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第一次五ヵ年計画(1953〜1957 年)

2 中国における技術移転政策の原点―ソ連からの技術援助を中心に― 0

2.3 第一次五ヵ年計画(1953〜1957 年)

建国したばかりの中国は,簡単な年間計画しか策定できなかった.そのため,1952年に 第一次五ヵ年計画を策定しようとした中国政府は,周恩来をはじめ政府各部の指導者から なる巨大な代表団をソ連に派遣した.彼らは,『第一次五ヵ年計画草案』を持参して,ソ 連側の意見を聞き,ソ連からの援助による経済建設の具体的なプランを協議した65). ス ターリンは,中国重工業建設の設計の援助,設備の提供と借款に関して代表団と合意し た.当時の副団長である李富春66)の報告によれば,「ソ連は多くの設備を提供できるが,

旧型設備のたなさらしを防ぐため,設備更新の早さを考えなければならない.」,「ソ連 は多くの専門家を派遣することや,すべてを援助することはできない.もっと中国の留学 生や技術者がソ連で学習し,工場で実習をして,帰国後には国家建設に関与させ,自国の 技術者チームを作るべきだ」などと,スターリンからアドバイスされたという67).これら のソ連の意見を参考にして,『草案』を大幅に修正した.工業建設,計画管理,金融,統 計などの面について,中国政府は,ほぼソ連のやり方をそのまま模倣した.

第一次五ヵ年計画を策定する前,1952年までの経済回復期に,中国の国家資本は一定程 度発展し,工業生産力が回復していた.さらに,1953年の朝鮮戦争の停戦によって,中国 は相対的に安定したマクロ環境下,資金と資源を集中し,経済発展に取り組むことができ た.第一次五ヵ年計画の目標は,なによりも重工業の建設であった.特に,電力,石炭,

石油,鉄鋼,非鉄金属,化学,大型機械,発電設備,冶金設備などの基礎工業を中心に,

工業化の基盤を築くことであった.

64) 董,呉(2004)58ページ.

65) 張・姚・張・蔣(200441ページ.

66) 李富春は中華人民共和国成立後,国務院財政経済委員会副主任,中央人民政府重工業部部長,国家計 画委員会副主任,主任,国務院副総理を歴任した.提案した経済調整政策(整頓,巩固,充実,提高 の八字方針)によって,文化大革命で政治弾圧を受け迫害された.

67) 張・姚・張・蔣(2004)42ページ.

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第 7 表 地域別にみる「156国家重点プロジェクト」の投資状況(民生部門のみ)

地域分布 実施項

目数

予定投資額 実際の投資額 第一次五ヵ年計画 期 の投資額 金額

(万元)

シェア

(%)

金額

(万元)

シェア

(%)

金額

(万元)

シェア

(%)

民生 部門

遼寧省

20 407153 25.25 458702 28.93 311576 38.83

黒龍江省 20 177317 11.00 205076 12.93 129937 16.20

吉林省 10 136558 8.47 145510 9.18 132772 16.55

河南省

9 253604 15.73 155367 9.80 46558 5.80

湖北省 3 170178 10.55 154805 9.76 39820 4.96

江西省 3 15017 0.93 16196 1.02 7260 0.90

湖南省 3 7524 0.47 8362 0.53 7022 0.88

山西省

7 53747 3.33 57231 3.61 17820 2.22

河北省 5 28077 1.74 28264 1.78 16481 2.05

内モンゴル自治区 3 114151 7.08 103535 6.53 11898 1.48

北京市 1 7936 0.49 9380 0.60 525 0.07

甘粛省

西

7 130177 8.07 131299 8.28 39174 4.88

陝西省 7 40396 2.51 43366 2.73 16481 2.05

新疆ウイグル自治区 1 3270 0.20 3275 0.21 1981 0.25

雲南省 西

4 57681 3.58 55602 3.51 18175 2.26

四川省 2 8244 0.51 8594 0.54 4486 0.56

安徽省

1 1500 0.09 1486 0.09 472 0.06

合計 106 1612530 100 1586050 100 802438 100

軍需

部門 合計 44 409648 100 375285 100 274939 100

出所)朱(2013)34ページより作成.

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第一次五ヵ年計画の期間中,工業への投資額は工農業総投資全体の52%を占め,そのう

ち 85%が重工業への投資であった68). 重工業の投資においては,ソ連からの援助によっ

て立案した「156 国家重点プロジェクト」が中核となった.「156 国家重点プロジェク ト」を実施するためには 128 億元の投資が必要であり,第一次五ヵ年計画における総投資

248.5 億元の 51.5%を占めた.69)ソ連から導入したプラント・設備などは,総工業投資の

30%を占めた70)

第一次五ヵ年計画の実施にあたり,東北地域など既存の工業基盤を合理的に活用し,工 業発展を図ることが中国政府の優先課題となった.第 7 表に示したように,民生部門の 106 項目のうち,東北地域(遼寧省,吉林省,黒龍江省)で 50 項目を実施し,全体の

47.2%を占めた.金額ベースでみても,東北地域が第一次五ヵ年計画期総投資額の 76.9%

を占め,57 億 4285 万元を投資した.つまり,この期間中重工業建設の中核となった

「156 国家重点プロジェクト」(軍需部門を除く)は,経済回復期に引き続き東北地域が 中心となった.そのほかは,内陸部の華中,華北,西北,西南地域に分散していた.その ような配置は主に以下の 3 点の理由による.①資源の有効利用.冶金・化学分野の工業企 業は鉱物資源とエネルギー資源が豊富な地域に配置し,機械生産企業は原材料産地の近く に建設した.②地域の均衡発展を考慮し始めた.③軍事的な需要.国防上の配慮によっ て,新設企業を内陸部に配置した.

1954 年 10 月,中ソ科学技術合作協定の締結によって,ソ連と中国の技術連携はより密 接になった.この協定で,ソ連政府と中国政府は科学技術領域に関する情報と工農業部門 の生産上の知識を交換し,交流と協力の方式でお互いの経済発展を促進することで合意し た.また,協定によって設立された中ソ科学技術委員会は,常に両国間で技術協力に関す る問題で直接連絡をとる目的で,それぞれの国から 7 人を委員とする含む組織である.年 2回会議を開き,積極的に技術協力を推進した71)

1955 年 9 月に中ソ科学技術委員会が発表した『第二次会議総括報告』によれば,ソ連 は中国の要求に応じて,47 人の専門家の派遣,151大型項目の技術資料の提供,農作物の 種と薬剤のサンプルなどの提供を承諾した72).ソ連は自国の要求とほぼ同じく中国の要求 を重視した.

68) 中国研究所編(1959188ページ.

69) 中共中央文献研究室編 (1955)422ページ.

70) 費主編(1990)184ページ.

71) 瀋(2003)2ページ.

72) 中国科学院档案処档案,『中蘇科学技術合作委員会第二次会議総括報告』.

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第 8 表 中国における第一次五ヵ年計画期間工業製品生産量の増加

製品名 単位 1957年 産出量

対1952年 増産率

(%)

対計画指標

対1949年 年平均増産 率(%)

原炭 億トン 13000 96 +1701.5 1623.96

原油 万トン 146 235 -55.2 15.75

発電量 億キロワット 193 166 +34.0 17.75

鋼 万トン 535 296 +123.0 63.9

銑鉄 万トン 594 208 +126.6 70.125

セメント 万トン 686 140 +86.6 76.5

硫酸 万トン 63.2 233 +12.8 6.4

紗 万トン 84.4 28 ― 5.4625

布 億メートル 50.5 32 ― 2.95

塩 万トン 827.7 67 +234.5 65.0875

砂糖 万トン 86.4 92 +17.8 7.3

(注)+,−は第一次五ヵ年計画の指標より超えているか,超えていないかを示す.

出所)『中国統計年鑑』(1984年版)220−229ページより作成.

第一次五ヵ年計画期間,中ソの間で 244 項目の工業援助協定と 11 項目の非工業協定が 締結された.合計 255 項目のうち,13 項目は重複計算であり,10 項目はその後取り消さ れた.1957年末に 63項目の建設が完了した.ほかの169項目は第二次五ヵ年計画期に継 続された.その結果,1949 年と比べ工業生産量の年平均増加率は 28%に達した73).第 8

73) 董,呉(2004)86ページ.

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表が示すように,各工業製品の生産量でみると,特に重工業は第一次五ヵ年計画期間にほ

ぼ100%から200%を増産した.

中国国家科学技術委員会は第一次五ヵ年計画期間の技術移転について,以下のように評 価している74)

「目標が明確で,重点産業の選択も的確,計画の組織と実施措置にも効果があった.また,……様々な レベルの管理者,エンジニア,科学者,技術者,および中核となる労働者群を養成しえた」