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3 海洋石油・天然ガス開発の実際

3.2 プロジェクト事例

3.2.2 国内プロジェクト

日本は、石油・天然ガスの供給をほぼ輸入に頼っているのが現状であるが、国内での石油・

天然ガス開発が全く行われていないというわけではない。国内の石油・天然ガス田は、最も 安定した供給源であるというだけでなく、我が国の石油・天然ガス開発の技術的な基盤を維 持、発展させる上でも重要な場と位置付けられる。このことから、国内でも石油・天然ガス 開発の取り組みは進められてきた(図3.2.20)。

図3.2.20 日本の主な油ガス田

本項では、日本における海洋における石油・天然ガス開発の事例として、磐城沖ガス田、

岩船沖を取り上げ概説する。

(1) 磐城沖ガス田

磐城沖ガス田は、福島県双葉郡楢葉町の沖合約 40km の陸棚(水深 154m )に位置する ガス田である(図 3.2.21)。1984年から2007年まで23 年間の長期にわたり天然ガスの 生産操業を行った。磐城沖ガス田は、日本の太平洋側海域では初めての本格的な海洋ガス 田であった。図3.2.22は、磐城沖ガス田の陸上プラントの外観である。

図 3.2.21 磐城沖ガス田の位置とプラットフォーム及び 関東甲信越地方の天然ガス主要幹線パイプライン

出典:INPEXウェブサイト

図3.2.22 陸上プラント

出典:経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会(第7回)資料、2007

磐城沖ガス田は、INPEXグループとエクソンモービルグループとの共同事業として運営 された。権益比率は、磐城沖石油開発株式会社(INPEXの100%子会社)が50%、エクソン

モービル有限会社が35%、東燃ゼネラル石油株式会社が15%であった。

海上の施設は固定式のプラットフォーム(図3.2.23) 1 基で、生産された天然ガスは海 底パイプライン(外径 324mm 、長さ 41km )で楢葉町に建設されたガス処理プラントに 送られ、ガスは同プラントに隣接する東京電力(株) 広野火力発電所に燃料として販売され た。磐城沖ガス田の累計生産量は天然ガスが約56 億m3(原油換算約3,500 万バレル)

で、コンデンセート約71,480kl (約45 万バレル)であった。

図3.2.23 磐城沖ガス田のプラットフォーム

出典:経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会(第7回)資料、2007

磐城沖ガス田は、2007 年に商業生産を終了し、2010 年に施設の撤去工事が完了してい る。磐城沖ガス田の開発の歩みの概要を表 3.2.4に示す。

表 3.2.4 磐城沖ガス田開発の歩み(概要)

1973年 ガス田発見

1981年 プラットフォーム製作開始 1983年 プラットフォーム設置 1984年7 月 商業生産開始

生産された天然ガスおよびコンデンセートは、全量を 東京電力株式会社の広野火力発電所へ供給

2007年7 月 商業生産終了

2009年4月 新日鉄エンジニアリング株式会社がプラットフォーム の撤去作業の設計、施工、輸送、揚陸及びプロジェク ト全体管理業務を受注

2010年7月 撤去工事完了

(2) 岩船沖

岩船沖は 1983 年に発見された国内では最大級の海洋ガス田で、新潟市から北東に約 30km、新潟県北蒲原郡中条町の胎内川の河口から沖合に 4km の所に位置している(図

3.2.24)。岩船沖は現存する国内唯一の海洋油ガス田であり、2012年に原油累計生産量が

500万klに達した。現在、石油資源開発株式会社(JAPEX)、日本海洋石油資源開発株式 会社(JPO)および三菱ガス化学株式会社の3社で石油・天然ガスの生産・開発が進めら れている。

図 3.2.24 岩船沖岩船沖の位置

出典:JPOのウェブサイト

岩船沖は、新潟県胎内市の胎内川河口沖合の周辺海域に広がっている。探鉱は 1958 年 に始まり、足掛け25年以上にわたった。1982年に当該海域においてエアガンによる物理 探鉱調査を実施した結果、石油・天然ガスを貯留できる器としての層位封塞型構造の存在 が予測され、また周囲陸域、海域の地質状況から見て、出油・出ガスの可能性が大きいと 判断された。1983年3月に、試掘井「岩船沖SIM-1」で成功を収め、1984年内に3坑の試 掘井を掘削した(表 3.2.5)。その結果、いずれの試掘井においても出油・出ガスに成功し た。

1984年10月から、これらの成果を基に、構造の地質、構造解析、油層評価、埋蔵量計 算及び経済性検討を実施した結果、岩船沖構造は、開発生産に移行できると判断され、1989 年3月に開発に移行することを決定した。

1990年に岩船沖プラットフォーム(水深36m、図 3.2.25)、海底パイプライン(21km) を建設し、並行して開発井を掘削した。岩船沖海底パイプラインは、プラットフォームと 新潟市太郎代の陸上基地とを結ぶ、全長21km、直径32cmの海底土中の埋設導管であり、

岩船沖において生産された原油および天然ガスは本管の中を通り陸揚げされている。

1990年9月15日、第1号井のSIM-B1が開坑され、同年12月5日に石油・天然ガス

の生産が開始された。1991年に生産量は、原油740kl/日、ガス 125,000m3/日となってい る。なお、ピーク時の生産レートは、原油約1,100kl/日、天然ガス約300,000m3/日を予定

している。岩船沖は1990年に生産を開始して以来安定した操業を継続している。

表 3.2.5 岩船沖海域で実施された探鉱作業

1958年 北蒲原重力探鉱 1964年 蒲原沖地震探鉱

岩船沖背斜構造発見 1965年 岩船沖磁力調査

1965年 岩船沖SK-1、2D試掘

西山層より少量の油ガス産出 1969年 日本海エアガン調査

1973年 北蒲原沿岸エアガン調査 1975年 北蒲原浅海エアガン調査

岩船沖背斜鼻状沈降部に貯留岩の発達の 可能性発見

1982年 岩船沖南岸エアガン調査(精査)

1983-84年 岩船沖SIM-1、2、3、4試掘 1985年 三次元エアガン調査

出典:中林健一「岩船沖油田の開発」

出典:JAPEXのウェブサイト

出典:経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山 保安部会(第7回)資料、2007

図 3.2.25 岩船沖プラットフォーム

岩船沖ガス田の開発の歩みの概要を表 3.2.6に示す。

表 3.2.6 岩船沖ガス田の開発の歩みの概要

1983年 ガス田発見 1989年 開発移行決定

1990年 プラットフォーム、パイプラインの建設、生産井掘削 12月 商業生産開始

<参考資料リスト>

(1) 石油技術協会編:石油鉱業便覧, 2013年

(2) オイル・フィールドエンジニアリング入門、山崎豊彦編、海文堂, 2002年 (3) JXエネルギー社:石油便覧

http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/

(4) 一般財団法人エンジニアリング協会:平成26年度「海洋石油ガス開発技術等に関する動 向調査」報告書, 2015年

(5) JOGMEC:基礎講座テキスト「開発技術」, 2013年改訂版

(6) 日本物理探礦株式会社、物理探査手法

http://www.n-buturi.co.jp/technology/geophy/index.html (7) 日本海洋掘削株式会社、海洋掘削の技術

http://www.jdc.co.jp/business/offshore/drilling.php

(8) JOGMEC編:海洋工学ハンドブック第5版,2010年

(9) JOGMEC:炭酸ガス(CO2)圧入攻法

http://www.jogmec.go.jp/oilgas/technology_004.html

(10) 金城秀樹:海洋開発におけるサブシー生産システムの動向と展望 (三井物産戦略研究所レ

ポート) 2015年

http://mitsui.mgssi.com/issues/report/r150310m_kinjo.pdf

(11) JOGMEC:海底生産システムの現状:Subsea Production System (SPS)、 -どこまで信頼性を保ち、 機器を海底に設置できるか , 2009年

http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3127/0905_out_subsea_production_system.pdf

(12) SAAB社製品パンフレット

(13) Remotely Operated Vehicle Committee of Marine Technology Society ウェブサイト http://www.rov.org/index.cfm

(14) JOGMEC:国際石油開発帝石のオーストラリアイクシス LNG プロジェクトに係る債

務保証(完工保証)採択について

http://www.jogmec.go.jp/news/release/release0458.html,2016.01.26 (15) 国際石油開発帝石(INPEX):Ichthys LNG Project,

http://www.inpex.co.jp/ichthys/index.html,2016.01.26

(16) 国際石油開発帝石(INPEX):オーストラリアイクシスLNGプロジェクト、生産開始

スケジュール及びLNG生産能力増加について,平成 27(2015)年 9月 11 日

(17) 国際石油開発帝石株式会社:磐城沖ガス田の生産操業終了に伴う関連施設の撤去作業の

開始について(お知らせ),平成22(2010) 年4 月28 日 http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2010/20100428.pdf

(18) JOGMEC:石油・天然ガス資源情報

http://oilgas-info.jogmec.go.jp/index.html

(19) 経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会(第7回)資料、2007年

http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g71121d04j.pdf

(20) 石油資源開発株式会社:事業紹介,国内事業-国内,

(21) http://www.japex.co.jp/business/japan/field.html,2016.01.27 (22) 三 菱 ガ ス 化 学 株 式 会 社 : 事 業 ・ 製 品 , 岩 船 沖 の 開 発 ,

http://www.mgc.co.jp/compa/tennen/energy/iwafuneoki.html,2016.01.27

(23) 日本海洋石油資源開発株式会社:事業案内

http://www.jpo.co.jp/activities/,2016.01.27

(24) 中林健一:岩船沖油田の開発,石油技術協会誌,VOL.56,NO.6, Nov.1991