(1) :P (全リン) 濃度分布 単位は‰, 太線は 0.4,細線は 0.2 間隔
(2) :C (有機炭素) 濃度分布 単位は%,太線は 0.5,細線は 0.25 間隔
(3) :N (全窒素) 濃度分布 単位は%,太線は 0.05,細線は 0.025 間隔
(4) :C/N 比分布 太線は 3.0,細線は 1.50 間隔
(5) :P/C 比分布 太線は 0.120,細線は 0.060 間隔
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
る。C / N,P / C にはバックグラウンドとして含まれた量の見積もりによって,大きな変化が予想される。
しかし,堆積物中に含まれていた各元素は植物質のものと推定され,C / N を上げる方向,P / C を下 げる方向に働くはずである。
また,第3図に示したP,C,C / N,P / C の傾向は,以下に示す通りである。
①全リン
1〜3‰程度の濃度を示す。1層から3層に向かい濃度が減少する傾向にある。一方で土坑底部の 3層下部から6層でやや高い値を示す。
②有機炭素
0.5 〜2%程度の濃度を示す。1層から3層に向かい濃度が減少する傾向にある。また,中部の3 層両端がやや高い値を示す。
③全窒素
0.05 〜 0.15%程度の濃度を示す。1層から3層に向かい濃度が減少する傾向にあるほか,中部の3 層両端がやや高い値を示す。
④ C / N
6〜 17 程度の値を示す。N1 列で高い傾向にあり,土坑底部の3層下部から4層で横に広がってい るようにも見える。
⑤ P / C
0.1 〜 0.4 程度の値を示す。土坑内下部ほど高い傾向にある。また P / C が全体に高い。このことは,
土壌中でのPとC (あるいはN) の動態が異なる事を示唆するが,今後の検討課題として残る。
また第4図 (1) に示すように,窒素と炭素は高い相関を示す。一方,第4図 (2) に示すように,
リンと炭素はやや相関が低く,炭素の濃度およそ 1.0%の上下で複線的な分布を示す。またリンと窒 素もやや相関が低い (第4図 (3) )。
6.リンの起源について
(1) 濃度分布図から
測定したP,C,Nの3元素の分布は良く似る傾向にある。このことは,第3図の相関図でも明ら かであり,それぞれが弱い相関関係にあることが明らかである。
①リン濃度分布 (第3図 (1) )
リンが土坑上部から中部 (1層〜3層上部) に向かい減衰する様子が認められた。上部でのリンの 高濃度での検出は,旧耕土への施肥の影響と考えられる。また,リン濃度が下方向へ減衰し,旧耕土 から堆肥成分が「染み込んでいった」と考えられる。
一方,土坑下部 (3層下部〜4・6層) では高濃度の部分が帯状に分布する。7層上面が不透水層を
成していた様相は認められなかったことから,染み込んだリンがこの部分で濃縮されたとは考えにく
い。下部の高濃度帯は3層と4層にまたがる。また4層下位の6層が,この土坑を土坑墓と考えた場
合の埋納時のベースと考えられる層である。3層,4層はいずれも腐植質粘土〜シルトであり,3層
第4図 相関図 0
0.5 1 1.5 2
0 0.05 0.1 0.15
N(全窒素)
C(有機炭素)
(1) N-C
0 0.5 1 1.5 2
0 1 2 3 4
P(全リン)
C(有機炭素)
(2) P-C
0 0.05 0.1 0.15
0 1 2 3 4
P(全リン)
N(全窒素)
(3) P-N
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4
P(全リン)
P/C
(4) P-P/C
0 5 10 15 20
0 1 2 3 4
P(全リン )
C/N
(5) P-C/N
0 0.5 1 1.5 2
0 5 10 15 20
C/N
C(有機炭素)
(6) C/N-C
0 0.05 0.1 0.15
0 5 10 15 20
C/N
N(全窒素)
(7) C/N-N
グループ 1
グループ2
グループ3
凡 例
下部には炭化物が多く含まれていた。この土坑を土坑墓と考えた場合,4層が遺体を含む層で,3層 が棺を覆った土である。また3層下部の炭化物は,埋葬に際して混入したものの可能性がある。
このような前提から考えると,土坑 SK2866 が土坑墓であり下部の高濃度帯は遺体などに伴う「リ ン」が能集した部分と考えることが可能である。
②C,N,C / N 濃度分布 (第3図 (2) , (3) )
上下方向の減衰傾向が認められるが,C,Nともに土坑中部 (3層〜4層上部) でやや高濃度となり,
土坑壁に沿った染み込みを示唆させる。また,C / N 値では N1 ラインが高い値を示し,根に沿った堆 肥成分の染み込み,あるいは根そのものの痕跡が想像される。これらの試料では C の濃度に対しP の濃度が低いことから,堆肥ではなく根に由来する可能性が高い。
(2) 相関図から
第4図に示した相関図の内,P − N (第4図 (3) )を除く 6 つの相関図で 3 つのグループが認識できる。
特に,P − C (第4図 (2) ),P − P / C (第4図 (4) )で明確に分かれる。「グループ1」はほとんどが 3層より上位の試料からなり, 「グループ3」は土坑下底部, 「グループ2」は下底付近の試料からなる。
①「グループ1」
C / N が 10 以上と高いことと,Pの変化に対して P / C,C / N の変化が乏しいこと,更に土坑上部で あることから,上位の耕作土から染み込んだ動物性堆肥や植物遺体に主に由来すると考えられる。ま た,染み込みと考えられる濃度の減衰が顕著であることから,本来地層中に含まれていた元素の量は 少なかったと考えられる。
②「グループ2」
「グループ1」と「グループ3」の中間的な分布を示し,一部では「グループ1」と重なる。C / N − N (第 4図 (7) )では「グループ1」,「グループ3」が C / N とNが負の相関を示していることが分かるが,
「グループ2」では関係が認められなかった。また,C / N − C (第4図 (6) )では「グループ2」で正 の相関が認められるが,「グループ1」,「グループ3」では相関が認められなかった。更に「グルー プ1」に対して「グループ2」ではCの濃度に対するPの濃度が高い。C濃度が上部からの染み込み を示唆するのに対し,Pは別に付加されたかの様相を示す。このことは施肥の影響を示すものの,動 物質のものが混在した可能性を示唆する。濃度分布図で述べたように,土坑 SK2866 が土坑墓であっ たとすると,下部の高濃度帯は遺体などに伴う「リン」に由来すると考えることが可能である。
③「グループ3」
土坑下底部に集中し,C / N 値は5 − 10 とやや高い。また,Pの変化に対し P / C の変化が大きい。
C / N 値から動物性堆肥に由来する可能性も指摘できるが,濃度分布図の項で指摘したように上位か
らの連続性に乏しく,動物性堆肥に由来するとは考えにくい。一方で,P に対してC,C / N の値が低
く,根などの植物のみに由来するとは考えにくい。更に試料数に対し P / C,C / N などの変位の幅が
大きいことから,C,Pには複数の起源が混在している可能性がある。本来地層中に含まれていた元
素の影響が,今回の値に認められた可能性がある。ただし,この土坑が埋葬施設であったと仮定する
と,遺体 (動物遺体) のほかに木棺や副葬品など C / N 値の高い植物質のものが混在している可能性が
あり,上位の「グループ2」とともにこれらの影響が指摘できる。下底部の層相から,Pに関しては
「グループ2」から染み込んだ可能性も指摘できる。
7.まとめ
矢野遺跡B区で検出された土坑 SK2866 についてP,C,N濃度測定を行い,濃度分布図,相関図 を作成した。これらを基にリンの起源について推定した。
(1) 土坑上部から中部に向かい全リン濃度が減衰するが,下部で高濃度の部分が薄い帯状に分布する。
上部のリンは旧耕土への施肥の影響と推定され,中部に向かい染み込んだものと推定できる。下部で のリンの高濃度帯は遺体などに由来した可能性が指摘できる。
(2) 有機炭素濃度,全窒素濃度も,全リン濃度同様に土坑上部では下方向に減衰する。一方,土坑 中部で高濃度を示す部分が存在し,土坑壁や根に沿った堆肥成分の染み込みや,根そのものの痕跡に 由来する可能性が指摘できる。一方で全リン濃度ではこのような傾向が認められないことから,根に よる影響ととらえることができる。
(3) 各測定値,算出値の相関図から,各試料を「グループ1〜3」にグルーピングすることができた。
各グループはおよそ土坑上〜中部,下部,最下部に対応した。
(4) 「グループ1」では各元素の相関が高く,C / N や P / C の変位の幅が小さい。このことは,上部 から中部への「染み込み」を示唆する。
(5) 「グループ3」では C / N の値が低く,C / N,P / C の変位の幅が大きい。このことは,動物由来の 有機物の割合が高いことと,多くの要素が混在することを示唆する。
(6) 「グループ2」では,「グループ1」に比べCの濃度に対するPの濃度が高く,上部からのCの 染み込みと,下部でのP (動物由来の有機物) の付加が指摘できる。
(7) バックグラウンドの影響は土坑上〜中部ではほとんど認められなかった。一方で,C濃度の薄 くなる下部では,若干の影響が認められた。
(8) 土坑下部でのリンの高濃度帯は,上部から染み込んだものではない。また,堆積物中本来含ま
れていたものとも考えにくい。土坑 SK2866 が土坑墓であったとすると,下部の高濃度帯が遺体など
に伴う「リン」に由来すると考えることが可能である。
第5節 矢野遺跡B区 (西側) 発掘調査における流路(SD2626)の古流向
渡邉正巳 (文化財調査コンサルタント株式会社)
1.はじめに
矢野遺跡は島根県東部の出雲市矢野町地内に位置する。B区 (西側) 発掘調査に伴い検出された流 路 (SD2626) 内では,明白なラミナが観察できた。矢野遺跡内で同様のラミナが認められる流路の検 出例がごくまれだったことから,ラミナを記載し,古流向を判別するために軟 X 線観察を行った。
2.分析試料について
第1図の調査区平面図に流路 (SD2626) 及び観察試料採取地点を示す。
対象が未固結の砂層であったことから,トマック NS10 を用いて観察壁面の「剥ぎ取り」を行った 後,試験室内に持ち帰った。試験室内に持ち帰った剥ぎ取り試料を軟 X 線撮影用のフォルダサイズ に整形し,補強のために裏打ちを行った。
3.軟 X 線写真観察方法
ドキュメント内
<88E290D55F3495AA8DFB2E696E6464>
(ページ 39-44)