になりつつある。 また、2008 年の米国地質調査所の調査によると、北極海には石油は世界全体の 13% (900 億バレル)、天然ガスは同 30%(1,670 兆立方フィート)も埋蔵していると推定 されるなど、近年、そのポテンシャルに注目が集まっている。このため、近年、ロシア やノルウェーを中心に開発が進められている。 これに対し、我が国政府も「我が国の北 極政策」を策定し、北極海における資源開発に中長期的に取り組む姿勢を示している。 尚、2014 年現在で、進められている開発プロジェクトの位置を図 2.1.11 に示す。

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図2.1.11 北極圏プロジェクトの位置図

(出典:JOGMEC 「世界が注目するニューフロンティア 北極圏資源開発」(2014.3 JOGMEC NEWS Vol.36)) ③ 大水深海洋石油・天然ガスの開発と我が国の海洋資源開発技術伸長の取り組み 海洋開発のフィールドが増加し、多様化するに従って、これまでに無い新たな発想に 基づく技術や設備が必要になる。 例えば、昨今の海洋石油・天然ガス開発の沖合化に伴い、新しい油ガス田の探査掘削 を行うドリルシップやFPSO 等の多数の洋上施設と陸の距離が遠くなると、人員や機材、 消耗品等をより効率的に輸送するための設備やシステムが必要となる。このようなニー ズに対応するものとして、沖合に洋上中継基地(ハブ浮体)を設置し、陸からハブ浮体 まで人員や物資を船舶で大量輸送した上で、ハブ浮体から多数の洋上施設までの間をヘ リコプター等で小口輸送する「ロジスティックハブ・システム」が検討されている。 このような動きに呼応して、我が国造船・海運企業等は、上記のようなシステムの安 全性評価をはじめとする、海洋開発フィールドで求められる新たな技術の研究開発と実 用化を目的とする「J-DeEP 技術研究組合」を 2013 年 2 月に設立し、同システムの実現 に向けた調査研究を実施した。同組合は、ハブ浮体の投入が想定される海域の気象・海 象条件下における要求性能を踏まえ、ハブ浮体等の試設計、実環境下における運航シミュ レーション、安全性・経済性・システム稼働率の分析、リスク評価等、本システム導入 にあたって想定される課題を網羅的に検証してきた(図2.1.12)。 このように新たな技術を世界に先駆けて実現することは、日本企業の受注機会の拡大 につながるだけでなく、新たな技術の導入が期待される海洋資源開発プロジェクトへの 参画機会の拡大にもつながる。さらに我が国企業が海外で海洋開発事業の実績を積むこ とは、将来的には我が国の排他的経済水域の資源開発にも貢献するものと考えられる。 なお、海外での海洋開発プロジェクトへの参画を見据えて、海洋開発事業の拡大が見 ①シュトックマンガス田 ②プリラズロムノエ油田 ③カラ海探鉱鉱区 ④バレンツ海西部探鉱鉱区 ⑤グリーンランド東岸海域

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込まれる中南米・アジア等において、ロジスティックハブ・システムの導入に向け、関 係政府機関、企業等との協議が進められている。

図2.1.12 Logistics Hub System For Passenger (出典:J-DeEP 技術研究組合 パンフレット) 2.1.2 新たな資源開発への挑戦 (1) メタンハイドレート ① メタンハイドレートとは メタンハイドレートは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質である。日 本の周辺海域において相当の量が存在していると見込まれていることから、将来の天然 ガス資源として期待されている。メタンと水だけで構成されているため、火を近づける と水に囲まれていたメタンが燃え、水だけが残る。 日本の周辺海域に存在するメタンハイドレートは、その堆積深度から表層型と砂層型 に分類できる。 表層型メタンハイドレートは水深500 メートル以深の海底面付近に存在するもので、 日本海側を中心に確認されている。表層型は、採掘しようとすると分解しガス化してし まい回収ができなくなるため、生産が難しいと考えられているが、資源量を把握するた めの調査が行われるなど、研究・調査が徐々に進められてきている。 他方、砂層型メタンハイドレートは水深が500 メートル程度の深い海底面下数百メー

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トルの砂層に存在するものである。砂層型は、通常のガス田とは異なり資源(ガス)が自噴 しないため、減圧法や加熱法というメタンハイドレート特有の採取方法などについて研 究が進められているが、基本的には掘った資源を上げてくるという、従来の石油・天然 ガスにおける掘削・生産手法の活用が可能であるとともに、探査も行いやすい。また、 砂層型のメタンハイドレートはある程度量が存在すると指摘されていることもあり、表 層型よりも従来型の石油・天然ガスにより近い砂層型を中心に研究開発が進められてい る。 図2.1.13 に砂層型と表層型メタンハイドレートの概念図を示し、表 2.1.2 に砂層型と 表層型の特徴を比較する。 図2.1.13 砂層型と表層型メタンハイドレートの賦存形態概念図 (出典:「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」経済産業省) 表 2.1.2 砂層型と表層型の特徴 項目 砂層型 表層型 賦存形態 水深が500 メートル以深の海底面下 数百メートルの地層中に砂と混じり 合った状態で賦存する。 水深500メートル以深の海底に塊状で存在 する。 賦存海域 東部南海トラフ海域を中心に相当量 の賦存が見込まれている。 日本海側を中心に確認されている。 生産技術 自噴しないため、減圧法や加熱法とい う採取方法などについて研究が進め られている。 採掘しようとすると、分解しガス化してし まい回収ができなくなるため、生産がなか なか難しいと考えられている。 技術開発 在来型石油・天然ガス資源の生産技術 に加え、新たな技術開発が必要であ る。 分布する海域や資源量等の本格的な調査 の実施と、その結果を踏まえた開発手法の 検討が必要である。 経済産業省の 取り組み 平成30 年度を目途に、商業化の実現 に向けた技術の整備を行う。 日本海側を中心に資源量を把握するため、 平成25 年度以降 3 年間程度で、広域的な 分布調査に取り組む。 ※海洋政策研究所第97 回海洋フォーラム「石油・天然ガスを取り巻く現状」資料(2012 年)に基づき作成

図 2.1.5 石油生産プラットフォームの種類
表  2.1.1 石油・天然ガス開発の歴史 石油開発 天然ガス開発 アメリカ南北戦争 普仏戦争 ドイツ帝国成立 アメリカのエジソンが蓄音機を発明 ノーベル賞が創設される ライト兄弟が飛行機による人類初の有人動力飛行 血の日曜日事件、ロシア第1次革命開始 米海軍が真珠湾に基地を建設 伊土戦争-1912年迄 中華民国建国 第二次バルカン戦争 第一次世界大戦勃発 ロシア革命が起こる 第一次世界大戦が終わる パリでベルサイユ条約 ワシントン会議 ソビエト社会主義共和国連邦成立 国共内戦-1949年迄 ジュネーブ国際
図 2.1.6  1994 年、 2004 年、 2014 年における世界石油可採埋蔵量 ( 出典: BP Statistical Review Of World Energy-2015)
図 2.1.8 世界の大水深海洋石油・天然ガス開発マップ
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